今日は1日使って、映画「りす」を工作していた。監督とか制作、製作、というより、「工作」が一番しっくり来るかな。アニメとかじゃないんだけど。
この「りす」は来るべき10minutes映画祭(年末に開催予定)の露払いみたいな気持ちで作ったもの。映画祭は、10minutes出演アイドルを主演にするという条件で、10分以内の短い映画を撮って持ち寄って、わいわい楽しもう、というイベント。本格的な映画づくりをしてくださる方が、何人か手をあげてくれているが、もっと適当なスタンスで参加するのもアリ、という見本を自ら示すことにした!(本当は、適当なものしか作れない)
「りす」は丼野M美を主演にして撮った作品で、あくまでも映画祭の参考例というか、もっと多くの人に参加してほしい、という呼び水なので、映画祭本番には上映せず、6月20日の「10minutes TV MAX」(ユーストリーム番組。なんば紅鶴で午後7時から)で1回だけ上映する予定。
なんとかかんとか映画は出来上がった!適当で簡単な映画だとは言え、仕事が早い!

映画工作の間を縫って、日本橋ラブコンシアターでファンタピースUBUライブ。午後4時の回を見に行った。

開演前のアナウンスは谷口、藤井。
1.ミラー・オブ・トゥルース(谷口、藤井、山口、清本、川口、佐藤)
2.ずっと見ていて☆
自己紹介
3.君だけにLove You(清本、山口、川口、藤井)
4.ハッピーマテリアル(谷口)
5.きっかけはYOU(佐藤)
6.ピリリと行こう(藤井)
7.夏祭り(清本)
8.一緒に(川口、山口、佐藤、谷口)
新衣装の好きなところトーク
9.カップル・オブ・シャドウ(6人)
10.ロンリーオンリー

久々に見るあんこはちょっと大人になったように見えたし、りほホンはダンスキレキレだけでないのほほんさがちゃんと歌の最中にもうかがえるようになってきた。
かれんのアイドル度の高さはあいかわらずハイアベレージだし、えり~さの選曲は虚をつく楽しさがあった。残念ながら今回はソロがなかった(違う回のを見たら、さぞや大活躍したんだろうが)りんかりんの安定感たるやたいしたものだ。
で、今回のトピックスは、何と言っても、もえピーの進化する可愛さだ。
ブログやアーチスト写真だけ見ていると、あんまりわからないのだが、ステージで見ると、もえピーの可愛さはまさに、気絶ものである。
まいりました!

ライブ終了後は、また映画工作のつづき。
行こうと思ってた映画のレイトショーが、今日にかぎってやってなかったので、おとなしく作業に没頭。
乙画廊で長尾紘子展「我が精薔、愛で召し候」を見てきた。
ヨーロッパ中世に題材をとった作品などをものしている吉田稔美ちゃんに教えてもらって見に行った。長尾さんは、稔美ちゃんに絵画を教わったのだと言う。これが初個展。眼の大きな裸体の少女、と言えば「耽美」と安易に言いたくなるが、長尾さんの絵は、それにはおさまらない執念のようなものを感じた。少女の毛髪がとにかく、エルンスト真っ青に繁茂し、繁殖し、侵食しており、まるで少女が毛髪の先になった果実のように見えるのだ。
見終わってからも、体内に毛髪が絡んでいるような錯覚にとらわれた。

午後7時からザ・シンフォニーホールで「大阪フィルハーモニー交響楽団第449回定期演奏会」
指揮は29歳のクシシュトフ・ウルバンスキ(ポーランド)。
20世紀の東欧とロシアの音楽でプログラムが組まれていた。
「小組曲」ルトスワフスキ 1951年
1.横笛
2.ポルカ
3.歌
4.踊り
「ヴァイオリン協奏曲第2番作品61」シマノフスキ 1933年
1.Moderato-Molto tranquillo
2.Andantino sostenuto
3.Allegramente-Molto energico
4.Andantino-Molto tranquillo
(ソリストアンコール)「無伴奏ヴァイオリンソナタ3番ラルゴ」バッハ
ヴァイオリン:諏訪内晶子
(休憩)
バレエ組曲「火の鳥」(1945年版)ストラヴィンスキー
1.a序奏
  b前奏曲と火の鳥の踊り
  c火の鳥のヴァリエーション
2.パントマイム1
3.火の鳥とイワン王子のパ・ド・トゥ
4.パントマイム2
5.スケルツォ(王女たちの踊り)
6.パントマイム3
7.女王たちのロンド
8.凶悪な踊り
9.火の鳥の子守歌
10.最後の賛歌

20世紀の音楽ではあるが、民族的な音楽を志向している時期の作品であり、実験的な要素は少なかった。
休憩時間になると、我先にとコーヒーとワインのカウンターに列が出来たのには驚いた。かく言う僕も並んでホットコーヒーを飲んだくちである。
今回、僕の席はステージの後ろ側で、指揮者と向かい合うような位置にあった。
普通の席だと指揮者の背中が見えるのだが、真正面から見ると、自分も演奏者の一人になったような気分がして、面白かった。指揮者の表情もよく見えるし、演奏者の次への準備などもわかって、興味深い。

『善の遍歴』
高橋睦郎の『善の遍歴』を読んだ。1974年。
善財童子が文殊菩薩の指南によって55人の善知識を遍歴し悟りにいたる、華厳経の入法界品(にゅうほっかいぼん)をベースに、その名も法界善財(ホッカイ・ゼンザイ)少年が経巡る、男色変態性愛地獄めぐり。
以下、目次。
発端:ゼン、故郷出奔のこと。
 並びにモンジュボサツに出会うこと。
第1話:ゼン、通勤電車で揉まれつづけること。
 歓喜地は異生羝羊心なること。
第2話:ゼン、映画館にて三界虚妄を悟ること。
 地獄絵は曼荼羅たること。
第3話:ゼン、バーの扉を潜ること。
 変成男子は変成女子を通るべきこと。
第4話:ゼン、糞尿の海を漂い流れること。
 法悦境は不浄観を通るべきこと。
第5話:夏の海べの一ヵ月のこと。
 いろは修養団ゑひもせすと消え失せること。
第6話:怪外人マイトレーヤ氏との奇遇のこと。
 売色の森は正覚大悟の座たること。
第7話:ゼン、蒸気地獄を巡ること。
 無垢光潔の愛は溶け湯水となって流れ去ること。
第8話:ゼン、はじめて法性華を愛慕のこと。
 緋牡丹は火焔三昧の知恵の花たること。
第9話:ゼン、夢の島にてマゾヒストの群れに会うこと。
 捨身飼虎は仏菩薩の慈悲たること。
第10話:ゼン、ブタ箱でありとある辱めを受けること。
 旃陀羅の極みは婆羅門を超ゆること。
団円:ゼン、モンジュボサツに再会のこと。
 中有を通って摩訶毘盧遮那仏と一致のこと。

