ISBN:4062879107 新書 相原 博之 講談社 2007/09/19 ¥735
ISBN:406270580X 単行本 乙一 講談社 2006/05/31 ¥2,100
ISBN:4393332644 単行本 切通 理作 春秋社 2007/10 ¥1,785
少年ナイフ CD Pヴァイン・レコード 2007/07/06 ¥2,625
今日は1日、ビッグキャットで「大阪宇宙祭り」
ベアーズとファンダンゴの20周年記念イベント。
午後2時開演から、午後9時過ぎまで、ライブ三昧。
会場についてから、そうだ、フライヤーでも作ろう、と即席に11月16日(金)BEARSのライブ告知のフライヤーを作り、100枚だけコピーして配付してもらった。
メインステージでは、保山宗明玉〜赤犬〜Bacon〜BOGULTA〜lostage〜オシリペンペンズ〜テント〜Suspiria〜PARA〜騒音寺〜少年ナイフ〜MASONNA
サブステージでは、akamar22!〜クリトリック・リス〜岩崎愛〜保山宗明玉〜三沢洋紀〜沢田ナオヤ〜柴山伸二〜ぴかちゅう〜ガンジー石原
ホール後方広場では、MUNA SEA〜MU〜アウトドア・ホームレス
会場内にはULTRA FUKERSがテントをはっていた。
僕は、つまり、メインステージとサブステージ両方でライブさせてもらったことになり、うれしかった。
お客さんも多く、おおぜいの前でステージに立つ快感も味わえた。お客さんが喜んでくれたかどうかは、別問題だ。
少年ナイフは、あっちゃんが帰ってきており、3ピースでのライブが楽しめた。
テントさんの漫談はいつ聞いても面白い。
舞台の袖から見させてもらって、大爆笑した。
最後はマゾンナの短距離ノイズが爆発し、スパッと終わったかと思いきや、ガンジー石原の長時間フォーク(ノイズ?)で、グダグダぎりぎりのしめくくりになった。
ミュージックイズフォーエバー。
音楽は永遠なんだな、と、いつ終わるとも知れぬガンジーの歌声を聞いていると実感できた。なんと、ガンジー、指から血が吹き出るまでギターをひきつづけていたのだ。
http://www.smashwest.com/liveinfo/osaka.html#01

さて、近くのアメリカ村三角公園では、ポッキー&プリッツの日のイベントが開催されていて、好きなポッキー&プリッツをチョイスしてもらえたり、ステージではいろんな演しものがあった。
たまたま食事のために外出したときに、ちょうどキッズダンスコンテストがはじまって、これは天の配剤かと思った。
結局、キッズダンスコンテスト、全部見た。
ただ、結果発表は見ていないので、どのチームが優勝したのかは、不明。
http://pocky.jp/event/pocky_pretz07/event_radian7.html
稲富菜穂
http://inatominaho.jp/?eid=386
瀬RA美EE
http://serabee.sakura.ne.jp/info/detail.php?1193580605

今日は午後6時からNHK-FMで「現代の音楽」があったのだが、そんなわけで、携帯ラジオでブーレーズの「シュル・アンシーズ」の一部を聞けただけだった。
録音機能のある機械に買いかえるべきなのかもしれない。
高島智則 井上ヨシマサ AKB48 秋元康 CD DefSTAR RECORDS 2007/10/31 ¥1,600
午後2時から、国立国際美術館の講堂でJohn Cageの100th Anniversary Countdown Event
ちなみに、昨日の夜に行ったカレントのイベントではアニバーサリーのスペルが「n」1つ少ないバージョンだった。
さて、この演奏会、演奏された曲は「SONG BOOKS」
演奏者は稲垣貴士、竹村ノブカズ、ニシジマアツシ、Haco、深川和美、前林明次、村井啓哲
もらったパンフレットに説明が描いてあった。
複数で演奏を行う場合は、自分が選んだ曲をそれぞれの構成にしたがって同時に演奏することになっている。
「SONG BOOKS」は全部で90曲の作品だが、今回はそのうち31曲が演奏された。
現代音楽のコンサートには人が来ない、と聞くことがあるが、このコンサートは、わずか数分で整理券がなくなってしまい、ぼやぼやしていた僕は、整理券をとれずに、外のモニターで演奏会を楽しむことになった。
いや、実は、そっちはそっちで面白かったと言える。
モニターの映像なので、次に自分がどこに目を向けるのか、という選択はできないが、その不自由さが、逆に面白味になったのだ。
何やら歌っている人が見えたかと思うと、ジェンガで遊んでいるプレイヤーもいる。こういう「覗き趣味」な音楽も面白いな、と感じた。

終了後、湊町リバープレイスで、AKB48の学園祭。
これは「夕陽を見ているか?」の発売キャンペーンイベントで、CDに封入されている招待券で、1イベント参加できる。
水ヨーヨーつりだの焼そばだの、学園祭っぽい店が並ぶ。
ファンは招待券を何枚も入手して、ループで楽しむのだ。
さて、僕はというと、ライブならいざ知らず、こういうふれあい系のイベントというのはとても苦手なのだ。
チケットを手にいれたけど並ばない握手会なんて数え切れない。
撮影会に行かないのも、ふれあいが苦手だからだ。
ふれあいたくないわけじゃない、苦手なのだ。
と、いうわけで、僕は店に並ばずに、ORCからずっと見て来た増田有華ちゃんと、えれぴょんを外側からのぞいて、それでよしとした。
もう夕方になりかけていたのに、長い列は途切れることがなかった。みんな、すごいね!

夜8時から銭ゲバでchamiちゃんの誕生日パーティ。
業界のお客さんも来た。
お客さんには芸人さんも、アイドルもいた。
演しものとしては、chamiちゃんの歌をはじめ、多くの女性シンガーにならんで、僕もパフォーマンスをやらせてもらった。
昨日の夜にLOVE BEACHが歌っていたトゥモローネバーノウズがヒントになって、それを早速とりいれた。
いろんな「アオアオ」。
しょっちゅうこのネタをやっているときは、自分のことながら食傷気味だったけど、久しぶりにやってみると、違うバージョンを思い付いたり、演出を考えてみたりして、けっこう面白かった。
お客さんが面白いと感じていたかどうかは、別問題だ。
プレゼントしたのは、電子トイと「おいしい棒」
イベント終了後も銭ゲバで漫画読んだりして夜中まで遊んでいた。『不安の種』とかね。
ISBN:4199051678 単行本 日日日 徳間書店 2007/04 ¥680
日日日(あきら)の『ギロチンマシン中村奈々子 (学級崩壊編)』を読んだ。義務教育編につぐ続編。
以下、目次

prologue
1、「人間病」の僕たち
2、マタニティ・ドレスには早すぎる
3、ドグラ・マグラ
4、極上ツンデレ/崩壊パロディ
5、証
6、レプリカたちの卒業式
epilogue

