ブラックロッド3部作
古橋秀之のケイオス・ヘキサのシリーズ3冊を読んだ。面白い!ネタバレしかしていないので、要注意。
まず『ブラックロッド』
舞台は積層都市ケイオス・ヘキサ。その層によってカーストが設定されている。
その最下層市街の雑踏には、こんな者たちが蠢いている。
全身に真皮層写経(ダーマスートラ)を施し、念仏を唸りながら歩く少年僧侶(ボーズキッズ)の一団。重格闘用に成型された力士(スモウレスラー)たち。人形嗜好者を当て込んだ外骨格娼婦(ヴァンプ・ドール)。そこここにうずくまり、街路の地下に埋設された霊走路(ケーブル)から漏れ出す霊気をすする地縛霊。
黒杖特捜官(ブラックロッド)と呼ばれる男たちは、公安局の魔導特捜官で、黒革のコートに黒いブーツ。黒い制帽の正面には眼をかたどった徽章。その瞳に埋め込まれた、青く光を放つ擬似水晶体。魔術士の象徴『第三の眼』、霊視眼(グラムサイト)。魔導特捜は達人級以上の位階の魔術士によって構成される。右手には巨大な黒い呪力増幅杖(ブースターロッド)
対する敵はゼン・ランドー。彼の正体は、旧日本帝国軍が用いた戦術級蠱毒「伝屍兵」。奇門に精通し、怨霊を無限に取り込んだ影男。ランドーはケイオス・ヘキサの基礎部分に封じ込められた人柱を解放、吸収し、都市に壊滅的な打撃を与えて、奈落堕ち(フォールダウン)させようとしている。
この対決に絡むのが、降魔局・妖術技官(ウィッチクラフト・オフィサー)の少女、ヴァージニア9。彼女は魔女の分身。
そして、私立探偵ビリー・ロン。彼もただものではない。吸血鬼なのだ。
この世界はオカルトに支配されているが、当局のオカルトが西洋中心なために、ランドーが用いる東洋オカルトに翻弄されてしまう。
ランドーは目的を達成するため、ブラックロッドに乗り移るが、それが運のつき。
のりうつった瞬間、得体のしれなかったランドーの属性がブラックロッドに固定されてしまったのだ。
魔術対決みたいな話で、帝都物語のライトノベル版かと思わせる。
愉快なのは、ルビのついた漢字の用語の数々で、呪装戦術隊(SEAT)とか、機甲折伏隊(ガンボーズ)、装甲倍力袈裟(パワード・カシャーヤ)、呪弾(ブリット)、自在護符(ヴァリアブル・タリズマン)、共感効果(フレイザーエフェクト)、身体施呪(フィジカル・エンチャント)、呪式発声(ハードヴォイス)などなど。
こういう言葉使いが読みにくいのかというと、さすがライトノベル、読みやすさは抜群。多くの造語も、ゲ−ムの際に覚える呪文程度の難易度で、らくらくクリアできる。
読後感は、ゲーム。

2作目の『ブラッドジャケット』は、吸血鬼ビリー・ロンの『ブラックロッド』以前のお話。
吸血鬼殲滅部隊(ブラッドジャケット)の隊長、アービング・ナイトウォーカーは、吸血鬼ロングファングでもあり、探偵ビリー・ロンでもあったのだ。
吸血鬼退治のヘルシング、巨大十字架を武器にする殺人神父など、登場人物も面白い。
この作品は一応ハードボイルド的なまとまりがあり、前作のような混沌を力でねじふせようとする狂熱はない。そのぶん、読みやすいが、ひっかかるところのない、普通の小説になってしまっている。
もっとも、この作品でのみどころは、吸血鬼の治癒再生能力の凄さから来るアクションの面白さだ。こういう感じは平井和正と山田風太郎ではじめて味わったが、ケタ違いだ。心臓以外全部バラバラのグチャグチャでも、数秒後には元に戻っている。
こりゃすごい!

完結編『ブライトライツ・ホーリーランド』は最高傑作。
冒頭から超駑級の戦闘シーンが展開する。
装軌式の大蓮華座に結跏趺坐する巨大仏「毘盧遮那」は、機甲折伏隊の本尊たる重機動如来。
一方、異教の論理によって人格化した嵐の魔神「百手巨人」は、上半身に大小何十対もの腕を生やし、暴風と雷光をまとい、荒れ狂う竜巻きのエネルギーをその身に凝縮している。
この格闘は、殴ったり蹴ったりしているけど、ダメージは論理によって与えられている。
見た目は喧嘩だけど、実際には大論争なのだ。
この闘いによって、機甲折伏隊は全滅する。
これにより、当局はプロジェクト・トリニティを発動、禍福の縄であり輪廻の蛇であり神の爆薬であるアザナエルが投入される。
本作での悪役はスレイマン。彼は嗤う悪霊、スペルジャグラー、踊る死人占い師、殺戮の狂詩人、馳せる疫病、怒れるジョーカー、悪意のアヴァタールなのだ。一言でいえば、トリックスター。
スレイマンは、狂った魔女ヴァージニアサーティーンによって甦る。ヴァージニアサーティーンは関節人形だ。
本作でのオカルト対決は圧巻で、特に、ヴァージニア(魔女)のオリジナルとスレイマンの対決には感激した。一方が相手を簡単に葬ったかと思いきや、大逆転があったりする。
悪の権化スレイマンと、おそらく最強の天使が合体してしまう究極のフュージョンもある。
本作では、いろんな謎に決着がついていき、前作の登場人物が絡んでくるが、すっきりしたかといえば、謎が謎を呼んで混沌とする一方だ。
とにかく、作者の過剰な言葉の奔流にここちよく流されて、たどりついたら、ここはどこ?なのだ。
書きたい放題は、小道具にもあらわれる。
たとえば、「シヴァ神の猛り」という名のチョコバナナサンデースペシャルが出て来たり、クライマックスの格闘時に、「19年間、自分のガキみてえな小娘の小便臭えアナに突っ込むのを想像してチンポこすってきたんだろう?あぁ?無理すんなチンポ勃ってんぞ『ボクにもヤらせてェ〜ン』って頭下げてお願いしろよちゃんと判りやすいようにそのハゲ頭ピッカリ光らせてな!」なんて啖呵きったりする。
まさに書きたい放題。
重要な役どころで、コマンド・ヨーガの達人、機甲羅漢のアレックス・ナムが登場する。
彼の闘いも迫力満点だが、思う存分彼に闘わせるため、女が自らを犠牲に死ぬくだりは、クサイ!と思った。
プロジェクト・トリニティとは、32対のアザナエルの霊体爆縮で結界を作り、全239体のコードα(天使)の霊体融合で神を創造しようとするものだ。
で、プロジェクト・トリニティ発動でどうなったかと言うと、「それ」が誕生。
「それ」は神であり、悪魔であり、竜であり、巨人であり、要するに、正確には認識できないもので、それぞれの存在のレベルによって、それを解釈するもの。まあ、神だ。
「それ」が生み出される際のエネルギーで、世界は壊滅。ただし、天使とスレイマンの合体したものが、本当なら人々を殺し尽すつもりだったのに、人々を衝撃波から守る。
で、「この世は巨大な冗談だ」とか歌いだす。
世界はこれからまた作られるのか。
『ブラックロッド』がゲーム、『ブラッドジャケット』がミステリーで遊戯の典型を示したとしたら、この『ブライトライツ・ホーリーランド』は、そうした遊戯にも影を落としている意味の解放を狙ったものと言えるかもしれない。

続高校三年生

2006年9月11日 映画
同時多発テロから5年がたった。
この5年で、本当のテロ国家はどこのことなのか、非常にわかりやすくなったと思う。
そんな今、見るべき映画は、これしかない、と、選んだのが、この1本。
弓削太郎監督の「続・高校三年生」を見た。1964年。
舟木一夫の歌をテーマにしており、本人も傍役で出演している。
歌の出演は団地の奥様たちに歌を教える役で、コロムビアローズ。「長い一本道」を歌っていた。
「高校三年生」はたぶん未見なので、また探し出して見てみよう。
この映画のタイトルみたいに、「続」をつけると、まるで高校を卒業できなくて、だぶっている学生を指すみたいで、面白い。「続高校三年生」って、悪口じゃないか。
さて、映画はわりと古典的なストーリーで、ハイソな団地の娘、姿美千子と、父子家庭の工員の息子、倉石功との淡い恋愛まじりの友情を中心に、高校生の問題を描く青春映画。
乱れた生活を送る水商売のママの娘が、ママに思いを寄せる男性(成田三樹夫)を誘惑するが、断られて母娘の絆を再確認する話とか。
姿と倉石の仲を嫉妬した同級生の男子のやっかみに対して、倉石が決闘を迫る話(倉石はボロ負けなのに、何回も起き上がって向かっていき、ついに降参させてしまう)とか。
倉石は父の夢を叶えるために、大学に行って、技師への道を進もうとしている。しかし、倉石は色弱で、どんなに頑張ってもその資格が得られないのだ。それを父に告げるのは、夢を壊すようでしのびない。そこで、中学生の弟にその道を進んでもらって、自分は働こうと決める。ただ、この弟、勉強が大嫌いで、大学否定論者。
結局、姿に挑発されて、猛勉強し、やればできることを証明し、丸くおさまる。とか。
中心になる、姿と倉石の話は、次のとおり。
姿の母親は見栄っぱりで世間体を気にする性格。階級が違う倉石との交際を認めず、2人の仲を裂こうとして、学校におしかけて担任教師にねじこんだり、倉石の父親に談判に行ったり。
姿はすっかりむくれて、ハンストを決行。
そのときの言い草が面白い。
「わたしはヘレンケラーになるのよ!唖でつんぼで、めくらになるのよ!」
立派なようなヤケクソのような宣言だ。
クラスメートたちはデモ行進などして、2人を会わせて、ことを丸くおさめようとする。
今なら簡単にグレたり、家出したり、家庭を崩壊させたりするようなシチュエーションだが、この映画では、よく出来たこどもたちが、家庭をもちこたえさせる。
40年以上の歳月を経て、子供たちの状況は大きく変わったが、大人たちの世界はほとんど変わっていないように見える。
同級生の役で、堺正章や、渚まゆみ、東京子などが出演していた。
東京子って!いいネーミング!

ちなみに、この映画は、アメリカのテロとは無関係なところが、いいところだったのだ。
第2回南港ダンスフェス、ケーブルテレビショーin KANSAI予選を見に行った。
雨が降りそうだというので、屋外からホールに移動。
予選出場は全9組。
1.ざしきわらし
2.シャムロック
3.パワフルボーイズ
4.ダンシングヴィガー
5.S.K.NOVA
6.ルシエル
7.スティッカーキッズ
8.アラジン
9.海賊
決勝に進んだのは、この中からわずか3組。
シャムロック、エスケーノーヴァ、アラジン。
審査結果が出るまでに、このイベントのテーマ曲だかなんだかを、音楽の先生みたいなのが出て来てみんなに歌わせていたが、これが非常に独善的で、イベントのステージとしてまったく成立していなかった。この時間がまるっきり無駄。
さて、予選通過の3組については、まったく異論なし。
だが、今回落ちてしまったが、もう1回見たいと思わせるグループもあり、10月、11月の予選に再度チャレンジしてもらいたいものだ、と思った。
考えてみれば、何度も予選落ちて、何回も出て来た方が、お客さんにダンスを見てもらう回数は増えるわけだ。これは、ある意味、おいしい。
「チャンネルa」のエイベックスオーディションを見てたら、今年のATCダンス&ボーカルコンテストに出ていた平原まなみちゃんが、映っていた。この南港のコンテストでは予選落ちしても、エイベックスのオーディションは予選を通過しちゃうのだ。

今日は日本橋で、まほいみーの路上ライブがあったが、雨のため、どこで何時からやってて、いつまでやってるのか、判然とせず、またもや逃した。
いつになったら、まほいみーを見ることができるのか。
M1グランプリの予選に、レレレとラララが出るので、見に行こうとしていたが、出番がかなり後のようなので、パスさせてもらった。
後で知ったところでは、予選通過したようだ。
おめでとう!