家出して上京してきたゼンを、車掌の姿のモンジュボサツが導き、遍歴の意味を教えるところから話ははじまる。UFOの形は「空飛ぶ円盤」だけでなく、「葉巻型」のもある、という説明から、円盤は女性器、葉巻は男性器で、UFOと見えていたのは、彼方の彼方に存在する大日如来(マハーヴァイローチャナ)なのだ、と。ゼンは永遠の求道者、善財童子に似ており、そのめでたい姿かたちをみると、大日如来に愛されているにちがいない、とゼンの遍歴をうながす。
その限りない慈愛に敬意を表して、お前の股間にあるそのものも、もうひとつのマハーヴァイローチャナと呼ばれるべきだろう。さあ、行くがよい、ゼンよ、マハーヴァイローチャナ見守り給う求道遍歴の旅に。見よ、濁世の世界海、東京は真近い。お前はその煩悩の海に浮きぬ沈みぬしている衆生の中から、マハーヴァイローチャナの霊気を持った善知識を訪ねて教えを乞い、ついには濁世に煩悩即菩提、即身成仏、宇宙の彼方の彼方の光り輝くマハーヴァイローチャナと一致するのだ。遍歴の途中、出会う善知識を丁寧に礼拝し、身密、口密、意密の三密を熱心に学問するのだ。身密とは股間のマハーヴァイローチャナ、口密とは口と舌、意密は尻、この三つの能力を遍照発揮して、阿吽の声を挙げつつマハーヴァイローチャナの真言秘密に参入するのだな。阿吽の声こそはこよなく淫らであるとともにこよなく聖い声、その中には三千大千世界のあらゆる秘密がこめられている。それでは行け、ゼンよ、行くのだ、よいか、どうだ、うん?うん?

モンジュボサツは、折にふれて、地蔵の姿になったり、いろんな姿でゼンの前にあらわれ、ゼンが体験したことの意味を教えたりするのである。
この後、ゼンは満員電車での痴漢や映画館発展場、スカトロやマゾ、などなど性愛地獄を遍歴するが、その際に、男性器を「マハーヴァイローチャナ」と表記している。本書では、マハーヴァイローチャナの言葉はこれでもか、と頻発するので、すっかり覚えてしまった。宗教的な難しい文句が並ぶが、内容はといえば、変態ポルノとあまり変わらない。

遍歴の際に出会う人々が、怪物的なキャラクターで、もう笑うしかないのだが、どんな人たちと出会うかというと、前半の五章にこんな文章がある。
ゼンはこの五ヵ月に出会った人人を、近い順から逆に、ひとりひとり思い出した。便所少年、その父親の尻舐めおばけ、偏執的札束嗜好症のオーナー、オーナーからゼンを解放してくれたガラ子、ヒキョウモノと女声男声半半で叫んだ赤毛マダム、ゼンの学生服を騙し盗った洋品店店長、満員電車で一ヵ月間ゼンを愛撫しつづけた掌男、その他、ゼンとつかのま擦れちがったにも似た無数の男たち、そしてもちろん、あの瘤と疣の皺だらけのモンジュボサツ

「尻舐めおばけ」というのは、汲み取り便所の中に棲みついた化け物で、13歳から19歳までのスポーツ刈りの少年が排便中に、下からペロリとなめる。その顔は、どぶねずみとなめくじとなまずとかわうそすべてを集めたような顔だちなのだ。
五章で出てくる「いろは団」はくりくり坊主でふんどし姿の集団だ。
六章で出てくる外人マイトレーヤは、こんな描写。
その頭はまず、ゼンの頭の優に三倍はありそうに大きかった。同じ比率で巨大な鼻が顔の中央にどっかりと坐り、と言いたいところだが、重さに耐えかねて垂れているという風情で、しかし、その下の唇はお上品なのが逆に滑稽なくらいのおちょぼ唇、そして、上のほうにはだだっ広い額が迫り出し、その下にそのやたら比率の狂った顔とはおよそ場ちがいにロマンチックな碧の眼がブロンドの睫毛を飾って輝いている。けれども、珍妙中の珍妙はその頭だった。ぜんたいがみごとに禿げあがっているのに、アフリカ象を思わせる馬鹿でかい両耳のうしろにだけはふさふさした金髪が残っていて、これがあろうことか女学生風の三つ編みに編まれ、垂れたその先は海水に泳いでいたのである。
年齢は四十だろうか、五十だろうか、若禿げということもあるから三十代、ひょっとしたら二十代かもしれない。

この外人、マイトレーヤは、「あきらかに巨人症のうえに末端肥大症の海坊主は、一糸まとわぬ裸」で、「生まれて一度も磨いたことがないと覚しい黄色を通り越して茶色の虫食い歯」をのぞかせて笑うのだった。
また、七章で登場するトルコさんは、常にスチームバスにいるため、
「体表の皮膚が水分を吸い込めるだけ吸いこみ、飽和状態に達した水分が、力が入るたび力の入ったその場所からしみだす」のであった。トルコさんはしばらく外にいると、水分不足で苦しくなってしまう。あげくの果てには、サウナに入ってしまい、溶けるように消えてしまうのだ。
各エピソードそれぞれ面白いが、なかでも九章のマゾヒストの群れは慄然とする。夜になると、海から「片目、片耳、鼻壊え、片手、片足などの片輪者」が大挙やってきて、合唱する。
いじめてください
どやしてください
ぶってください
蹴ってください
切ってください
殺いでください
刺してください
抉ってください

彼らは鞭や棍棒や日本刀や剃刀や錐や鑿などの道具を持参する。
ゼンは、彼らの要求にしたがって、顔面に放尿し、脱糞し、鞭打ち、棍棒で殴り、錐で突き刺し、鑿で目玉を抉り、剃刀で耳を殺ぎ落とした。さらに、股間の一物を日本刀で刎ね、鋸で脚を、手を、首をひかせる。
ゼンは意を決して首を鋸引き、ついに引き落とした。頭部の落ちたあとの血まみれの首の穴から、まだ、あの声が洩れていた。
-痛いけど気持いい・・・気持いいけど痛い・・・痛いけど気持いい・・・
こうして、つぎつぎに躰を切り刻み、最後にはお尻の孔だけが残った。肉がすっかりなくなって孔だけになったそこから、消え消えになりながら、あの声がまだ聞こえていた。
-痛いけど気持いい・・・気持いいけど痛い・・・痛いけど気持いい・・・

チェシャ猫だ!
最終章では、モンジュボサツとゼンはリンガとヨーニの一致を果たし、こう説明される。
この躰じゅうにある陽と陰のすべての感覚を、身口意すなわち男根、口腔、肛門を手はじめにことごとく開発し、七つのチャクラの第七、サハスラーラ・チャクラの蓮華の尖端を開き、ここから大宇宙たるブラフマンにつながるのだ。こうして、アートマンたる我とブラフマンたる宇宙は相即相入し、一即一切、一切即一、事事無礙、円融無尽、ブッダのブッダたる境地、タターガタのタターガタたる境地、まことのニルヴァーナが成就されるのだ。

