『クロイドン発12時30分』
クロフツの『クロイドン発12時30分』を読んだ。1934年。
なに、この面白さ!
人が殺人を犯すに至るまでの心理が見事に描かれていて、たしかに、自分も同じ状況なら犯罪に手をそめていたかもな、と思わせるほどだった。
フレンチ警部の推理は、犯人のミスをつく、というよりも、もしも自分が犯人なら、こう行動し、こんな心境になるだろうな、という手法で、その想像に、犯人がいちいちピッタリあてはまってしまった、という感じ。
一見完全犯罪かと思いきや、事件の真相を見抜いた脅迫者が出てきて、第二の殺人が起こる、というのは、今では常套手段だが、倒叙推理小説の最初期の作品たる本作で確立されたと思われる。
本書の解説で、中島河太郎が
倒叙型の推理小説は今後更に発展することなく、犯罪心理小説の方向を辿るものと思われるから、それだけにクロフツの本編はすべての推理小説の中でも異彩を放つものとして、後々まで珍重されるだろう。

と、予言している。本書は1956年に刊行された、世界推理小説全集版(花森安治装幀)なので、その後に登場したミステリについては知らずに書かれた解説になる。
予言は、はずれた、と僕は見るけど、いかに?

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