人間とロボットが戦争をしている世界。
ここでの「学園」は、圧倒的な戦力をもちながら人類を殲滅できないロボットたちが、その原因を探るための機関。
つまり、人間とは何かを研究し、愛や感情を学ぶことで、人間がもつアドバンテージをチャラにしようとしているのだ。
さて、本書では、ロボットなのに自分のことを人間と思いこんで、人間らしく振る舞って、人間みたいな感情をみせてしまう「人間病」という概念がでてくる。
これは感染してしまうらしい。
登場人物は、鉄腕アトムの時代からおなじみの問題を考えている。
人間とロボットのちがいは何か。
僕らは人間なのか、ロボットなのか。
赤ずきんという英雄は、こう吐露する。
「ねぇ、どこから本物なのだ?どこからが本物の人間なのだ?血を流せば本物か?涙を零せば本物か?証明はどこにあるのだ?実感は?誰に認められたら納得できるのだ?そもそも、最初から疑わなければよかったのか?でも疑ってしまったのだから、証がほしい」
そして、最後に問うのだ。
「ねぇ、私は、人間か?ロボットか?」
う〜ん、思春期ですねえ。
この世界では、非人間的な人間たちと、感情を学んだロボットたちが入り乱れて、人間ロボット問題にいろどりを添える。
でも、思春期特有の悩みが作品に投影されているな、とわかったような気でいると、次のような言葉に、頬をはられることになる。
「人間として自由に生きるほうが、ロボットとして支配されて生きるより、偉いだなんて…誰が決めたの?あえて死にたがるみたいな、人間たちの考え、あたしにはぜーんぜん理解できないよ」
この投げかけに答えるのは難しい。

夜から、なんばROCKETSとSAOMAIで、ESTETICISMO current 10th Aniversary
遅れて入場したら、ちょうどSAOMAIで高西知泰くんの時間だった。
そのあと、A.C.E.〜かんのとしこ〜eater〜AOKI takamasa〜RIDIQ a.k.a. Yoshihiro HANNO〜LOVE BEACHと、ロケッツとサオマイを往復して楽しんだ。
まだ朝までライブは続いたが、僕も夜勤明けだったので、少々の睡眠時間がほしくて、会場をあとにした。
LOVE BEACHの曲で、トゥモローネバーノウズの前にふしぎなメルモの「明日を知るのは今」というフレーズを繰り返しているのが面白くて、考えさせらた。
明日はネバーノウズなのか、知るのは今なのか。
雲州堂のフードもおいしくいただいた。ごちそうさまでした。

Aの人生

2007年11月8日 読書
ISBN:406210735X 単行本 藤子 不二雄A 講談社 2002/03 ¥1,575
藤子不二雄Aの『Aの人生』を読んだ。
以下、目次

まえがき
気楽に生きるための「キイワード」
 毒蛇はいそがない
 果報は寝て待て
 禍福はあざなえる…
 ものは考えよう
 酒は飲んでも飲まれるな
 その日その時の出来心
ぼくのごきげん日常生活
 ワイフのパンケーキ
 ロマンスカー小旅行
 イヤなことは見ないで、しないで
 お弁当持って…
 腰痛とんでいけ〜
 休カン日をつくろう
藤子・F・不二雄との50年
わが愛しのキャラクターたち
 忍者ハットリ君
 怪物くん
 魔太郎がくる!!
 プロゴルファー猿
 笑うせぇるすまん
人づきあいが元気の素!
 ニンゲン大好き!
 大老人力
 漫画とNHKとスターバックス
 イージー会のハワイツアー
おもしろがりの日々
 ブレーキ踏まずにアクセルを…
 奇妙キテレツ奇々怪々
 いいことばかり続いた1日
 一人でいる時間
 人に好かれるヒトになろう
 気楽的生活のススメ
あとがき

藤子不二雄Aがよく言う「明日にのばせることを今日するな」というのは、映画「アフリカの女王」の中で、ハンフリー・ボガートがキャサリン・ヘップバーンに言う台詞らしい。
藤子不二雄Aというと、ちょっとブラックなイメージがあるが、このエッセイ本に書かれている内容は、ほのぼのとしていて、きわめて日常的で、あくせく働いてストレスためている人には処方箋になるんじゃないか、と思わせるような癒し効果を持っている。
ロアルド・ダールやスタンリイ・エリンの奇妙な味の小説のとりこになって、そういう作品を多数描いてきたが、最近は現実社会の事件のほうはブラックでダークなので、その手の作品は描かなくなった、ということだ。
そういえば、新しく創刊された『ジャンプスクエア』でも、日常のエッセイ漫画を描いていた。
シニカルな「劇画オバQ」を描いていた頃とは、人が違っているようにも思える。
ただ、楽しそうなエッセイ漫画にも魔太郎の漫画のような雰囲気の黒枠を感じ取れてしまうのはどうしたわけだ。
A先生には、青春時代をリピートするような人生を送っていただき、中年になってからの現代の『まんが道』を描いてもらいたいと思う。

タイムカプセル

2007年11月7日 読書
ISBN:4652086016 単行本 折原 一 理論社 2007/03 ¥1,470
折原一の『タイムカプセル』を読んだ。
中学卒業の10年後に、タイムカプセルをあけようという手紙が届く。
主人公は、タイムカプセルの企画に参加はしていたが、不慮の事故で、埋める当日も、卒業式も行くことができなかった。
で、どうも楽しいはずのタイムカプセルを開く行事に、何かいわくがありそうなのに気づく。
タイムカプセル、卒業式でいったい何があったのか?
これは面白かった。
著者の代表作の1つ『沈黙の教室』をほうふつとさせる楽しさ。
ページが扉になっていて、肝心なシーンで扉を開くとき、読者も一緒にページをめくる=扉をあける仕組みになっている面白さもあった。
また、タイムカプセルをあけるクライマックスでは、本が袋とじになっていて、読者もそれを開けて、真相を知るのである。
ただ、ヤングアダルト向けなせいもあって、折原一お得意の叙述トリックはソフトな感じ。つまり、わりと読者にも見抜きやすいものだった。
ネタバレするので、要注意。
それは、名前。
不破勇。
あとは言えねえ、言えねえ、もう言えねえ。
全体としてそれほど悲惨な事件ではなかった、という真相も、素晴らしい。
担任教師のなにげない一言を信じて、10年間もひきこもっていた少年の話は悲惨だけど。でも、その担任のひとことも、ちゃんと読者には「あれ、あの約束はどうなったんだろう」と思わせるような書きっぷりだった。
本書の面白さは、こういう勘違いや行き違いのトリックにもあるが、それ以外に、『沈黙の教室』と同様、暗闇の恐さを実感できるところにあった。
おそろしい曰く因縁や、スプラッターな場面なしで、ただ暗いだけの恐さを描いている。われわれは、ふだん、呪いだの怪物だのに会う機会はあまりない。でも、子どもの頃には確実にあった暗闇を怖がる心理だけは刷り込まれているはずだ。
本書では、かつて防空壕だった穴を中学生たちが夜に探検するシーンがあって、それがこわいのなんの。
探検隊のメンバーが、ほとんど何も見えない暗闇の中で、点呼をとる。

孝介が「1」と呼ぶと、2、3、4とつづき、最後に鶴巻が「5」と締めた。
ところが、その直後だった。「6」と誰かが叫んだのだ。しかも彼らのかなり後方だった。
闇の奥から肉の腐ったようなにおいが漂ってきた。
「6。ねえ、待ってよ」

