『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ』
浅倉卓弥の『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ』を読んだ。
アリスのパスティーシュ。
井戸に落ちた少女は、中はきっと万華鏡世界(ニアリーイコールダイアモンズ)だと期待しながら、どんな冒険をしたのかというと、
「半人前だったみたいだけどチェシャ猫にも会ったし、四人組にマシュマロパイもいただいた。ビッグ・モアの卵黄に乗って豚たちと一緒にサーカスを見ておまけに火の輪くぐりにまで挑戦した。挙げ句はポーの作品に出てくるみたいな大きなカラスに攫われたうえ、あまつさえイモ虫たちに胴上げまでされたんですものね。」

で、ルーシーは宙に放り投げ出されて、くるくる回ったりする。
作品を読み終わって感じたのは、これはアリスが不思議の国に行ったのとは全然違って、内容的にはダンテの神曲みたいだなあ、ということだった。
僕はルイス・キャロルが好きなので、向き不向き関係なく、すべての作家にアリスのパスティーシュを書いてほしいと思っているので、この本もあり。
よく頑張りました、と思う。
作品のなかのギャグは、ルイス・キャロル的なノンセンスではなく、作者が出てきてツッコミやボケをになう、あだち充みたいな笑いだった。
ビートルズに関するくすぐりもあるが、今ひとつ効果的に使われていないのが残念!

『幻想電氣館』

2013年8月8日 読書
『幻想電氣館』
堀川アサコの『幻想電氣館』を読んだ。
あの世とこの世の境目にある映画館。
この映画館で映画「走馬灯」を見ると、成仏できるのである。
と、いうようなストーリーだけ聞くと、ファンタジーそのものなのだが、これ、れっきとしたミステリーとして決着がつくのである。
以下、目次

第一章 シリトリからはじまる
第二章 幽霊が見えたりするので
第三章 大伯母さまとゲルマ電氣館
第四章 ゲルマ電氣館のお仕事
第五章 スクリーンの向こうから
第六章 霊感のない幽霊…
第七章 皆が集まる
第八章 対決
第九章 うるさい、いとしい

これ、前作の『幻想郵便局』の続編らしいが、未読なので、早いうちに読まねば。
読みやすくて、推理の要素も面白い!
羽毛布団だの火災警報器だの、インチキ悪徳業者の訪問でも、寂しい人にとっては、ありがたくうれしいものだ、というくだりは、ブラッドベリの作品にも通じるし、K元美津の年賀状をテーマにした劇画にも通じるものがある。

『贖罪』

2013年8月7日 読書
『贖罪』
湊かなえの『贖罪』を読んだ。
以下目次

フランス人形
PTA臨時総会
くまの兄妹
とつきとおか
償い
終章

少女殺害の目撃者は、少女4人。
口をそろえて、犯人の顔を思い出せない、と証言した。
少女の母親は、そんな少女たちにヒステリックに暴言を吐く。
その後の少女たちの人生、母親の人生が描かれる。
非常におもしろくて、読む手が止まらないのだが、扇情的で、まるでインターネットの掲示板や匿名コメントなどで読むような、下品さ、下世話さが気になった。テレビドラマみたい、とでも言おうか。
この作品に出てくるような人たちが周囲にいないことを、どれだけ感謝したことか。
犯人は、それと知らずに自分が生ませた子どもを手にかけていた、とういうことが最後にわかるが、それを古典的な悲劇のパターンとしてでなく、いらぬサプライズだと思わせてしまう、品のなさは、どういうことなんだろう。
ドラマ向けだ、という思いがさらに強まる。

『新参者』

2013年8月6日 読書
『新参者』
東野圭吾の『新参者』を読んだ。
第一章 煎餅屋の娘
第二章 料亭の小僧
第三章 瀬戸物屋の嫁
第四章 時計屋の犬
第五章 洋菓子屋の店員
第六章 翻訳家の友
第七章 清掃屋の社長
第八章 民芸品屋の客
第九章 日本橋の刑事

加賀恭一郎シリーズ。
短編連作なのかと思っていたら、さすが。
1つの事件を追ううちに、その際に聞き込みした人など、事件の真相とは直接関わらない人たちの、それぞれの謎を解き明かしていく。
この発想にうなった。
この作品は、テレビ番組の第一話だけ再放送で見て、途中の推理小説的発想に感心して、原作を読んでみたのだが、いや~、ドラマよりも原作のほうがよかった。
きっと、ドラマにするにあたっては、原作にない部分を付け加えなくてはならず、そこが推理小説ファンにとっては、蛇足だと受け取られるのだと思う。
ネタバレしかしていないので、注意。

タルト・タタンの夢
ロニョン・ド・ヴォーの決意
ガレット・デ・ロワの秘密
オッソ・イラティをめぐる不和
理不尽な酔っぱらい
ぬけがらのカスレ
割り切れないチョコレート