そして、まとめ!
法界善財なる奇体な名前によって求道遍歴を運命づけられたお前の旅は、ついにここまで達した。ヒーナ・ヤーナの故郷からマハー・ヤーナの特急列車に乗って上京して一年間、大方広物華厳経十地品に説く菩薩の十地、秘密曼荼羅十住心論に言う求道の十住心を遍歴して、ついにタントラ・ヤーナ、ヴァジラ・ヤーナ、アヌタラ・ヨーガ・ヤーナに上乗するところにまで到った。

相変わらず、何が何やら、であるが、めちゃくちゃ面白い。
あと、公衆便所の地下や、ごみの島などにアジトのような秘密基地みたいな場所を作って、住み込むシーンが出てくるのが、ワクワクした。これは70年代の楽しいムードが味わえるところ。

『黒い報告書』

2011年6月15日 読書
松本孝の『黒い報告書』を読んだ。1961年。
以下、目次。
高利貸謀殺事件
松竹荘殺人事件
だまし合い
僧一家射殺事件
犯人が柩をかついだ

「週刊新潮」の「黒い報告書」シリーズから、松本孝が執筆した殺人事件ものをチョイスし、書き改めたもの。あとがきによると、「高利貸謀殺事件」などは、週刊誌に載せたときの5倍の長さになった、とある。ちなみに、「高利貸謀殺事件」は今も連載される「黒い報告書」の第一号だ。
「黒い報告書」のシリーズは、「現実の事件に取材し、事実で押しながら、犯罪にいたるまでの人間関係を追う」ことに主眼がおかれた事件小説である。
本格推理一辺倒の中学生頃の僕なら、ちっとも良さがわからなかっただろうが、今読んでみると、面白い!
約50年ほど前の事件なので、今やまったく知らない事件ばっかりだが、まるで再現ビデオを楽しむような感覚で、楽しめた。
それぞれに面白さがあったが、いくつか引用してみよう。
「高利貸謀殺事件」より。冷静に計画をたてて実行されたはずの事件が、共犯の愚かさによってボロボロになってしまうくだり。
とにかく、あやしまれるようなことばかり、やりだしたのであった。
「今日も、ひるま朝総連の連中がきたわ。それから、新聞記者だっていう男も・・・あたし、こわい!自分が何を言い出すか、見当もつかないの・・・」
そういう眼つきは、尋常ではなかった。鈴木は、呆然とした。
(どうして、こんなにとつぜんとりみだしちまったんだろう?信じられない・・・)鈴木はわが眼をうたがった。(もしや、吉山の怨霊が・・・?)ふとそうおもうと、彼は背すじがぞっとつめたくなるのをおぼえた。
・・・八月にはいった。
千恵子の言動は、ますます異常さをくわえた。なだめすかしても、ききめがない。
「ねむれない。ねむれない」を連発し、近所のだれかれかまわず、「ねえ、睡眠薬買ってきてくれない?毎晩、うなされてこまるのよ」などと、たのみこむのだった。
(これじゃ、ダイナマイトをかかえているようなもんだ!)
鈴木洋の、第二の重大な誤算は、犯行後の阿部と安田の行動であった。
二人とも、鈴木に
「すぐから、やたらと金づかいをあらくするなよ。あやしまれるもとだからな」
こんこんといわれたにもかかわらず、もう翌日から、湯水のように浪費をはじめた。

「松竹荘殺人事件」で、すっかり所帯じみた妻に愛想をつかし、妻の妹に執着する男の感情。(この男、妻が眠る横で、平気で妹のふとんにもぐりこんだりするのだ!)
(ユキ子へのオレの執着は尋常じゃない。あの子を手ばなすくらいなら・・・オレは、あの子を、ころしてやる。ひとおもいに、ころしてやるんだ。・・・そうして、オレもいっしょに、死んでやる!)
ユキ子を殺して自分も死ぬ、というかんがえは、ひどく弘の気にいった。
(ころしちまえば、だれだって、天皇陛下だって、あの子をとることはできないんだから・・・)
ひるごろのアパートは、しずかだった。
弘は、ひとり頬をゆがめ、声を立てずに、いつまでも笑いつづけていた・・・。

「だまし合い」より。男女の口げんか。
「女房とは、仕おくりだけの完全別居。いまは独身同様、とりあえず親戚の家にひと部屋かりているなんて、大ウソだったんじゃないのよ!」
「うるさい、だまれ!それじゃ、自分は何だってんだ。最初は『あたし、ひとりぼっち、ボーイ・フレンドぐらいはいるけど』それが、『婚約者がいるの』になったとおもったら、つぎは『亭主がいるのよ』だ。まるでサギかカタリじゃないか」

「犯人が柩をかついだ」より。女たらしの男と、女房を満足させられないつまらない夫の対比。
結局、丹波方の就職するまでに、吉川があげた戦果は6人だった。いずれも、人妻である。彼は、女から金をせびることさえおぼえていた。
娼婦を買ったり、独身の女にわたりをつけたりするより、ひとの妻を秘密にかっぱらう方が、いっそう快楽の度あいは大きい。彼は、人妻を犯すスリルをわすれがたくなり、もっぱらそのチャンスばかりをねらう男になっていた。

主人の保は、こころよく二人をおくりだした。保は映画など見る趣味をもっていなかった。テレビでも、劇映画は見ない。パッと場面がかわると、もう10年のちだったりするのは、よくわからないというのだ。

この「黒い報告書」は「週刊新潮」でいろんな作家によって長期連載中の企画だ。週刊新潮はほとんど買わないけど、この「黒い報告書」があるなら、読んでもいいかな、と思った。
『ファンタジア』
ブルーノ・ムナーリの『ファンタジア』を読んだ。
以下、目次。
創造力ってなに?
不変の要素
思考は考え、想像力は視る
ファンタジア 発明 創造力 想像力
知っているものの関係
冷たい炎 煮えたぎる氷
七つ頭の竜
泥よけ付きのサル
ブルーのパン
コルクのハンマー
広場にベッド
五線譜のランプシェード
リドリーニ風に
ポップなマッチ
恐怖のモンスター
素晴らしき哉、重量挙げ選手
関係の中の関係
創造力を刺激する
ダイレクト・プロジェクション
知識を豊かに
クリエイティヴな遊び
サラダ菜のバラ
3次元の遊び
オリガミ
フォルムの分析
構造分野における組み合わせ可能なモデュール
書体
反復のバリエーション
15個の石
創造力とフォルム
架空の美術館
モノからモノが生まれる

ブルーノ・ムナーリといえば、ずいぶん昔に『きりのなかのサーカス』という穴のあいた絵本を買って読んだことを思い出した。面白い仕掛けだな、と思っていたが、そうしたエッセンスが教育的立場で展開されるのが、この『ファンタジア』だ。
創造力について多くのヒントが詰まっている。
個人的に面白かったのは、『リドリーニ風に』と題した一章。
リドリーニ風、とは、普通ならゆっくりと動くものが加速して動くような「動きの交換」を「リドリーニ風に動く」という。リドリーニはサイレント映画時代の喜劇俳優、ラリー・シモンのことだ。
今、20日の10minutes告知番組までに1本映画が撮れたらいいな、と思っているのだが、それを後押しするような感じだったのだ。
中の一節を引用しておこう。

