今日はギャラリー・ノマルに行く予定だったが、パフォーマンスの時間に間に合いそうにもなく(5分ほど遅れそう)、急遽、自宅近くのファンタピースを見に行くことに変更。
この日は、「ツーコインライブ」で、見れたのは第3部と第4部。
まず、第3部。
1.ネバーエンディングロード(長谷川寿里・山口りほ・松元瑠菜・寺西紗弥・岩崎百花)
2.サンサンサンシャイン(同上)
3.ショック(川口梨花・谷口佳蓮=りんかれん)
4.ダンスでバゴーン(同上)
5.ディペンド・オン・ユー(長谷川寿里・山口りほ・松元瑠菜・寺西紗弥・岩崎百花)
6.ギブ・ミー・ラブ(7人全員)
アンコール
7.A.RI.GA.TO

第4部
1.ずっと見ていて☆(清本晏名・鞠谷ふうか・吉田美穂・藤井えりさ・佐藤萌美)
2.プレシャス・ラブ(同上)
3.直感2(森下華奈子)
4.桃色片想い(松本知香)
5.アイルビーゼア(清本晏名・鞠谷ふうか・吉田美穂・藤井えりさ・佐藤萌美)
6.マイ・グラデュエーション(7人)
アンコール
7.レッツパーティータイム

金曜Goldee

2012年1月13日 アイドル
おじさんの三十五日。
法明寺の和尚さんは、生前の叔父をよく知っていただけに、読経のあとのお話も、心にしみるものがあった。
夜勤明けだったので、いったん帰って睡眠、休養のあと、夜から堀江ゴールディーに行った。金曜Goldeeとして、定期的に開催されるイベントになる、という。
到着時には既にはじまっていたので、イベント途中から見れたところだけを書くと。

太田里奈
1.まちぶせ
2.木綿のハンカチーフ
3.トライアングル・ラブレター
「み~」という謎の仕草。
天然というのは、この人のためにある言葉なのだろう。「おバカ」ではないのだが、ナチュラル・ボーン・天然なのである。彼女なら信頼できる。

いずこねこ
1.ジュピターガール
2.レイニー・アイロニー
いずこねこの行くところすべてアイドルのホットスポットに早変わり。

高杉みなみ
1.ニューワールドミュージック
2.クレイジー・フォー・ユー
3.世界に感謝MAX
4.勇気100%
風格も出てきた。

ゆるステタイム(ふだん歌わない歌を歌ったり、挑戦中の歌を歌う)
太田里奈
1.僕が作った愛の歌

いずこねこ
1.スキちゃん
2.レイニーアイロニー
お。オリジナル曲今回2度目。

高杉みなみ
1.バレーワールドカップの歌
2.ウィンター・マジック


『裂けた視覚』

2012年1月12日 読書
『裂けた視覚』

高木彬光の『裂けた視覚』を読んだ。1969年
以下、目次
第一部 虚像の死角
第二部 魔の偶像
第三部 勝負の映像

連作の形をとりながら、通して読むと1つの長篇になるミステリー。なるほど、新機軸、とも思えるけど、シリーズものの1つのパターンである。
事件を解決するのは、新聞記者の佐々木進一とその先輩、山西誠。山西は、同じことをくりかえして粘るために「クレイジーLP」とあだ名されている。

1部はオール・アメリカン・エアラインズという航空会社係累の会社による、海外での日本人向けホテル建設にかかわる詐欺事件。
2部は仏像のレプリカを販売する詐欺事件。
3部は小豆相場に関わる殺人事件。
社会派のミステリーではあるが、本格のにおいがするあたりが、面白い。

なお、この本は中学時代に散髪屋に持って行って、髪の毛を切ってもらいながら読んだもので、再読になる。案の定、中学生の頭には何も入っていなかったようで、まるっきりの初読の気分だった。中学生だった頃の自分のカットされた毛髪もページのあいだから1本見つけて、懐かしい思いがした。

『超高層ホテル殺人事件』
森村誠一の『超高層ホテル殺人事件』を読んだ。1971年。
以下、目次
闇の忍び逢い
光の十字架
垂直の死者
高層の密室
逆のアリバイ
屈辱の条件
奇形の閨房
不倫の符号
第二の死者
深夜の空白
空間の盲点
業務委託契約第十二条B項
腐乱した居住者
孤独な経営者
腐乱の接点
殺意のIC
行きずりの恋人
虚空からの遺書
空白の符号
殺人針路
分離された密室
救いなき情死者