恐いシーンだ!
僕は、中学生の話だから、常に一緒にいても数のうちに数えられていない、いじめられっこでも存在しているんじゃないか、とか推理していたが、さすがに、そんな安易な発想はしていなかった。
おや、この話、昨日までやってたゲームの「闇の探検隊」というネーミングがバッチリ決まっているじゃないか。
偶然の一致というものはおそろしい。
Video Game 任天堂 2007/09/13 ¥4,800
最近ずっとやってた「ポケモン不思議のダンジョン 闇の探検隊」なんとか終了。
ストーリーモード終わって、あとはコンプリートだけのゲームなのかと思ってたけど、エンドロールのあとにも、話が展開して、意外な面白さだった。
エンドロールに行くまでのストーリーは感動のストーリーで、タイムパラドックスゆえの結末に主人公は涙をおさえられず、ビッパの「どうしたんでゲスか」という台詞でエンドロールがはじまるのだ。
ビッパ、すごい!シメの言葉という大役をになった素晴らしいポケモンだ!
さて、このゲームでは、最初にいくつかの質問にこたえて、自分のキャラクターポケモンが決定する。その際に、性格診断みたいなものもセットになっていた。
僕は、ヒコザルになって、ちょっと可愛くないなあ、と思ったけど、診断結果が「あなたは芸術家です」だったので、せっかく芸術家だと言ってくれているんだから、ヒコザルでいいか、と妥協した。
組んだ探検隊の名前は「ウマゴヤシ探検隊」にした。
探検隊のメンバーは、最終的に、チコリータ、マナフィ、ポッチャマ、ビッパの可愛いもの4人組にした。
さて、ストーリーのほうは、「時が止まって、さあ、たいへん!」というもので、クライマックスではディアルガまで登場する。
チコリータごときでディアルガに勝てるのか!!??
ストーリーが終わってからは、パルキアも出て来た。
ビッパごときでパルキアに勝てるのか???
さらに、最終的な黒幕としてダークライまで出て来た。
ポッチャマごときでダークライに勝てるのか???????
これが、わりとあっさりと勝ててしまうのが、すごい!
あいかわらず、ビッパは馬鹿で言うことあんまり聞かないけど。
本来、このゲームは通信による楽しさが半分を占めているのだが、僕はどうも通信が苦手で、そういう部分は全部パスした。
自分がダンジョンの中で死んでしまったときや、どこかのだれかが死んでしまったときに、通信使って、救助する楽しさがあるはずだったが、そういうのはしなかった。
オンラインゲームも苦手でしないし、アーケードでの対戦などもしない。他人とのコミュニケーションについては、極端に臆病なのだ。
と、書いてみて、本当にそうなのか?と自分で自分に疑問がわいたが、今日のところは、そういうことにしておこう、と思った。
ISBN:4846004406 単行本 太田 正一 論創社 2006/11 ¥1,260
ケーブルテレビで香港映画「スカイ・オブ・ラブ」を見た。2003年。「恋空」ではない。
1981年の女性と2003年の男性が無線機でつながる。
映画は2人の時をこえたラブストーリーを描くわけではなく、それぞれの時代でのそれぞれの恋愛に、2人の対話が影響を及ぼす。
現代の男性は、過去すなわち愛情を信じられていた時代からのメッセージによって、愛にめざめる。
過去の女性は、逆に現代の男性によって夢を打ち砕かれてしまう。
どういうことかと言うと、現代の男性は、過去の女性が思いを寄せる人の息子であることが判明する。気になるのは、母親。つまり、あこがれのあの人は誰と結婚したのか、ということ。ここで2人が母子であったとわかればよかったのだが、なんと、好きなあの人は、自分の友人と結婚しくさって息子を作りやがっていたのだ!
落ち込む女性。
この女性は未来を知って絶望したまま映画が終わってしまう。
なにをいらんことをしとんねん!ケン・チュウ!
おのれがレトロな無線機みたいな趣味持ってたおかげで、1人の女性が失意の人生を送るはめになったじゃないか!全部おまえのせいだ!
なにがスカイ・オブ・ラブじゃ!
だがしかし、未来を知ってそれに唯々諾々と従ってしまう弱さが、彼女のだめなところだと思える。おちこんで引き気味の主人公(釈由美子似)よりも友人(千秋似)のほうがあっけらかんとしていてパワーもありそうで、確かに魅力的にみえたことだろう。
と、いうより、あこがれの男性が、まるで中国の健康なポスターに出てきそうな真面目タイプに見えるので、あんな男と夫婦になっても楽しくないんじゃないか、と思った。息子を見るかぎり、子育てにも失敗してそうだし。

さて、NHK教育の「天才てれび君MAX」内のドラマは「エリーの黒電話」
今やレトロで誰も使わない黒電話(線がつながっていない)に過去の男女から電話がかかってくる話。
スカイ・オブ・ラブか!

読んだ本はドストエフスキーの『おかしな人間の夢』。
ひとり雑誌『作家の日記』に発表された作品。
ドストエフスキーらしさが随所に見られ、また、19世紀ロシアの思想風土もかいまみえる。

幼い頃から自分が「おかしな人間」だと知って、くよくよしたり、他人に腹をたてていた男。ついには「この世のことはどこでもすべてどうでもいい」という確信にいたり、他人が気にならなくなる。
誰かが興奮して語りあっている場面で、彼はこういう。
「諸君、そんなこと、きみらには、どうでもいいことじゃないか」
みんなは彼を笑った。
上の発言は、今風に言えば「そんなの関係ねえ」なのだから、ギャグ以外のなにものでもない。笑われて当然。笑ってもらってありがとう、の世界なのだ。オッパッピ〜。
あまりにもなにもかもどうでもよくなった彼は、自殺しようとすら考える。
そのときだ。
棺桶に入れられたと思いきや、なにものかに拉致されて無限の宇宙空間にとびだす。
たどりついたのは、原罪に穢されていないもうひとつの地球。
そこは、まさに楽園。
だが、彼がこの世界に来たことで、楽園は堕ちてしまう。
嘘を覚え、嫉妬、残酷を生みはじめる。非難、羞恥、名誉、分裂、孤立、所有、悲哀。
「彼らは苦悶を渇望し、真理はもっぱら苦悶によってのみ得られるなどと言い出した」
「彼らが邪悪になったとき、彼らは兄弟愛とか人道とかを口にし、それらの観念を理解した」
「罪を犯すようになると、彼らは正義なるものを発明し、それを保ち続けるために、さまざまな掟をもうけた。そしてそれら掟=法律を保証するためにギロチンをつくったのである」
もうひとつの地球は、地球と同じ歴史を刻みはじめる。
「各人が自分の個性にかまけて、他人の個性を必死におとしめ過小評価しようと努め、そのことに生涯を費やすのだった」
そして奴隷制度が生まれ、義人があらわれ、賢者たちがうまれる。
しかし、その賢者たちがしたことは、なにかというと。
「自分らの理想が理解できない『叡智なき者ども』を一刻も早く殲滅しようとした」

悲しみにうちひしがれて、彼はめざめる。
彼は伝道しようと決意する。
「自らを愛するごとく他を愛せ」ということを。
最大の敵は「生の意識は生そのものより高尚であり、幸福の法則の知識は幸福そのものよりも崇高である」という意識だ!
彼は以前は「おかしな人間」と呼ばれていたが、今では「気狂い」と言われている。オッパッピ〜。

この作品には「空想的な物語」と副題がついている。
宇宙を飛んだり、もう一つの地球の歴史をたどったりするSF的設定ゆえのものだろうが、地上をはなれたイマジネーションの飛躍を楽しむような物語ではない。もっと地球にひきつけて、空想的社会主義に近い発想なんじゃないか、と思える。
「おかしな人間」は、この堕ちた地球の産物にとどまるが、「気狂い」に昇格した今は、地球外生物とみなされたに等しい。
空想的なのは、彼がみた夢のことではなく、彼の存在自体だったのだ。
湊町音楽祭で、appeal午後1時45分頃からだったかな?
1.好きやねん、大阪
2.ラブ&スマイル
3.スタート
4.サンシャイン
5.学園天国
1曲めは、アピール3人の紹介を盛り込んである。
アピールタオルの宣伝と、「アピース」広報活動も。
あっ、夜のからくりテレビ見るの忘れた!
海遊館のところで予選やってた歌自慢コーナー、はじまったのかな?

