桑田二郎(元は次郎)の自伝エッセイ。
13才で単行本を出版した天才漫画家の自殺願望と拳銃不法所持に代表される荒れた半生。
自殺未遂が2回あるけど、拳銃は使わず、どちらもナイフを胸にいきなりグサッ!
ハゲシイ!
13才で単行本を出版した天才漫画家の自殺願望と拳銃不法所持に代表される荒れた半生。
自殺未遂が2回あるけど、拳銃は使わず、どちらもナイフを胸にいきなりグサッ!
ハゲシイ!
少年探偵ロビンの冒険
2008年5月19日 読書クロフツはオタクに共鳴するところが大きいのかもしれないな。
この小説では、少年が足跡を石膏でとったり、そういう少年科学っぽい描写が丹念に描かれている。ましてや、鉄道がらみの描写の詳しさったら、たぶんジュブナイル一じゃないか。
この小説では、少年が足跡を石膏でとったり、そういう少年科学っぽい描写が丹念に描かれている。ましてや、鉄道がらみの描写の詳しさったら、たぶんジュブナイル一じゃないか。
ウィッチフォード毒殺事件
2008年5月15日 読書アントニイ・バークリーの『ウィッチフォード毒殺事件』を読んだ。
今で言えば、和歌山毒カレー事件を小説にして、別の真相を提示する、みたいな物語。
疑わしきは罰せず、という言葉がイギリスでもなかなか実行できていないことが書かれていた。
証拠も知らず、有罪の判決も出ていない人物を犯人扱いする民衆を、この小説では「暴徒」と称している。まったくその通り。
さらに、真相があばかれた後の大騒ぎを「新聞には、笑止千万な人々による、ヒステリックな投書が山と掲載されるだろう」と描写している。まったくその通り。最近、ヤフーニュースに素人のコメントがつくようになった。そのコメント読んでいると、今の日本に絶望してしまうな。
ところで、本書では、ロジャー・シェリンガムが、お転婆少女にほのかなロリ心をくすぐられるシーンが出てくる。これが一番のみどころなのかもしれない。
今で言えば、和歌山毒カレー事件を小説にして、別の真相を提示する、みたいな物語。
疑わしきは罰せず、という言葉がイギリスでもなかなか実行できていないことが書かれていた。
証拠も知らず、有罪の判決も出ていない人物を犯人扱いする民衆を、この小説では「暴徒」と称している。まったくその通り。
さらに、真相があばかれた後の大騒ぎを「新聞には、笑止千万な人々による、ヒステリックな投書が山と掲載されるだろう」と描写している。まったくその通り。最近、ヤフーニュースに素人のコメントがつくようになった。そのコメント読んでいると、今の日本に絶望してしまうな。
ところで、本書では、ロジャー・シェリンガムが、お転婆少女にほのかなロリ心をくすぐられるシーンが出てくる。これが一番のみどころなのかもしれない。
『神様ゲーム』を読んだ。
小学生の話なのに、平気で同級生が残虐に死んでしまうし、事の真相も性倒錯。
ジュブナイルとは思えない。
きっと、作者は子供が大嫌いなのだ。
でも、推理抜きで真相を知っている「神様」の存在は、面白い。面白いだけじゃなくて、書く方にとっても相当便利そうだ。
詳しく書いておきたいけど、力が湧かない。
小学生の話なのに、平気で同級生が残虐に死んでしまうし、事の真相も性倒錯。
ジュブナイルとは思えない。
きっと、作者は子供が大嫌いなのだ。
でも、推理抜きで真相を知っている「神様」の存在は、面白い。面白いだけじゃなくて、書く方にとっても相当便利そうだ。
詳しく書いておきたいけど、力が湧かない。
ポール・アルテの処女作『第四の扉』を読んだ。
降霊術に密室殺人、同時刻に別の場所で目撃される男、雪の足跡。おまけに読者への挑戦めいたもの、さらにこれでもかのどんでん返し。
こりゃ、本格推理ファンが熱狂したのも当然だ!
降霊術に密室殺人、同時刻に別の場所で目撃される男、雪の足跡。おまけに読者への挑戦めいたもの、さらにこれでもかのどんでん返し。
こりゃ、本格推理ファンが熱狂したのも当然だ!