超高層ホテルの16階から人が突き落とされた!
もちろん、即死!
問題の16階から逃げた者はいない。犯人はどこから逃げたのか!
と、いうミステリーで、これは発表当初、「なんぼなんでも無理ちゃうか」という意見があって、何階から落ちたか、という階数が変更になった、と記憶している。だが、それが僕の思い違いなのか、本当にそんなことがあったのか、さだかではない。どっち?
16階から消えた犯人の謎は、まず、ミステリーファンなら、考えつくのが、「人形だったのではないか」と「落ちたのは16階からではない」という答えだろう。それは間違いである。衆人環視のもと、正真正銘の人間が高層ビルのイルミネーションの中、落下していったのは16階からである。(九つの答え風)
そうした派手な第一の事件もミステリーファンの心をくすぐるが、後半のアリバイ崩しや、チェーンロックのかかった密室でのトリックなどもあって、じゅうぶんに満足できる出来になっていた。部屋の見取り図や、家系図といったビジュアルが懐かしくてうれしい。
アリバイ崩しで「へえ」、と感じたのは、可能性を考えてみるタイプの謎ではなくて、そのトリックがいかにして現実に可能なのか、が追求されているところだ。たとえば、移動するのに電車では時間が無理な場合、誰でもが飛行機を使えばいいじゃないか、と思うわけだが、飛行機を使うにしてもその時刻表を調べると無理。じゃあ、自家用ジェット機を使えばどうか。しかし、そんなことは可能か、というような思考法だ。これは政治やビジネスにも通じる話で、解決策は思いついても、それを実現させるには何をすればいいのか、が問われるわけだ。
僕の学生時代は、推理小説といえば森村誠一、と相場が決まっていたが、僕は昔ながらの本格探偵小説や、少年ものにみられる冒険活劇の方が好きだったので、森村誠一はあんまり読んでいないのである。せいぜい15冊くらいか。今回読んだ『超高層ホテル殺人事件』だったら、当時の僕が読んでもじゅうぶん納得できる作品だったので、もう少し森村誠一の本を読んでみてもいいかな。


『蛭川博士』

大下宇陀児の『蛭川博士』を読んだ。1930年。
以下、章立ての順に、簡単なまとめ。ネタバレをしているので要注意。著者の代表作として題名をあげられることの多々ある作品だが、復刊される気配がまったくない。大下宇陀児の作品は、バージョン違いで書き直しているものもあるので、違うバージョンのものと読み比べてみたりもしたいのだが、いかんせん、古書店でもほとんど見かけなくなてしまった。
本作は、最初は秘密の賭博クラブに出入りしているような不良の混血児が、愛情ゆえに名探偵にめざめて事件を俄然解決してしまうストーリーで、見世物小屋で馬鹿力を売りにしていた男にも格闘で勝ってしまう。(相手がもう高齢だったということもあってか)
第一の殺人の意外な動機と犯人消失トリック、そして第二の殺人のトリックは、きわめて面白い。ストーリーが錯綜してしまうのは、登場人物たちが容疑を別の人物にかぶせようと嘘をついたりするためで、また、後半、犯罪の証人を消すために安い殺人が付け加えられてしまうのは、ちょっと安易に走っている気もする。だがしかし、大下宇陀児の作品なのだ。もっともっと読みたい!
なお、登場人物を部分的に紹介すると、
蛭川博士・・・変身術を用いる癩病の怪物
葉村教授・・・盲目のきちがい教授
與四郎・・・聾で唖の下男
鞠尾夫人・・・サーカスに売られた女性
桐山ジュアン・・・不良であいのこ(名探偵)
まあ、これでは復刊しにくいかも。
第1章 都会の病気
「不良少年」
 東京山の手の活動写真館シネマ・パレードの地下室で、井波了吉、桐山ジュアンが、仲間の弁士、東海林厚平について話している。
「宝石」
 筑戸欣子が訪ねてきて、厚平に貸した指環を返してほしいと迫る。
「砂中美人」
 片瀬の海水浴場で了吉はパラソルに隠れていちゃつくカップルを覗こうとする。パラソルから出て泳ぎに行く黒い水着の男。パラソルの中には半分砂に埋もれた欣子の死体。

第2章 博士夫人
「検証」
 蘆谷警部の取調べ。沖島貞作刑事も捜査に加わる。欣子の死因は、心臓への短刀の一刺し。
「伊達巻の女客」
 現場にあった赤鼻緒の下駄を手がかりに、猪俣刑事は、海水旅館の欣子の連れの客に事情を聞く。その客こそ、蛭川鞠尾。蛭川博士の奥さんである。彼女の証言により、欣子に話しかけてきた背の低い男性がいたことが判明。

第3章 呪の邸宅
「巨大な怪人」
 蛭川龍造博士宅に行った猪俣刑事は、そこでハゲで唖の巨人、與四郎に襲われる。博士夫人があわてて出てきて、與四郎を制止する。與四郎は蛭川博士の縁つづきの低能な片輪者だったが、引き取り手がないため、当家で下男として住まわせているのだった。
「悲しみの婦人」
 蛭川博士は重症の癩病で半身不随になり、二階の病室にひきこもっており、窓から外を見たり、窓から物を投げたりしている。

第4章 二匹の鼬
「探り合い」
 了吉は厚平の犯行だと思い込み、目撃証言も「背の高い外人風の男」だったとうそをつき、証拠の品をちょっと離れた砂浜に埋めておいた、という。
「奸悪の輩」
 桐山ジュアンは日曜日になると、こっそりとどこかに行っているようだ。ちなみに殺人があったのも日曜日。
「かふぇー・あざみ」
 欣子惨殺の現場に落ちていた、かふぇー・あざみのマッチ。その、かふぇー・あざみに入っていく桐山ジュアン。