午後6時からはNHK-FMで「現代の音楽」
今年9月14日水戸芸術館コンサートホールでのルツェルン・フェスティバル・アカデミー2007から
ピエール・ブーレーズ作曲、ルネ・シャール作詞
「ル・マルトー・サン・メートル(持ち主のない槌)」
コントラルト/ヒラリー・サマーズ
フルート/サクラ・キンディニス
ビオラ/ミランダ・ズィラッフ
ギター/エマルエーレ・フォルニ
打楽器/フロリアン・コキール、ジョナサン・ヘプファー、マット・カンタースキー
指揮/ジャン・ドロワイエ
この音楽こそ、現代音楽らしい現代音楽と呼ぶにふさわしい。
通称「丸と3メートル」(今、考えた)(きっとみんなも似たようなこと考えたことあるよね)

テレビでやってたのを録画して、「ALWAYS 三丁目の夕日」見た。
昭和30年代というと、もろに僕のこども時代で、確かにかなり再現してはいるが、なぜかその頃の思い出はモノクローム(色をつけてくれ〜)。
カラーの映像だと、きれいすぎるような気がした。
最近はやりのノスタルジーものの代表作で、お涙ちょうだいのストーリー展開しやがって、ほんとに困る。こういうのを見て泣いてしまう自分ってまだまだ純粋なんじゃない?とか錯覚してしまう。いろいろひねくれたこと言ってても、こういうのに涙流しちゃうんだから、可愛いもんだ、とか自分で自分を慰めていないか?
そうともよ!僕は純粋さ!可愛いさ!開きなおりさ!居直りさ!逆ギレさ!
LITTLECAT CD VOXOV RECORDS 2007/04/18 ¥1,500
午前11時30分から東心斎橋FANJで「Girls Panic IDOL」
出演順に。

Yesss
1.おジャ魔女どれみナイショ
2.もってけセーラー服
3.ハッピーマテリアル
4.夏の扉
選曲はほぼオタクの理想に近い。
物販のときに、レイちゃんが「保山さん!」と呼んでくれてのにはびっくりした。名前覚えてるんだ!
そんなレイちゃんは11月5日が誕生日。
何もプレゼント持ってきてないな、と反省。
おまけに、物販で写真買おうと思って「あれと、これと」とチョイスしていたのに、人の多さと時間の無さで焦って買いそびれた。失礼な僕だ。
いろいろおしゃべりするのも、引っ込み思案な僕は、なかなか難しい。シャイな僕だ。

Four Leaf Clover
1.ダンス
2.エンプティワールド
3.オールマイトゥルーラブ
4.ダンス
5.color of season
お客さんに振付けのパートがある歌では、あまりそういうのに参加しない僕も、ついつい参加してしまう。たぶん、ステージからは照明の加減で最前列以外は見えていないと思うのだが、まあ、思いだけは伝わるだろう、と、思って。
カラーオブシーズンは、いちごっ娘時代からのレパートリーで、久々に聞けてうれしかった。バージョンはいちごっ娘時代とは変えていたが、あまりのうれしさで、涙が出そうになった。

メアリーエンジェル
1.会いたかった
2.リアリティー
3.ムーヴィンオン(新レパートリー)
4.めぐる恋の季節
5.エンジェルウィング
ライブハウスに小学生、というのは本来異質な取り合わせのはずだが、メアリーエンジェルは出てくるなり、一気に世界を作りあげてしまう。素晴らしい。

H@chi
1.ココロのチズ
2.ビリーブ
3.ボンボヤージュ
4レッツパーティ
5.スターウェイブ
ユキちゃんの誕生日祝いでケーキが出て来た!
レッツパーティはクリスマスバージョンで。
トークの面白さもこなれたもので、安心して見ていられる。

ペロペロキャンディーズ
1.ねぇ、わかんない?
2.キラキラ
3.ズッコケ男道
4.スマイル
5.パララ
H@chiは姉妹だけど、ペロペロキャンディーズは、このユニットを組むために集まった子たちだ。よくぞ喧嘩もせずに仲良くやってるものだ、と思ったりするが、わりとあっけらかんと喧嘩してそうなところもある。どっちにしても陰湿じゃない。
裏事情にはあんまり興味がないので、そういう部分はまったく見抜けない。
ペロキャンは、昨日のFM収録をうっかり見に行けなかったのが残念!
でも、前回のもっとペロキャンの後で、はからずも駅近くでばったり会ってしまい、ストーカー疑惑でも湧いていたら困るので、控えめに行動しておいたほうがういいのかも。誤解があると困るので書いておくと、僕はストーカーでもゲイでもないのだ。ストーカーほどの情熱があればすごいなあ、と感心したり、ホモには悩みがありそうだけど両刀使いなら可能性が増えていいなあ、と思ったりするけど。
どうでもいい話か。そうなのか。

観客席には元ミューズの満里奈や、元プリッツのマイちゃんの姿が見られた。
みんな、なんと可愛いことか。

午後3時からクラブジャングルでリトルキャットによる「DREAM DREAM DREAM!!!vol.2」
翻訳すると「夢じゃ、夢じゃ、夢なのじゃ〜!」か?
1.The flowering of my Dream
2.Open your heart/松田泰歩
3.R&Lover’sダンスナンバー
4.QUEEN/加藤沙織
5.ハズムリズム
6.そばかす/田頭沙希
7.I WANNA KNOW
8.why/小谷真未
9.未来を/BRYTHE
10.君にしか聞こえない/増井万帆
11.CHE.R.RY/Legato
12.竹井彩夏(2曲弾き語り)
13.夢へのトビラ
14.佐々木ほなみ(しあわせのひと粒、ビ−玉、ちいさな気持)
15.Precious your dream
ここで10分間の休憩。あとはバンド演奏になる。
16.パンクチュエーション(ラモーンズ、学園天国など。今日はドラムに助っ人が入った)
17.リトマスシフォン(レベッカ、カエラなど。ベースにパチロー先生)
18.MAD CATZ(ハードロック!)
19.Wait for a signal
年少組の「ハズムリズム」も楽しかったし、田頭沙希ちゃんの歌も魅せた。
増井万帆名義での歌もさすがだった。Legatoも大好きだ。
幕あいのトークも面白かった。
あと、今回最大の収穫だと感じたのは、パンクチュエーション。パンクをやっているのだが、お転婆パンクで、ネガティブなイメージはない。これは可愛かった。
かつては定期的に足を運んで、出演もしたクラブジャングルだが、久々に来たら、会場に入るのに靴を脱がなくていいようになっていた。いろんなところで、少しずつ変化しているんだ。