『その死者の名は』を読んだ。
ミステリー要素がどうこう、と言うより、探偵役をつとめる2人の描写が面白くて、ぐいぐい読ませる。
詳しくは後日、
と、ずっと日記さぼってるけど、いつか詳しく書く日が来るのだろうか。
ミステリー要素がどうこう、と言うより、探偵役をつとめる2人の描写が面白くて、ぐいぐい読ませる。
詳しくは後日、
と、ずっと日記さぼってるけど、いつか詳しく書く日が来るのだろうか。
第三の銃弾(完全版)
2008年5月8日 読書カーの大ファンなのだが、ときどき、読んでいて、「どこが面白いんだろう」と疑問を持つことがある。
名作なら問題ないが、必ずしも傑作でない作品にもなぜか愛着が湧いてしまう、カーは不思議な作家なのだ。
この『第三の銃弾(完全版)』は、安心して読める、傑作。
今回、読んでみて、カーの魅力はその語り口、盛り上げ方のうまさにある、と感じた。
詳しくは後日。
名作なら問題ないが、必ずしも傑作でない作品にもなぜか愛着が湧いてしまう、カーは不思議な作家なのだ。
この『第三の銃弾(完全版)』は、安心して読める、傑作。
今回、読んでみて、カーの魅力はその語り口、盛り上げ方のうまさにある、と感じた。
詳しくは後日。
レイトン・コートの謎
2008年5月7日 読書アントニイ・バークリーの第1作。
好奇心から探偵に乗り出すシェリンガムの推理は、失敗続き。
犯人を追い詰めたかと思ったら、牛だった、とか。
後日詳しく。
好奇心から探偵に乗り出すシェリンガムの推理は、失敗続き。
犯人を追い詰めたかと思ったら、牛だった、とか。
後日詳しく。
頭蓋骨のマントラ(上)(下)
2008年4月30日 読書
田中哲弥の『大久保町の決闘』を読んだ。
兵庫県明石市大久保町は、ガンマンの町である。
そんな馬鹿な話があってたまるか、と真に受けなかった高校生が、西部劇の世界に巻き込まれる。
ガンマンの実力なんてない、と言い張るのに、スルスルと試練をクリアして、いっぱしのガンマン扱いされてしまうのだ。
いやー、これは笑った。
飛んでくる銃弾をひょいひょいよけてしまう能力もとぼけているし、方向音痴で銃撃戦の真只中に迷いこむのも面白い。
文体に既にどことなく可笑しさを含んでいる。
これは一朝一夕で身に付くものではない。
「その表現、いただき!」と思う文章もあった。
著者の経歴を読んでみると、兵庫県生れで、関西学院大学大学院に進み、吉本興業の台本作家になっている。
お笑いのセンスは、関西バリバリだったのだ。
シンクロ率高し。
兵庫県明石市大久保町は、ガンマンの町である。
そんな馬鹿な話があってたまるか、と真に受けなかった高校生が、西部劇の世界に巻き込まれる。
ガンマンの実力なんてない、と言い張るのに、スルスルと試練をクリアして、いっぱしのガンマン扱いされてしまうのだ。
いやー、これは笑った。
飛んでくる銃弾をひょいひょいよけてしまう能力もとぼけているし、方向音痴で銃撃戦の真只中に迷いこむのも面白い。
文体に既にどことなく可笑しさを含んでいる。
これは一朝一夕で身に付くものではない。
「その表現、いただき!」と思う文章もあった。
著者の経歴を読んでみると、兵庫県生れで、関西学院大学大学院に進み、吉本興業の台本作家になっている。
お笑いのセンスは、関西バリバリだったのだ。
シンクロ率高し。
『悪霊』神になりたかった男
2008年4月22日 読書
亀山郁夫の『「悪霊」神になりたかった男』を読んだ。
ドストエフスキーの『悪霊』の「スタヴローギンの告白」をテクストにして、神の不在について考察する。
テクストの「告白」では、スタヴローギンが少女マトリョーシャを陵辱し、その後冷たい仕打ちをして、自殺に追い込む経過が語られる。
今まさに首を吊りに納屋に駆け込むマトリョーシャを見て、スタヴローギンは35分ほどじっと待ってから、納屋に行く。そして、確かに彼女が自殺していることを確認するのだ。
このあたり、まるでひとごととは思えないくらい、その心情がよくわかる。
告白の最初にスタヴローギンが語るエピソードも、そうだ。
スタヴローギンには、さる夫人と、小間使い、2人の愛人がいたが、その2人をわざとバッティングさせることに熱中する。
恋愛とか欲情の現場では、よくある試みと言えるだろう。
さて、亀山氏は、本書で、マトリョーシャは少女陵辱の被害者だという従来の見方とは違う見解を示す。
マトリョ−シャはそのとき14才。しかも自分の方からスタヴローギンに身をまかせており、マゾヒズムの存在もあばきたてる。
これはどう見ても、少女陵辱ではない。
今まで、マトリョーシャのことについて、少女陵辱だと思われていたことが不思議でならない。
しかし、僕は思うのだ。
これは客観的には、誰が見ても、少女陵辱ではない。
だが、スタヴローギンがマトリョーシャのことを、「まだ分別もできていない、無力で十歳の生きもののみじめな絶望!」と表現したとき、そこにはスタヴローギンがわざと少女陵辱の罪を自ら課そうとしたマゾヒズム以外に、脳内少女陵辱の快楽を得ようとした痕跡を見てとるのだ。
少女陵辱をしたいなら、相手は少女である必要はない。
相手を少女に歪曲する脳内作用があれば足りるのだ。
マトリョ−シャは、スタヴローギンによって少女に変形されたのである。
ドストエフスキーの『悪霊』の「スタヴローギンの告白」をテクストにして、神の不在について考察する。
テクストの「告白」では、スタヴローギンが少女マトリョーシャを陵辱し、その後冷たい仕打ちをして、自殺に追い込む経過が語られる。
今まさに首を吊りに納屋に駆け込むマトリョーシャを見て、スタヴローギンは35分ほどじっと待ってから、納屋に行く。そして、確かに彼女が自殺していることを確認するのだ。
このあたり、まるでひとごととは思えないくらい、その心情がよくわかる。
告白の最初にスタヴローギンが語るエピソードも、そうだ。
スタヴローギンには、さる夫人と、小間使い、2人の愛人がいたが、その2人をわざとバッティングさせることに熱中する。
恋愛とか欲情の現場では、よくある試みと言えるだろう。
さて、亀山氏は、本書で、マトリョーシャは少女陵辱の被害者だという従来の見方とは違う見解を示す。
マトリョ−シャはそのとき14才。しかも自分の方からスタヴローギンに身をまかせており、マゾヒズムの存在もあばきたてる。
これはどう見ても、少女陵辱ではない。
今まで、マトリョーシャのことについて、少女陵辱だと思われていたことが不思議でならない。
しかし、僕は思うのだ。
これは客観的には、誰が見ても、少女陵辱ではない。
だが、スタヴローギンがマトリョーシャのことを、「まだ分別もできていない、無力で十歳の生きもののみじめな絶望!」と表現したとき、そこにはスタヴローギンがわざと少女陵辱の罪を自ら課そうとしたマゾヒズム以外に、脳内少女陵辱の快楽を得ようとした痕跡を見てとるのだ。
少女陵辱をしたいなら、相手は少女である必要はない。
相手を少女に歪曲する脳内作用があれば足りるのだ。
マトリョ−シャは、スタヴローギンによって少女に変形されたのである。
エラリー・クイーンのミステリエッセイ集『クイーン談話室』を読んだ。
カーとロースンのアイディア交換、マクロイ、クリスティーにアイディアの先を越された話、名探偵の性生活、などなど、ミステリーファンなら一度は聞いたことのある有名なエピソードの数々。
そのもとは、この本だった!