M1をパスしてどこに行ったかというと、毎月お楽しみのスタジオSTSライブ、だったのだが、なんと、たどりついたら、すでにチケット完売!
すごすごと帰る。
今後のことを考えると、僕にとって、スタジオSTSライブの時代は終わってしまったのかな、と悲観的な思いにとらわれた。

今日1日、何をしていたかというと、ほとんどがYOU TUBEでSweetSとかラブ&ベリーとかBerryz工房とかキグルミとかRUSH BALLとかPerfumeとか、アイドル映像ばっかり見ていたことになる。それはそれで、たいへん充実した1日ではあるが、これではひきこもりと変わらない。
外出してこそ物事は動き始める。
午後9時から心斎橋大丸前で、元おかめふくのりさちゃんが路上ライブやるというので、顔を出した。
1曲めの「はっぴーらっきでー」は聞き逃したが、2曲めからはちゃんと見れた。
2.FLY!!!
3.アニメタルメドレー
4.キラキラさんぽ道(「いいお天気」のふしで)
5.生きてこそ
6.Hands
いくつものイベントを逃してくさっていた気分は吹き飛んだ。
来月にもあるので、チェック。

高校生と殺人犯

2006年9月8日 映画
水野洽監督の「高校生と殺人犯」を見た。1956年。
原作は山田風太郎の「幽霊御入来」(『明星』連載)
青雲寮のシリーズの映画化で、タラバ蟹先生の役で品川隆二が出ている。
カルメンと呼ばれる女性が殺され、学生に容疑がかかる話。
冒頭に暗号が出てくるが、それは教科書を使って文字をひろっていくタイプのもので、文字をつなげると「タラバガニ」。メッセ−ジがどうというより、暗号を作って遊んでいる学生たちを描いている。
犯人を追ってきていた刑事を悪者と勘違いする展開とか、いかにも青春ミステリーな流れをみせる。
で、かんじんの殺人事件の解明だが、これがまあ、おそまつ。
現場の倉庫を見に行った学生たちが、高飛びしようとしていた犯人とかちあうのだ。
様子があまりにも不審で、証拠もなく「あの人が犯人だ」とばれてしまう。
この現場には石灰とか、粉ものを袋詰めしたものがいっぱいあり、学生たちと犯人との立ち回りの際に、顔を粉まみれにしてしまうコミカルな演出など、ああ、いかにも青春ミステリー!
なお、原作では、足跡トリックがあって、その足跡によって学生以外には犯人ではありえないシチュエーションが設定されていた。このトリックを解くのが作品のみどころでもあったのだが、映画では完全に削除されていた。
昔の学園ドラマを見ていてもわかるように、この映画でも、高校生を演じているのは、すでに高校など卒業している年齢の大人ばかりで、それは不思議なノスタルジーを覚えさせた。
ミシェル・ゴンドリー監督の「エターナル・サンシャイン」を見た。2004年。
あんまり面白くて、長い文章を書いてしまったが、この映画を既に見た人には何の役にもたたない文章だし、逆に見ていない人にはネタバレしている。
自分自身があとで思い出すためのひとりごとだと思って、読み飛ばしてください。

ジム・キャリーとケイト・ウィンスレットは恋人同士だったが、最近はけんかしてばかり。
ある日、突然ケイト(以下、毛糸と表記)は別の恋人といちゃついていた。
毛糸は特定の人物の記憶を消すサービスを衝動的に受けており、ジムの記憶が消されていたのだ。
耐え切れず、ジムも記憶消去サービスで毛糸の記憶を消そうとする。
ここからの映像がすごい。
ジムの脳内で、毛糸との記憶が消されていく。
ジムはその記憶の場面にたちあうことで、毛糸との記憶がとても愛おしいものに思えてくる。
ジムは次々と消えていく記憶の場面から、毛糸と2人で逃避行をはかる。
どこに逃げればいいのか。
「毛糸とまだ出逢っていない時代の記憶に逃げ込め!」
ジムが大人のままで幼児や少年を演じる、名演。ジム・キャリーらしい!
「思い出したくない恥ずかしい記憶に逃げ込め!」
マスターベーションを親に目撃された思い出、悪ガキたちに囃されて動物を殺した記憶など。
こうした記憶の逃避行の外側でもドラマが進行していた。
毛糸の記憶を消したスタッフの男性(イライジャ・ウッド)が毛糸に惚れて、消された記憶のデータをもとに、毛糸の趣味嗜好を把握して毛糸と恋仲になっていた。
また、記憶消去サービスの博士と女性スタッフとが、かつて不倫の関係にあり、つらさに耐えかねてその記憶を消していたことが発覚する、とか。
まあ、それはサブストーリーだ。
ジムと毛糸ははじめて出逢った海岸の場面で、せつなく海を見ている。
「この記憶ももうすぐ消されてしまうのよ。どうする?」
「楽しもう!」
これ、感動した。
ラストシーンにも感動した。
結局、ジムの記憶は消されてしまい、ジムと毛糸はお互いにまったく見知らぬ他人どうしになってしまった。
だが、運命とは不思議なもので、2人はまた1から出逢いなおして、なかよくなるのだ。指に赤い毛糸が結ばれていたかのように。
ここで映画が終わってもよかった。
だが、記憶消去サービスの博士と不倫関係にあった女性(キルスティン・ダンスト)が、記憶を取り戻させるために、相談にきたときの録音テープなどを顧客全員に送りつけていた。
テープを再生してみると、毛糸はジムの悪口を言いまくっていて、こんな男忘れてしまいたい、と言っている。ジムのほうも同様。毛糸のだめなところを吐きまくっている。
仲良くなりかけていた2人だが、2人の恋の行方がどうなるのかを知らされてしまったのだ。
毛糸は別れようとしている。お互い相手に失望し、重荷に感じてしまうことがはっきりしたからだ。
でも、ジムは言う。
「いいさ」
どう?この感動のラストシーン。
字幕では「いいさ」だったが、ジムは「オッケーイ」と言ってたのだ。
最後の言葉が「オッケーイ」で終わる映画なんて、ああ、なんて心憎い幕切れなんだ!
タイトルは、アレグザンダー・ポープの詩からの引用で、作中、キルスティン・ダンストが名文句を引用した本から覚えて、博士に暗唱する。姓名を逆に覚えていたのでメッキはすぐ剥がれたが。
どんなに忘れてしまいたい思い出でも、その記憶を失ってしまっては、やっぱりダメなんだ。この考え方は、とても共感できる。別れたらすぐに次の相手を見つけて、前の恋愛のことなどあっさり忘れてしまう人がいたり、僕自身の場合、覚えていたいのにボケて忘れてしまうことが多々あり、これじゃ、いかん、と思えるのだ。
実際に何があったのか、というデータ的な記憶は、紙などの外部記憶でことたりるのでどうでもいいことだけど、そのときの感情の動きや印象などは記憶しておきたい。
つきなみな言葉で言えば、記録よりも記憶なのだ。
あれ、ほんとにつきなみだ。
映画はめちゃくちゃ面白くて、全然つきなみじゃないのに!
『マリア様がみてる』の14冊め『涼風さつさつ』と15冊め『レディ、GO!』を読んだ。
前作の『真夏の1ページ』読んでからけっこう間をあけてしまったので、登場人物のイメージを取り戻すのがたいへんだった。シリーズものは苦手なのだ。巻頭の「主要登場人物紹介」のイラストをみても、髪型が多少違うだけで、目と顔の輪郭を見ているとだれが誰なのかまったく区別もつかず、したがって、どんな性格の人物だったのかもなかなか思い出せなかった。
まず、『涼風さつさつ』
今回の話は、人間、外見じゃない、というのがテーマだった。
可南子は、祐巳を慕っていたが、自分のなかで勝手なイメージをつくりあげており、それに反することを祐巳がすると、拒否反応をおこすのだった。
一方、紅薔薇さまの祥子は、祐巳がどんな状態であっても見分けることができると豪語する。
花寺学院の学園祭で、山百合会の面々が参加したとき、祐巳は人違いで推理小説同好会に拉致される。みんなのところに目立たずに戻るため、祐巳はパンダの着ぐるみで移動するが、祥子だけは、中味が祐巳だと見抜くのだ。
なるほど!という話なのだが、推理小説同好会が誘拐するあたりから、つまり、テーマにふれる部分からが、強引すぎて、ちょっとどうかと思った。
これがドタバタのコメディならじゅうぶんアリなのだが、『マリア様』にはそぐわないな、と言う印象をうけた。着地させたいラストにもっていくために、無理矢理飛んだ、という感じなのだ。
それでも、面白かったことにはかわりない。

『レディ、GO!』は体育祭の話。
好きだったくせにイメージが壊れたと言って険悪な仲になっていた可南子と、祐巳が運動会のチームで勝った方のいうことをきく、という約束をする。
祐巳のチームが勝てば、可南子に以前みたいに薔薇の館にきてもらって手伝いをしてもらう。
可南子が勝てばどうするのかは、ラストまで伏せられる。
とことん祐巳は、可南子を見捨てずに仲なおりしようとしているのだ。
結局、祐巳が勝って、可南子は薔薇の館に。
可南子が考えていた罰ゲームは、なんと、祐巳とツーショットで写真をとりたかった、というもので、なんだ、好きどうしじゃないか!
ストーリーは体育祭の種目を追う形で、特に大きな盛り上がりもなく、スルスルッと終わった感じだ。
学園生活の日常ってのは、まあ、こんなもんか。

このシリーズは読みやすいのがとりえだ。
でも、男が苦手な、あるいは男嫌いの少女たちがおおぜい集まっているなんて、考えただけでおそろしい。
僕は一貫教育の女子校に14年間勤務していたが、このシリーズみたいな「男排除」の雰囲気はぜんぜんなかった。生徒たちは、いたって健康的だったと記憶している。親と経営陣は、(以下カット)。
狂えるオルランド**
さて、『狂えるオルランド』第2巻。
この『狂えるオルランド』はボルヘスが通勤中に何日もかけて読破した、と言ってた書物で、僕もそれに倣って通勤時にだけ読むことにしようと思ったが、本が重いし、短い通勤時間では1年たっても読了できないと思いなおし、普通に読んだ。でも、『神曲』の3倍という長さ。この8月は『狂えるオルランド』にかかりっきりだったと言っていい。
先日、『ジョジョの奇妙な冒険』第5部を急に読みたくなったのも、15世紀イタリアの本書を読んでいた関係で、イタリアに興味が湧いたからなのだった。
では、続きを。昨日は、オルランドが狂って野獣と化したところまででしたね。

第24歌
ゼルビーノ、裏切り者オドリコに罰として老婆ガブリーナに1年間仕えることを命ずる。
オドリコ、老婆を首吊りにして逃げ出し、ほどなく騎士アルモニオにつかまり自らも首吊りになるが、それは後のはなし。
ゼルビーノとイザベラ、オルランドが暴れた惨状を見て驚く。
ブランディマルテ(オルランドの友)を探してさまよう恋人フィオルディリージ。
マンドリカルド、オルランドが狂ってほうりすてた剣をわがものにしようとして、それを守ろうとゼルビーノと戦う。
マンドリカルド優勢。
イザベラ、命が危ないと判断し、ドラリーチェ姫に懇願してオルランドの剣ドゥリンダーナをマンドリカルドに渡して、戦いを中止させる。
しかし、ゼルビーノ出血多量で、イザベルの腕の中で死ぬ。
ドラリーチェを恋しているロドモンテが、マンドリカルドと一戦。どっちも強いが、これ、異教徒どうしの戦いなのだ。使者が来て、仲間割れしてる場合じゃない、サラセン勢の救援に来てくれと告げて、戦いは中断する。