午後6時から、おたくの殿堂で「もっとペロキャン!ワンコインぷちライブ」
FANJでペロキャン通信を入手した人は無料だったが、開演ギリギリに来た僕には既に品切れ状態で、ペロキャン通信の割り当てはなかった。おまけに、この「もっとペロキャン」もリトルキャット終了後に直行したのだが、開演後に入場することになった。充実した1日も考えものだ。見逃した部分があるかもしれないが、見たところから。
1.スマイル
2.あんぶれら
3.ピーチ
撮影タイム3分
4.スカートひらり
5.ねぇ、わかんない?
衣装はおなじみのオレンジの衣装。
おた地下は、ライブをやるにはあまりいい環境ではないのだが、その「単なる箱」ぶりがかえって面白い。
ライブ終了後の物販タイムはいつものように人がいっぱいで、長蛇の列に並ぶ勇気がまたもや出なかった。
H@chi CD マジックアイランドレコード 2007/08/08 ¥1,200
大阪市立大学の銀杏祭。
午後2時からのタイムテーブルで、アイドルステージがあった。
出演順に。

MAI
去年も登場した池マイちゃん。(元ブラックベリーズ)
今回は2曲披露。

AREA
1.チャチャチャラブソング
2.アリア風に包まれて
3.恋に落ちずにいられない
の3曲。登場のときにも1曲歌いかけていたが、途中でトークにかわった。
マイクや音の調子が悪すぎて、出ばなをくじかれた、というかっこうだったのかもしれない。
フライヤーとか宇治のお菓子とか、いろいろお客さんに配るものもあったようだが、どちらも入手できなかった。どこで配っているのかもわからなかった。
全般に、何かAREAらしくなく、腰が引けていたようで、ちょっと残念。

メアリーエンジェル
1.あいたかった
2.リアリティー
3.ファーストステップ
4.めぐる恋の季節
5.エンジェルウィング
6.ビンゴ(with H@chi)
メアリーエンジェル最強。
マイクの線が邪魔でダンスが満足にできなかった部分はあるけど、ステージは素晴らしかった。見事なライブと、それに盛り上がるファン、そのファンを見て盛り上がる一般の学生、という構図が実現していた。

H@chi
1.レッツパーティ
2.ドリームスカイ
3.ココロノチズ
4.ビリーブ
5.ボンボヤージ
6.スターウェイブ
H@chiにとって初の学園祭ライブらしい。既に学園祭に出まくっているような錯覚をしていた。
メアリーエンジェルの後ではお姉さん格に見えるH@chiだが、まわりはそれより年上の大学生たちばかりなのだ。年齢の基準が自分の中でおかしくなってしまう。

H@chiの後もステージではライブがあったが、寒くなってきたので、帰る。
去年もそういえば寒かった。
来しなにカイロを買おうかどうしようか迷ったけど、買っておいてもよかったかも。(カイロ使うなら「キリダンボの湯」とこだわっていたのがいけなかったのかもしれない)
ISBN:4334751075 文庫 関口 英子 光文社 2006/09/07 ¥560
ジャンニ・ロダーリの『猫とともに去りぬ』を読んだ。
イタリアの奇想短編集。流行りのペットエッセイではない。
原書では26の短編が収められているが、諸事情により、本書は16編が訳出されている。
うち、言葉遊びが過ぎて翻訳不可能だった作品も、いつか翻訳してほしい。
この本は、今年一番面白かった本と断言してもいい。
噂の光文社古典新訳文庫からの1冊だが、今まで読んでいなかった不明を恥じるばかりだ。
古典といっても1973年に出版された本だけど。
各短編について簡単なメモ。ネタバレしているので、まずはご一読を。

1.猫とともに去りぬ

定年退職後、居場所がなくなって、猫になって過ごす男

2.社長と会計係 あるいは 自動車とバイオリンと路面電車

魔法のバックミラーがこたえる。「村でいちばん美しい自動車はジョヴァンニ会計係のです」
嫉妬したマンブレッティ氏(栓抜き部品工場の社長)は会計係の車を壊したり、盗んだりする。会計係の車は特に豪華でもない安い車で、社長によって破壊されるたびに、乗り換えた車はついに馬になったり路面電車になったりするが、車が何にかわろうと、バックミラーのこたえは変わらない。

3.チヴィタヴェッキアの郵便配達人

重い郵便物を平気で運ぶ配達人は、その力をみこまれて、重量挙げの大会に出ることになった。
だが、大会前日、あんまりワクワクして気がせいて寝たために、目覚めたら前日に逆戻りしていた。これはいかん、と寝なおすと、さらに過去へ。
ついには数千年前に目覚めて、得意の馬鹿力でピラミッドを1人で組み立てたりする。

4.ヴェネツィアを救え あるいは 魚になるのがいちばんだ

遠からずヴェネツィアは水没してしまう、という危機に対処するため、魚になって暮らす家族。

5.恋するバイカー

オートバイに恋した青年。オートバイのいいなりに、改造を重ねるうちに、経費がかさんで、青年は寝る間も惜しんで働き続ける。
やっと恋の迷妄から目覚めた青年が、次に恋して結婚を申し込んだのは、洗濯機だった。

6.ピアノ・ビルと消えたかかし

カウボーイの武器は拳銃ではなくピアノ。
決闘場面でもバッハを弾いて、敵を倒すのだ。
なお、この作品では、かかし泥棒事件の謎も面白い。犯人の女性は、ストーカーの保安官から逃げる途上で、着替えのためにかかしを盗んでいたのだ。

7.ガリバルディ橋の釣り人

釣りの呪文を教えてもらったが、呪文に出てくる名前の当人でないと効力はないと聞く。
自分の名前を呪文どおりのものにしようと、タイムマシンを使って過去に遡る男。

8.箱入りの世界

空き瓶、空き缶が車の後をついて走っている。捨てられたペットみたいに、自宅に帰ろうとしているのだ。
家をビンやカンにのっとられる人間たち。
宇宙には、地球を入れるための箱まで出現した。

9.ヴィーナスグリーンの瞳のミス・スペースユニバース

宇宙のシンデレラ

10.お喋り人形

おしゃべりする人形が好き放題に暴れる。

11.ヴェネツィアの謎 あるいは ハトがオレンジジュースを嫌いなわけ

餌に群がるハトで、広告のハト文字を作ろうとする試み。

12.マンブレッティ社長ご自慢の庭

林檎に「明日までになれ!」とか花に「明日までに咲け!」と命令し、ムチで叩いて実行させようとする社長。
植物たちはついに社長に反逆する。

13.カルちゃん、カルロ、カルちゃん あるいは 赤ん坊の悪い癖を矯正するには

生まれながらに超能力を駆使できる天才の赤ん坊。
それを悪い癖として矯正する大人たち。

14.ピサの斜塔をめぐるおかしな出来事

固形スープの懸賞品として、ピサの斜塔を持ち帰ろうとする宇宙人。

15.ベファーナ論

魔女ベファーナはエピファニア(公現祭。1月6日)の前夜子どもたちに贈物を届けてくれる。
ベファーナをほうき、ずだ袋、おんぼろ靴の3つの特徴から論じる。
ほうき:魔女界でも「ミニほうき」や「ロングほうき」などの流行がある。
ずだ袋:袋を取り違えて配ってしまったが、世界中のこどもたちが欲しがっているものにそう違いはなかった。
おんぼろ靴:こどもたちが、ベファーナのために、靴を大量に集めてプレゼントした。その後の顛末は2つにわかれる。貧しい婦人たちに靴を配ったのか、靴屋を開いて大儲けしたのか。
追記:ベファーナは悪い子にはプレゼントを持ってこない、ということを書き忘れている、と研究家が指摘した。論文の作者は「こどもはみんないい子だ」と研究家を脅す。

16.三人の女神が紡ぐのは、誰の糸?