本書には50のエッセイが収録されており、解説を読むと、まだ単行本化されていないエッセイが数多くあるという。
本書の出版は1994年なので、既に本になっているかもしれないので、探してみよう。
この本読んでたら、ヴィンテージ・ミステリを死ぬまで読み続けたい、と欲望が湧いてくる。
僕の学生時代に比べて、今はクラシックが次々と翻訳されていて、第二のミステリ黄金(青春)時代を体験できそうなのだ。
以下、目次
リーフ1 五百ドルの時計を1ドルで
リーフ2 偉大なるOE理論
リーフ3 グースベリー・レイ
リーフ4 著者より謹呈
1、ある収集狂の進化の4段階
2、次なる本は…
3、探偵王国の至宝
リーフ5 殊勲章
リーフ6 途方もなく、奇妙な
リーフ7 そして文学では
リーフ8 クイーンの談話室にて
1、驚異は不滅である
2、不可能から「不」の字を取る
リーフ9 「経」と「済学」
リーフ10 クレイグランドのライスすべてを
リーフ11 心の紡ぎ草
リーフ12 5年間(クインクウェニアム)
リーフ13 彼女は全くスフィンクスではない
1、最初の女性探偵
2、最初の探偵一家
リーフ14 紳士探偵の性生活
リーフ15 古いクルミの新しいシワ
リーフ16 理解の門口に立って
リーフ17 実在しない蠅を叩く
リーフ18 ペンネームの選び方
1、名前と単語から発音まで
2、アルファベット法
3、地理法
4、エラリー・クイーンの起源
リーフ19 ころんで大失敗
リーフ20 強烈な好奇心に駆られて
リーフ21 思索者からてこ、そして催眠状態へ
リーフ22 探偵小説の本質
リーフ23 幽霊の住みついたアメリカ
リーフ24 編集者の弁明
リーフ25 無人島へ持っていく本
1、即席アンソロジー
2、黄金の12
3、徳用版の本
4、民主主義の種
リーフ26 ユリウス・アフリカヌスの遠い叫び
リーフ27 人類への貢献
リーフ28 すべての登場人物が干首にされている
リーフ29 深夜の楽しみ
リーフ30 鞄から飛び出した猫
リーフ31 巡回探偵
リーフ32 植物誌と動物誌
1、園芸に関する記録
2、動物学に関する記録
リーフ33 犯罪の精華
リーフ34 心をとらえる
リーフ35 世界の底辺からの報告
リーフ36 誰が忘れるでしょうか
リーフ37 決して古くはならない
リーフ38 二つの打率・イギリスとアメリカ
リーフ39 正当な名前
リーフ40 タイトルの解剖学
1、気づいたときの驚き
2、甲の毒は乙にも毒
3、あながち最良とは…
リーフ41 境界線を越えて
リーフ42 ポーエティック・ライセンス
リーフ43 偉大さの本質
リーフ44 過ぎ去りし懐かしき昔のために
リーフ45 探偵は医者である
リーフ46 再び著者より謹呈
1、完全無欠な書籍の収集家の進化
2、驚きを演出するために
3、憶測の領域に入れば
リーフ47 高度なシャーロック・ホームズ風洞察力、あるいは言葉のたわむれ
リーフ48 動作は機敏に
リーフ49 探偵小説はどのように生れるか
リーフ50 ペンギンの蔓延
跋
エラリー・クイーン小伝
クイーン、雑誌、そして談話室
うち、気になるものを取り上げて書いておこう。
リーフ4(ある収集狂の進化の4段階)
読むことに溺れる「書物愛好家」(ブック・ラバー)
初版本にこだわる「鑑識家」(コニサー)
最も優れた状態で保存された初版本を探す「書物狂」(ファナティック)
完全な初版本で、著者による書き込みがある稀覯本を買う「書物崇拝狂」(ビブリオファイル)
以上の4段階。
リーフ13(最初の女性探偵)
確認されている最初の女性探偵が登場する小説は、アンドリュー・フォレスター・ジュニアの『女性探偵』(1864年)
このクイーンの発見までは、パスカル夫人の『婦人探偵の体験』(1861年)だとされてきた。実際には、この本は1864年に出た『婦人探偵の告発』のことであった。
リーフ14(紳士探偵の性生活)
エラリー・クイーンに探偵の性生活について質問したのは、ダシール・ハメット。
リーフ18(エラリー・クイーンの起源)
「エラリー」は少年時代の友人の名前。
ペンネームの候補にあがったのは「ジェイムズ・グリフィン」「ウィルバー・シー」
リーフ25(即席アンソロジー)
ディクスン・カーが即席で選んだ探偵小説の短編ベスト10
「唇のねじれた男」コナン・ドイル
「通路の人影」チェスタトン
「オッタモール氏の手」トマス・バーク
「13号独房の問題」ジャック・フットレル
「大暗号」メルヴィル・デイヴィスン・ポースト
「偶然は審く」アンソニー・バークリー
「アルムニウムの短剣」R・オースティン・フリーマン
「死刑前夜」ブレット・ハリデイ
「見えざるもの」ウィリアム・ホープ・ホジスン
「動機」ロナルド・ノックス
ポーは別格らしい。「アルミニウム」をカーは「アルミニューム」と発音すべきと主張したとか。このチョイス見てると、カーの作品と突き合わせてみて、影響受けているのが一目瞭然!