今日の映画は、ある出来事を伝達するのに文学の方法、つまり常に言葉によって練り上げる方法を用いている。その上で映画に翻訳しているのだ。どれだけ多くの映画が小説を原作にしていることか!科学的な調査の場合だけが、映画カメラを正当に活用し、言葉では説明しても理解できないような現象、あるいは言葉ではなかなか理解しにくい現象をわれわれに見せてくれる。
したがって、映画的手法の技術面における可能性は、まだこれから開拓されるべきものである。

また、一時は未来派の一員とされたブルーノ・ムナーリが、未来派について書いた、こんな文章も印象的だった。

未来派絵画では、ダイナミズムが一枚の絵画に留まっており、ダイナミズムそのものがスタティックになる。そうすると混乱だけが伝わり、観る者はメッセージを引き出せない。動き、速さ、どんな時間的ディメンションもスタティックな技術では表現できない。むしろフィルムやキネティック・アートのような映画的技術を用いた方がいいのである。

ただ、全体に教育的立場から書かれているせいか、言ってることには納得できるが、学校でむりやりやらされる「楽しいこと」みたいな面倒くささを感じた。あれだけ学校が好きだったのに、卒業してみたら二度と学生時代には戻りたくない、と思ってしまった、僕の転向によるものなのか?


NHK-FMのベスト・オブ・クラシックで現代音楽が放送されていた。
主に通勤中に聞いたので、完全に聞けたわけではないが、プログラムをあげておこう。
 - アルディッティ弦楽四重奏団演奏会 -         
                              
「弦楽四重奏のためのプロジェクション」    湯浅譲二・作曲
                      (10分58秒)
「弦楽四重奏曲-“西・金・秋”作品96」   石井眞木・作曲
                      (12分30秒)
「弦楽四重奏曲 第5番」           デュサパン作曲
                      (17分23秒)
「弦楽四重奏曲“ザ・トゥリー・オブ・ストリングス”」    
                     バートウィスル作曲
                      (29分05秒)
「弦楽四重奏曲 第2番から 第3楽章」     リゲティ作曲
                       (3分20秒)
          (弦楽四重奏)アルディッティ弦楽四重奏団
  ~東京・津田ホールで収録~               
                   <2010/6/25>
                              
「弦楽四重奏のためのアンダンテとアレグレット」 リゲティ作曲
                      (13分08秒)
          (弦楽四重奏)アルディッティ弦楽四重奏団
     <SONY CLASSICAL SRCR1992>

カセッと生きる(略称:カセ部)
午後7時~11時過ぎ
なんば紅鶴
千日前味園ビル2階
http://benitsuru.net/
ドリンク代のみ!
とくに入場料は取らず!
保山ひャン、安井麻人、ジャン=ポール、丼野M美。
とにかく、カセットテープの魅力を伝えようと、がらにもなく頑張ってみた。
Drahtfunk-Products
My Dance The Skull
の紹介など。
めちゃくちゃ楽しかったが、どたばたしたり緊張したりして、口はカラカラ。
カセットのことについて詳しい人などおれば、こっそりと第二弾もやりたい。
でも、需要あるのかな~?


湊町リバープレイスプラザ1で「KANSAIアイドルEarly Summer Festa」
階段にすわって観覧。雨天でも屋根があるので大丈夫。
以下、予定されていたタイムテーブルと、たぶん80%くらい正しいセットリスト。
歌のあと、抽選があった。
13:00 OPENING
13:05 NANA
1.ヘビーローテーション
2.バタフライ
ESSEアカデミー、期待のユニット!
13:20 LOW KICK ANGELS
1.トーキョー(ダンス)
2.ウィ・アー・ロー・キック・エンジェルズ
13:35 鶴田 奈々
1.ミュージック
2.スマイルズ
3.スカイ
2曲めまでは弾き語り。
13:50 Jewel
1.フェイス
2.ハイスクールレヴォリューション
今回の白眉!
14:05 pastel
1.大声ダイヤモンド
2.恋のつぼみ
3.ラスター
低燃費ハイジの物まね!
14:20 Ricotta Veil
1.アイム・プリンセス
2.ウィンド
3.ピック・ミー(スウィート・リコッタのアスカと!)
14:35 あめちゃん
1.頑張らなくてもええねんで
2.ミスター
3.クレイジー・ゴナ・クレイジー
14:50 ポンバシwktkメイツ
1.K.W.M.D
2.桜色ヒーロー
3.ダイヤルナンバー3104
4.地下アイドルなんて呼ばせない!!
15:05 HOPCLUB
1.ジャンピング(おぎのかな、長島瑞穂、神定まお)
2.新しい道(滝口ミラ)
3.夏のお嬢さん(4人)
15:20 物販
16:20 握手会
翌日のカセ部の準備のため、物販などは参加せず。

狙われた娘

2011年6月12日 映画
丸林久信監督の「狙われた娘」を見た。1957年。
土屋隆夫「傷だらけの街」原作。
苦学生の彼氏を持ち、家賃を滞納している女性(青山京子)。
「貧乏人の生き血を吸っている」と彼氏には評判の悪い人物から金を借りたりしている。その評判悪いヤツは、青山京子を狙っていて、威丈高な取立てをしないため、ついついズルズルと借金していたのだ。
そんな金欠で追い込まれていた青山京子、満員電車で拾った財布をネコババしようとしたら、駅の外で財布の持ち主につかまった。警察に言わないかわりに、言うことを聞け、とあることを強要される。
この「あること」が、着ぐるみ着て、映画館の前でビラ配りのサンドイッチマンのアルバイトをかわりにやれ、という不思議な依頼。
翌日、サンドイッチマンの妻が殺されたニュースが!
でも、サンドイッチマンは、その時間には映画館の前でアルバイト中だったと証言している。
青山京子は罠にはめられ、アリバイ作りに利用されたのだ。
おまけに犯行現場に、青山京子のハンカチが残されていたという。
酔って帰ってきた青山京子を見て、苦学生の彼氏は彼女を糾弾する。
生き血を吸う金貸しは、青山京子にデートを迫る。
警察は彼女の言うことなど信じてくれないに違いない。
映画の冒頭で、青山京子は「わたしじゃない!」と絶叫していた。青山京子は精神的にもギリギリの状態に陥ったのだ。
金貸しこそ殺人犯だと警察に思い込ませようと、偽装工作をはじめる青山京子。
犯行を自白した遺書めいたものを書かせて、毒入りウイスキーで金貸しを殺してしまおうと、、、おいおい!
金貸しに身をまかせるフリして、まんまと金貸しの家に入り、ウィスキーを飲ませる。毒がまわって倒れた金貸しのポケットに、サンドイッチマン妻殺しを示唆する新聞記事の切り抜きなどを突っ込んでいる最中に、ラジオからは、事件の犯人が逮捕された、とニュースが流れる。
えっ!えっ!金貸し殺す必要なかった?金貸しの家から出たところに、苦学生の彼氏がおり、「君を見損なった!」と罵倒される。
青山京子、こんどこそのっぴきならない大ピンチ!
さて、これがなんとこの後の急展開でハッピーエンドになるのだから、すごい。