第25歌
ルッジェーロ、とらわれの騎士を救出したら、それはブラダマンテの兄リッチャルデットだった。
リッチャルデット語る。
妹ブラダマンテ、スペイン王の姫フィオルディスピーナに男と間違われて、惚れられる。ブラダマンテは、自分が女であることを告げたが、恋の炎はおさまらない。
モントーバンに帰ったブラダマンテが、事のいきさつを語るに、喜んだのはリッチャルデット。彼はかねてよりフィオルディスピーナに恋こがれていたのだ。
ニンフの魔法で男の体に変えてもらいました、とでまかせ並べてフィオルディスピーナに会いに行く。兄妹は瓜二つなので、身代わりが可能だったのだ。
幾月かの愛欲の日々。
だが、密告により、姫に手をつけた廉で囚われ、火あぶりに処される直前だったといういきさつ。
リッチャルデット、アルディジェーロの城にかくまってもらう。
アルディジェーロ語る。
弟のマラジージとヴィヴィアーノがフェッラウにとらえられ、腹黒いランフーザの手でバイヨンヌのベルトラージに身柄をあずけられるとのこと。(固有名詞多い!)
兄弟を助けるため、アルディジェーロ、リッチャルデット、ルッジェーロ出発。

第26歌
囚われの兄弟奪還に向かう3人に、勝負を挑んできたマルフィーザ、事情を聞いて奪還チームに加わる。
財宝とひきかえに2人の兄弟を引き渡そうとする取引現場に3人が乱入。
取引相手が裏切ったものと思い込み、両陣営が殺しあい。
マンドリカルド、美しいマルフィーザをロドモンテにあてがって、ドラリーチェの取り合いに決着をつけようとする。アルディジェーロ、リッチャルデット、マラジージ、ヴィヴィアーノらはマルフィーザを守ろうとするが、マンドリカルドの敵じゃない。
ついにマルフィーザが槍をとった。
これがいい勝負。
ロドモンテ、2人の戦いを止めて、一緒にアグラマンテ救出に向かおうと誘う。
ルッジェーロ、ロドモンテを見つけて戦いを挑むが、ロドモンテはアグラマンテ救出が先だと相手にしない。そこにマンドリカルドがしゃしゃり出て来て、じゃあ、俺が戦うと一戦。
ロドモンテ、マンドリカルド、ルッジェーロ、マルフィーザ、それぞれの思惑があるなか、異教徒どうしで四つ巴の戦い。
そこにリッチャルデットらが追いついてきて、マラジージ、魔法によってドラリーチェ姫の馬を走らせる。
ロドモンテとマンドリカルド、愛するドラリーチェを追いかけて戦は中断。
結局、これら異教徒たちは、なんだかんだありながら、アグラマンテ加勢のためパリに向かうってことです。

第27歌
集結するサラセン勢に、シャルル勢、劣勢を強いられる。
大天使ミカエル、この役立たずが!と「不和」をボコボコにする。
「不和」、こんどこそは、と異教徒勢をバラバラにする作戦を始動。
マンドリカルドとグラダッソが剣のとりあいで一戦、ロドモンテとサクリパンテが馬のとりあいで一戦。
ドラリーチェ姫、ロドモンテとマンドリカルドの恋の鞘当て合戦に、マンドリカルドを選ぶ。
ロドモンテ、「女ってやつは!」と愚痴りまくる。

第28歌
「女とは」のエピソード。
アストルフォ王は世界一の美貌を誇っていた。それに並ぶ美貌と評判のジョコンドを呼んで、その顔を見ようとする。
城に向かう途中、忘れ物を取りに帰ったジョコンドは、愛妻が下男に抱かれているのを目撃する。ジョコンド、すっかり憔悴して、美貌などなくしてひどい顔になる。
ジョコンド、王妃が醜い小人と密通しているのを見て、「女とはこういう生き物なのだ」と悟り、美貌を取り戻す。お互い女に裏切られたアストルフォ王とジョコンドは、その美貌をいかして、諸国をめぐって女を食いまくる復讐の旅に出る。
これがまあ、女がひっかかる、ひっかかる。
女あさりに疲れた2人は、共通に抱く相手として1人の女を連れ歩くことにする。
寝るときは女を真中にはさんだ川の字で、抱きたくなったらいつでも抱ける状態。
この女、なんと両脇に男が寝ていながら、第3の男とちちくりあう。
両脇の男たちは、「向こう側の相手とやってるんだな」とお互い思っていて、気がつかなかった。
美男2人が相手する女でも不貞を働くのだから、妻が裏切るなんてあたりまえのことだったんだな、と悟る2人。
ロドモンテはこんなエピソードで「いやはや、女なんて」と嘆き、「おいおい、男の方がもっとひどいぞ」のツッコミも受け付けない。
そこに、ゼルビーノの遺骸を運ぶイザベラが通りかかる。
ロドモンテ、さっきまで「女なんて!」と言ってたくせに、イザベラに一目惚れ。

第29歌
イザベラに迫るロドモンテ。
イザベラは、貞操のかわりに、不死身の薬をさしあげましょう、と約束する。
薬草を煮詰めて、それを身体に塗りつけ、試しに切ってみよ、とイザベラ。
ロドモンテ、イザベラの首をスパーンとはねてから、だまされたことに気づく。イザベラは貞操を守るため、死んだのだ。
ロドモンテ、ゼルビーノとイザベラの遺体をおさめた御堂を建立し、通りかかった者を襲ってはその鎧や財宝を奉納する。
そこにやってきたのが、狂ったオルランド。
ロドモンテと取っ組み合いになり、もろとも橋から落ちる。
岸に流れついたオルランドはアンジェリカと会っても誰だか認識できない。
アンジェリカは魔法の指輪で姿を消して逃げる。
オルランドの狂気はいっこうおさまる気配がない。
馬を殴り殺したり、死んだ馬をひきずって歩いたり、人を真っ二つに引き裂いたり。

第30歌
オルランド、持ち主を殺して入手した馬を乗りつぶしながらひたすら走りまくる。
一方、ドラリーチェを獲得して有頂天のマンドリカルド、ルッジェーロと決闘。
マンドリカルド敗れる。
その頃、ブラダマンテは、ルッジェーロの帰還を心待ちに待っていた。

第31歌
パリに向かうリナルド、見知らぬ若い騎士ヴィドーネ・セルヴァッジョと戦うが、これが血のつながった弟だと知る。
オルランドを探しているブランディマルテ、ロドモンテが待ち構える御堂の橋で戦い、瀕死の重傷。
リナルド勢、ムーア勢に大勝。
グラダッソ(名剣ドゥリンダーナ)VSリナルド(名馬バイアルド)

第32歌
マルフィーザ、アグラマンテの援軍に行き、ブルネッロを引き渡す。ブルネッロ即座に首吊り。
一方、ブラダマンテは、ルッジェーロのそばにいるマルフィーザに嫉妬の炎を焦がし、パリに向けてたつ。
置き忘れられた島アイスランドの女王が、シャルル・マ−ニュ第一の騎士に楯と愛を捧げようとする。
トリスタンの城には一番強い騎士、あるいは一番美しい女性のみ入ることができる。
ブラダマンテ、スウェーデン、ゴティア、ノルウェーの3人の王を一蹴し城に入る。

第33歌
城の絵は、予言者マーリンが未来を予知して描かせた絵だった。
歴史の名シーン説明。
城を出ると、3人の王がブラダマンテに再戦を挑むが、簡単にブラダマンテ勝利。
一方、リナルドVSグラダッソ
怪鳥が名馬バイアルドを襲い、バイアルド逃げ出す。そもそも2人の戦いがバイアルドの取り合いからはじまっていたため、2人は勝負をおあずけにして、手分けしてバイアルドを救出に向かう。
グラダッソ、あっさりとバイアルドを見つけ、そのまま自分のものにしてしまう。
一方、天馬で諸国漫遊のアストルフォ、エティオピア皇帝の苦境を救う。
セナポ皇帝は飲み食いしようとしたら、ハルピュイアが多数あらわれて、食卓ひっくり返すし、料理奪うし、糞まきちらすしで、飢え死にしそうだったのだ。
アストルフォ、恐怖の角笛でハルピュイアを撃退。

第34歌
アストルフォ、ハルピュイアを追って、地獄の入口までたどりつく。
そこで、リディア王の娘の霊魂が語る。
武勇で功のあった騎士アルチェステ、リディア王娘と結婚しようとしたが、リディア王は承諾しなかった。
アルチェステ怒って、リディアと敵対関係のアルメニア王に仕え、リディアを撃ち破る。
しかし、アルチェステはまだリディア王娘に未練があり、彼女の諭しにより、略奪した王国を再建し、逆にアルメニアを撃ち破る。
リディア王娘はアルチェステに命がけの試練を課すが、アルチェステは全部クリアする。
リディア王娘は、結局アルチェステをずっと憎んでおり、試練も「死ねばいいのに」と思って与えていたことを告げる。
アルチェステ、「そんなに嫌われてたのか〜!」と苦しんで悶え死んだ。
そうした私の罪で、地獄につながれているのだ、と。
アストルフォ、地獄の入口をふさいでハルピュイアがもう出てこないようにする。
その後、アストルフォは輝く宮殿にたどりつく。
そこにいたのは、なんと、ヨハネ!
ヨハネはオルランドを正気に戻す方法を知っていた。
要するに、失った「正気」を取り戻せばいいのだ。
そして、それがあるのは、月!
月にはこの世界で失われたものが集まっており、その中にオルランドの「正気」もきっとあるはずだと言う。

第35歌
老爺は忘却の川レテに無数の名札を流す。
「ただ胃袋を食い物で満たすためにのみ生まれついたる惰弱きわまる連中」は、死後、すぐに忘却の中に落とされてしまう。
一方、ブラダマンテ、フィオルディリージに会う。
ロドモンテが待ち構える橋にさしかかったブラダマンテ、ロドモンテを落馬させて、虜を解放する。
フィオルディリージ、ブランディマルテを探してアルルへ。
ブラダマンテ、ルッジェーロの屋敷で、正体を隠してルッジェーロに挑む。
それもこれも、ルッジェーロとマルフィーザの仲を誤解して、不実な男と思い込んでいたから。
セルペンティーノ、グランドニオ、フェッラウらがブラダマンテと戦うが、相手にならない。
ブラダマンテ「互角の戦士を出せ!」とルッジェーロを挑発する。

第36歌
ルッジェーロをおさえて、マルフィーザがブラダマンテに相対する。
期せずして実現した恋敵との決戦。
2人の戦いを仲裁しようとしたルッジェーロ、いつしか三つ巴の戦いに。
ルッジェーロとマルフィーザが兄妹であることがわかり、マルフィーザとブラダマンテ和解する。
ルッジェーロは、父を罠にかけて死に至らしめたのがアグラマンテの家系だと知ったが、アグラマンテを主として仕える身分のため、騎士道精神から、シャルル側に寝返るのを潔しとしない。

第37歌
アイスランド女王の使者ウラニアと侍女が下半身剥き出しで浮かんでいた。
事情を聞いてみると、女嫌いの領主マルガノールのしわざだと言う。
マルガノールは、2人の息子がそれぞれ人妻に横恋慕してその結果命を落としてしまい、それから女を目のかたきにするようになった。
彼の城に近寄った女は鞭打たれたり、衣服を切られたり、首を刎ねられたりするのだ。
ルッジェーロ、ブラダマンテ、マルフィーザ、城に攻め込み、マルガノールをとらえ、女を尊重するよう掟を変更させる。
マルガノールの身柄はウラニアにあずける。
城を出た2人の乙女(ブラダマンテとマルフィーザ)はシャルルのキリスト教陣営に向かう。
ルッジェーロはアグラマンテを主として仕える関係から、アグラマンテの異教徒陣営に向かう。