第5章 地下の歓楽境
「アザミクラブ」
 かふぇー・あざみの奥には、賭博、阿片、舞台、浴室で構成された会員制の秘密クラブがあった。桐山ジュアンはその賭博室で、ルーレットの開帳を待っている。
「盲目の教授」
 賭博室で盲目の葉村教授と、その娘、美奈子に接触する桐山ジュアン。
「暗号通信」
 かふぇー・あざみに来た刑事が、傘立ての傘に、桐山の名が彫りこまれているのを見て、桐山に会わせろ、とバーテンに詰め寄る。バーテンは地下ホールにつながる非常用の呼び鈴を鳴らす。
「発狂」
 非常警報で混乱の中逃げ惑う客たち。その混乱のなかで、葉村教授は狂ってしまう。

第6章 陥込んだ罠
「警視庁の一室」
 蛭川博士は怪しいけれど、重症の癩病であれば犯行は不可能。唖の與四郎は鞠尾夫人に横恋慕しているのではないか、という疑念。
「意外な手紙」
 桐山ジュアンは学生と暴力沙汰を起こしていたが、示談で済んでいた。だが、示談で済んでいることを厚平、了吉はジュアンに隠している。警察では、ジュアンは人殺しなどしそうにない、と言っている最中に、ジュアンを告発する密告手紙が届く。厚平と了吉が書いたものだ。
「張込み」
 警察がジュアンに事情を聞きにいくが、ジュアンはもぬけのから。
「鼬の本領」
 ジュアンは、了吉に、犯行当日、館を2時間しかあけていない厚平は犯人ではありえない、と言う。了吉は、厚平が密告手紙を書いていた、とジュアンにチクり、ジュアンは逃亡。警察が来たときにジュアンが既に逃げていたのは、こういうわけだった。

第7章 二度目の殺人
「海岸の黒影」
 犯行現場で何かを探す小柄な人物が目撃された。鞠尾夫人より、蛭川博士殺害の報せ。
「現場の概略」
 蛭川博士は自宅2階病室で斧で殺されていた。
「疑問の遺留品」
 犯行時、夫人と與四郎は不在で、博士一人だった。現場にあった手袋は蛭川博士のもの。凶器の斧も、犯人が逃走に使った細引きも蛭川家のもの。
「夫人の驚愕」
 死体にかけられていた白い布を取ってみて鞠尾夫人は叫ぶ。『これは主人ではありません!』

第8章 新しい捜査方針
「再検証」
 被害者は蛭川博士ではなく、別人の癩病患者だった。再度室内の調査がはじまる。
「博士失踪」
 生前に博士を診察したことのある尾形医師は、死体が博士に似ていると言う。沖島刑事は推理する。蛭川博士は自分が殺されたように見せかけて姿をくらました、と。
「変身術」
 蛭川博士仮病説。片瀬の海岸での殺人も博士のしわざではないか。唖の與四郎=蛭川博士説を受けて、専門家の試験により、與四郎は正真正銘の唖だと証明される。
この章から、ちょっと長いけど、本文引用。
それにしても、博士を欣子殺しの犯人として見ることは、だいたいにおいて筋道が立っていた。そうしてしかも、博士とその欣子殺しの嫌疑がいつ自分の身にかかってくるかということをおそれて、自分というものをこの世から抹殺すべく、今度の殺人を敢行したのだとも見られるのだった。
したがって、それには博士の病気がまったく仮病で欣子殺しの時などは、抜手をきって沖へ沖へと泳ぐことさえできたものと見ねばならぬ。背の低い小柄な男だったという鞠尾夫人の証言と、背の高い毛唐のような男だったという井波了吉の(実は嘘の)証言と、それがここでも問題になる。そしてまた、夫人が海岸でその男の顔を見た時、それが博士であったとすれば、どうして夫人にはそのことが気づかれなかったか、その点もよくよくは分らなかった。きわめて不気味な、現実には到底有りそうもないことながら、蛭川博士は奇怪な変身術でも行うのではなかろうか。
そこまで考えた時、誰しも眼のさきに思いうかべるのは異形に腐れふくらんだ、あの醜い大きな顔であった。眼をとじると、それがドンヨリとした灰色の空間に、雲の集まったような大入道となってニタニタと嗤うような気持ちさえする。変身術が実際に行われるなどと、誰も本気になって考えたくはなかった。が、その中でも猪股刑事は、なにがなし不気味に思えてしかたがなかった。最初に感じたあの不可解な恐怖が、いまとなってはいっそう強く憶いだされた。まぼろしの空間にうかぶ博士の顔が、その蔭に秘密喇嘛教の奇怪な獣人の姿を蠢かせたり、あるいはまた剥げおちた曼陀羅の絵のようにいろいろと変わって、急に大きくなったり縮んだりした。

「馬鹿由」
 鞠尾夫人は両親によって外国のサーカス団に売り飛ばされ、外国をめぐる内に、博士と出会って救われて結婚していた。博士の出生地は不明だという。
與四郎に関する情報が長野県の警察から寄せられた。聾で唖の馬鹿由にそっくりだというのだ。馬鹿由はどえらい力の持ち主で見世物師に連れられて外国を巡業しているのを目撃されている。目撃した人物は葉村喬太郎という医学博士で、詳しくは知らないが東京に住んでいるそうだ。

