『第四の館』

2013年12月10日 読書
『第四の館』
R・A・ラファティの第四長編『第四の館』(1969年)を読んだ。なに、これ、すごすぎる!
新聞記者フレッド・フォーリーは、とんでもないことに気づいた。
政界の大物、オーヴァーラークは、実は中世イスラム(500年ほど前)、マムルーク朝のカー・イブン・モッドなのではないだろうか!『中世の歴史』に載っているカー・イブン・モッドの木彫りの像が、オーヴァーラークそっくりなだけでなく、カー・イブン・モッドが死んだとはどこにも書いていないのだ!
その後、人類を超えた存在になろうとする集団たちの暗躍に巻き込まれたフレディは、あちこちから陰謀論を集められる、「陰謀論のセンター」的存在になっていく。
いわく、
「低周波の影響で歯茎がゆるくなると思いこんだグループがあったよ。連中は超低音を使った音楽に強く抗議し、猛烈に反対運動をくりひろげて『グープ・ボックス』とかいったコイン式の機械を襲撃して壊したりした。しまいに軍隊の『葬送ラッパ』から低い音をいくつか抜こうとした」
あるいは、次のようなことを信じる3人の蒸気機関車の機関士
「寂しい夜には汽笛に答える巨大飛行生物がいる」「その生き物は列車をまるごと持ち上げられるほど大きくはないが、機関車1台で走っていたら持ち上げられる」「蒸気機関車の行方不明事件はそいつが原因なのだ」「巨大飛行生物は汽笛を求愛行動だと信じている」
あるいは、
「すべての赤毛女は、人類と交雑して面倒と破壊を撒き散らすために外宇宙からやってきた宇宙生物だ」
あるいは、
「おみくじクッキーの格言や教訓は、実はチベット奥地に住む悪の親玉が送ってくる邪悪な暗号だ」
あるいは、
「白いオークの木は人食いで、理由なく姿を消した人は、みな白いオークの木のそばで行方不明になっているはずだ」「オーク材はきわめて危険な成分を含んでいるので、オーク材を大量に使用する家具工場の従業員には規制を加えるべきだ」
あるいは、こんな新しい伝染病
「死の波動が訪れて、最初は鼻がムズムズし、それから倦怠感といらつき、やがて眠気に襲われ、最終的に死にいたる」「そのすべてが5時間で進行する」「それを伝染させる細菌は遊糸か、ハコヤナギの木から飛んだ綿で、もっともありそうな説としてはそうしたものに似た、外世界からやってきた何かに乗って運ばれる」
これらの、与太話を、フレディは、疑うことなく、まずは信じ込んでしまうのだ。
本書の表紙に描かれた四種類の動物は、「城の外」で戦う4つの超自然的集団のそれぞれの象徴である。その4つは、ヒキガエル、大蛇、鷹、アナグマ。この4つは、四福音書(マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ)の象徴「テトラモルフ」(四形態)に対応している、という。
クライマックスでは、街に疫病が蔓延して、暴動が起る。『クロコディル』ではフランス革命の騒動が作中に反映していたが、この『第四の館』では1968年の五月革命が影響しているようだ。
以下、目次。
第1章 おれはこの手で世界を引き裂くぞ
第2章 すっごく死んでるか、すっごく年取ってるか
第3章 あいつらにも殺せるかもしれないが、おれはもっと惨たらしく殺せるぞ
第4章 山上の嘘吐き
第5章 螺旋状の情熱と聖人のごときセクシーダイナマイト
第6章 使われざる力の復讐
第7章 優美な犬どもと再帰者たち
第8章 あなたの喉のライン、なめらかな動き
第9章 だが、おれは奴らをたいらげるぞ、フェデリコ、おれは奴らをたいらげる
第10章 そんなに怖がるなんて、か弱い体の持ち主でもあるまいし
第11章 「おまえを呼んではおらん」と主は言われた
第12章 第四の館
第13章 そしてすべての怪物たちが立ちあがる

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