第38歌
マルフィーザ、洗礼によりキリスト教に改宗。
月から戻ったアストルフォは、各地をまわって着々とシャルル勢の援軍を集結させていた。
このままでは不利とみて、アグラマンテ、騎士の一騎討ちで勝負を決するよう申し入れる。
それぞれの陣営から選ばれて出て来たのは、リナルドとルッジェーロ。
リナルドは相手を思いっきり倒しにかかるが、ルッジェーロにとってリナルドは愛するブラダマンテの兄にあたるのだ。
ルッジェーロ、悩む。

第39歌
リナルド猛攻。ルッジェーロはガ−ド中心で相手に致命傷を与えぬように戦う。
ルッジェーロ劣勢とみてとったアグラマンテ勢がついに試合の約束を破って手を出す。
両軍いりみだれての大乱戦に発展。
アストルフォが各地から集めてきた大軍を相手に、泥だらけの裸で棍棒を振り回して乱入する男がいた。狂ったオルランドだ。
やっとのことでオルランドをおさえつけて、「オルランドの正気」を吸いこませ、オルランド正気を取り戻す。
不利とみてアグラマンテ勢、舟で逃げ出す。
アストルフォが植物を変身させて作り出した船団との海戦。

第40歌
ビゼルダ陥落。
アグラマンテ、グラダッソ、ソブリンVSオルランド、ブランディマルテ、オリヴィエーロ。
一方、ルッジェーロは植物船団に乗り込んでいたサルツァの王、ドゥドーネと対決。

第41歌
ドゥドーネ降参。
ルッジェーロ、囚われていた7人の王を解放するが、アフリカに帰る途中で嵐に遭う。
これはキリストの罰だと信じ、ルッジェーロ改宗を誓う。
一方、異教徒側のグラダッソ、ブランディマルテを倒す。
オルランド、怒る。

第42歌
オルランド、アグラマンテの首をはね、グラダッソを一撃で倒す。
虫の息のブランディマルテに駆け寄ると、ブランディマルテ「よろしくたのむ。私の愛しいフィオルディ…」でこときれ、「…リージ」まで名前を呼べず。
勝敗は決していたため、出血多量で死にかけのソブリンを治療。
オリヴィエーロは馬の下敷きで下半身負傷。
ブラダマンテは、愛するルッジェーロが戻ってこないのにやきもきする。(ルッジェーロは嵐で遭難中)
勝利でうかれるシャルル勢のなかで、リナルドは一人うかない顔をしている。
アンジェリカの行方が気になってしかたがないのだ。
マラジージ、魔性のものたちを使って、アンジェリカの情報を集める。
その結果、アフリカの若者にすべてを捧げて、既にヨーロッパを離れたことを教えるが、リナルドはとことん追い掛けるつもり。名馬バイアルド奪還を口実に出立する。
その途上、リナルド、髪の毛が蛇で、千の目をもつ鬼女に襲われる。
幻の騎士に救われたリナルド、魔法の泉の水を飲んで、アンジェリカへの思いを消し去る。
リナルド、大きな城に招かれる。
城主が魔法の酒杯を出してくる。
この酒杯で飲めば、愛する人が貞節かどうかがわかる。
もしも貞節ならば、すっかり飲み干すことができるが、そうでない場合、胸の上にこぼしてしまうというのだ。

第43歌
リナルド、愛を試すことの愚かさを説いて、杯に手をつけず。
城主は、かつて愛する妻を試して、妻を怒らせ、失ってしまったエピソードを語る。
城をあとにし、舟に乗るリナルド。
船子が語る。
アンセルモという男、妻アルジアが金のために貞操を裏切ると占い師に託宣を受け、悩む。
アルジアを横恋慕していた騎士アドニオは、魔女マントーの力を借りて思いを果たす。
アンセルモ、裏切られた腹いせにアルジアを殺そうとするが、妻の姿が消えてしまう。
アルジアも魔女マントーの力を借りて夫を試し、人のこと言えないでしょ、と思い知らせて、夫婦仲直り。
リナルド、オルランドらと合流。
ブランディマルテを弔う。残された恋人フィオルディリージは、しばらく墓にとどまっていたが、ほどなくして後を追った。
負傷のオリヴィエーロ、隠者の力によって全快。
その奇跡をみて、異教徒側のソブリン、キリスト教に改宗。

第44歌
オルランド御一行様凱旋祝賀パーティ。
リナルドは、妹ブラダマンテをルッジェーロと結婚させようと、父アモーネ公に伝える。
ところが、この父母、勝手にコンスタンティーノ皇帝の世継ぎ、レオーネに嫁がせようと話をすすめていた。
親孝行のブラダマンテは悩むが、ルッジェーロへの愛は止まらない。
シャルル王にたのんで、自分と試合して勝った者と結婚することにしてもらう。
「アホか!すなおにギリシアの王子レオーネと結婚したらこっちも助かるんじゃ!あのレオーネがおまえに勝たれへんのがわかってて言うたな!」と両親は怒り、ブラダマンテを閉じ込める。
兄のリナルドも接触できない厳しさ。
ルッジェーロは困り果て「こうなったら、レオーネを殺して破談にするしかない」と、決心。
ちょうどギリシア軍とブルガリ軍が戦をしていたので、そのどさくさにレオーネを殺してしまおうと、一角獣の騎士の姿で勝手に参戦する。
敗走寸前のブルガリ軍がルッジェーロの活躍で盛りかえすほどの戦いぶりだが、レオーネにはなかなかたどりつけない。

第45歌
その夜、ルッジェーロ、宿で寝ているところを、ウンジャルドが捕縛する。活躍した騎士を引き渡せばほうびがもらえると踏んでのことだ。
戦で息子をなくしたテオドラに身柄がずけられる。
テオドラ、牢屋にルッジェーロを放り込み、いかに残虐な方法でこいつを殺そうかと楽しむ。
レオーネ、一角獣の騎士を敵ながらあっぱれと思っており、勇猛な騎士への共感から、ルッジェーロを脱獄させる。レオーネとルッジェーロのあいだにお互いを認めあう心情が流れる。
そんなとき、フランスからの布令が届く。例の、ブラダマンテと戦って勝てば結婚できる、という取り決め。
レオーネは面白くない。ブラダマンテと戦っても勝ち目はないのだ。
「いや、待てよ。この一角獣の騎士を替え玉に使おう!」
レオーネは、この一角獣の騎士の名がルッジェーロであることを知らない。
ルッジェーロ、助けてもらった恩義から、替え玉役を引き受ける。
正体を隠してブラダマンテと戦うルッジェーロ。
ガンガン攻めるブラダマンテと、愛するブラダマンテを傷つけたくないが、恩義からわざと負けるわけにもいかないルッジェーロ。日が暮れるまで防戦に徹し、約束どおり、結婚が決まる。
愛するブラダマンテをみすみすレオーネに渡してしまったことに嘆いて、ルッジェーロは森の中にさまよい入る。
エルフィーザ、今になってシャルル王にブラダマンテとルッジェーロが結婚の約束をしていたことを告げることができる。
「そうか。今の試合で結婚相手はレオーネに決まったが、先の約束があると知った今、この2人の対決できめることにしよう!」
レオーネVSルッジェーロが告げられる。
レオーネ、真っ青。一角獣の騎士にまた替え玉で出てもらおうとしたが、どこに行ったかわからない。

第46歌
悲しみのルッジェーロは、森のなかで飢え死にでもしてやれと決心していた。
一角獣の騎士を探して森に入ってきたレオーネが、ルッジェーロを見つけて、嘆きの理由を聞く。
すべてを知ったレオーネ、ブラダマンテとの結婚については身をひくことに決める。
シャルル王ら、ブラダマンテの母親以外、全員が祝福する。
ルッジェーロ、ブルガリアの王位につくよう命じられる。
ここにいたって、やっとブラダマンテの欲張りな母親も納得。
パリじゅうで結婚を祝う。
そこに「もともとイスラムだったくせに、この裏切り者!」と乱入してきた者がいた。
ロドモンテだ。
ルッジェーロVSロドモンテ。
激戦の末、鎧と剣のスペックの差でルッジェーロ、ロドモンテを討つ。

以上。
あ〜、面白かった!
アリオストの『狂えるオルランド』を読んだ。
15世紀イタリアの長大な物語詩。
これがもう、面白いのなんのって。
登場人物も多い。愛馬や愛剣にも名前がついている。
いくつものエピソードが連続ドラマ形式で綴られており、いいところで別のシーンに行ったりして、ひきつけて離さない。
戦いのシーンも迫力満点。
物語全体の三本の柱は翻訳者によると次のとおり。
1.キリスト教徒軍と異教徒軍の戦争。
2.アンジェリカという不実な女に恋し、失恋したオルランドが狂って暴走する。
3.作者アリオストが仕えるエステ家の始祖ルッジェーロとブラダマンテを語る。
1.のキリストVS異教徒は、8世紀のヨーロッパ統一の戦いのことで、この『狂えるオルランド』で「シャルル」と表記されている「シャルル・マーニュ」こそ、僕たちが教科書で「カール大帝」の名前で習った人のこと。高校の世界史程度のこんな知識も忘れてしまっているザル頭に乾杯!
以下、各歌の簡単なあらすじ。実際に読んだ方が絶対面白いが、あとで思い出すカギにでもなれば。
あまりに長いので、今日は第1巻だけ。

第1歌
リナルドとフェッラウがアンジェリカのとりあい。
逃げるアンジェリカはこれもまた彼女に夢中なサクリパンテにでくわす。
サクリパンテ、突然登場した謎の騎士にこてんぱんにやられる。
騎士の正体はリナルドの妹、ブラダマンテだった。

第2歌
リナルド追いついて、サクリパンテと一戦交える。
「闘ってる場合じゃない」隠者の機転により、パリへとアンジェリカを追うリナルド。
ところが、途中、シャルル王の命令により、しぶしぶブリタニアに向かうことになった。
リナルド、大嵐にあう。
一方、ブラダマンテはピナベッロから、愛するルッジェーロが魔法の城に囚われていることを聞く。
話すうちに、ピナベッロはブラダマンテが犬猿の仲の家の者と知り、洞窟の穴の中に彼女を落とす。

第3歌
穴の中でブラダマンテ、魔女メリッサに会い、エステ家の歴史を予言として聞く。
アフリカ王アグラマンテの臣下、ブルネッロが持つ指輪の力を使えば、魔法の城に行けることも。
しかし、このブルネッロなかなか抜け目のない切れ者。
ブルネッロとブラダマンテ相対す。
そのとき、耳も破れんばかりの大きな音が!

第4歌
音の主は妖術使いアトランテだった。
ブルネッロから指輪を奪い、ブラダマンテ、魔法の城へ。
ブラダマンテ、アトランテを破り、ルッジェーロを解放する。
ところが、ルッジェーロを乗せたイッポグリーファ(馬と鷲の合いの子)が、勝手に飛んで行く。「いずこへ〜!」
一方、スコットランドに無事着いたリナルド。
ギネヴィア姫が男と密通していた罪で窮地に陥っていると聞き、救出に向かう。
途中、追い剥ぎに襲われている美女を助ける。
この美女の正体は?