カセ部

2011年6月12日 ライブ
6月13日(月)
カセット生きる(略称:カセ部)
午後7時~
なんば紅鶴
千日前味園ビル2階
http://benitsuru.net/
ドリンク代のみ!
とくに入場料は取りません!
保山ひャン、安井麻人、丼野M美、他

今、若者を中心に最も熱いムーブメントとして再発見されているカセットテープの魅力をこれでもか、と思い知らせます。
レア音源が確実に聞けます!
もちろん、Ustreamもあるはず。
http://www.ustream.tv/channel/namba-benitsuru

開演前から、放送にふさわしくないカセットを流してますので、早めに来ていただけるのも面白いかも。

多数の支持があれば、第2弾もあります。
なければ、すねて、もうしません。
午後1時半から、阪急西宮ガーデンズで、ももいろクローバーZ「佐々木のひとり祭」
前半は、あーりんの15歳の誕生を祝うイベント。
れにちゃんボーカルで「夢見る15歳」歌うし、あーりんはソロ曲「だってあーりんなんだもん」を歌う!
後半は怒涛のライブ。
1.全力少女
2.Z伝説~終わりなき革命~
3.ココナッツ
4.走れ
5.行くぜっ!怪盗少女
6.コノウタ
結局、1時間みっちりのライブだった。
ライブ後は握手会。
前回よりも人が集まっていて、整理券ないと正面から見れないシステムになっていた。人と人の間から見えるももクロちゃんたちを背伸びして見ていると、今にも足がつりそうでハラハラした。
ZEPPもソールドアウトらしい。大きくなったね!

大阪に戻って、午後6時30分から、心斎橋アップルストアで「iPhoneで撮影&PV生編集トークナイト」
アップルストアの説明文をそのまま引用すると。
iPhoneで撮影した動画を使ったミュージックビデオを制作しながら進める、ユニークなトークイベントです。歌手や声優として幅広く活躍する宍戸留美さんの楽曲用PVを、映像作家の石田アキラ氏と俳優のソエジマシンゴ氏がFinal Cut Proを使ってその場で編集。並行して、宍戸さんを交えた3人がトークを展開します。楽しみながらビデオ編集を学べるチャンスです。ぜひご参加ください。
宍戸留美ちゃんだけでなく、「宍戸留美の妹」蝦名恵ちゃん、コトネちゃんも来場していた。蝦名恵ちゃんは、今回はじめて大阪に来たとのこと。コトネちゃんは関西在住の小学1年生。
一応、午後8時までのイベントだったが、面白いトークなどが時間内におさまらず、延長戦に入っていた。このイベントで作ったPVは近日中にYOUTUBEにアップされるとのことだ。
イメージフォーラムフェスティバル2011京都「感染する歌」「神話が生まれる」「ジェネシスとレディ・ジェイのバラッド」@京都シネマ
イメージフォーラムフェスティバル2011京都の最終日。
今日上映の3プログラムを見た。
特集マッピング・ストーリーズから。
Uプログラム「感染する歌」
悪霊退散/ロイー・ローゼン監督(イスラエル)
 スパンキングSMが、エクソシストみたいな悪霊退散のシチュエーションになる。叩かれる女性の口から漏れる悪魔の声の内容は、イスラエルのリーバーマン外相の発言内容。リーバーマンは極右政党「我が家イスラエル」の党首で、スパンキングされる女性も極右の家庭に育ったため、体内にリーバーマン(悪魔!)が棲みついている、という設定なのだ。
途中、アコーディオンとノコギリで情感たっぷりに歌うデュオがいたりして、一筋縄ではいかない作品だった。
しかし、スパンキングばっかりしていると、おしりもデコボコになっちゃうんだな、といらぬことまで考えた。

エルフランコ・ヴェッセルスの話/エリック・モスコウィッツ+アマンダ・トレーガー監督(アメリカ)
 耳にタコが出来るほど繰り返し語られた、移民の自分語りを、ミュージカル仕立てにした作品。これはダンサー・イン・ザ・ダークの逆バージョンとも言える、アンチ・ミュージカルの作品とも呼べるだろう。(呼べないかも)

未来は私たちのように年老いつつある/ベアトリス・ギブソン監督(イギリス)
 老人ホームのお年寄りたちが語るひとり語りを構成しなおして1つの合奏曲にしてしまう作品。

Vプログラム「神話が生まれる」
未来は資本主義でないだろう/サーシャ・ピルケル(オーストリア)
 オスカー・ニーマイヤー設計によるフランス共産党本部の建築についてのドキュメンタリー。

今日のマルキシズム(プロローグ)/フィル・コリンズ(ドイツ)
 ジェネシスのフィル・コリンズじゃないよ。東ドイツでマルクス主義を教えてきた教師が、現在について語る。「社会主義」と大々的に銘打たれた大会でのマスゲームと人文字は陶酔を呼び覚ますものがある。

モニュメンツ/レドモンド・エントウィスル(イギリス)
 ロバート・スミッソン(ランドアーチスト、1973年没)、ゴードン・マッタ=クラーク(アナーキテクチャ、1978年没)、ダン・グラハム(ミラーハウス)が、ニュージャージーを歩いて建築物について語る、という設定の作品。
アーチストによる建物探訪で、当然、辛口の批評が飛び出すのである。

Tプログラム「ジェネシスとレディ・ジェイのバラッド」
パパル・ブロークンダンス/マリー・ロジェ
 ジェネシス・P・オーリッジのミュージック・ビデオ
 スロッビング・グリッスルではじめて知った頃は、小柄で華奢だったのに、さすがに年齢を重ねると、肉体が膨張してくるんだな、といらぬお世話を感じた。
意外とロッカーの顔立ちしていたんだ、と中年になって以降の彼(彼女?)についてはよく感じるようになった。

ジェネシスとレディ・ジェイのバラッド/マリー・ロジェ
 ジェネシス・P・オーリッジとそのパートナー、レディ・ジェイのドキュメンタリー。お互いに整形して同じファッションに身を包み、そっくりになろうとしたことなど。バロウズ仕込みのカットアップを肉体に施して、パントロジェニー(新人類創造)を目指すところなど最高!一緒に豊胸手術したときの娘の反応(車を買うお金を胸に使ったの?と聞かれたらしい)とか、アナーキーなイメージではなく、家族のことを愛する面が見られて、普通の人なんだ、との思いを強くした。それは悪いイメージでなく、可愛いのだ。また、ジェネシス・P・オーリッジが、過去の資料を倉庫に整理していて、自分が出た新聞の切り抜きやレコード、フライヤーなどをきちんと保管しているのも、なんだか可愛かった。
若き頃のライブ風景や、サイキックTVの楽屋裏、トニー・コンラッドとのバイオリンライブなども見れる。
いじめられた学校時代の話や、人と同じファッションに安住するのを嫌うことなど、変態の来歴も語られ、おしりで奏でる曲などみどころも多々あるが、この作品ではレディ・ジェイの魅力にまいってしまった。
そりゃ、ジェネシス・P・オーリッジも夢中になるはずだ!何がどう似ている、というわけではないのだが、レディ・ジェイを見ていて想起したのは、ジョジョ川ちゃんだった。アヴァンギャルドやフェティッシュに親和性がありながらも家庭的だ、というところが似ていたのかもしれない。
http://www.balladofgenesisandladyjaye.com/ballad/
パヴェーゼ文学集成第6巻『詩文集 詩と神話』
パヴェーゼ文学集成第6巻『詩文集 詩と神話』を読んだ。
以下、目次。