運命の三女神は人間の運命の糸を紡いでいる。ひとりに1本ずつある運命の糸。紡ぎ終わったら、その人の寿命も尽きるのだ。
アドメトス王の糸があと3日で紡ぎ終わると知ったアポロンは、それを地上におりて王に教えた。王は自分の代わりに死んでくれる人物を調達してきた。
みんなに讃えられながら代わりに死ぬ男。
さて、そんなことと知らないヘラクレスが、代理で死んだ男の魂を奪いにきた死神を退治してしまった。生き返る代理人。
運命の三女神は糸を紡ぎつづける。紡ぎ終わる糸は、誰の糸?

アリストス

2007年10月31日 読書
ISBN:4938165074 単行本 小笠原 豊樹 パピルス 1992/06 ¥3,873
ジョン・ファウルズの『アリストス』を読んだ。
『コレクター』と『魔術師』の間に書かれた哲学ノート。
以下、目次。
第1章 全般的状況
難破と筏
偶然の必然性
神を演じる
有限と無限
「神」
物質の偶発性

無神論

第2章 人間の不満

これしかないということ
魂にまつわる神話
孤立
不安
偶然
羨み

第3章 ネモ
政治的ネモ
ネモの必要性

第4章 補償の相対性
幸福と羨み

第5章 善を行うこと
「無償の行為」
相対的自由の意味
善を演じる能力の欠如
逆支援
善は悪に等しい
なぜ善はこうも少ないのか

第6章 緊張は人間世界の本性
「私」の対極
緊張
緊張のメカニズム
緊張を操作する
転位
国際的緊張
究極の緊張

第7章 他の哲学
キリスト教
ラマ教
人文主義
社会主義
ファシズム
実存主義

第8章 金という憑き物
富と貧困
快楽の大量複製
オートメーションの真空
余暇の義務
数がもたらす死
結論

第9章 新しい教育
世界共通語
更に高度な三つの教育目的
国家主義
芸術と科学
ゲーム
有罪性
成人期
アダムとイブ
性の自由
内面的教育
「今」の重要性
内面を知ること
通観的教育

第10章 芸術の重要性
時と芸術
芸術家とその芸術
芸術と社会
芸術家と非芸術家
天才と職人
様式は人間ではない
詩と人類

第11章 個人の中のアリストス

この中で気になるのは「ネモ」だろう。
「ネモ」とは何かといえば、「何者でもない状況」である。

「ネモとは、人間が感じる彼自身の無用と儚さ、相対性と依存性、検証不可能な無である」

誰しも「何者でもない人」にはなりたくない。「ネモ」が問題になるのは、こんな場合だ。

「愛されたい、さもなければ憎まれたい、と私たちはみな思う。これは私たちが記憶されるだろうこと『存在しなかった』のではないことのしるしである。この理由から、愛を生み出す能力を持たない多くの者は、憎しみを生み出してきた」

ネモはまた、政治においては市民感覚の萎縮、無力感としてあらわれる。

「ほんの数十人が行動し、無力な数百万人はぼんやり立ちつくす」

ジョン・ファウルズはこの本をヘラクレイトスに触発されて、その思想をアレンジすることで、現代の思想として成立させた。
アリストスとは、独自の判断、内的な知恵や知識の追求をする「善き人」という意味で、ヘラクレイトスは「1人のアリストスは他の1万人に匹敵する」と言っている。
また、「多数は、自分たちに最も関わりの深いことに背を向ける」
「多数は、いかに耳を傾けるかを知らず、いかに自ら語るかも知らない」
「多数は、毎日の出来事を誤って受け取る。彼らは物事について聞きかじり、それだけで物事を知ったと思いこむ」
などの言葉がある。多数に巻き込まれることなく、自分でちゃんと考えろ、ということ。
ファウルズの本書でも、この一種のエリート主義とも呼べそうな考えは如実にあらわれている。マスコミに踊らされているわれわれも心しないといけない。
本書で興味深かった部分を引用してみると。

「一つ一つの時点において、すべての生は平行に並んでいる。幸福の尺度で測るなら、進化は垂直ではなく水平である」(補償の相対性)

「何が悪かというなら、それは個人的幸福ではなく、不当な社会的特権から発生する特殊な個人的特権である。(中略)追放された者らは単に果樹園の林檎を羨むのではない。それ以上に、彼らは果樹園に入る権利を羨む。彼らが排他的なクラブの会員になりたがるのは、クラブがさまざまな便宜を提供するからではなく、それが排他的だからである」(補償の相対性)

「近い未来に私たちが直面する脅威は、教科内容の伝達において最も能率的な教師がすなわち良い教師なのだと、私たち自身が機械論的に信じ込んでしまうことなのである。もしそんなふうに信じるなら、私たちはコンピューターの暴虐に、すなわち、世界共通であるがゆえに歴史上最悪のかたちの国家主義に、打ちひしがれてしまうだろう」(新しい教育)

「すべての科学、すべての芸術は象徴化であり、すべての象徴化は時からの逃亡の試みである。(中略)だが、科学はすべての時に共通する出来事に関して真実であろうとし、芸術はすべての時に共通する出来事それ自体であろうとする」(新しい教育)

「世間では、特にアメリカでは、芸術を一種の擬似技術に変える試みがすでに見られる。『創作講座』というおぞましい名前をつけられた場では、評価を得る技術さえ学べればそれで充分という考えがはびこり、今や明らかな擬似技術の空洞を特徴とする作家や画家の群が増殖している」(新しい教育)

「『ボヘミアン』芸術家たちや、呪われた詩人たちの生活は、大衆には、それらの人たちの作品よりも面白い。作品を創ることは到底できないとしても、生活なら真似できそうだから」(芸術の重要性)

「詩にとって不吉なのは、第二次大戦後、新たな種類の知識人が多数出現した事実である。彼の主な関心事は、美術、映画、写真、服装、室内装飾、等々である。彼の世界は、色、形、素材、図柄、装置、仕掛などに束縛されている。そしてさまざまな席事や事物の、相応に知的な(倫理的あるいは社会的、政治的な)意味については、彼は最小限の関心しか示さない。このような人びとは実は知識人ではなく、いうならば、視覚人である(芸術の重要性)

本書は1964年に出版されたものだが、現代を予見した書でもあったように思えてきた。
なお、この本、哲学的断章か、エッセイなのか、と思って読みはじめたが、かなり硬い本で、読みごたえ充分だった。書いてあることはちっとも難解じゃないんだけど。

ピサ詩篇

2007年10月30日 読書
ISBN:4622070995 単行本 新倉 俊一 みすず書房 2004/07 ¥5,460
今日は、エズラ・パウンドの誕生日。
と、いうわけで、エズラ・パウンドの『ピサ詩篇』を読んだ。
論語、神曲、オデュッセイアを中心に、エズラ・パウンドが今までに接して来た文学、美術、音楽、謡曲、記憶している歴史上のエピソード、同僚との思い出、町の記憶、収容所内での囚人の会話などなどが、意識の流れのままに書き付けられている。
いわば、エズラ・パウンドの財産目録みたいなものだ。
解説者は、詩のなかによく出てくる「沿岸航海」という言葉を援用して、まさに航海するように意識の風景を描写していったようなことを言っていた。
今なら、さしずめ脳内へのサイコダイビングとでも言ったところか(これももう古い?)。
エズラ・パウンドでなく、これが日本橋のオタクであれば、論語や神曲のかわりに、アニメ、ゲーム、ライトノベル、バラエティ番組、漫画などが思い付くままに大量に吐き出されるのだろう。
これらガジェットに目を晦まされることなく、全体に、あるいはその裏にある、作者ならではの傾向や引力を感じ取ってこそ、作品の魅力が感得できるのだろう。
物をぶちまけることは誰にでもできる。でも、ぶちまけ方にはセンスがあるのだ。