第5歌
助けた女性は、ギネヴィア姫に仕えるダリンダだった。ダリンダが語る。
ギネヴィア姫には愛しあう騎士アリオダンテがいた。
しかし、姫に横恋慕して、二人の仲を快く思わぬアルバニー公爵ポリネッソという男がいた。
ポリネッソにだまされて、ダリンダは姫に化け、ポリネッソと逢い引きしているシーンをアリオダンテに目撃させ、仲を引き裂こうとする。
アリオダンテは失意のあまり、海に飛び込む。
アリオダンテを失った弟、ルルカーニオは怒ってギネヴィア姫を糾弾。決められた相手以外と情を交わした女性は死刑になる掟があったのだ。誰か弁護に立って、決闘でもしないかぎり、死刑は免れない。
だが、ルルカーニオは勇猛な騎士で、誰も姫の弁護に立ち上がろうとしない。
「よし、わかった!」すべてを明らかにして姫を救出するため、リナルドは駆ける。
町では、姫を弁護するために立ち上がった唯一の謎の騎士と、ルルカーニオが決闘の真っ最中。
リナルド、決闘を中止させ、ポリネッソの悪だくみを暴露。ポリネッソと決闘し、リナルド勝利。
勇猛なルルカーニオに対抗して姫の弁護に立った謎の騎士が、兜を脱いだ。
その騎士は、はたして誰であったか。

第6歌
謎の騎士は、海で死んだはずのアリオダンテその人であった。
姫とアリオダンテは結ばれ、悪だくみに加担していたダリンダは寛大にも許されたが、自ら尼僧になった。
一方、イッポグリーフォの暴走で、ルッジェーロは魔女アルチーナの住むインドにたどりつく。敬虔なロジスティッラの地に向かうルッジェーロだが、それには悪徳に満ちたアルチーナの都を通過しなくてはならない。通り道、橋を守るのは狼にまたがり、宝石の鎧をまとった獰猛なエリフィッラという女だった。

第7歌
ルッジェーロ、一撃でエリフィッラを打ち倒す。
アルチーナの都で、すっかり魂を抜かれ、愛欲の日々を過ごすルッジェーロ。
その頃、ルッジェーロの身を案じるブラダマンテ、いかなる魔法にも打ち勝つ指輪を魔女メリッサに託す。
メリッサ、妖術使いアトランテに化けて、ルッジェーロの目をさます。
アルチーナのもとを逃げるルッジェーロ。

第8歌
険しき岩山、暑熱の砂地を行くルッジェーロ。
一方、リナルドはスコットランド、ロンドンでシャルル王への援軍を順調にとりつける。
一方、あの娘ばかりがなぜモテる、のアンジェリカ。リナルドから逃げるために隠者に道を聞いたが、隠者もアンジェリカの魅力にノックダウン。アンジェリカの乗る馬に秘かに悪鬼を忍び込ませる。海へ暴走する馬、助けるふりして眠り薬を飲ませる隠者。だが、眠るアンジェリカを前にして、隠者、肝心のモノが役に立たない。
眠るアンジェリカ、さらわれてエブーダ島に。
エブーダ島では、プロテウスの怒りにより、毎日乙女を生け贄に捧げている。アンジェリカもその生け贄にされるのだ。
一方、そんな危機にあるとも知らず、アンジェリカを探す旅に出ているオルランド(やっと登場!)。
親友のブランディマルテは、国も守らずに女を探して旅するオルランドを連れ戻しに行く。
ブランディマルテの恋人、フィオルディリージャは、恋人が1ヶ月たっても戻ってこないので、これもまた、恋人探しの旅に出る。

第9歌
オルランド、エブータ島の残虐な掟を聞きつけて、征伐に向かう。
その途上出会ったオランダ伯の姫オリンピアの物語り。
フリジアの王が我が子アルバンテにオリンピアをめあわせようとする。
しかし、オリンピア姫にはビレーノという恋人がおり、アルバンテをふる。
フリジア王怒って、戦争。卑怯にも鉄砲など飛び道具を駆使して、戦いやがったのだ。こいつめは!姫の肉親皆殺し。
オリンピア姫、結婚を承諾したふりをして、アルバンテを殺し、復讐を遂げる。
フリジア王は、ビレーノをつかまえ、恋人の命を助けてほしくば姫よ出てこい、と交換条件を示す。
オリンピア姫、素直に出て行っても約束など守られず、ビレーノもろとも命を奪われるのは確実。
オルランド、フリジア王を攻め込み、二人を救出する。
ビレーノとオリンピアの婚礼。めでたし、めでたし。

第10歌
オリンピアとビレーノ、その後どうなったか。
ビレーノはフリジア王の姫御前を弟に与えたが、ビレーノ、オリンピアのことは早々に飽きて、この姫御前と関係を持つようになる。
ある夜めざめたオリンピアは、隣にいるはずのビレーノがあいびきに出かけているのを知る。身も世もあらず嘆くオリンピア。
一方、追いすがるアルチーナを撃退したルッジェーロ。良き魔女ロジスティッラの城に着く。天翔ける馬の乗り方を練習して、西の国に戻る。
その途上、シャルル王の援軍を目撃。旗印とともに紹介。
また、エブーダ島の掟で岩に結わえられたアンジェリカを発見し、巨大な鯱と格闘する。眩い光を発する魔法の盾を使い、アンジェリカを救出する。アンジェリカは魔法を無効にする指輪を渡され、盾の被害から免れた。
ルッジェーロもたちまちアンジェリカの色香に惑い、鎧兜を脱いで、手を出そうとするが、慌てればあわてるほど、なかなか脱げない。

第11歌
ルッジェーロがもたついている間に、アンジェリカは魔法の指輪を使って透明になり、難を逃れる。天馬もいつのまにか逃げていた。ルッジェーロ踏んだり蹴ったりだ!
ルッジェーロ、巨人に連れ去られるブラダマンテを目撃、その後を追う。
一方、オルランド。生け贄にされそうになっていたオリンピアを助ける。エブータ島民は「なにするねん!」とオルランドを責めるが、返り討ち。
イベルニア王オベルトとオルランド再会の喜び。
オベルト、オリンピアに惚れて、王妃となす。

第12歌
妖術使いアトランテの魔法の城。
愛する人がそこにいるはず、と探すも、何処にもおらず。出ようとすると、中から愛する人の呼ぶ声がして、戻ることになり、ずっと閉じ込められたと同様の状態になる。
オルランドもルッジェーロも、名だたる騎士もこの魔法の城から出られない。お互いの姿は魔法で見えず、大勢の騎士や女性がお互い探し求めながらすれ違いまくってるのだ。
なんとかアンジェリカを探す旅に戻ったオルランド、岩屋に閉じ込められた乙女を見つける。

第13歌
乙女はガリシア王の娘、イザベラだった。
槍試合で見初めたスコットランド王子ゼルビーノに恋をしたが、信教の違いが壁になった。
イザベラ、ゼルビーノに拉致された形で出奔、ゼルビーノの友、オドリコが舟でイザベラを運ぶ。嵐で難破したとき、オドリコ本性をあらわし、イザベラを襲う。
オドリコから逃れたイザベラ、今度は山賊につかまり、売られようとしているのだ。
オルランド、山賊を退治し、イザベラを救う。
一方、ブラダマンテ、アトランテの魔法の城に騎士たちが幽閉されていることを聞き、駆け付ける。ところが、ブラダマンテも同じ罠にひっかかり、魔法の城から出られなくなる。

第14歌
アフリカ、スペインのサラセン勢(異教徒側)の紹介。
タタールの王の世継ぎ、マンドリカルド、戦の末、グラナダ王の姫御前ドラリーチェと懇ろになる。
シャルル(キリスト教)と異教徒とのパリ攻防戦。
大天使ミカエルは「不和」と「沈黙」に命じて、戦いを応援する。

第15歌
愛欲の魔女アルチーナに木に変身させられていたイングランドのアストルフォ、国に戻る旅。
残虐な大男、カリゴランテをとらえ、また、斬っても切っても死なない不死身のオッリロの命綱を断ち切って倒す。
白の騎士グリフォーネ、オリジッレという不実な女を愛する。戦さでひとり残されると、オリジッレ、新しい恋人を作りアンティオキアに行ってしまう。
グリフォーネ、その新しい恋人に復讐しようと誓う。

第16歌
グリフォーネ、オリジッレを見つけるが、またまた甘い言葉にコロリとだまされる。
一方、パリ攻防戦。
シャルル側の効率のいい罠などで有利に戦をすすめるが、異教徒側のロドモンテ、大勢の犠牲を踏み越えて、ひとりパリ市内に入り、壊滅的な打撃を与える。

第17歌
ロドモンテ、パリで壊したい放題。
シャルル王、反撃に向かう。
一方、グリフォーネとオリジッレ、槍試合を開催しているノランディーノ王の話を聞く。
人食いオルクスに囚われたルチーナ王妃を羊の皮で化けて潜入し、救ったこと。
槍試合でグリフォーネとペアを組んだマルターノ、臆病風に吹かれて試合中に逃げ出し、笑い者になる。グリフォーネは試合でその武勇を讃えられる。
歓待の席に行くときに、臆病者のマルターノ、グリフォーネの鎧兜を着ていき、大いにもてなされる。残されていたマルターノの衣装を着て、グリフォーネも王のもとに行くが、臆病で卑怯なマルターノだと思われて、ひどい扱いを受ける。入れ替わって歓待されているマルターノ、グリフォーネを救う気もなし。グリフォーネ、ついに怒る。

第18歌
ひとりでパリを破壊させまくっていたロドモンテ、パリの群集が何千人切り殺してもかかってくるので、きりがない、といったんパリを出る。
ロドモンテ、恋するドラリーチェがマンドリカルドに奪い去られたことを聞き、怒る。
一方、パリ攻防戦で、異教徒側の勇士ダルディネッロ、激戦の末、ついにルルカーニオを倒す。
一方、衣装交換でひどい仕打ちを受けたグリフォーネ、嘲る群集たちを血祭りにあげ、ノランディーノ王に勇者と認められる。群集たちは、臆病者だとたかをくくっていたのだ。
一方、グリフォーネを探していたアストルフォとグリフォーネの兄アクィランテは、グリフォーネの鎧兜をつけて鼻高々のマルターノとでくわす。マルターノは舌先三寸で切り抜けようとするが通用せず、他人の手柄で褒美をもらったマルターノと裏切り者オリジッレをノランディーノ王の塔に幽閉する。
一方、アストルフォとサンソネット、槍試合に向かう途中で鎧乙女マルフィーザと遭い、同行する。
槍試合の結果は、サンソネットの優勝。一行はパリ攻防戦に向かう。
ルルカーニオを倒した剛の者、ダルディネッロ、オルランドのいとこ、リナルドに破れる。
劣勢とみたスペイン王マルシリオ、いったん退却。
ダルディネッロを主と仰いでいたクロリダーノとメドーロ、夜のうちにシャルル陣地に忍び込み、眠っていた大勢の者を殺し、主の遺体を運び出して埋葬しようとする。それをゼルビーノに見つかる。

第19歌
クロリダーノ殺され、メドーロ瀕死。
アンジェリカあらわれ、メドーロを看病する。回復するにつれ、2人は恋人どうしになる。
二人の愛の日々。木と言わず石と言わず、二人の名前を刻み込む。
一方、マルフィーザ一行、舟が嵐にあい、女族の土地に漂着する。
ここでは、奴隷になるのがいやなら競技場で10人の男を殺し、夜に10人の女と寝なければならない。
くじびきでなんと女のマルフィーザがその役目につくことになる。
競技場ではマルフィーザが9人まではあっさり倒したが、最後の男は強敵。勝負は翌日に再開されることになった。
マルフィーザをてこずらせる10人目の男、兜を脱ぐと、まだ18才にもならぬ、若き美男子グィドーネだった。

第20歌
グィドーネ、女族の土地の由来を語る。
モテモテのファラントらに飽きられた女たちが、オロンテアを女王として女中心の国を作った、と。
イングランド公子アストルフォ、グィドーネと従兄弟の間柄であることを明かし、マルフィーザ一行、力をあわせて女族を討つことを決心。
マルフィーザ一行とは、マルフィーザ(鎧乙女)、アクィランテ(黒騎士)、グリフォーネ(白騎士)、アストルフォ(恐怖の角笛)、サンソネット(槍試合王者)、グィドーネ(十人衆トップ)、アレリア(グィド−ネの信頼すべき女房)。
アストルフォ、角笛吹いて、女たちを恐怖におびえさせる。戦いもせず、逃げまくる女たち。マルフィーザ一行も角笛聞いて恐怖にかられ、アストルフォを残して舟を出し、ひたすら逃げる。想定外!マルセイユで一行、解散し単独行動に戻る。
マルフィーザ、途中、老婆ガブリーナを連れて行くはめに陥る。この卑しい老婆が原因で、すれ違う者はついついからかってしまう。マルフィーザ、ピナベッロ(覚えてますか?ブラダマンテを洞窟の穴に落とした卑怯な奴)をこらしめ、ゼルビーノ(覚えてますか?ギネヴィア姫の兄で、友オドリコに拉致された恋するイザベラを追っている)には厄介者の老婆ガブリーナ押し付ける。
ガブリーナ、イザベラの消息を餌にゼルビーノをちくちくいじめる。(覚えてますか?イザベラは山賊に人身売買されようとしてたのを、オルランドが救っている)