詩集 働き疲れて
「祖先」
南の海
祖先
風景1
故郷を失った人びと
大山羊神
風景2
寡婦の息子
真夏の夜の月
かつていた人びと
風景3


「その後」
出会い
孤独癖
黙示


夜想曲
苦しみ
風景7
情熱の女たち
灼けつく土地
寛容
田舎の娼婦
デオーラの思い
二本のタバコ
その後

「田舎の町」
時は流れて
わからない人たち
建てかけの家
田舎の町
先祖返り
恋の冒険
古代の文明
ユリシーズ
規律
風景5
無規律
作者の肖像
九月のグラッパ
踊り
父性
アトランティック・オイル
砂取り人夫の日暮れ
馬車引き
働き疲れて

「母性」
季節
夜の楽しみ
悲しい晩餐
風景4
思い出

母性
船頭の妻
酔いどれの老婆
風景8

「緑のたきぎ」
外へ
紙の吸い手たち
世代
反乱
緑のたきぎ
ポッジョ・レアーレ
政治犯の言葉

「父性」
地中海の民
風景6
神話
屋上の楽園
単純
本能
父性
北の星

「付記」
詩人という仕事(『働き疲れて』について)
まだ書かれていない一連の詩について

「異神との対話」
序言

怪物

牝馬

野性
波の泡
母親
二人

岩山
慰めえぬもの
狼人間
客人
篝火


魔女
牡牛
血族
アルゴー船の者たち
葡萄畑
人間
秘教
洪水
美神
神々
作者ノート

詩集「働き疲れて」のほうは、チェーザレ・パヴェーゼの物語詩が堪能できる。
それらの詩のなかで、詩の主人公、語り手は少年や娼婦や老婆、はたまた機械工やら馬ひきなどなど多様な面をみせる。

『異神との対話』の主題は、「作者ノート」によると渾沌×神々、打ち拉がれた人類、悲劇的な人類、微笑む人類と神々の4つ。「広く一般に知れわたっていて、個人的にかつ伝統的に受け容れやすい」ギリシア神話を扱っている。言ってみれば、これは神話を題材にした二次創作なのである。世が世ならば、コミケで販売されていてもおかしくないのだ。(ポルノじゃないけど)。
この作品(レウコとの対話、という名だった)を知ったのは、ストローブ=ユイレの映画からだったが、そのときには気づかなかったことが、こうして文章で読んでみると、みえてきた。
いくつかの文章を引用しておこう。

女神ディアーナと、彼女がよみがえらせたヒッポリュトス(ディアーナによってウィルビウスと名づけられた)の対話。「湖」より

ディアーナ よく考えてみるがよい。ウィルビウス=ヒッポリュトスよ。おまえはいままで幸せだったのに
ウィルビウス 構わない、奥さま。わたしはあまりにもしばしば、湖にわが身を映してしまった。わたしの願いは生きることだ、幸せになることではない。


キルケーとレウコテアーの対話。「魔女」より

レウコテアー でも、そんなことまで彼(オデュッセウス)に言ったの、あなたといっしょに過ごした1年のあいだに?
キルケー ああ、娘よ、人間を相手に宿命の話をしてはいけないわ。彼らはすべてを言いつくしたと思いこむから。それを、鉄の鎖とか、天の定めとか、呼んだぐらいで。わたしたちのことは、あなたも知るように、宿命の女主人と呼んでいる。
バッケーとオルペウスの対話。「慰めえぬもの」の第一稿より
バッケー オルペウス、あたしにはとても信じられないわ・・・
オルペウス 繰り返しておくが、わたしはわざと振り返ったのだ。そういう考えならば嫌というほど持っていた。だから、わたしの後を追いかけてくる他の女たちにも言ってやってもらいたい。振り返ったぐらいで地獄へ落とせるものならば、いくらでもそうするだろう、と

偽れる盛装

2011年6月9日 映画
偽れる盛装
吉村公三郎監督、新藤兼人脚本、伊福部昭音楽の「偽れる盛装」を見た。1951年。
祇園で体をはって強く生きていく芸妓、君蝶に京マチ子。
それに対極にある存在として、妹の地味な事務員妙子(藤田泰子)、病気で死んでしまう若い芸者、そして、なさけない男たちが配される。
京マチ子は強くて金のある男へと次々のりかえていくのだが、京マチ子の発言は今聞いてみると、「そうだ、そうだ、そのとおり」と膝を打つところが多い。古い京都の町を生き抜く女ではあるが、きわめて現代っ子的発想をしている。
格式の違いを理由に結婚を反対される妹に、東京の空気を吸った女性が、こんなことを言うシーンがある。
「京都は幸い戦災を免れたけれど、でもそれが京都にとって幸せだったかどうかはわからないわ。古い歴史のあとは保たれたでしょうけれど、そのかわり、封建のにおいも強烈に残したわ。それがあの綺麗な屋根瓦の下に根強く残っているわ」
この言葉に代表されるように、この映画の主人公は、「京都」なのである。
クライマックスで、京マチ子にいれこんだあげく金銭面でにっちもさっちもいかなくなった男が、短刀をかざして京マチ子を追いかけるシーンでは、レオス・カラックスばりに当時の京都を駆けぬける京マチ子の姿も見られる。ここでも、本当の主役は、京マチ子に走られる京都なのだ。
むちゃくちゃ面白い映画だった。
今回、この映画は、中島貞夫の邦画指定席での放送を録画しておいて見た。解説の中島貞夫によると、京都を舞台にした映画をこれから幾本かピックアップしていくとのことで、これは楽しみ。

デメキング

2011年6月8日 映画
デメキング
寺内康太郎監督の「デメキング」を見た。2008年。
いましろたかしの漫画を原作にしており、この映画では脚本にもかかわっている。
なだぎ武、喜安浩平主演。
中学生のひろし(喜安浩平)は、クラスではいじめられ、パシリに使われ、近所の小学生と「探検隊」を組んで遊んでいる。ある日、「天才」と書いたヘルメット、赤いマフラーでオートバイを乗りまわすなだぎ武に出会う。こどものクイズみたいな暗号を解いて行き着いた先で発見したのは、謎の宇宙怪獣デメキングの足跡だった。
ひろしは夢でデメキングが町を破壊するのを見たりするが、名前のとおり、目が飛び出た怪獣で、ナメゴンがブルトンを殻としてかぶったような姿をしており、これだと、あのゴジラのような足跡がついたのかどうか疑問に思えるが、夢なんだから、これでいいのか。
ひろしは小説を書いて芽を出そうとするが、どうにもあやういし、「天才」だったはずのなだぎ武も所帯じみたしみったれた生活に追われている。
友情出演で本上まなみが出ているが、ほとんど男ばかりの小中学生ホモソーシャルの世界が描かれ、男たちはやはり、どうにも冴えない。あやしげな先輩、松尾貴史も、どこまでもあやしげだ。
それにしても、1975年生まれの喜安浩平の見事な中学生ぶりには驚いた!