毒入りケーキは、出来上がりが反対で別人が作ったものと知れる
偏食のはげしい人の妻が作る料理がまずいワケ
菓子の中に仕込んでおいたはずのフェーヴが消えたわけ
ジャムをあげてはいけなかった
いかにして酒を合宿所に持ち込んだか
サプライズの前段階で
素数の愛
『愛する時は歌う時』
ヘルムート(森洋美)
ザ・テール・オブ・ザ・スターリット・シティ(井辻朱美)
猫はもう帰らない
ピエロびたし
バルビゾンの春(水村梨乃の小部屋)
センチメンタルな子豚ちゃん
三人姉妹 二千羽の鳥
七月の葵(邑崎恵子)

『堕ちた天使』

2013年7月24日 読書
『堕ちた天使』
草薙汐美の幻想譚
消えてしまった子供たち
喪服のランデブー
飛ぶ鉛筆
少女たちのナンセンス詩集「壜」
壜の中のドラキュラ氏
伝奇集
ああ パンツ物語
双生児のドーリア
月曜館便り
『鉛筆のシンデレラ』
水村梨乃の小詩集 なのはな
ささやきの花束
あなたのための魔女入門
キャベツ・ラブソング
麻野あけみの小詩集
奇妙な味の料理人はアリスが大好き
人恋い童謡集
青春のフルーツパフェ
風景のある詩と詩のある風景
二人のロッテ
あなたに似た女の子
ユリアのために
『赤い鳥逃げた』
あたしがまだ小鳥だった頃(樹乃の小特集)
 そらぞらしいはなし
 おつきさま
 空を飛べるクスリ
 十四歳
 十三歳
 眠れない夜は私にキスをください
 ばらのはなことばによせて
 だれが一番幸せ?
 あなたの詩集のために
 四月三十四日の私
三羽の鳥(藤浪ジュン、菅原純子、横尾弘子)
 仮面のスケルツォ
 コンサート
 ケンタウロスに(/ラジオのように)
空っぽの鳥かご
 五月の買い物
 死んだら
 三月
 ヘアー
 今年は水着が着られない
 ぱあと つぅ
 あたしの好きなもの
 悲しくって仕方のない時には
 つぶやきあつめ
 片重い
 僕の発見
 アンニュイ
 七分間
 ラブミードゥ
 そうだんがあるのです
 読み終えたら また最初にもどってください
 きまぐれ
ハミングバード
 ロック喫茶のスピーカーの真下で
 言語狂乱
人あて鬼のメルヘン
 麻矢のおとぎ話
 クレージーな魔女
 ひとりぼっちの童話
 それから
 ガラス細工のメルヘン
 ねこがわらった
 ネズミのミツコは思い出す
 ある日
 ですぺあ
 めちゃくちゃなうちゅう
 反抗期
 二人の恋は狂い咲き
 天気
恵夢の小部屋
 一秒
 今世紀最大のカケ
 ボクの顔
 恵夢のコーナー
 新説
 誕生日
 秘密
 不良品リスト
 恵夢のコーナー
 魔法使いのパーティー
 麦畑の中で
鳥迷宮
 家族
 ストーン・ジャンキー
 悪女のイメージ
 眠れない夜
 凄日ブルース
 少年
きのゆりと七人の小人
 生まれる前のわたし
 虹の中で鳴るつづみ
 愛への長さ
 悲しい夜
 二十歳
 海にいるのは
 たくさんの私
 愛に順序があるのなら
鳥類百科辞典
 ないないづくし
 みのりのモノローグ
 私の科目辞典
 不良品
 恋愛殺人哲学全書
 恋愛志願
 魔女養成所
 アムール トワ エ モア
 PATCHWORK
赤花抄(森洋美の小詩集)
 夕食
 ユリアのじてん
 月夜・夜語
 速度
 ある悲劇
 赤花抄
 ヤマト糊的練習曲
 孤独な小指のための練習曲
 十一月のネバーランド
石持浅海の室内劇的ミステリー
序章
第一章 訪問者
間章
第二章 親友の妹、妻、そして秘書
間章
第三章 迷宮屋敷
間章
第四章 届け物

高木彬光の時代推理小説『江戸の夜叉王』を読んだ。
辻斬りで江戸を騒がせる夜叉王。
夜叉王事件に巻き込まれて、事件の真相を解明し、夜叉王を討とうとするのは、沖田総司。
「江戸」というタイトルでわかるように、沖田総司はまだ江戸におり、作品の冒頭部分では、まだ実際に人を斬ったことがない、新撰組以前の物語である。
もちろん、夜叉王と沖田総司の戦いなど、フィクションなのだから、本のタイトルにつけられた「沖田総司の数奇な生涯」という、歴史小説じみた紹介文は、まったくの嘘である。
心ならずも夜叉王事件に巻き込まれた沖田は、事件の真相が明らかになるにつれ、政治的な陰謀や男女の愛憎が絡んでいることを知り、自らの若さを認識していくのである。
以下、目次。