第21歌
ガブリーナを敵と思うオランダの騎士エルモニーデ、ゼルビーノにいきさつを話す。
エルモニーデの兄、フィランドロは友アルジェオの妻と関係を持っていたが、友情をとり、別れることにした。すると、この女、捨てられた腹いせにあることないことアルジェオに吹き込み、アルジェオ激怒、フィランドロ幽閉される。この悪い妻こそ、ガブリーナ。
牢屋のフィランドロに毎夜誘惑に来るガブリーナ。それでもなびかないので、ガブリーナ策略をめぐらせ、フィランドロに悪漢退治を依頼する。悪漢を殺したかと思いきや、その正体はアルジェオ。裏切り者の人殺しと名誉を傷つけたくなければ、言うこと聞け、とガブリーナ迫る。
二人で城をあとにするが、結局よりを戻せないガブリーナは、フィランドロに毒を盛る。

第22歌
アストルフォ、妖術使いアトランテの魔法の城で、恐怖の角笛を吹く。アトランテ遁走し、魔法破れる。そのおかげで再会できたルッジェーロとブラダマンテ、結婚のため修道院に向かう途中、嘆く乙女にあう。
スペイン王マルシリオの息女を恋し、夜毎添い寝していた青年がつかまり、今日にも火あぶりにされる。助けに急ぎたいが、途中、騎士や女性を襲う奴らがおり、邪魔をするという。
その悪い奴とはあの卑怯なるピナベッロ。ピナベッロの罠で言うことを聞かされている4人の騎士はなんとアクィランテ、グリフォーネ、サンソネット、グィドーネ。そりゃ、たいていの騎士は歯が立たない。
ルッジェーロ、この4人を打ち負かし、ブラダマンテはピナベッロに復讐を遂げる。
ルッジェーロ、強者4人に勝ったのが、眩い光を発する魔法の盾のおかげだったことに気づき、恥じてその盾を井戸に放り込む。

第23歌
アストルフォ、ブラダマンテに愛馬ラビカーノをあずけ、自らは天馬イッポグリーフォで空に。ピナベッロを討つのにルッジェーロと離れてしまったブラダマンテ、一刻も早くルッジェーロと合流し、修道院に向かいたいところだが、兄アラルドにばったり会い、娘の安否を心配していた母親の城まで行く。ルッジェ−ロへの変わらぬ気持を侍女イッパルカに託す。
ルッジェーロのもとへ急ぐイッパルカ、パリ破壊王ロドモンテに出くわし、馬を奪われる。
一方、ゼルビーノと老婆ガブリーナはアンセルモ伯の城にたどりつく。
嫡男ピナベッロが何者かに殺された悲しみにつつまれている。
ガブリーナ、「この男がやった」と嘘を言って褒美をせしめ、ゼルビーノ囚われの身に。
救出したイザベラを守って同行していたオルランド、ゼルビーノを救うため、アンセルモ伯郎党を皆殺し。イザベラ、ゼルビーノ再会の喜び。
マニラルド、アルツィルド両名の仇とオルランドを追っていたマンドリカルド、オルランドと一戦。パニック状態で手綱がきかない馬によってその場をやみくもに遠ざかり、落馬したマンドリカルド。そこにたまたま通りかかったガブリーナ。
一方、オルランド、一息いれようと入った草地がなんと!
なんと!
恋するアンジェリカとメドーロが愛欲の日々を送っていた場所だった。
あっちこっちに二人のバカップルぶりを示す彫り込みの痕が。
メドーロは愛の日々を詩にして壁に刻んだりしてる。
落ち込みまくっているオルランドに、何も知らないおせっかいな牛飼いが「悲しみを忘れさせてあげましょう。こんな情熱的なハッピーな恋物語もあるんですよ」と、アンジェリカとメドーロのラブストーリーを聞かせる。落ち込みますますマックス!
オルランド、アンジェリカたちの彫り込みをすべて削り取り、木々や洞窟を壊しまくり、泉を泥で埋め、三日三晩飲み食いせず眠りもせず倒れ込む。
着ていた鎧も兜も衣服も脱ぎ破り捨て、大木を次々と根こそぎ抜き倒し、暴れまくる。
オルランドは狂ったのだ。
右手愛美の「Go-Go-Fighteen!」発売イベントに行って来た。
ディスクピア日本橋で午後1時から。フリー入場。
会場ではDVDが流れている。
右手ちん登場後、まずカップリング曲の「イジワル=(はぁと)」
次に「Go-Go-Fighteen!」のPVを見ながら、レコーディングや撮影時のエピソードトーク、そして歌のサビの部分の振り付けをレクチャー。
そして、「Go-Go-Fighteen!」の歌、本番。
あとは、CD購入者のみ参加の「ジャンケン大会」(右手ちんがグッズにいろいろ書いたものが当たる)と、写真撮影会。
約1時間。
店頭のポスターなどを見ていると、随分おとなびた感じがしたが、実際に右手ちんが出てきてしゃべりだすと、これは天性の明るさなのか、予想以上に可愛くて、魅力にノックアウトされた。
ピチレモンのモデルやってるくらいなので、スタイルのよさは半端じゃない。
今回の衣装ではおなかを出していたが、あんなスタイルなら、誰だっておなかもおへそも出すだろうと思った。
アイドルのこういうイベントに行くと、大阪に来たということで、必ずといっていいほど、たこやきの話題になるのはどうしたものか。
たこやき、USJの話題を出さないアイドルなんて、まあ、ありえない。
それぞれのアイドルがたこやきをテーマにどんな話題を展開するかを楽しみ、その差異に喜びを見い出すのが、最近の僕の遊びだ。
右手ちんは、自宅にたこやき機を持っており、焼くのがうまいと豪語。次のイベントはたこやきパーティしたいと言ってたが、たこやきをテーマにしたトークとしては、上々だと思った。面白い!
さて、歌はCDの2曲だけを歌ったのだが、このとき、バックダンサーとして、2人の女の子が出て来た。
実を言うと、この子たちに、僕はもっとも衝撃を受けた。
めちゃくちゃ可愛い!
この2人は、岩崎愛(1991年11月26日生まれ千葉県出身)、前田希美(1993年6月16日生まれ埼玉県出身)で、「あい」と「のぞみ」って、まるで「W」じゃないか!
右手ちんの魅力にまいったかと思っていたら、さらなる伏兵、あいとのぞみ。
CD購入者のみ参加のコーナー中は、ついついステージ脇に控えている2人を目で追いかけてしまった。
この2人の活躍も祈りたい。

(画像は前のCDのぶん)
彩色図鑑、EDEN、苺楽団と母檸檬
大阪府立現代美術センターで「彩色図鑑」
おおぜいのグループ展で、1日中いても楽しめそうだった。
展示物と、本など。
無形工房の中井さんの作品を見に行ったのだが、それ以外にも多くのみどころがあった。

サブタレニアンズで神谷俊美写真展「EDEN」
モノクロームの裸体。
懐かしさを感じたのはいったいどうしたわけだろう。
ちょうど僕のノスタルジーの琴線に触れるものが写し出されていたに違いない。

ネイブで「ストロベリーソングオーケストラと母檸檬」
苺楽団はアングラ現代風。テーマの「葬式」が比喩だというのが現代風。
誰のものでもない葬式、という発想は僕にはなくて、新鮮だった。
僕なら「この葬式はあなたの葬式です」で決めていただろう。
自分の葬式に自分が参列する不条理さが好きなのは、15年くらい前にベアーズで「葬式」やったときから、変わっていない。
演者自身が「不条理演劇」という言葉を吐いて、自らの虚構性をアピールするのも、きわめて現代的だと思った。演ずることを演ずる、という入れ子の構造。頭に「メタ」とつけたくなるのが、現代的なるゆえん。
と、いうよりも、ストロベリーソングオーケストラ的、と言うべきか。
寺山好きの僕には、ごちそうだった。
ただ、僕なりの喪服にもっと凝っていけばよかった、と、後からいろいろ考えた。
焼香の際に、間違えて火のついた炭をつまんで香のなかに放り込みそうになって、あわてた。
見ていて刺激になったし、面白かったので、機会があればまた見に行きたい。
母檸檬はドラムの宇津救命丸の個性がすごい。フロントの女性2人が単なる飾り物に見えた ほどだ。歌詞や衣装や外見、世界はおそらくフロントの女性2人によって構築されているのは間違いない。でも、そこにほんものの狂人がゼウスのように降臨してきて、おいしいところをもっていってる感じだった。
音楽はきわめて正統派で、本格的。つまり、音楽を聞くかぎりにおいては、狂的なものはあまり感じなかった。
ライブを見てこそ不思議な違和感にとらわれる、面白い感覚だった。
アンデルセン:原作、小熊秀雄:台本、渡辺加三:絵による『火打ち箱・しっかり者の錫の兵隊」を読んだ。1940年。
創風社から出ている小熊秀雄漫画傑作集の3冊めにあたる。
当時は「アンデルセン」を「アンデルゼン」と読んでいたようだ。
「火打ち箱」は魔法の力で金持ちになり、一国の王様にまでなってしまう、むしのいい話。
「しっかり者の錫の兵隊」はトイストーリーの元ネタ。小鬼のおもちゃに、一本足の錫の兵隊は窓から落とされ、魚に飲み込まれる。挙げ句の果にはストーブに投げ込まれて、踊子の人形もともに焼けてとけてしまう。
これ、こどもが特にわけもなくストーブに放り込んでしまうのだが、なぜか「小鬼のしわざ」だとされている。
この兵隊が聞く歌の怖いこと怖いこと。

さよなら
さよなら
兵隊さん
あなたは死なねば
ならないの

悪夢だ!
こどものときにこの漫画読んでたら、絶対うなされてた!
秋山瑞人の『イリヤの空、UFOの夏』全4巻を読んだ。
第1巻
「第三種接近遭遇」
「ラブレター」
「正しい原チャリの盗み方:前編」
「そんなことだから」
第2巻
「正しい原チャリの盗み方:後編」
「十八時四十七分三十二秒:前後編」
「死体を洗え」
第3巻
「無銭飲食列伝」
「水前寺応答せよ:前後編」
「ESPの冬」
第4巻
「夏休みふたたび:前後編」
「最後の道」
「南の島」
「エピローグ」