斎藤寅次郎監督の「底抜け忍術合戦・俺は消えるぜ」を見た。1958年。
「底抜け忍術合戦」の続編。
大阪城の絵図面争奪戦。
三木のり平と八波むと志主演。
クワイ河マーチを模したと思われる、きわめて和風の音楽とともに、「戦場にかける橋」を思わせるシーンが出てきて、時代を感じさせて面白い。「戦場にかける橋」はこの映画の前年、1957年の公開だったのだ。
導火線に火のついた爆弾が足にからまって、逃げても逃げても追いかけてくるギャグ、人肉を食べさせられるかと思いきやイノシシの肉だった、など、ベタベタなお笑いつるべうちで楽しい。
ミヤコ蝶々、南都雄二や、トニー谷が登場して、ひとしきり芸を見せる箇所もある。リアルタイムではほとんど記憶にないけど、南都雄二の面白さに驚いた。
忍術を無効にする「マジックミラー」(鏡の反射で光を当てる)は、こどもの遊びレベルの発想で愉快だった。当時、自分が子どもで忍者ごっこしてたら、この「マジックミラー」使ったにちがいない!

『CATS,CATS,CATS』『ANGELS,ANGELS,ANGELS』
『CATS,CATS,CATS』『ANGELS,ANGELS,ANGELS』
横尾忠則監修の、アンディ・ウォーホルギフトブックシリーズ。
猫のイラストレーションと、アンディ・ウォーホルの言葉をチョイスした、『CATS,CATS,CATS』と、天使のイラストレーションと言葉の『ANGELS,ANGELS,ANGELS』を読んだ。他にもシリーズとしては『KISS~』もあるらしい。(それは見つけられなかった)洋書では、シューズのイラストレーションを集めたのもあるらしく、アンディ・ウォーホルのフェチがうかがえる。
中の文章は、以下の本から引用したものだそうだ。
『アンディ・ウォーホルの哲学』
『アメリカ』
『ポッピズム』
『アンディ・ウォーホルのパーティーブック』
『アンディ・ウォーホル日記』
『アンディ・ウォーホル:彼自身の言葉のなかで』
引用した文章を読んで事足れりとするのでなく、これらの本は、それぞれ面白そうなので、いずれ読んでみたい。
それぞれ、1つだけ引用しておこう。
CATS,CATS,CATS
「哀しみにひたっているときって、なんだろう?ハッピーになれるというのに」
ANGELS,ANGELS,ANGELS
「美しさというのは、なにくわぬ顔でやってしまうひとにこそ、縁があるってものさ」

『少女からの手紙』
宇野亜喜良の『少女からの手紙』を読んだ。
以下、目次

蘇州より
カードの城
ロンドンの霧
アリスのように
森という字
若草の萌える頃
木・私の友だち
悪いヤツ
王様とロバと私
モン・サンミッシェル(コクトー)
泣く女
犬と魚
月光
ヴェニスにて
たいくつをはいた猫
悲しみよこんにちは
シモオン(ルミ・ド、グゥルモン)
小曲(フィリップ・シャヴァネエ)
パヴァーヌ
失恋ホテル
あいつ
スイスにて
牧神の午後
恋猫(寺山修司)
スフィンクス
城で
冒険
モスクワにて
バグダッドの盗賊
昔の唄
夕暮れの戸口(シャルル・ゲェラン)
淋しいという字
涙という字

牡牛フェルジナンド
タヒチアン

宇野亜喜良のいつまでも古びない、思春期を刺激するイラストレーションと、宇野亜喜良好みの世界を切り取って紹介する、魅惑の1冊。
京都シネマでイメージフォーラムフェスティバル2011
午後2時からアニメーションセレクションプログラム「秘密の機械」
シャドウ・カッツ(マーティン・アーノルド監督)
 既存の映像を使って反復する手法「ファウンド・フッテージ」の作家だが、今回はディズニーを素材にした。プルートとミッキーが抱き合って笑っているだけの映像が、スクラッチされて、もう何が何やら。
シークレット・ライフ(レイノルド・レイノルズ監督)
シークレット・マシーン(レイノルド・レイノルズ監督)
シックス・イージー・ピーセズ(レイノルド・レイノルズ監督)
 シークレット3部作。時間の刻み方が独特で、映画前史の視覚の面白さが味わえた。
マスク(ブラザーズ・クエイ監督)
 スタニスワフ・レム原作、ペンデレツキ音楽の人形アニメ。こわい!

COCONのKARA-Sでパンパク「2011in京都」
パンツの作品が大集合。
おおむね、パンツの形のカンバスにパンツを意識したテーマで絵を描いた作品が多くて、まるでパンツのてのひらの上でアートしているようで、手法としては安易に思えたのが残念だったが、それでもバラエティに富んだ作品が見れて、楽しかった。とくに、人とは違うことをしている作品には感心させられるものが多かった。

午後7時からなんば紅鶴で「株式会社恋愛研究会主催 小釣朋秀一周忌法要」
ロビン、イトウタカアキ、中内龍、劔樹人、西野ヒロシ。
歌あり、クイズあり、アンケート、映像ありの、イベント。
小釣黄疸ウルトラクイズの装置や、回答者として登場した故・小釣氏の胸像(目が光る!)など、道具が半端ない。
赤犬に神聖かまってちゃんのマネージャーに、と面子は豪華で、故・小釣氏を語る際にしきりに言われる「器の小ささ」とはアンバランスな感じで、故人の思い出を語るにも、既に記憶が薄れてしまっているとか、故人はさんざんいじられまくっていて、それが逆に故人の人徳を感じさせて面白かった。
僕も生前、それほど小釣さんと親しい間柄ではなかったのだが、こうして一周忌だと聞くと、参列したくなる、何か不思議なパワーがあるようだ。

NHK-FMで「現代の音楽」
                          猿谷紀郎
                     【ゲスト】鈴木俊哉
 - 演奏家に聞く リコーダー・鈴木俊哉 -(1)     
                              
「“リコーダーとオーケストラのための4つのアダージョ”   
                       から第3楽章」
               サルヴァトーレ・シャリーノ作曲
                       (6分30秒)
                   (リコーダー)鈴木俊哉
                   (演奏)東京都交響楽団
                      (指揮)沼尻竜典
  ~サントリーホールで収録~               
                   <2009/8/25>
                              