第9章 或夜の事件
「青年会館」
 桐山ジュアンによってクラシック・コンサートの会場に呼び出された了吉。
「夜の外苑」
ジュアンは学生と暴力沙汰を起こしおり、それは既に示談になっているが、その事実を厚平が隠していた。了吉はその事実をジュアンに暴露する。その現場を厚平に見られて、厚平、了吉間に一触即発の険悪なムードが漂う。二人は、ジュアンの潜伏先をつきとめようと休戦。だが、ジュアンは尾行をまいて、潜伏先はつきとめられなかった。
「狂える教授」
 ジュアンは発狂した盲目の葉村教授とその娘のところにかくまわれていた。狂った教授は、眼玉をくれ、と騒いでいる。

第10章 謎の密雲
「緑色の日記」
 教授の娘、美奈子は日記に秘密を書いているらしい。ジュアンと美奈子は日記の取り合いとかしてじゃれる。
「拘引」
 葉村教授に話をきくために沖島刑事が訪問する。ジュアンは自分をつかまえにきたと勘違いして、逃亡。
「個人鑑別」
 蛭川博士=葉村教授説。鞠尾夫人に面通ししてきいてみると、知らない人だと言う。どこか怪しい、と思って調べてみて、葉村教授が本物の狂人とわかり、別人であると推定。美奈子の日記から、葉村宅で桐山ジュアンをかくまっていたことが露見する。

第11章 蹶起せる混血児
「情報」
 美奈子よりジュリアンへ(局どめ別名義手紙)、ジュリアンより美奈子へ(旭新聞に暗号広告)の秘密のやりとり。片瀬海岸で子供たちが短刀の鞘を拾った話。鞘には東海林という名前が彫ってある。
「闘争の前」
 沖島刑事に浅草のバア「龍の巣」に呼び出された了吉。実は呼び出したのはジュアンで、了吉から情報をひきだす。厚平が美奈子からダイヤの指環をまきあげて売り払ったこと、了吉が現場に東海林と彫った鞘を隠して厚平をゆすろうとしていたこと。

第12章 太陽ホテル事件
「骨董商」
 欣子のダイヤを買った贓物買いの倉知為次郎を訪ねるジュアン。ダイヤは一足先に佐々山と名のる背の低い、しゃがれ声の人物に買われたらしい。
「十七号の客人」
 佐々山と倉知の取引現場、新宿太陽ホテルに行くジュアン。フロントで、佐々山には来客があったが既に帰っており、部屋には佐々山ひとりだと聞き込む。掃除夫に聞くと、佐々山は週一でホテルを利用しており、女づれ。その女は欣子そっくり。
「三度目の殺人」
 ジュアンは十七号室で倉知の死体を発見する。ホテルの帳場にはカフェー・アザミのバアテンがいた。

第13章 恐怖の指環
「電線のささやき」
 犯人はダイヤの指環を奪うために倉知を殺したにちがいないが、その指環にどんな秘密があるのだろう。
 新聞に自分の名が載ったのを見て、ジュアンはなによりも美奈子を安心させるために、怪物・蛭川博士をつかまえる決心をする。
「意外な伝説」
 ジュアンは美奈子から意外なことをきく。蛭川博士から欣子、厚平、倉知へと転々と所有者を変えるダイヤの指環は、盲目の葉村教授がかつて持っていたことがあり、その指環を持っていると命を失うという伝説があった。
「唯一の道」
 葉村教授は蛭川博士なのか?だが、片瀬海岸の殺人のとき、葉村教授は薊クラブにいた。倉知殺害のときは、留置場内にいた。アリバイがあるのだ。だが、蛭川博士は変身術を使って不可能を可能にしたのかもしれない。

第14章 怪物襲撃
「唖の與四郎」
 ジュアン、鞠尾夫人宅を訪れる。そこで唖の與四郎に会う。
「夫人の答え」
 蛭川博士による一連の犯行の動機は指環にある、とジュアンは鞠尾夫人に指環の秘密を問い詰めるが、夫人は何も知らないという。
「浴室の悲鳴」
 ジュアン、與四郎に襲われる。與四郎をたたきのめすジュアン。夫人宅にとってかえしたジュアンは、浴室から夫人の悲鳴と、「わしだ、わしだ、騒ぐじゃない」と言う妙にしゃがれた声を聞く。しかし、浴室に押し入ったジュアンが見たのは夫人だけだった。
「恐ろしい脅迫」
 ジュアンは、のびている與四郎に水を持って行ってやる。鞠尾夫人に聞いてみると、浴室に蛭川博士が入ってきたが、来たことを告げると殺すと脅して出て行ったとのこと。
ジュアンは、帰りぎわ、夫人になにごとかを言う。夫人はひどく驚く。その言葉こそ、ジュアンの推理のいとぐちになったものである。

第15章 潜りの探偵
「妙な訪問客」
 私立探偵原田が美奈子宅をたずねる。癩病院から患者を1人買い上げた人物がいる。蛭川博士=葉村教授の噂を止めるために、癩病院での目撃者に口止め料が必要だ、と告げる。
「吉報」
 そこに桐山ジュアンが出てきて、すきなように言いふらせ、と私立探偵を一蹴する。