血を吐く剣客
消えた死体
挑戦
舌の勝負
夜叉王出現
仁王の涙
天狗くずれ
二人の女
尾行
剣の林
運命の敵
奇妙な取引
悪の系譜
狐狸の寺
女心鬼心
壁の耳
仁王の斬られ
蜘蛛の秘密
女賊のかくれ家
追いこみ
夜叉王最期

昭和47年発行 文華新書

『野兎物語』

2013年7月12日 読書



7月2日(火)
『死んでも何も残さない』読了
気づいたら満州引揚者の息子
ろくな大人にならない
教育なんてまっぴら
どんよりとした十代
暴力温泉芸者は高校四年生
世間の茶番には勝てん
死んでも何も残さない
7月3日(水)
レジェンド・オブ・トレジャー
NEP
7月4日(木)
『みんなを怒らせろ』
いますぐ言いたいこと
花を喀えたターザンの肉体
叙事詩-李庚順
五年目のノート
『ダブルジョーカー』
柳広司の『ダブルジョーカー』を読んだ。
『ジョーカーゲーム』と同じ世界を描いた、D機関ものの短編集。
ダブルジョーカー
蝿の王
仏印作戦

ブラックバード
軍隊にはあるまじき「死ぬな、殺すな」を貫くD機関と、殺人の技術に長けた風機関の闘争や、外国人のつわものとの闘争などが描かれる。
これもまた、読んで損なしの面白さ。
結城少佐のような読みの深い人物になりたかった

『温かな手』

2013年6月28日 読書
『温かな手』
石持浅海の『温かな手』を読んだ。
人間からエネルギー(カロリー)を吸い取って生きる異生物。
かれらは人間に擬態し、余剰のカロリーを吸い取ってもらえる、という利点を生かして人間と共に暮らしている。
本書は、その異生物が、人間ではないがゆえに取りうるストレートな推理で謎を解き明かすシリーズ短編集。
以下、目次

白衣の意匠
陰樹の森で
酬い
大地を歩む
お嬢さんをください事件
子豚を連れて
温かな手
『夜にはずっと深い夜を』
鳥居みゆきの『夜にはずっと深い夜を』を読んだ。
以下、目次

きれいなおかあさん
だんごむし
妄想日記1
シズカの真夜中ぶつぶつ

華子の花言葉
ぼたん
葉子
余命
妄想日記2
地獄の女
いるモノ
幸子
ある少女の死
佐々木さん
妄想日記3
妄想日記4
のり子
ゴミ屋敷

或るマッチ売りの少女
妄想日記5
過食症
いちゃつき心中
仕事と私と
カバのお医者さん
妄想日記6
明日香
永遠の誓い

短い小説、詩、日記などが詰め込まれた暗黒の小箱。
女性ならではの、こういう世界は、思えば僕は中学時代に秋吉久美子の本で味わい、のちにアリスやら寺山修司の少女詩のような、男性による思春期少女を経て、さらに後に戸川純などで楽しむことになる。
いまだに秋吉久美子のインパクトを越える女性はあらわれておらず、鳥居みゆきの本作も、わかりやすくて面白いものだった。作者の本意ではないにしても。
『大江戸からくり推理帖』
楠木誠一郎の『大江戸からくり推理帖』を読んだ。
晩年の平賀源内と、戯作者・森羅万象が、事件を解く。
(女体に小判を隠したのを見抜いたり、赤ん坊誘拐事件の謎を解いたり)
平賀源内は、発明の機械を駆使してケムに巻くのがだいたいの役割で、その奇人変人ぶりが描かれる。
事件をちゃんとあるべきところにおさめる役割は、だいたいが森羅万象の役目である。
田沼意次に、直属の隠密任命をされ、話のスケールが大きくなるのかな、というあたりで終わってる。
第一話 野良息子
第二話 三日坊主
第三話 痩せ我慢
第四話 箱入り娘

『EDEN』

2013年6月25日 読書
『EDEN』
近藤史恵の『EDEN』を読んだ。
『サクリファイス』のその後を描いているが、前作を読んでいなくても十分面白い。「サクリファイス」をほとんど忘れている僕が読んで面白かったんだから。
今回は自転車のツール・ド・フランスにおける駆け引きとか、裏でのやりとり、諸事情などがスリルとサスペンスを呼ぶ。
スポーツには、こういう推理要素が含まれていて、そこが醍醐味のひとつでもある。はずだ。
フランスの新人をなんとか勝たせたい、という意向、今期でチーム解散、その後の身の振り方、という思惑、レースでの駆け引き、ドーピング疑惑、などなど。

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