リーフ26(ユリウス・アフリカヌスの遠い叫び)
英語の文字の中で最も頻繁に用いられる10文字は。
eoaidhnrst『暗号解読と暗号書記法の技術に関する一論文』フィリップ・シックネス(1772年)シックネスは1641年に出版された古典『使者、あるいは遠くにいる友人に素早く、秘かに考えを伝達する方法を示す隠密で迅速なメッセンジャー』を参照していたそうな。
eaoidhnrst『黄金虫』ポー(1843年)
etaoinshrd『踊る人形』ドイル(1903年)
etoanirsh『暗号書記法−秘密書記の科学』ローレンス・ドゥワイト・スミス(1943年)
クイーン曰く「イートンアーシュと覚えれば便利でしょう」
リーフ41(境界線を越えて)
ラジオ番組「エラリー・クイーンの冒険」でエラリーを演じたヒュー・マーロウは、自分をエラリーだと思いこみ、支払いをエラリー名義で行っていた。
同じくラジオでエラリーを演じたシドニー・スミスは、エラリー・クイーンの名前でカーネギーホールで朗読、講演を行った。
どちらも作者エラリー・クイーンには断りなく行われ、自己同一化によってなされたものだった。
カーとロースンのアイディア交換、マクロイ、クリスティーにアイディアの先を越された話、名探偵の性生活、などなど、ミステリーファンなら一度は聞いたことのある有名なエピソードの数々。
そのもとは、この本だった!
本書には50のエッセイが収録されており、解説を読むと、まだ単行本化されていないエッセイが数多くあるという。
本書の出版は1994年なので、既に本になっているかもしれないので、探してみよう。
この本読んでたら、ヴィンテージ・ミステリを死ぬまで読み続けたい、と欲望が湧いてくる。
僕の学生時代に比べて、今はクラシックが次々と翻訳されていて、第二のミステリ黄金(青春)時代を体験できそうなのだ。
以下、目次
リーフ1 五百ドルの時計を1ドルで
リーフ2 偉大なるOE理論
リーフ3 グースベリー・レイ
リーフ4 著者より謹呈
1、ある収集狂の進化の4段階
2、次なる本は…
3、探偵王国の至宝
リーフ5 殊勲章
リーフ6 途方もなく、奇妙な
リーフ7 そして文学では
リーフ8 クイーンの談話室にて
1、驚異は不滅である
2、不可能から「不」の字を取る
リーフ9 「経」と「済学」
リーフ10 クレイグランドのライスすべてを
リーフ11 心の紡ぎ草
リーフ12 5年間(クインクウェニアム)
リーフ13 彼女は全くスフィンクスではない
1、最初の女性探偵
2、最初の探偵一家
リーフ14 紳士探偵の性生活
リーフ15 古いクルミの新しいシワ
リーフ16 理解の門口に立って
リーフ17 実在しない蠅を叩く
リーフ18 ペンネームの選び方
1、名前と単語から発音まで
2、アルファベット法
3、地理法
4、エラリー・クイーンの起源
リーフ19 ころんで大失敗
リーフ20 強烈な好奇心に駆られて
リーフ21 思索者からてこ、そして催眠状態へ
リーフ22 探偵小説の本質
リーフ23 幽霊の住みついたアメリカ
リーフ24 編集者の弁明
リーフ25 無人島へ持っていく本
1、即席アンソロジー
2、黄金の12
3、徳用版の本
4、民主主義の種
リーフ26 ユリウス・アフリカヌスの遠い叫び
リーフ27 人類への貢献
リーフ28 すべての登場人物が干首にされている
リーフ29 深夜の楽しみ
リーフ30 鞄から飛び出した猫
リーフ31 巡回探偵
リーフ32 植物誌と動物誌
1、園芸に関する記録
2、動物学に関する記録
リーフ33 犯罪の精華
リーフ34 心をとらえる
リーフ35 世界の底辺からの報告
リーフ36 誰が忘れるでしょうか
リーフ37 決して古くはならない
リーフ38 二つの打率・イギリスとアメリカ
リーフ39 正当な名前
リーフ40 タイトルの解剖学
1、気づいたときの驚き
2、甲の毒は乙にも毒
3、あながち最良とは…
リーフ41 境界線を越えて
リーフ42 ポーエティック・ライセンス
リーフ43 偉大さの本質
リーフ44 過ぎ去りし懐かしき昔のために
リーフ45 探偵は医者である
リーフ46 再び著者より謹呈
1、完全無欠な書籍の収集家の進化
2、驚きを演出するために
3、憶測の領域に入れば
リーフ47 高度なシャーロック・ホームズ風洞察力、あるいは言葉のたわむれ
リーフ48 動作は機敏に
リーフ49 探偵小説はどのように生れるか
リーフ50 ペンギンの蔓延
跋
エラリー・クイーン小伝
クイーン、雑誌、そして談話室
うち、気になるものを取り上げて書いておこう。
リーフ4(ある収集狂の進化の4段階)
読むことに溺れる「書物愛好家」(ブック・ラバー)
初版本にこだわる「鑑識家」(コニサー)
最も優れた状態で保存された初版本を探す「書物狂」(ファナティック)
完全な初版本で、著者による書き込みがある稀覯本を買う「書物崇拝狂」(ビブリオファイル)
以上の4段階。
リーフ13(最初の女性探偵)