第16章 真犯人
「色めく警視庁」
 警視庁に連行されたジュアンは、美奈子の日記帳をもとに、犯行当日(8月1日)葉村教授も自分も薊クラブにいたことを明かす。これでジュアンのアリバイは成立した。さらに、ジュアンはある推理を刑事に述べたようだ。
「大寺療院」
 身代わりに殺された癩病患者は、大寺病院から、試験的療法の名目で派遣された人物あることが判明。
「再びあざみクラブ」
 地下の歓楽境、薊クラブに警察の手入れ。かふぇー・あざみのバアテンと太陽ホテルの従業員を兼ねていた千葉省吾という男が、かふぇー・あざみのマッチは太陽ホテルで佐々山に渡されたことを供述。
「最後の犠牲者」
 蛭川博士宅に、了吉、厚平二人の死体。

第17章 博士の正体
「半信半疑」
 鞠尾夫人に事件のあらましを述べる警察。
「ジュアンの推理」
 了吉と厚平が殺されねばならなかったのは、指環の秘密を守るためだった。
ジュアンが鞠尾夫人にささやいて顔色をかえさせた言葉というのは、ジュアンが蛭川邸に隠れ棲んでいるという事実の報告だった。
ジュアンは推理を述べ立てる。蛭川博士など存在せず、癩病院から身代わりにつれてきた患者を殺して、その死体が蛭川博士ではない、と証言することで、犯行後に行方をくらませた怪物・蛭川博士の存在をでっちあげたのではないか。
「四人の証人」
蛭川博士が失踪したのではなくて、博士はもともと存在しないものであり、しかも鞠尾夫人はその存在しない博士にすべての嫌疑をかけるため、借りてきた癩病人をたくみに利用して、博士が失踪したように見せかけたのだ

ここでジュアンは、鞠尾夫人こそ怪物・蛭川博士の正体だ、と断言する。
浴室でのことは、與四郎に命じてジュアンを襲撃させたが、逆にやられてしまい、思いもかけずジュアンが鞠尾夫人宅に戻ってこようとしたので、後をつけて首尾を確認していた夫人が、もとの着物姿になることができず、浴室という場を選んだのである。
証拠を出せ、と言う夫人に対して、ジュアンは、癩病院の院長、病院で目撃していた薬局生、贓物買の店の小僧、太陽ホテルの帳場の老人と、証人をつれてくる。
変装を解かれようとした鞠尾夫人は、ついに暴れて自ら犯行を認めてしまう。

第18章 予審調書
「欣子殺し」
 鞠尾夫人は、片瀬海岸での殺人者は、黒い海水着姿だったのに、自分は薄緑色の水着だった、と言って、犯行を認めない。
尋問のすえ、意外な事実が判明する。
鞠尾夫人は、断髪で、ふだんは男装していたのである。欣子とは同性愛の関係だったが、プレゼントした指環を別の男、厚平にあげてしまったりして、嫉妬と失恋で欣子を殺そうとした。
男が殺した、と思わせたいがために、海岸という場を選び、水着を3枚着用して、海に出た。まず、緑色の水着で欣子と一緒に海岸に行き、1枚脱いで黒い水着姿になって欣子としばらく遊ぶ。このときに目撃されたのが、「黒い水着を着た小柄な男」だ。で、殺してから海の中で黒い水着を脱ぎ、緑色の水着姿になって、先に宿に戻っていたのだ。
「指環の秘密」
 鞠尾夫人は、かつてサーカス団に売られて外国を巡業中に、葉村教授にひきとられた。同じく葉村教授にひきとられた唖の與四郎が、鞠尾への思慕から、葉村教授を襲撃し、その際に、葉村教授は盲目になってしまう。教授を死んだものと思い込んでいた鞠尾と與四郎は逃亡し、その際にいまわしい来歴のある指環もくすねた。

第19章 大団円
 精神病院に入っていた葉村教授は全快して退院。
薊クラブで賭博していた件はジュアンも教授も不問。
唖の與四郎は、葉村教授の姿を見て、飛び降り自殺。
美奈子は、ジュアンに、鞠尾夫人を怪しいと思ったきっかけについて聞く。
ジュアンが蛭川邸に隠れて寝泊りしていることを鞠尾夫人に告げたあと、ジュアンは蛭川邸で襲われた。彼が蛭川邸にいるのを知っているのは誰なのか、と考えてみたのが最初のヒントだったのである。



書初めライブ@UPs~ファンタピース・ソロfスティバル第3部@ラブコンシアター
午後1時30分から、日本橋UPsで書初めライブ。
出演順に、簡単なメモ。
仲村コニー
1.デパーチャーズ
2.バレンタイン・キッス
3.ミニハムズ愛の歌

MiSAKi
1.キスミー愛してる
2.君のことが好きだから

ARiSA
1.有頂天LOVE
2.がんばって青春

桐山もえ
ディスタンス

MOMOe
1.ハレ晴れユカイ
2.インフィニティー

福野みはる
lily
神谷にこ
以上、wktkメイツは1曲ずつ。

藤井ひかる
1.完璧ぐーのね
2.(あ~、書き損ねて忘れた)