つづいて、城戸朱理編訳による『エズラ・パウンド長詩集成』を読んだ。
ペリゴール近郊
セクストゥス・プロペルティウスへの讃歌
ヒュー・セルウィン・モーバリイ−交友と人生
の3編が収められている。
「ペリゴール近郊」は先日読んだ『大祓』に収録されていた詩。翻訳は違う。
遠藤朋之の詳細な註解によると「ヘンリー2世とリチャード獅子心王、ヘンリー王子との間の仲違いにおいてベルトランドボルンが担った役割を、詩によって明らかにしようとした試み」とある。
戦いと愛の謎をはらんで、中世世界が展開される。
「セクストゥス・プロペルティウスへの讃歌」は紀元前1世紀のラテン文学が生んだ、ウェルギリウス、ホラティウス、オウィディウスと並び称されるプロペルティウスの翻案。
恋愛詩だ。
「ヒュー・セルウィン・モーバリイ−交友と人生」は20世紀が舞台。
城戸朱理の解説によると、「パウンド=モーバリイの同時代との齟齬」「第一次世界大戦への批判」「ヴィクトリア朝から同時代までの文学者の肖像」が描かれている。
エズラ・パウンドについては、『詩篇』全部を読み通してからでないと、何を言っても中途半端になってしまう気がする。だからといって、原文を読みこなす能力は僕にはないのだ。
こんなに語学力に乏しい僕が、かつては雑誌で翻訳をしていたなんて、おそろしい話だ。
なんば BEARSで「HELP!病み上がりバンザイ!」ブルマVS水着
婀生守て乃
丼野M美
野中ひゆ
きら
メル
aco
満腹ミキティ
荻野アサミ
石原啓子
司会:保山宗明玉、草壁コウジ、ぶっちょカシワギ
オ−プニングで、出演者に辞世の句を発表してもらった。
こういう大喜利みたいなものは、得手不得手があるので、どうしてもいいのが思い付かない人のために、僕もいくつか考えておいた。箸にも棒にもかからないような辞世の句を30ほどストックしておいたのだが、さすがにアイドルちゃんたちはすごかった。全員、自分で考えて辞世の句を発表し、それがちゃんと自分の個性をアピールしているのである。表現者の強さ、凄みを感じた。
また、ライブ開演前に、イエスマンに漫才をしてもらい、会場を暖めてもらった。これはありがたかった。
自分が主催、企画側にまわっているイベントは、ゆっくりとライブ本番を楽しめないきらいがあるのだが、リハーサルをただで見れる楽しみもまたある。今回のHELP!は比較的ちゃんとライブを見れた方だが、心の中では自画自賛の嵐だった。
次のHELP!は、おそらく2月。
自分のことながら、今から楽しみでしかたがない。
京阪香里園で、香里音楽フェスティバル。あちこちでライブが同時多発に行われている。
僕のお目当ての会場は駐車場で、到着したのが午後1時、寝屋川市立第6中学校の吹奏楽部演奏から見ることができた。
吹奏楽部は女子が多かった。長らく女子校で勤務していた僕にとっては、非常に懐かしい演奏だった。
中学の吹奏楽部独特のムードは、演奏技術の上手下手とは無関係の魅力があるのだ。
スウィングガールズの影響もあるのか、ジャズスタンダードや、大塚愛、オレンジレンジの曲なども演奏していた。
その直前にはタイムスケジュールではダンスがあったそうで、もうちょっと早起きして見に来ればよかった、と思った。
さて、今回のお目当てはFour Leaf Clover。
ダンスナンバー中心で、エンプティワールドやオールマイトゥルーラブといったお馴染みの曲もやってくれた。
屋外のイベントにはうってつけの天候に恵まれて、また、同じ年頃の少女とは思えない吹奏楽部とFLCの対比も見ていて愉快だった。

京都の三条に行き、「ひと・アート・まち 京都」を楽しんだ。
前から一度入ってみたかった、うずらギャラリーでは、伊藤愛子と佐久間新による影のアニメーションが上映されていた。
窓やガラス扉などをスクリーンにして、2人の人影が映し出される。
これが、やっている内容はただ遊んでいるだけなのに、面白い。影を見る、というのはつまり、スクリーンになっている窓の向こうでは誰かが実際にいて、何かをしている感をもたらしてくれるのだ。映像なのに、半分ライブのような不思議な感覚。
同時代ギャラリーでも、エイブル・アート・リンク(障害者とアーチストのコラボ)の作品が展示されており、堺町画廊でも障害者のアート入賞作品が展示してあった。
どれも一見の価値ありの面白いもので、三条近辺の散策もあわせて、楽しい昼下がりを過ごした。
また、新風館でカンボジアの小児たちの写真展覧会もあった。
若い芸大生たちが、自分なりの表現に汲々としているのをよそ目に、表現方法ではなく、表現する内容で勝負する作品を多数見た、という印象だ。
ただ、こういう催しや作品ばかりだと、自分がまるで善人であるかのように錯覚してしまうのが難点だ。
さて、三条に来た目的は、京都文化博物館前のステージでのappealライブ。
appealはテレビなどでも活躍中の女の子3人組。
appealは最近はコミュニケーションアイドル(=コミュドル)と称している。そんなわけで、カラフルなだけの僕みたいな人間にも声をかけてくれて、ありがたい。
昼からはappealによる紙芝居(紙オペラ?)もあったりしたそうだ。それも見たかった。
appealのセットリストは次のとおり。
1.好きやねん、大阪
2.キャンディーズメドレー
3.サンシャイン(オリジナル)
ライブ終了後、特撮ヒーローショー的寸劇もあった。
ステージを見るには、道路上からも見れたが、靴を脱いで桟敷に坐って見ることもできた。
僕は当然、靴(千円そこそこの文化屋雑貨店のトランプ柄の靴)を脱いで、あがった。
意外と、そうやってあがって見る人が少なくて、特撮ヒーロー劇になったときに、悪者がお客さんを威嚇する段で、僕をこわごわ脅してきたのが面白かった。

難波ROCKETSに戻り、「ビッキーホリデイ」。
午後5時半から開演していたが、到着したときには既にいくつかのバンドは演奏を終えていた。
ちゃんと見ることができたのは、
東京ピーチ、ぶどう÷グレープ、トロピカル大臣、A.C.E.の4つ。
ミンカパノピカのエイジ君がBGMで音楽をかけていた。
多くの友人たちにも会えた。
昨日、アルケミーの秘蔵映像で見たのとは、明らかに違う流れの音楽がそこにはあった。
可愛いのだ。
今の僕には、ぴったりである。
信長書店ではラストの「もっとペロキャンワンコインぷちライブ」
ハロウィン間近ということで、メンバーの衣装は「仮装」がテーマだった。
あゆ(アーミー)、あかり(ホワイトピーチ)、カナ(チャイナ)、あすぴ(魔女)
軍人と歌手と中国人と魔女。バラバラなようでいて、1人の人間がこの4つを全部こなすこともできる。中国人の歌手が軍隊に入った。その正体は魔女だった。無理のある設定だ。
1.スマイル
2.キラキラ
3.ギャグ100(あかり、かな)
ここで、物真似コーナー
あゆ(メンバー)、カナ(あすぴ、ギバちゃん)、あかり(グインビー)、あすぴ(うちの犬)
物真似の対象になにを選ぶのかにも個性が出るなあ。
撮影タイムは3分。僕は常に肉眼派。かつて仕事で写真を撮りすぎた反動が出ているんだろうか。以前はカメラマンだったと言っても、今では誰も信じてくれない。
4.あんぶれら
5.ねぇ、わかんない?
ここで、アンコール!
大阪LOVERSをあゆがソロで歌った。
北海道から通っていたあゆが、大阪に引っ越してきたのを祝ってのアンコールと選曲だ。
さて、いつも物販タイムは、長蛇の列ができてしまい、僕はおそれをなして、並べない。
メンバーと楽しい会話をするにも、どうも緊張してしまう。