「北」との戦時下における学園恋愛SF。(本当はUFOとの戦争?)
夏休み最後の日、学校のプールに忍び込んだ浅羽は、イリヤと出逢う。
イリヤはおよそ人間らしい常識を備えていない少女で、簡単なことでも教えてあげねばならず、当たり前のことでも新鮮な体験となっている。
イリヤはすぐに鼻血出して倒れる虚弱な体だが、手に奇妙な球体が埋め込んであった。イリヤは軍の特殊なパイロット、最終兵器彼女だったのだ。
3巻あたりまでは、部活動のドラマがあったり、文化祭でファイアーストームをしたり、デートしたり、恋敵どうしで鉄人定食(トライアスロンセット)でフードバトルしたり、と学園コメディが繰り広げられる。
これがとても楽しい。
戦時下の学園SFってのが僕は大好きで、最終兵器彼女とか、エヴァンゲリオンと通じるテイストをもつ本書も、愉しみながら読んだ。
後半は軍を相手に逃避行に出て、コメディ的部分は影をひそめるが、そこも面白かった。
イリヤと浅羽の恋愛は、さて、どうなるのか。
最終巻で、精神が壊れてしまって、記憶が退行していくイリヤが、浅羽を認識できない状態で語る言葉が次のとおり。(イリヤの中では、時間は遡っており、夏休み最後の日になっている)
「ずっと嫌だって言ってたけど、でもやっぱり行く。行くなって言っても行く。わたし、明日から学校へ行く」
浅羽が「どうして?」ときくと、イリヤはこう答える。
「好きな人が、できたから」
そういえば、第1巻でイリヤが入部届を出したときの動機は「浅羽がいるから」だった!
そしてすっかり精神がボロボロになって出撃命令にしたがわないイリヤに、浅羽はこういう。
「ぼくは、伊里野のことが好きだ」
「浅羽直之はぁ、伊里野加奈のことがぁ、大好きだあーっ!」
「ぼくが説得すると思ってたんならお生憎さまだ!伊里野は出撃させないからな!絶対に死なせないからな!伊里野が生きるためなら人類でも何でも滅べばいいんだ!」
強烈な告白シーンだが、これはまんまと浅羽がのせられたものだった。
作者の表現によれば「子犬作戦」。
イリヤは兵器として存在する少女だが、戦う目的をもっていない。
彼女には守るべきものが何もないのだ。
そこで、楽しい学園恋愛ドラマをあてがって、彼女に「浅羽がいるから死にたくない」「浅羽のためなら死んでもいい」という戦う動機を与えようとしていたのだ。
なるほど。
前半の楽しい学園コメディは、イリヤを自滅させず、戦わせるための方便だったのか。
浅羽は人類とひきかえにイリヤを選んだのだが、 その瞬間に、イリヤにとって守るべき存在が出来、したがって出撃する動機が生じてしまったのだ。
いや〜、面白い。
「水前寺応答せよ」までのスーパー少年、水前寺がいちばん魅力的なキャラクターだ。彼が出てくると、どんなことも不可能ではなくなってしまう。最終巻のクライマックスで彼を登場させるわけにはいかなかったのだろうが、もっと彼の活躍を読みたかった。
秋山氏の作品を読むのははじめてだが、面白い名文がたまにあって、楽しかった。
第2巻「十八時四十七分三十二秒:後編」より、旭日祭(文化祭)二日目の描写。
「人影はさして多くはない。少なくとも一日目ほどではない。が、これは決して祭りの失速を意味しない。この人出の減少はすなわち、シラフの連中が淘汰され尽したということであり、遠く見え始めた終局にむかって祭りはむしろ加速し続けている」
どう?このなんでもないことを大仰に描く語り口は!こういうのが大好きだ。
第3巻「水前寺、応答せよ」でもこんな文章が。
「しかし、さっきまでの当たり前は今のこの瞬間も当たり前であるという確信はすでに崩れ去り、今の浅羽はどんなつまらないことに対しても何ひとつ断言することができないような、骨の髄から脳みそに染み渡るような無力感に捕われていた」
また、第3巻の番外編「ESPの冬」は、こんな話。
校内放送ジャックして、テレパシー実験をする水前寺。
「人間には入力には視覚聴覚嗅覚味覚触覚の五系統があり、出力は筋肉の一系統のみ。
超能力の研究というのはすなわち、第六番目の入力系が、あるいは第二番目の出力系がひょっとしたら存在するのではないか、という稀有壮大な探求に他ならないのだよ」
これはわかりやすい説で、ぽんと膝を叩いた。
なお、この4冊はちょうど作品世界と同じ、夏休みの終盤に読むことができた。
戦時下の学園コメディSF、しかも夏、というのが僕にとってのツボで、幸せな読書体験だった。できることなら、ずっと夏休みが続いてほしいものだ。
柊あおいの『星の瞳のシルエット』を読んだ。全10巻。
沢渡香澄は幼いときに星のかけらをくれた少年を想う内気な少女。
以下、番外篇の『ENGAGE』にあったあらすじによると
「香澄の宝物「星のかけら」をくれた初恋の少年は久住だった。
行き違いになりながらもやがて二人は互いの気持ちを確かめあい結ばれる」
まあ、そういうことだ。
久住はきれいな石を星のかけらだと言ってみたり、天文学部に進学したりする、宇宙好きな少年。
香澄は久住が好きで、本当は両思いのくせに、友人が久住に恋してたりして、身をひこう、存在を消そうとしている。
でも、最後には結ばれて、最後の最後にキスシーンまで。
これを並べると、
クスミは、
コスミックに興味がある。
カスミは、友人の気持を考えて、身を消そうとする。つまり、
ケスミ(消す身)。でも、最後には
キス・ミー
(本当は久住は「くずみ」だけど)

さて、この漫画、読んでいて、じれったいというか、イライラするところが多くて、いかにも女の子が好きそうなドラマだった。
いろんな恋愛関係を並べてみると、こうなる。

沢渡香澄と久住智史
お互いに好き同士。こいつらが普通にくっついておれば、諸々のトラブルは生じなかった。

沢渡香澄と二階堂平助
二階堂の片思い。あっさりふられる。香澄は二階堂がどんな人間なのか知ろうともしない。

白石司と泉沙樹
白石の初恋の相手こそ沙樹だった。しかし沙樹は「あんたなんか頼まれたってつきあうもんですか!」と拒絶。その後、沙樹は白石に恋するが、1回ふっておいて、簡単に相手に振り向いてもらおうとしても無理な話。沙樹はもはや白石からは恋愛対象として見られなくなるが、自業自得というものだ。沙樹の気持に気づいた白石は沙樹にチャンスを与えるが、沙樹は意地をはっていて、素直に告白できない。こんな女は苦しんで死んでしまえばいいと思ってたら、最後に白石とくっついてしまった。甘過ぎる。

白石司と沢渡香澄
白石は香澄に恋している。あんなうじうじした女のどこがいいのか。香澄は白石のことなど眼中になし。

久住智史と森下真理子
真理子が一方的に久住に片思い。でも、香澄がはっきりしないので、久住は真理子とつきあう。香澄は真理子の思いを知り、友情を壊したくなくて、久住に自分の思いを出せないのだ。嫉妬深くて、自己中心的なこんな女とまともにつきあう男の気がしれない。それに、こんな大馬鹿女との友情を大切に思うような香澄の輪をかけたバカさにもあきれる。

森下真理子と日野くん
日野くんが一方的に片思い。真理子も最後には日野のよさを認めるが、はっきり言って、あんなバカ女にはもったいない、いい奴である。
日野くんの名前は何でしょう。日野ヒデシ君?日野マコト君?日野ジドウシャ君?
こたえ:日野誠。これホント!

吉祥寺啓子と久住智史
おケイは思ったことをそのまま実行するストレートな女で久住を狙っている。久住はおケイなど問題外だが、香澄よりもいい女だ。気づけ!久住!

ああ、もうじれったい。
何か重要なことを言おうとしたときに必ず邪魔が入るシチュエーションの繰り返しとか、自分の気持ちを素直に出せない人々とか。この漫画読んでたら、感情を素直に出す方が悪者のように見えてくる。
あれだけウジウジしていた愚かな香澄が、番外篇では久住との遠距離恋愛をこなしているが、いったいどんな精神修養をしたというのか。遠距離恋愛は精神的に強くないと不可能なわざだ。香澄には不可能なはずだ。
女の子たちはこの物語をどんな気持ちで読んでいたのか、とても興味がある。
そう考えてタイトルを見てみると「星の瞳のシルエット」って、すごく遠回りで直接的じゃないことをあらわしているように思えてきた。
それと、『耳をすませば』の主人公が「月島雫」だったので、きらりんレボリューションの「月島きらり」みたいだな、と思ってたら、この『星の瞳のシルエット』の主人公の1人が「久住」。モーニング娘。の久住小春つながりは暗合として何かを示しているかのようだ。
「赤胴鈴之助/三つ目の鳥人」を見た。1958年。カラー。
シリ−ズ7作め、森一生監督。
鈴之助役は梅若正二。
しのぶ役におなじみ中村玉緒。
三つ目の鳥人が戌年生まれの子供を次々とさらっていく。
鳥人は鈴之助の得意技「真空斬り」を使うため、下手人は鈴之助じゃないか、と疑われてしまう。その疑惑にコロリとだまされて子供に石を投げられる役でエンタツ。
鳥人は催眠術を使う妖婆と組んで悪事を重ねる。
彼らの正体は盗賊、稲妻組の残党で、稲妻組首領が死罪になったのを逆恨みした首領の妻(これが妖婆の正体)が、奉行に復讐しようとしていたのだ。
奉行の息子(大田博之)を誘拐し、奉行の目の前で惨殺してやろうとしていた。
時計仕掛けで、吊るされた若君が針の山に落ちる、という殺し方。
すぐに手で綱を切って落とせばよかったのに、そんな時計仕掛けにしたために、間一髪で鈴之助に救出されてしまう。
面白かったのは、この稲妻組残党たちが見世物小屋のお化け屋敷に集まっており、クライマックスの大立ち回りは、赤鬼や青鬼、一つ目小僧、大イタチ(?)などが入り乱れて、こいつは、まったく、妖怪大戦争や〜!

三池崇史監督の「妖怪大戦争」を見た。2005年。
妖怪たちと、魔人加藤保憲が戦う。
これは加藤に加勢する栗山千明の映画だった。
大天狗を相手にまわして「すごいすごい」と言うところなんて、「女」そのもの。
信じていた加藤に裏切られる末路は、お決まりのパターンで、ちょっとつまらない。
女ならではの気まぐれで、ポーカーフェイスの加藤を逆に裏切ってほしかった。
また、一見、主人公にみえる神木少年は特に勝負に貢献することもなく、麒麟に乗って喜んでいるだけ。妖怪たちも戦争に関してはまったく役立たずで、小豆洗いのまぐれ当たりでなんとか凌いだ、というところ。
妖怪が戦争の役に立たないのはすぐれた見識だと思う。
敵が機械でできた怪物だというのは、現代社会を批判しているかのようでちょっと恥ずかしい設定だが、妖怪との区別をつけるためにはやむをえないか。
妖怪の造型に金を使いました、と言うのが見えてくるのもなんだか恥ずかしい。
豪華なキャストも恥ずかしいし、忌野の歌を使うのも恥ずかしい。
全体的に恥ずかしい映画だった印象が強くて、まさしく、これは思春期映画と呼ぶべき一篇であった。
インテックス大阪で「ちゃお&ChuChuサマーフェスティバル」
たまごっち、ラブ&ベリー、きらりんレボリューション、恋するプリン。
夢のようなゲーム&グッズ&イベントの数々だったが、成人した者の参加を拒むものが多かった。
会場は小学生でごったがえしており、大人抜きでないとスムーズにいかないのはよくわかるが、ちょっとくらい一緒に並んでゲームもしたかった。
たまごっちのテープせっけんのサンプルをもらったのが、一番の収穫だったかもしれない。ちゃおのうちわで風を送りながら、次のイベントに向かう。

24時間テレビ、よみうりテレビ本社で、H@chi。
全部で4曲のライブ。
以前miminyのときに「チャリンコ」というタイトルだった「大好き」も聞けたし、新曲の「パステルカラー」も聞けた。
でも、短かすぎる。
ツインのイベント会場に移動して、D.D.D。(坂本真里亜、上杉梨紗、後藤みゆう、落合真純)
こちらも4曲。テレビ中継も入った。
1.願い〜wishing〜(2ndシングル)
2.Heart(1stシングル)
3.HELP
4.心の扉(1stシングルカップリング)
8月9日にでた1stアルバム「D.D.D」から。
もともと国民的美少女コンテスト出身の少女たちだから、ルックスの良さは言うまでもないが、ダンスのうまさ、歌のうまさもたいしたものだ。
「DDD」というユニット名は「ダンス・ダンス・ダンス」の頭文字だそうだし。
あと、ステージでダンススクールの小学1年からOLまで総勢40人のダンスなど見たあと、次の場所に移動。