書初めコーナーは、今年の目標。
藤井ひかる(初段)「巨乳」
MOMOe「よく食べる」
MiSAKi「スマイル」
ARiSA「成長する」
仲村コニー「作詞」
Mari7(4段)「一月二十五日シングルミリオン」
なあこ「カッコカワイク」
原瀬今日香(準2段)「盛沢山」
神谷にこ「癒す!!!」
福野みはる「臨機応変」

L.u.v
1.プリティー・キッス
2.インスピレーション
3.ジェットドリームガール

近野なあこ
オースペイン

原瀬今日香
シャイニングデイズ

Mari7
1.ドラマ
2.ファラウェイ(だったかな?うろおぼえ)
3.恋のマジック
4.スペシャルプレース

物販に参加した人には特別にサインならぬ、習字のプレゼントがあった。
僕は、ARiSAちゃんに「アオアオ」と書いてもらった。

午後5時30分から、日本橋ラブコンシアターでファンタピースのライブ。
今回はソロフェスティバル。
僕は第3部だけ見ることができた。

1.ネバーエンディングロード(山口、長谷川、藤井、谷口、川口、鈴木)
2.直感2/森下
3.モア・キッス/清本
4.ラララ幸せの歌/鞠谷
5.ココロのチズ/松本
6.走れ/山口
7.会えない長い日曜日/藤井
8.時の流れに身をまかせ/鈴木
9.キッス・ミー愛してる/谷口
10.学園天国/長谷川
11.みんな空の下/川口
12.レッツ・パーティータイム/10人
なんと、「KISS ME愛してる」は本日2回目。
それぞれ魅力的だが、かれんのダンスの激しさに驚いた。

Jim Woodring展@トランスポップギャラリー~新春げいかくし大会@Cafe la siesta
今日は、京都でNo.305企画のライブに出演。
どうせ京都に行くのだから、ということで、出町柳のトランスポップギャラリーで「Jim Woodring展」を見てきた。前半のモノクロ展示は1月22日まで。後半はカラー作品が展示されるそうだ。
今回見たモノクロ作品は、描きおろしのもので、サイケでシュールな世界、というよりも、サイケデリックにしてシュルレアリスム的な世界が展開されていた。
http://www.trancepop.jp/

そして、午後6時からは、No.305京都企画 「新春げいかくし大会」
場所は 京都木屋町 Cafe la siesta
http://cafelasiesta.com/
出演は、
野中ひゆ
No.305
スープーメッセンジャー
保山ひャン
福重ユキヲ
邪王院弘
闇色鍵盤
Bugって花井
アメリカンバッドボーイ
僕は、この日、トランスポップギャラリーから戻ってから、木屋町のソワレでせっせと今日やることをまとめていた。
結果、自分としては面白いものが出来上がったと思っているが、たぶん、公開は今回かぎり。(ほとんど、僕のパフォーマンスは、1回こっきりのが多い)
他の出演者のライブも面白くて、新春そうそう、いいものを見た。
僕の今日のパフォーマンスは、ひとことで言うと、将棋の解説をする偽サオリリスみたいな感じ。なんだそれ?
帰りは、トランスポップギャラリーで購入したジム・ウードリングの『ブラック&ホワイト フランク』を電車の中で読んだ。分厚い本で、この1冊で、ジム・ウードリングのモノクロ漫画がほぼ全部網羅できているとのことだ。
ところで、この本で、つかまっていた豚が悪魔の手足をポキポキに折って逃げ出すシーンのページが、2回出てくるのは、何なんだろう。印刷ミスなのか、それとも、漫☆画太郎みたいな手法なんだろうか。
ああ、今、この日記を書くのに、この本を取り出して、ぱらぱらとめくっただけで、不思議な悪夢を見そうである。

帰宅後、録音で「現代の音楽」。
                          猿谷紀郎
 - タンブッコ・パーカッション・アンサンブル -(1)         
「プリズム」          クラウディア・カルデロン作曲
「風のリズム構造1」          ラウル・トゥドン作曲
「メトロ・チャバカーノ」      ハビエル・アルバレス作曲
「石の歌、石の踊り」          ポール・バーカー作曲
「オルガニカ」             マリア・グラニージョ作曲     
      (演奏)タンブッコ・パーカッション・アンサンブル
  ~東京・トッパンホールで収録~   

日本橋ラブコンシアターでファンタピースのライブ。
僕が見たのは、2部と3部。
15時30分からの2部(開始は15時48分)
1.ネバーエンディングロード(森下、山口、松元、長谷川、岩崎)
2.サンサンサンシャイン(森下、山口、松元、長谷川、岩崎)
3.笑ってたいんだ(寺西)
4.ラブストーリー(佐藤)
5.ディペンド・オン・ユー(森下、山口、松元、長谷川、岩崎)
6.ギブ・ミー・ラブ(森下、山口、松元、長谷川、岩崎、寺西、佐藤)
以下、アンコール
7.ロンリー・オンリー
とにかく、この回は、ソロを歌った佐藤萌美のお人形さんのような綺麗可愛さに驚かされた。僕にとってのファンタピースでの萌え部門は、この萌えPが一等賞なのである。

