『老いと勝負と信仰と』
加藤一二三九段の『老いと勝負と信仰と』を読んだ。
加藤九段は将棋の棋士であるが、バチカンから「聖シルベストロ教皇騎士団勲章」を授与されたカトリックの騎士でもある。
本書は加藤九段が将棋と信仰について語ったものをまとめたものだが、タイトルにある「老い」については、本人がまったく老いを感じていないことを思い知らされる一方である。
以下、目次

はじめに 棋士として騎士として
 「確かなもの」「ゆるぎなきもの」を求め続けたい/将棋は芸術である/将棋で信仰を語る

第1部 勝負と信仰
 第1章 勝負も信仰も<真剣に>勝ち取るものである
  勝負を捨てたことは一度もない/計7時間の長考で確信した「妙手」/真剣でなければ、求めても与えられない
 第2章 祈りは人を強くする勝負強くする
  祈りが直接結びついた対局 王将戦/米長八段との順位戦/攻めるべきか自重すべきか、有吉八段との順位戦/キリストの教えが凝縮された「主の祈り」/[初めて」に差し伸べられる、大いなる手/祈りは魂の呼吸
 第3章 「直感精読」初めに感じたことが正しい
  迷ったら初めの考えが正しい/直感の素晴らしさ/ひらめき、信じることの大切さ
 第4章 剛毅と柔和を知ればおそれない、ひるまない
  剛毅の欠如は敗北の始まり/名人戦/「柔和」とは、物事に動じないこと/剛毅と柔和を実践したコルベ神父/明日のことを思い悩まない
 第5章 人は不完全だからおもしろい、だから生まれる勝負のあや
  人は不完全だからポカもある/十段戦 詰まされていた/NHK杯/神の恩寵は自然を完成させる
 第6章 負けを引きずらない、それが希望につながる
  負け数が多いのは第一線で戦ってきた強さの証/負けることより怠ることのほうが罪/負けから学ぶべきこと/負けは希望を生み出す/スランプとは何か、相性とは何か、1勝19敗を克服
 第7章 心地よく生きる、気持ちよく勝負する術
  駒音の高さは調子のバロメータ/本当に大切なものは何かを見極める目/いかに心地いい状態をつくるかが大切/いかに憂いをなくすか ギデオンの教え/加藤一二三伝説誕生の理由

第2部 71歳生涯現役加藤一二三の元気の源
 1「将棋」
  自分のスタイルを変えず、極める姿勢を持ち続ける
  勝ち負けに一喜一憂しない 弱いとは思わない
 2「駒落ち」
  福沢諭吉に学ぶ
  将棋の「駒落ち」を人間関係にも応用
 3「好敵手」
  自ら求める「いい出会い」
  好敵手がいるから高められる
 4「好敵手(2)次世代」
  新しい局面に出合い
  若手棋士から刺激を得る
 5「猫の絵本」
  ベネディクト16世の猫の絵本
  ~小さなものをつまずかせてはいけない~
 6「聖人伝」
  ハウツー本だけではなく
  偉人伝をゆっくり何度も読む
 7「結婚直前準備講座」
  30年続ける結婚講座
  ~若い人との接点を持つ
 8「告解 ゆるしの秘跡」
  ゆるすことで
  初めて自分もゆるされる
 9「旅 巡礼」
  非日常の世界に身をおくことで
  自分をリセットする
 10「絵画・彫刻」
  時と場所を惜しまず
  いいものにたくさん出合う
 11「モーツァルト」
  ながら聴きでなく
  集中して音楽を聴く
 12「家族」
  おじいちゃんではなく「パイ」
  明るい家庭を築く大事さ
 13「現代の偉人」
  ヨハネ・パウロ2世の
  剛毅と柔和にならう
 14「聖書」
  聖書は喜ばしきものを伝える便り、
  読むと必ず元気になります
 15「老いと信仰」
  「新しきを学ぶ」「経験を語る」ことで、
  前向きになれる

あとがきの前に 新加藤一二三伝説

最後の「新伝説」は、「抱いた幼子は泣かない」というものだ。きもちよく赤子が眠ってしまうのではなく、ぱっちり目覚めた状態で、赤子は加藤九段に抱かれているのである。
つい先日も、つづけて2手指して反則負けを喫す、など、将棋界の話題を次々と提供してくれる加藤九段のこれからの活躍を祈る。

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