確認されている最初の女性探偵が登場する小説は、アンドリュー・フォレスター・ジュニアの『女性探偵』(1864年)
このクイーンの発見までは、パスカル夫人の『婦人探偵の体験』(1861年)だとされてきた。実際には、この本は1864年に出た『婦人探偵の告発』のことであった。
リーフ14(紳士探偵の性生活)
エラリー・クイーンに探偵の性生活について質問したのは、ダシール・ハメット。
リーフ18(エラリー・クイーンの起源)
「エラリー」は少年時代の友人の名前。
ペンネームの候補にあがったのは「ジェイムズ・グリフィン」「ウィルバー・シー」
リーフ25(即席アンソロジー)
ディクスン・カーが即席で選んだ探偵小説の短編ベスト10
「唇のねじれた男」コナン・ドイル
「通路の人影」チェスタトン
「オッタモール氏の手」トマス・バーク
「13号独房の問題」ジャック・フットレル
「大暗号」メルヴィル・デイヴィスン・ポースト
「偶然は審く」アンソニー・バークリー
「アルムニウムの短剣」R・オースティン・フリーマン
「死刑前夜」ブレット・ハリデイ
「見えざるもの」ウィリアム・ホープ・ホジスン
「動機」ロナルド・ノックス
ポーは別格らしい。「アルミニウム」をカーは「アルミニューム」と発音すべきと主張したとか。このチョイス見てると、カーの作品と突き合わせてみて、影響受けているのが一目瞭然!
リーフ26(ユリウス・アフリカヌスの遠い叫び)
英語の文字の中で最も頻繁に用いられる10文字は。
eoaidhnrst『暗号解読と暗号書記法の技術に関する一論文』フィリップ・シックネス(1772年)シックネスは1641年に出版された古典『使者、あるいは遠くにいる友人に素早く、秘かに考えを伝達する方法を示す隠密で迅速なメッセンジャー』を参照していたそうな。
eaoidhnrst『黄金虫』ポー(1843年)
etaoinshrd『踊る人形』ドイル(1903年)
etoanirsh『暗号書記法−秘密書記の科学』ローレンス・ドゥワイト・スミス(1943年)
クイーン曰く「イートンアーシュと覚えれば便利でしょう」
リーフ41(境界線を越えて)
ラジオ番組「エラリー・クイーンの冒険」でエラリーを演じたヒュー・マーロウは、自分をエラリーだと思いこみ、支払いをエラリー名義で行っていた。
同じくラジオでエラリーを演じたシドニー・スミスは、エラリー・クイーンの名前でカーネギーホールで朗読、講演を行った。
どちらも作者エラリー・クイーンには断りなく行われ、自己同一化によってなされたものだった。
アンソニー・ホロヴィッツの女王陛下の少年スパイ!アレックスシリーズ完結編『アークエンジェル』を読んだ。
ヤング007とも思える、痛快なアクション小説で、読んでいるあいだの快感ったらなかった。
ぐいぐい読ませる。
僕が主人公だったら100回くらい死んでいるな、と確信させるほど、次から次へとアレックスには絶体絶命の危機が襲来する。
センセーショナルで日常的な冒頭のツカミから、ラストクライマックスにかけて規模が大きくなっていき、ついには宇宙へ、というスペクタクルの面白さ!
最終巻とあって、今までのシリーズに登場した人物に触れられていたりするのも、面白い。
ラストの集大成だけあって、今回の倒すべきボスはロシア人。このロシア人は、中国マフィアや日本ヤクザともつながりがある。そして、手下は中東の人間っぽい。
シリーズ全体に、欧米人は善の側で、ロシアや有色人種は悪の側、というセオリーが繰り返されるのだ。
過激なエコロジストが悪の手先として描かれているのも、いかにも欧米人のエンタテインメントとして、納得できるところだ。
めちゃくちゃ面白いのに、これでロシアや中国、日本、中東、エコロジストについて先入観をもたせてしまうのではないか、と危惧してしまう。
でも、面白いから、いいか!
いいのか?
ヤング007とも思える、痛快なアクション小説で、読んでいるあいだの快感ったらなかった。
ぐいぐい読ませる。
僕が主人公だったら100回くらい死んでいるな、と確信させるほど、次から次へとアレックスには絶体絶命の危機が襲来する。
センセーショナルで日常的な冒頭のツカミから、ラストクライマックスにかけて規模が大きくなっていき、ついには宇宙へ、というスペクタクルの面白さ!
最終巻とあって、今までのシリーズに登場した人物に触れられていたりするのも、面白い。
ラストの集大成だけあって、今回の倒すべきボスはロシア人。このロシア人は、中国マフィアや日本ヤクザともつながりがある。そして、手下は中東の人間っぽい。
シリーズ全体に、欧米人は善の側で、ロシアや有色人種は悪の側、というセオリーが繰り返されるのだ。
過激なエコロジストが悪の手先として描かれているのも、いかにも欧米人のエンタテインメントとして、納得できるところだ。
めちゃくちゃ面白いのに、これでロシアや中国、日本、中東、エコロジストについて先入観をもたせてしまうのではないか、と危惧してしまう。
でも、面白いから、いいか!