17時からの3部。
1.あまえてみせて(浦田、清本、鞠谷、鈴木、吉田)
2.ユー・アー・マイ・スター(浦田、清本、鞠谷、鈴木、吉田)
3.オンリー・ユー(谷口、川口)
4.雑草のうた(谷口、川口)
5.デイズ・スペシャル・シャイン(浦田、清本、鞠谷、鈴木、吉田)
6.ビリーブ・ユア・アイズ(浦田、清本、鞠谷、鈴木、吉田、谷口、川口)
以下、アンコール
7.アイルビーゼア
今回は、客席に他のライブでよく会う友人が、初ファンタピースで見に来ていた。
はじめて見るには、このメンバーは、端整な反面、地味に思えたかもな、と思った。

午後7時からは、道頓堀ZAZAでOSAKA BB WAVE LIVE
発表があったメンバーは、中迫晴香、福田あんな、門前あかり、榎本妃世里、山下留依沙、亀井愛美、飯山美紗、米澤枝理花、三村涼音、神崎めぐみ、石田愛梨、松本美紀、西田早希、田代麻由、藤田祐紀。
キープ・オン・スマイリングにはじまり、ラブ&スマイルに終わる9曲と、アンコールは、TONBORIブギーガール。
途中のトークコーナーのお題は、「今年の抱負」
LALAの「ワンダーランド」とか、シャナナ、トゥデイ&フォーエバーなどやったのだが、いかんせん、セットリストを記したくても、タイトルがよくわからない曲が多くて、申し訳ない!
OSAKA BB WAVEになってから、他の場所でのライブは見ていたが、BBステーションやZAZAでのライブをちっとも見に行ってなかった。
で、今回久々に見に行って、その楽しさを思い知らされた。
NMB48のステージを参考にしたんじゃないか、と思われるステージ構成になっていた。(自己紹介などは、AKB風というか、ももクロ風というか)だが、ちゃんと歌っているのが、好感の持てるところ。
今まで屋外などでのキャンペーンライブで得られなかった感動が、このワンマンライブにはあった。何がどう違うんだろう?まあ、あと何回かライブを見に行くと、その違いがはっきりと言語化されるんじゃないか、と思う。
そして、今回の収穫は、なによりも、まなみとまゆの魅力だった。
とくに田代麻由の動向は、今後チェックしていく重要性が大きい、と感じた。

Fashion Exchange The New Me@Pretty Power OSAKA
心斎橋のPretty Power OSAKAで、ブライスの巡回展、Fashion Exchange The New Me。
3日から10日までの1週間の展示だったが、なんとか見に行くことができた。
ドール作家は、みついろ+BABY Rose、HANON(フジイサトミ)、kinokotti、*Soleil*、椛、オダニミユキ、ジュニームーン。
突飛なファッションがないのが残念だったが、ブライスショップでの展示なのだから、ブライスのファッション・ショーとしてはまずまず楽しめる内容だった。
このお店で、以前ブライスのノートを買ったな~、とか思い出しながら、しつこいほどに鑑賞。特製ポストカードもいただいた。
ブライスドールの顔がずらりと並んだグッズを買う予定だったが、買い損ねたことに店を出てから気づいた。
『殺人はリビエラで』
トニー・ケンリックの『殺人はリビエラで』を読んだ。1970年。
ネタバレするので、要注意。でも、この本、書店にたぶん並んでいない、と思う。
主人公はレナルズとウッドのコメディアン・コンビ。
ショーの最中にふらふらと入ってきた男がバッタリと倒れる。背中にはナイフが刺さっていた!この被害者は、死ぬ前に、レナルズの恋人アンジェラに「マルタンのことで会いたい」と伝言メモを渡していた。
本作はトニー・ケンリックのデビュー作になる。
ユーモア、と言うにはお笑いの度が過ぎるコミカルなミステリー。ドタバタ風味もたっぷり。
獣医が怪しい、と踏んだ2人は、探りをいれるために、ペットショップで動物を買って、動物病院に連れて行く。それがなかなか目当ての獣医にみてもらえなくて、次から次へと動物を変えて動物病院に連れ込むあたりの描写は抱腹絶倒。
ラストにまでそのギャグはひきずられている。
また、事件を追ううちに、2人は、棺桶の中に密輸品を隠している、と推理して、葬儀の後の棺桶を強奪するあたりとか、ブラックな笑いも強烈。結局、棺桶の中には何もなくて、推理がはずれてガッカリするのだが、棺桶の中に物を隠したのではなく、死体の中に隠したのだ、と、さらにエグイ推理にぶち当たる。で、真相はどうだったかと、いうと、さらにブラックなものだった。死体には何も隠されていなかった。死体そのものが「ブツ」だったのである。どういうことかは作品を読んでゲエ~っとなってほしい。