夜から扇町公園でPLuS+のイベント。
昼からずっとステージやブースが出ていたが、ラストのほうだけ見に行くことにした。
世界各国のエイズポスターが展示してあったりした。
ちょうど行ったら、ステージでは、姉様キングスに間に合った。
芸者姿の男女ペアによる音曲漫才。トンコ節を「あねきん、あねきん」に置き換えて、HIV関連のネタをからめていた。このあたり、落語家さんなので、芸は安心して見ていられる。
そして、ラストはドラァグクイーンたちのステージ。
ブリトニーも、ドラァグクイーンくらいリップシンクが達者であれば、口パクだからといって叩かれることもないのに。
シモーヌ深雪の姿は見つけられなかったが、お客さんとして、きーさんに会った。
http://www.mash-osaka.com/plus/
ところで、この扇町のイベントに行くのに日本橋駅に向かって急いでいたら、前をどこかで見かけた少女が歩いていた。
ペロペロキャンディーズの帰路とかちあったのだ。
いかん、ふだんメンバーとあまり会話もしていないのだから、これじゃストーカーだ。
あわてて道路を向こう側に渡って、自動販売機でコーヒー買ったり、遠回りしたのだが、結局、日本橋駅近くでまた、かちあってしまった。
僕は断じてストーカーじゃない!ゲイイベント行くために急いでいた男なのだ!

扇町のイベントもフィナーレで風船が空に吸い込まれていった後、アメリカ村に戻って、アルケミーで秘蔵映像上映イベントに行った。
非常階段のJOJO広重氏によるナビゲーションで、関西の20年くらい前のロックシーンが映像で紹介された。
これは面白かった。
花園町にあったエッグプラントを中心に、当時の僕はライブを見に行っていた。
僕がライブイベントを企画したり、出演したりしたライブハウスは、よくつぶれていて、これはライブハウスの末期症状として、保山宗明玉という病気があらわれるんじゃないか、とすら考えていた。唯一の例外は、BEARSである。
当時よく通って、または出たり企画したりしていたライブハウスといううと、宗右衛門町のスタジオワン(創造道場)、寺田町のスタジオあひる、日本橋のアウトクラブなどである。
映像では、今紹介しても「ああ、あの人は昔、こんなことをしていたんだ」とわかる人のものが多かった。歴史の闇に飲み込まれてしまったバンドも多数あるので、それらの映像もまた見てみたいなあ、と思った。見るにたえないとしても、それはそれで、きっと当時からそういう要素が多少あったはずなので、大丈夫。
ISBN:4875719914 単行本 笠井 勝子 開文社出版 2007/06 ¥2,100
『不思議の国 ルイス・キャロルのロシア旅行記』を読んだ。
『不思議の国のアリス』出版の1年半後、ルイス・キャロルはロシア旅行に行った。彼にとっては初の外国で、オックスフォードのクライスト・チャ−チ学寮出身の先輩ヘンリー・パリー・リドゥンのお誘いで、急遽決まったものだ。
そのときに書かれた旅行日記が出版された。
出版の予定があったわけではないが、後で人に読ませるために書かれたもので、文章のそこかしこにルイス・キャロル独特のユーモアが含まれている。
行き先は主に教会や美術館。
たとえば、こんな感じの日記。

ポツダムで、ベルリン建築の2原則を悟るくだり。
まず「屋上には都合のよい所があればどこにでも、男の像を立てる。片足で立っているのがいちばんよい」
2つめは「大きな男が動物を『殺しているところ』『殺そうとしているところ』『殺し終わったところ』を刻んだ像を置く。その動物に刺さった槍先は多ければ多いほどよい」
ルイスキャロルはこれを「動物殺戮方針」と呼び、町が化石化した屠殺場に見える、とまで言っている。

ベルリンで見かけた子供の遊び
「子どもたちは大きな犬が寝そべっているのを見つけて、すぐに犬の回りに踊りの輪を作り、そうして犬に歌を歌ってやった」
「犬はそれまでにみたこともない親切ぶりに、はじめはすっかりまごついていたが、そのうちにこれは我慢するほどのものでもないとわかって、逃げ出した」

「ケーニッヒスベルクで、商店のうちの半分が置いているいちばん売れているらしいものは、手袋と花火だ。それでいて手袋をしないで外出している紳士をずいぶんと見かけた。ここではたぶん手袋というものは花火をするときに手を保護するために使うのだろう」

ペテルブルグでピョートル大帝の乗馬姿の像を見たとき
「もしこれがベルリンなら、ピョートル大帝はまちがいなく怪物を殺しにかかっているところだ。しかしここペテルブルグはそのようなものに興味はない。ここには動物殺戮主義は見あたらない」
しつこく繰り返される動物殺戮主義についての表現。

モスクワの聖ワシーリー聖堂で
「外もそうだが、内部も奇妙な、怪奇と言ってもよい教会で、ガイドは今までに見たこともないほど実に程度の低い男だ。独自の理屈を持っていて、見学する者は時速4マイルの速さで歩くものだと決めている」

ロシア正教の結婚式を見て
「結婚式のなかでは結婚したふたりに冠をかぶせる場面があり、おかしいというか奇妙なものだった」
「新郎は普通のイヴニング・スーツを着て、王様のように冠をかぶり、手にはろうそくを持ち、惨めな諦めの表情である。これほど滑稽に見えなければ気の毒に思ったことだろう」

預けておいた外套を出してもらうときに、言葉が通じず、あげくの果にイラストを描いてやっと通じた際に
「象形文字のことばは他の方法が失敗に帰したところでも通用する。ペテルブルグへの帰途には、われわれふたりの文明のレベルも所詮は古代ニネベのあたりまで落ちぶれてしまったという自覚に打ち拉がれていたのである」

ギーセンで朝食を注文するときの会話
「はい、コーヒーですね。わかりました。それと卵。卵にはハムを付けますか?わかりました」
「ブロイルにしてもらいたい」
「ボイルですね?」
「いや、ボイルではない。ブロイルだ」
「はいはい、ハムですね」
「そう、ハムだ。で、どういう調理なんだね?」
「はいはい、どういう調理」

教会や美術館、博物館のレポートにまじって、こういう身辺のエッセイ風感想が織り込まれている。
昨日読んだバロウズの南米とは天と地の違いを感じる。
注釈もかなり丁寧で、とても読みやすく、面白い本だった。
日記中に出てくる絵画を図版として使用していたりする。
タイトルも作者も表記のない絵画を特定して載せていたりするのも、ありがたい。
(イヴァン・アイヴァゾヴスキーの「恐怖の波」)
また、さりげなく、ルイス・キャロルがロシアで子どもの写真を買い求めようとするくだりもあって、いかにもルイス・キャロルっぽい。

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