「リコーダーと二十弦箏のためのトッカータ」   望月京・作曲
                       (7分00秒)
                   (リコーダー)鈴木俊哉
                    (二十弦箏)吉村七重
  ~淀橋教会で収録~                   
                     <2009/11>
                              
「風に運ばれた対蹠地からの手紙」              
               サルヴァトーレ・シャリーノ作曲
                       (6分30秒)
                   (リコーダー)鈴木俊哉
  ~NHK504スタジオで収録~             
                              
「ムネモシュネ」        ブライアン・ファーニホウ作曲
                      (11分00秒)
                   (リコーダー)鈴木俊哉
  ~東京オペラシティ・リサイタルホールで収録~      
                   <2008/1/17>


日本橋ラブコンシアターでファンタピース。
午後2時の回を見た。
開演前のアナウンスは、長谷川、藤井。
1.ずっと見ていて☆(長谷川、谷口、川口、佐藤、藤井)
2.一緒に(同上)
3.エターナル(鈴木由佳オリジナル)
4.カップル・オブ・シャドー(長谷川、谷口、川口、佐藤、藤井)
5.オーバー・ザ・リアリティー(長谷川、谷口、川口、佐藤、藤井、吉末)
今回は、吉末凪沙ちゃんのデビューライブであったのだ。
なぎさちゃんは、一言で言えば、猫のような、男好きのするルックスの可愛い子で、ルックスの可愛らしさで、ついに山崎佑奈を超える逸材が登場したことになる。今後、どのようなキャラクターを押し出してくるのかが楽しみ。

午後3時から、『MUSIC PEACE PROJECT ~東北地方太平洋沖地震チャリティーライブ~』 に出演。
会場:弾き語りハウス テンイヤーズアフター
大阪市中央区東心斎橋2-5-32 みわビル3F
06-6213-0205
http://sound.jp/tenyearsafter/
入場料:¥3000 (1ドリンク付)
※一部を日本赤十字社に寄付します
15:00~15:20 じゅん☆ONE   
15:20~15:40 そらら
15:40~15:50 保山ひャン
15:50~16:10 丼野M美
16:10~16:40 いあとねっち!
16:40~17:10 天心和風乙女団
店内は人が多くて暑かった。換気のために窓をあけたりしていたが、そのため、歌声が外にも聞こえているのが面白かった。隣のビルの人が、不思議そうな顔で店のほうを見ていたのが印象的。
各出演者をミュージックピースさんがきっちりまじめに紹介している司会がこれもまた印象的。

午後6時からあべのhoopで翌日のアイドルライブのちょこっと見せイベント。
司会はザ・ミルク。まず、ザ・ミルクが1曲。
1.ナンバー・ワン
サリジュア
1.Time 2 Party(コマチのカバー。めちゃかっこいい。いつ曲が終わったかわかりづらい歌なのが玉にキズ)
2.カレーライス(オリジナル!)
クリスタルバーニッシュドール
2曲。KARAのミスターをやったのだが、お客さんが本物のKARAだと思って、「あれ?メンバー4人?え?」と言ってたのが面白かった。
メアリーエンジェル
1.スーパーアクション(最近見るメアリーは1曲めをこの曲やることが多いな)
2.サクシード(新しい面を見せる、という新曲で、最初聞いたときはちょっとどうかと正直思ったのだが、何度か聞くうちに、どんどんよく思えてきた。これが新生メアリーの力なのか!)
SKETCH
ダンス、セカンドシングルから、虹色デイズ、というラインナップはいいのだが、あの自己紹介は下品きわまりないと思った。だが、確実にその手のアイドルを好む層もあるので(プリンズとか)、やめろというわけではない。また、ダンスを前面に押す意気はいいが、サリジュアやメアリーエンジェルのすごさの前では、特別ダンスを押す意味があるのか疑問に感じてしまった。
ラストは、ザ・ミルクがもう1曲「ラブ&チョキ」

『特殊まんが-前衛の-道』
根本敬の『特殊まんが-前衛の-道』を読んだ。
根本さん版の『まんが道』に、但し書きで「特殊」「前衛」をつけざるをえない、根本さんのヒストリーをたどる(かのような)1冊。
以下、目次。
はじめに-アイム・フリー-
1.人の役に立つ
2.ガロ デビュー前後
3.没入
4.宿題十三年
5.締切り対お化け
6.無知も穴ドレズ
7.悪戯の脳
8.韓国の大學で
9.大麦太郎ネヴァー・ダイ
10.ロックンロールにヨロシク!
11.まんがと因果鉄道の旅
おわりに-ドリームズ・カム・トゥルー-
巻末スピリチュアル対論 根本敬、天久聖一
 読売巨人軍 まんが世相巻末放談 
 「お前」に或いは鏡の向こうの「お前」へ
 純度百%のアート/わたしは、もっと革細工をつくるときにゆうきをだしたい/ぼくは、いじめられている子ブタや地しんが起きた時に勇気を出したいです/わたしは、肝試しとかする人が「凄いな」と思った/本当の強さは「優しさ」です/免許がいるのは次のうちどれ?1、車の運転2、釣り3、飲み会/文鳥のオスメス見分け方/発情期。何か新しいこと始めよう!(アイル・トライ・サムシング・ニュー)/僕は、犬に噛まれたらゆうきを出したい/読売巨人軍プレゼンツこだわる男の「必須極太アイテム」とは/1、非常用通報ボタン(列車を緊急停止させる装置)/2、モデルガン/3、石灯籠/4、ラック(マガジン用)/5、べっ甲の飾り物/じゃあ、居酒屋に移動しますか/6、小學読本/7,モニタカメラ(犯罪抑止を目的として)/8、作業効率を高めるスカイポーター/会わすなら壁の前で/閉店時間です/タクシーの中/本物の男には、最低七人の敵がいるのだから/わたしは、もっと革細工をつくるときにゆうきをだしたい/二軒目は既にスタートしていたらしい/秋まで有能なようでありません/あ、誰か飲み物に何か入れた?(7頁から8頁まで繰り返し)/ウルトラショートのチルアウトのツボですので/私は、自分の大事な同僚がほかの上司にいじめられていたら、私は、その人にさからっている気分で「止めて下さい」といいます/暴走族(リーゼント禁止)/で、解説終わって/歯のないたけとんぼ教室/不名誉を持つもう一人の人の近くのそれである秋/我々が一番目だけに安全なOnlyであるならば、それは均一です/

図版
巻末特別企画新宿タワー・ロックスター伝説

本書には、この前ドミューンで相原信洋追悼イベントやったときに披露した、エロ話とか、京都のトランスポップギャラリーでのイベントで映像つきで語ってくれた「ドリームズ・カム・トゥルー」の話などが語られていた。
なお、巻末対談の小見出しは、99%内容とは無関係。写真のキャプションもむちゃくちゃなうえ、同じ写真ばかり使う、という特殊前衛さ!

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