いいのか?
山本周五郎探偵小説全集(第3巻)
2008年4月15日 読書
山本周五郎探偵小説全集第3巻『怪奇探偵小説』を読んだ。
以下目次。ネタバレするので、要注意
南方十字星
甦える死骸
化け広告人形
美人像真ッ二つ
骨牌会の惨劇
殺人仮装行列
謎の紅独楽
荒野の怪獣
新戦場の怪
恐怖のQ
このうち、「新戦場の怪」では、蛇身魔という妖怪が犯した犯罪が描かれる。
身体は蛇で、頭だけが人間。
もちろん、そんな妖怪は存在せず、人間の仕業だと真相がばれるのだが、犯人は幼いときに金持ちの家に売られていった男で、足を縫い合わせて慰みものにされていた人物だったのだ!
つまり、姿形は蛇身魔と同じ人間が犯人だったのだ。
これは、妖怪よりもこわい。
以下目次。ネタバレするので、要注意
南方十字星
甦える死骸
化け広告人形
美人像真ッ二つ
骨牌会の惨劇
殺人仮装行列
謎の紅独楽
荒野の怪獣
新戦場の怪
恐怖のQ
このうち、「新戦場の怪」では、蛇身魔という妖怪が犯した犯罪が描かれる。
身体は蛇で、頭だけが人間。
もちろん、そんな妖怪は存在せず、人間の仕業だと真相がばれるのだが、犯人は幼いときに金持ちの家に売られていった男で、足を縫い合わせて慰みものにされていた人物だったのだ!
つまり、姿形は蛇身魔と同じ人間が犯人だったのだ。
これは、妖怪よりもこわい。
ヒッチコック『裏窓』ミステリの映画学
2008年4月3日 読書
加藤幹郎の『ヒッチコック『裏窓』ミステリの映画学』を読んだ。
ヒッチコックの「裏窓」を見て、僕はびっくりした。
それは、本当に殺人があったからだ。
これはミステリーとしては大失敗作ではないか。
そういう疑問に、この本はこたえてくれる。
「この映画のなかで中年男が妻を殺したということを客観的に証拠立てるものはなにひとつないのです」
中年男は「間違えられた男」だったのだ。
なるほど!
1冊でも推理小説を読んだことのある人なら、映画を普通に見ていて、本当に中年男が殺人を犯したのだ、と信じる人は、一人もいないだろう。
主人公だけが中年男の部屋で殺人事件が起こった、と勘違いし、実際には中年男以外の別の部屋で犯罪が進行していた事実が明らかになる、というのが、普通だ。主人公はすべてを見ていながら、中年男に気をとられていて、犯罪を見逃していたのだ。
うん。これなら、普通のミステリーとして成立する。
中年男が本当に殺していたなんて、事実でならありうる凡庸な結論だが、映画や小説などの虚構の世界では、あってはならない結末なのだ。小説は常に事実より奇なるものだからだ。
本書では、ヒッチコックの映画がもつ、「外見と内実の乖離」を中心に、説かれている。
映画のなかの主人公以外、観客も監督も全員が、中年男が殺人など犯していない、と信じるなかで、一見、映画が中年男の殺人を証して終わることが腑に落ちず、ヒッチコックの作品のなかでも傑作と呼ばれている理由がわからなかったのだが、やっと氷がとけた思いだ。
ヒッチコックの「裏窓」を見て、僕はびっくりした。
それは、本当に殺人があったからだ。
これはミステリーとしては大失敗作ではないか。
そういう疑問に、この本はこたえてくれる。
「この映画のなかで中年男が妻を殺したということを客観的に証拠立てるものはなにひとつないのです」
中年男は「間違えられた男」だったのだ。
なるほど!
1冊でも推理小説を読んだことのある人なら、映画を普通に見ていて、本当に中年男が殺人を犯したのだ、と信じる人は、一人もいないだろう。
主人公だけが中年男の部屋で殺人事件が起こった、と勘違いし、実際には中年男以外の別の部屋で犯罪が進行していた事実が明らかになる、というのが、普通だ。主人公はすべてを見ていながら、中年男に気をとられていて、犯罪を見逃していたのだ。
うん。これなら、普通のミステリーとして成立する。
中年男が本当に殺していたなんて、事実でならありうる凡庸な結論だが、映画や小説などの虚構の世界では、あってはならない結末なのだ。小説は常に事実より奇なるものだからだ。
本書では、ヒッチコックの映画がもつ、「外見と内実の乖離」を中心に、説かれている。
映画のなかの主人公以外、観客も監督も全員が、中年男が殺人など犯していない、と信じるなかで、一見、映画が中年男の殺人を証して終わることが腑に落ちず、ヒッチコックの作品のなかでも傑作と呼ばれている理由がわからなかったのだが、やっと氷がとけた思いだ。
ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを
2008年4月2日 読書
カート・ヴォネガット・ジュニアの『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』を読んだ。ネタバレなので、要注意。
億万長者が恵まれない人々に金を惜しみなく分け与える。
彼、エリオットには子どもがなく、遠縁の親戚を見つけだした悪人の罠にはまる。
彼を狂人に認定し、財産を奪い取ろうとするのだ。
さて。
この作品については、日記に何回かとりあげたので、ここでは手短かに。
ヴォネガットお得意の、エピソードを積み重ねた一代記もので、ドストエフスキーの『白痴』を思い出した。ちょっと違うけど。
本書では、ところどころに詩(オリジナルもあれば、引用もある)や歌が出てきて、それがまた面白かった。
たとえば。
エリオットが助成金を出したアル中の調査研究の報告書を受け取ったとき。エリオットはぐでんぐでんになっていて、詩を読む。
たくさんの、たくさんの良いものを、
ぼくは買いとった!