映画怪物くん

2012年1月1日 映画
1月1日は映画の日。
「映画怪物くん」を見に行った。
ジャイアント白田などのちらっと出るシーンが楽しそうだった。

UPs

2011年12月31日 アイドル







午後1時30分から、弁天町のORC200で「歌姫ライブXmasスペシャル」
出演したのは、
内川樺月/ディス・クリスマス(オープニングに1曲)
村上夢歌/ウィンターソング(歌、迫力ある!扇持って歌ってた)
MokaRika/ウィンターマジック、Bang!~We Will Win~Fight together(1曲終わった時点で、終わりだと勘違いした司会が出てきてあせった)
比奈多しょうこ/前半は、1曲だけの人が多いようだな。もう少し聞きたい。
山内加奈/アクターズスタジオ
スタジオDIP/ダンスのスキル、ほんとにアップしてるね~
戸島久伶愛/星間飛行、ガラスのパンプス
遠藤早希/恋人がサンタクロース、わたしがオバサンになっても。練習していた曲がカラオケになくて、急遽選曲を変えた、とか。
山本美優/ハート型ウィルス(さきちゃんと)、ユー
黒田沙耶華/マイ・スペシャル・デイ
奈月/yksk、ウィンターベルズ
鶴田奈々/ありがとう、ホワイトクリスマス(2曲ともオリジナル)
大岡美佐/きよしこの夜、オーホーリーナイト、タイム・トゥ・セイ・グッドバイ(ソプラノ)
原田真由美/I will always love you、恋人たちのクリスマス(ホイットニーにマライア。鶴田奈々ちゃんと一緒に「ORC WAVE」の表紙も飾ってた) 
山本かのこ/貴方の恋人になりたいのです(なんと、紗穂ちゃんと2人でサンタクロースのコスチュームで2曲!)
青野紗穂/アイ・ハブ・ナッシング
山口美優/ジュエル・イン・アワ・ハーツ(?)、届きますように
安那/空の鏡(?)、アイ
原畠祐佳/恋人がサンタクロース、ありがとう
Jewel/
太田渚紗
斉藤友美
宮崎真穂
鈴木このみ
田頭沙希
内川樺月
ヴァン・ダインの『ベンスン殺人事件』を読んだ。1926年。
他のヴァン・ダインの作品は、たとえば意外な犯人とか、凶器消失とか、密室など、推理小説としてとっつきやすいテーマがあって、読む前からいろんなところでネタバレがあったりしたが、その点、この処女作『ベンスン殺人事件』はほとんど何もなくて、読んでいて新鮮だった。
この作品では、フィロ・ヴァンス(ファイロ、というのが発音として正しいのかな。僕が読んだのは東京創元社の世界推理小説全集で、1957年出版なので、古かったのかも)の推理法や、人物像にページが大きく裂かれている。
で、ヴァン・ダインといえば、ペダンティックだとか、気取りやで鼻持ちならない探偵とか、決まり文句のように言われているが、新本格や、最近の若い書き手のミステリーの戯画的な名探偵たちやその文章を通過してきた今、読むと、ちっとも衒学的でもないし、嫌な奴でもなかった。
会話にいろんな文学や美術の知識が盛り込まれているが、それがすごく自然なのだ。「この小説を書くために、本やネットで調べて盛り込みました」みたいな付け焼刃的知識ではないせいだろう。
さて、この『ベンスン殺人事件』、ヴァンスの推理法から来る趣向が非常に面白い。
ヴァンスは、美術の鑑定士が作品を見て誰の作なのかを鑑定できるように、事件の概要を見て、犯人や真相を見抜いてしまうのだ。
たとえばルーベンスがアントワープのキャセドラルに『十字架をおりる基督』を描いたとき、彼がなにか外交的な用務のため、ほかに行っていたことを示す有力な 状況証拠があったならば、現代の犯罪捜査家たちは、あの絵をルーベンスが描いたことを信じないにちがいない。しかしなおかつ、ねえ君、そのような結論が笑止千万なことにはかわりはないよ。たとえ、否定的な推論が法律的には争う余地がないほど有力だったとしても、絵自体があくまでも、ルーベンスがあれを描いたことを証明するだろう。なぜか?理由は簡単だよ、ルーベンスをおいて、ほかの誰にも、あの絵は描けないからだ。そこには、ルーベンスの個性と天才とが-彼のみが持っているものが、消し去ることのできない痕跡を印しているからだ。

つまり、ヴァンスは一目で真相をつかむのだが、素人にはさっぱりわからないのだ。
ヴァンスは、すぐにでも犯人や真相を言うこともできたが、そうすれば、素人たちは、その結論にまったく納得しないこともわかっていた。
で、どうするか、といえば、事件に関わる人をかたっぱしから濃い容疑者として提示してみせる。犯行方法やら動機やら、一見犯行が不可能に思える人々についても、「こんなふうにすれば、この人にも犯行は可能だ」とアリバイ破りや意外な動機をあばきだす。
それを複数おこなう、ということは、つまり、読者としては何度も謎解きの醍醐味を味わえるわけだ。
一方、登場人物の側からいくと、物的証拠や状況証拠による推論では、どれもが成立してしまうことを提示され、すなわち、証拠を無効化されてしまうのだ。これは、面白い。
しかるのちに、真相を言って、その真正さによって、これぞ間違いなく真相だ、と納得させるのだ。
その手の審美眼を持たない素人としては、「多くの推論が出たが、決め手に欠ける」と思わされるところだが、それは、まさに審美眼がない、センスがないせいなのだ。素人が泰西名画の真贋を見抜けないのと同様のレベルなのである。
後にヴァン・ダインに影響を受けたエラリィ・クイーンは「読者への挑戦」を標榜したが、ヴァン・ダインは、読者のような素人たちに納得させるために、あえてわかりやすく推理してやっているのだ。
うむ。面白い。

< 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 >

 

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

日記内を検索