O-CATでダンスコンテスト決勝。
グランプリ:Flxsis
第2位:凌駕
第3位:BOO→YA
オーディエンス賞:森田さんちのオバさん
マクドナルド特別賞:スペクタクル
FM大阪賞:HEY MAMA
審査結果が出るまでのDJタイムでは、会場の大半がダンサーで占められた場所だけに、あちこちで自然とダンスバトルが発生して、見ていてスリリングだった。

今日はあちこちで多くのイベントを見たようでいながら、常に選択間違いをおかしており、順番をかえればもっと効率的に、しかもより多くのイベントを見ることができたはずだった。
悔しくて、帰宅後はたまっていた録画アニメなどを見まくった。
Berryz工房のサマーコンサートツアー2006「夏夏!〜あなたを好きになる三原則〜」
大阪厚生年金会館大ホール午後3時の回を見に行った。
銭型金太郎でベリーズ工房ファンの人が「その魅力は、ライブを見ればわかる!」と力説していたが、まさにその通り。
テレビなどで見ているかぎり、「新曲はイマイチだな」とか「ベリーズ工房ももう終わりだな」とか「あのメンバー、昔は可愛いかったのに」など、無責任なことをついつい考えがちだけど、ライブを見ると、その魅力にノックアウトされてしまうのだ。
以下、曲順。曲名の正しい表記はそれぞれ調べてください。
(芝居)夏夏合宿にきたベリーズ工房
1.ファイティングポーズはダテじゃない!
2.恋はひっぱりだこ
3.(VTR)ハピネス
(MC)メンバー紹介。司会役はまあさ。
4.笑っちゃおうよBOYFRIEND
5.ギャグ100回分愛してください
6.友情純情Oh青春
(芝居?)しりとり。くいだおれ〜レッスンで〜でっかいクツ〜嗣永桃子
7.チュッ!夏パーティー/夏焼、熊井、徳永
8.Yeh!めっちゃホリデイ/菅谷
9.ハレーションサマー/茉麻、桃子、清水
10.夏Remember You
11.(VTR)お盆の休憩時間
12.かっちょええ!(おかめとひょっとこ)
13.パッションE-CHA E-CHA
14.夏わかめ
(芝居)キュンとさせる言葉。
あなたを好きになる(好きにさせる)三原則は、「ドキッとする」「たまにつれなかったり」「でもずっと好きでいてくれる」
15.21時までのシンデレラ
16.スッペシャルジェネレ〜ション
17.なんちゅう恋をやってるぅYou Know?
18.ジリリキテル
以上、本編。「みやびコール」で以下、アンコール。
(mc)メンバーからの挨拶。夏焼は「みやびコールありがとうございました!」
19.マジ夏すぎる
20.ピリリと行こう!
以上。

今回のライブで特に印象に残ったのは、「夏焼復活!」だ。
不変の桃子、成熟の菅谷とそれぞれの道を歩むトップ3の中で、雅だけが「どーする?」という感じだったが、このライブで一番輝いていたのは、雅だった。これは意外。
トップ3の牙城を崩そうとする熊井も、まだ手が届かないな、と思わせる差を感じさせた。
また、僕の好きな須藤が、活躍の場の少なさと、会場内大ビジョンの出番の少なさで、人気の低さをものがたっていた。
あんなに笑顔が輝いていて、はりきっているのに!

今日から24時間テレビがはじまるので、よみうりテレビ本社に移動し、ESSEアカデミーの「ハッピーキッズライブ」を見て来た。
プログラムはヒアリングむちゃくちゃなので、雰囲気だけ。順番も間違ってそうだ。
司会は未帆と沙耶華。
1.MIXY
2.フレンジャー/ビーダマメドレー
3.フリフリガールズ
4.アイ・ウォント・ユー・バック
5.ピンキーDクラッシュ/セルフィッシュ
6.オーバードライブ
7.K2/気分上々

最初に出たミクシーのダンスと、最後のK2の香奈恵のマネキン唱法(今、僕が勝手に名付けた)には感動した。しばらく気分上々ばっかり頭のなかでグルグルまわっていたほどだ。

会場では、アカデミーライブも行われるようだったが、昨日のライブの打ち上げで朝まで飲んでいたので、肉体疲労は限界だった。
残念ながら、帰宅して、バタンキュ〜
大阪なんばベアーズで、「真夏の採点」
出演者(順不同)
野中ひゆ
いとこ三兄弟
あなるちゃん
邪王院弘+劉麗華女王様
佐伯誠之助
丼野M美
ヘルメッツ
No.305
少女崇拝
湿布ス
悪霊おばけ
GESCHLECHTSORGAN
やすみあけ
ちやじさん

僕は「いとこ三兄弟」で出演。
入場行進、一輪車部、スプリングサンバ。

イベントは大成功!
こんなアングラで気の狂ったライブはまたとない。

この日、持ち合わせがなくて『反射ノベル』の書き下ろしを販売し、なんとか打ち上げに参加することができた。
打ち上げにも参加してくれた悪霊おばけ君が、足を負傷しており、結局は救急病院まで歩いて行った。
ところがまあ、「今、先生がおりません」と来たもんだ。
別の病院を2つ紹介してもらったが、
1つは「他の患者を診ており、来てもらっても相手できない。よそをあたってくれ」
1つは「うちでは扱ってません」
しかたなく、救急病院の前で救急車を呼ぶ、という不条理な展開に。
救急車が到着し、運ばれるところを本人の希望で佐伯くんがビデオに録画していたら、救急隊員が「やめろ!」と何度も高圧的に罵った。
「常識で考えろ!」とまるで罪人扱いだ。
救急病院に行ったら「医者がいない」という状況は常識だけど、ビデオを撮るのは、高圧的に罵られるような非常識なことらしい。よほど、ビデオにとられては困るらしい。
まあ、われわれが常識的でないのは自他ともに認めるところであり、そういう意味では、怪我人を病院に連れていって救急車まで呼んだ我々が、まったく非常識な連中であったことは、きっちり見抜かれていたと言わざるをえない。
悪霊おばけ君の連絡先を知らなかったので、電話番号を聞こうとしたら、なかなか救急隊員は反応せず、あんまりうるさく聞くから「やれやれ」といった調子で出て来た隊員に、電話番号を聞きたい旨を告げると、「友達じゃないのか!」と責めるような口調であきれられた。友達じゃない人間が病院に連れていったとしたら、それは責められることではなく、むしろ美談じゃないのだろうか。それとも、ほうっておいてくれたらよかったのに!仕事が増えて迷惑だった!とでも言うのだろうか。
負傷者もわれわれもまったく人間扱いされなかった。
何度も言うが、それは正しい。
負傷者は「悪霊おばけ」なのだ。
それを連れていった人間たちはなうてのキチガイぞろいだったのだ。
救急隊員たちよ、われわれの正体がどうしてわかった!
とにかく、これからはもしも負傷しても、あいつらの世話にだけはなりたくない、と思わせた。
8月25日(金)午後6時30分
大阪なんばベアーズで、「真夏の採点」
出演者
野中ひゆ
いとこ三兄弟
あなるちゃん
邪王院弘+劉麗華女王様
佐伯誠之助
丼野M美
ヘルメッツ
No.305
北村早樹子
少女崇拝
湿布ス
悪霊おばけ
ペローニ楽団
GESCHLECHTSORGAN
やすみあけ
ちやじさん
前売り1500円
当日2000円
場所はBEARS
http://home.att.ne.jp/orange/bears/
反射ノベルの新作を1冊300円で販売します。
ぜひぜひ。
http://hansya.bblog.jp/
三橋一夫の『鬼の末裔』を読んだ。
ふしぎ小説の本もこれで3冊め。
「不思議な帰宅」
1年に1度の帰宅。
その日はお盆。

「湯河原奇遊」
便所に行ったまま姿を消し、数年後に出て来た男。
その間、男は記憶喪失で違う人生を送っていた。

「二人のユリ」
影に刺されて死んだユリ

「殺されるのは嫌だ」
小説の登場人物が作者を訪れ、殺さないでくれと嘆願する。
ことわると、登場人物は作者を殺してしまう。

「白鷺魔女」
掛け軸から抜け出してきた如来様と、楽しい日々。
白鷺の掛け軸にかけかえると、悪女につかまってしまう。

「カボチャ奇譚」
女房が駆け落ちするのを止めようとして、たたき殺してしまったと自白する男。
実は、既に妻には逃げられていて、頭がおかしくなっていたのだ。
死体があるべき場所には、たたきつぶされたカボチャが1つ。

「怪獣YUME」
毛皮が珍重されるめずらしい動物YUME。
育てるのに何度か失敗した後、毛皮にせずにずっとペットとして飼おうとしたら、巨大化。
餌と一緒に飼い主まで食べてしまう。

「角姫」
頭に角がはえてきた娘。
角のおかげで下らぬ相手と結ばれず、恋人とうまく行く。

「帰り来ぬ」
死んだ父と同じようにみかんを隠す犬。

「蛇恋」
男の怪しい行動がすべて善意から出たものだったと知り、誤解だとわかったとき、女は池に身を投げた。

「歯型」
恨みが生霊となって人を襲う。
夢で襲われた女がとっさに生霊の膝を噛むと、実際に膝に歯型のついた人物が。

「影」
自分が死んだことに気づかぬ男。
足元に影がないのにやっと気づく。

「鬼の末裔」
大江山の鬼は、漂着した外人たちのことだった。
その血をひく私は、鬼の血を断つために自殺する。

「あそこにもう一人の君が」
沼向こう。
死後もピアノの音が。

「暗殺者」
白い手袋の暗殺者から逃げようとする男。
それは自分自身。

「三井寺の鐘つき男」
愛する妻は蛇の化身だった。
正体がバレて、蛇は片目を渡す。
その目玉を口に含んでいると、赤ん坊は乳もいらず、むずがりもしない。
両目ともなくしてしまった蛇は、息子に鐘つきになってもらい、せめて音だけでも聞かせてほしいと願う。

「女怪」
間男に夫を殺させる女

「沈黙の塔」
夫をさがしてチベット、ブータンに行く女性。
生き別れの娘をさがす男。
埋めた財宝を取り戻しに行く男。

「帰って来た男」
浦地間太郎と、いじめられた亀吉などで、南洋ヤップ島で天国のような暮らしをする。

以上。
こういう、思い出すために書き出したポイント以外に面白い箇所が多々ある。
たとえば、表題作の「鬼の末裔」。
中心になるのは、鬼とは昔日本に漂着した外人だった、という点であることは間違いないが、その納得のさせかたがいちいち面白い。
日焼けの激しいものは顔が赤くなり、日焼けしないものは青い、ということで赤鬼青鬼を説明する。
「鬼は肉を手づかみで食い、大盃で血を飲んでいた」というのは、鳥肉を手づかみで食べる習慣があり、日本人のように小さな盃で飲む習慣はなく、赤ワインを飲んでいたから。などなど。
それ以外の部分で、物語に深みを加えるため、あるいは雰囲気作りのくだりがすごい。
この物語では、まず、死んだ父が残した仏像がケタケタ笑う描写から話がはじまっている。
そして、自分の恋い慕う女性が下らない男と結婚してしまう話が展開し、そのあと、おもむろに仏像からスペイン語で書かれた文書が発見されて、鬼の正体が明かされるのだ。
鬼がどうのとかいうことと、女性との悲恋は直接関係ないように思えるのだが、これがあってこそ鬼が人を不幸にする忌わしい存在だということが強調されて、自殺によって血を絶つ唐突な結末に説得力が出ているのだ。
短い話でも、ちょっとしたドラマが用意されていて、小説として成り立っているのが、心地よい。

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