たくさんの、たくさんの悪いことと、
ぼくはたたかった!
エリオットには暗記したくなるほど感心した唯一の詩がある。それは、ビヤホールの男子手洗所の壁に書いてあったという。その詩は、
おたくの灰皿にションしたりはしない、
だからうちの便器に吸いがら捨てないで
酔っぱらいのピーチという男がうたう。
おれは淋病持ち、おまけにタマが張っちっち。
淋ちゃんは痛くないけれど、タマの野郎があっちっち。
さて、財産を奪われそうになったエリオットは、すばらしい方法で、しっぺ返しをする。
エリオットのもとには、山のように「あなたの子どもを生みました」なんていう隠し子の申告が寄せられている。明らかに、金目当ての嘘である。エリオットは、そのデタラメな申し出を全部認知するのだ。
これで、エリオットには一度に多くの子どもがいることになり、当然、財産は彼らでわけることになるのだ。遠縁の親戚に勝ち目はない。
億万長者が恵まれない人々に金を惜しみなく分け与える。
彼、エリオットには子どもがなく、遠縁の親戚を見つけだした悪人の罠にはまる。
彼を狂人に認定し、財産を奪い取ろうとするのだ。
さて。
この作品については、日記に何回かとりあげたので、ここでは手短かに。
ヴォネガットお得意の、エピソードを積み重ねた一代記もので、ドストエフスキーの『白痴』を思い出した。ちょっと違うけど。
本書では、ところどころに詩(オリジナルもあれば、引用もある)や歌が出てきて、それがまた面白かった。
たとえば。
エリオットが助成金を出したアル中の調査研究の報告書を受け取ったとき。エリオットはぐでんぐでんになっていて、詩を読む。
たくさんの、たくさんの良いものを、
ぼくは買いとった!
たくさんの、たくさんの悪いことと、
ぼくはたたかった!
エリオットには暗記したくなるほど感心した唯一の詩がある。それは、ビヤホールの男子手洗所の壁に書いてあったという。その詩は、
おたくの灰皿にションしたりはしない、
だからうちの便器に吸いがら捨てないで
酔っぱらいのピーチという男がうたう。
おれは淋病持ち、おまけにタマが張っちっち。
淋ちゃんは痛くないけれど、タマの野郎があっちっち。
さて、財産を奪われそうになったエリオットは、すばらしい方法で、しっぺ返しをする。
エリオットのもとには、山のように「あなたの子どもを生みました」なんていう隠し子の申告が寄せられている。明らかに、金目当ての嘘である。エリオットは、そのデタラメな申し出を全部認知するのだ。
これで、エリオットには一度に多くの子どもがいることになり、当然、財産は彼らでわけることになるのだ。遠縁の親戚に勝ち目はない。
コナン・ドイルの『毒ガス帯』を読んだ。
以下、目次
毒ガス帯
1、フラウンホーファー線のくもり
2、死の潮流
3、毒の海に沈む
4、死にゆく者の手記
5、死の町を行く
6、すばらしい目覚め
地球の悲鳴
分解機
「毒ガス帯」は、地球がエーテルの有毒帯の中に突入してしまう話。
冒頭からしばらく、チャレンジャー教授のところに向かう面々の珍道中のような描写が続く。ジョン卿は「野牛やインドの王様についての長ったらしい話をしてくれたが、その話ははじめもなければ、終わりもないもののように思われた」マローンはフットボールの話をえんえんと続け、サマリー教授は動物の物真似をいつまでも続ける。チャレンジャー教授は、家政婦の足首を噛んで、追い出したりしている。
なんじゃ、この喜劇は?と思って読んでいたら、実はこういう狂気の沙汰はすべて有毒ガスのなせるわざだ、ということが明らかになるのだ。
チャレンジャー教授は、地球をひとふさのブドウにたとえてこう言う。
「一房のブドウを想像してみてくれたまえ。それはきわめて微少ではあるが有毒な細菌に覆われている。園主はそれを消毒液にくぐらす。つまり、わしの考えでは、わが宇宙の園主は太陽系全体をいままさに消毒液の中に浸そうとしているのであり、その結果、われわれ人類という細菌、つまり、地球の外殻上でのたうちまわっている微少な人間という病原菌はたちまちのうちに殺菌され、死滅してしまうだろうよ」
チャレンジャー教授は、酸素ボンベによって命を長らえさせることができることを知るが、いずれにせよ、ボンベにも限界がある。
地球を救う方法はあるのか?
ない!
ないのだ!
地上は死屍累々。
こんなことがあっていいのか!
小説は、地球の終わりに際しての、考察をいろいろ展開する。
で、こんな大悲劇、どう結末つけるのか、というと。
みんな仮死状態でした!生き返りました!
ナヌー。
「地球の悲鳴」は、地球をウニにたとえる。
「このウニは地球の模型、つまり、原型ともいうべきなんだ」
「この外側の硬い外皮の表面をはいまわっているとても小さな虫がいるとしよう。ウニはいったいそれらの虫ケラの存在に気付くだろうか」
「地球の注意を求めている−いや、注意を要求している人間が少なくとも1人いるということを地球に知らせてやりたいと思うんだ」
チャレンジャー教授は、地球に穴をあけて、突き刺し、地球に存在をアピールしようとする。地球の中心核にまで穴を掘り、突き刺す、というのは大がかりなプロジェクトだ。で、その目的が、こんなこととは!
さて、結局、地球をプツッと刺して、地球は、ブチュッと黒くて臭い液を噴き出し、傷口の穴はふさがれてしまう。やったー、地球に存在をしらしめた!
全体的に、何をやっとるんじゃ、という話で、その結果のどうでもよさも極上。
「分解機」は、物体を原子に分解して、それをまた組み立て直す機械の話。
これは生き物にも適用される。
実験でマローンもチャレンジャー教授も実験される。
これが軍事に使われると、大いなる脅威になる。
チャレンジャー教授は、だまして発明者のラトビア人を原子に分解し、「よき市民としていちばん大切な義務は、殺人を予防することなんだ」と言って、元に戻さない。この精神を持っていてくれれば、戦争で多くの人命を救えたのに!
以下、目次
毒ガス帯
1、フラウンホーファー線のくもり
2、死の潮流
3、毒の海に沈む
4、死にゆく者の手記
5、死の町を行く
6、すばらしい目覚め
地球の悲鳴
分解機
「毒ガス帯」は、地球がエーテルの有毒帯の中に突入してしまう話。
冒頭からしばらく、チャレンジャー教授のところに向かう面々の珍道中のような描写が続く。ジョン卿は「野牛やインドの王様についての長ったらしい話をしてくれたが、その話ははじめもなければ、終わりもないもののように思われた」マローンはフットボールの話をえんえんと続け、サマリー教授は動物の物真似をいつまでも続ける。チャレンジャー教授は、家政婦の足首を噛んで、追い出したりしている。
なんじゃ、この喜劇は?と思って読んでいたら、実はこういう狂気の沙汰はすべて有毒ガスのなせるわざだ、ということが明らかになるのだ。
チャレンジャー教授は、地球をひとふさのブドウにたとえてこう言う。
「一房のブドウを想像してみてくれたまえ。それはきわめて微少ではあるが有毒な細菌に覆われている。園主はそれを消毒液にくぐらす。つまり、わしの考えでは、わが宇宙の園主は太陽系全体をいままさに消毒液の中に浸そうとしているのであり、その結果、われわれ人類という細菌、つまり、地球の外殻上でのたうちまわっている微少な人間という病原菌はたちまちのうちに殺菌され、死滅してしまうだろうよ」
チャレンジャー教授は、酸素ボンベによって命を長らえさせることができることを知るが、いずれにせよ、ボンベにも限界がある。
地球を救う方法はあるのか?
ない!
ないのだ!
地上は死屍累々。
こんなことがあっていいのか!
小説は、地球の終わりに際しての、考察をいろいろ展開する。
で、こんな大悲劇、どう結末つけるのか、というと。
みんな仮死状態でした!生き返りました!
ナヌー。
「地球の悲鳴」は、地球をウニにたとえる。
「このウニは地球の模型、つまり、原型ともいうべきなんだ」
「この外側の硬い外皮の表面をはいまわっているとても小さな虫がいるとしよう。ウニはいったいそれらの虫ケラの存在に気付くだろうか」
「地球の注意を求めている−いや、注意を要求している人間が少なくとも1人いるということを地球に知らせてやりたいと思うんだ」
チャレンジャー教授は、地球に穴をあけて、突き刺し、地球に存在をアピールしようとする。地球の中心核にまで穴を掘り、突き刺す、というのは大がかりなプロジェクトだ。で、その目的が、こんなこととは!
さて、結局、地球をプツッと刺して、地球は、ブチュッと黒くて臭い液を噴き出し、傷口の穴はふさがれてしまう。やったー、地球に存在をしらしめた!
全体的に、何をやっとるんじゃ、という話で、その結果のどうでもよさも極上。
「分解機」は、物体を原子に分解して、それをまた組み立て直す機械の話。
これは生き物にも適用される。
実験でマローンもチャレンジャー教授も実験される。
これが軍事に使われると、大いなる脅威になる。
チャレンジャー教授は、だまして発明者のラトビア人を原子に分解し、「よき市民としていちばん大切な義務は、殺人を予防することなんだ」と言って、元に戻さない。この精神を持っていてくれれば、戦争で多くの人命を救えたのに!
風々院風々風々居士―山田風太郎に聞く (ちくま文庫)
2008年3月27日 読書
ISBN:4480420959 文庫 山田 風太郎 筑摩書房 2005/06/08 ¥714
山田風太郎の肉声が聞こえてきそうなインタビュー集。
資料をあさって作品を書き終えると、その資料は捨ててしまって、記憶にも残らないってのがすごい。
歴史はその都度作られている。
山田風太郎の肉声が聞こえてきそうなインタビュー集。
資料をあさって作品を書き終えると、その資料は捨ててしまって、記憶にも残らないってのがすごい。
歴史はその都度作られている。
占領下パリの思想家たち―収容所と亡命の時代 (平凡社新書 356)
2008年3月26日 読書 コメント (1)
ISBN:4582853560 新書 桜井 哲夫 平凡社 2007/01 ¥903
その頃、サルトルは。
その頃、アロンは。
その頃、カミュは。
その頃、レヴィストロースは。
その頃、メルロポンティは。
などなど。
これは書きようによっては山田風太郎になりえたな。
その頃、サルトルは。
その頃、アロンは。
その頃、カミュは。
その頃、レヴィストロースは。
その頃、メルロポンティは。
などなど。
これは書きようによっては山田風太郎になりえたな。