『クビツリハイスクール』
西尾維新の『クビツリハイスクール』を読んだ。2002年。
戯言遣いのシリーズ3作目
以下、目次

第1幕 狂言解糸
第2幕 子萩の鉄柵
第3幕 首吊高校
第4幕 闇突
第5幕 裏切再繰
第6幕 極限死
第7幕 赤き征裁
幕後 鈴蘭の誉れ

あらすじが裏表紙に書いてある。
「紫木一姫(ゆかりきいちひめ)って生徒を学園から救い出すのが、今回のあたしの仕事」
「救い出すって…まるで学園がその娘を拘禁してるみたいな言い方ですね」
人類最強の請負人、哀川潤から舞い込んだ奇妙な依頼に従って私立澄百合学園、またの名を《首吊高校》に潜入した「ぼく」こと“戯言遣い・いーちゃんは恐るべき殺戮の嵐に巻き込まれる-。
新青春エンタの真打ち、<戯言シリーズ>。
維新を読まずに何を読む!


いーちゃんは女子の制服を着て学園に潜入し、一姫を学園から連れ出そうとするが、それを阻む生徒たち。
どうやら、この学園は陸軍中野学校みたいな、奇妙な技の使い手を養成する場所だったようだ。
人の裏をかくことの天才、いーちゃんが脱出を試みるが、学園の策師・萩原子荻(はぎわら・しおぎ)にまんまと読まれて先回りされたり、ナイフ二刀流の西条玉藻に襲われたり、死闘が繰り広げられる。
未だ姿を見せぬ学園トップの《病蜘蛛(ジグザグ)》市井遊馬(しせい・ゆま)と、《赤き征裁(オーバーキルドレッド)》哀川潤の対決が迫る。
と、いうことで、これはまるで風太郎忍法帖である。
よほど作者は山田風太郎の忍法帖が好きとみえて、はしばしに忍法帖をほうふつとさせるシーンが出てくる。若い読者にとっては、それは「ジョジョの奇妙な冒険」由来のものと映るかもしれない。
で、これは実はミステリでもあって、密室事件の謎がちゃんとある。
その謎の部分だけをとってみると、最終章で入院中の主人公、いーちゃんが看護師にクイズとして簡単にまとめているので、引用してみる。
とあるところにとある部屋があります。部屋の鍵は掌紋チェッカーによるID方式になっていて、部屋の持ち主でないと外側からでは施錠も解錠もできません。さて、ある日、あなたと、あなたの友達二人、合わせて三人で、その部屋を訪れました。ドアが閉まっていて開かなかったのでこじ開けてみると、バラバラに解体された部屋の持ち主の死体が発見されました。
さて、犯人はいかなる手段を用いて、この不可能をなしとげたのでしょう?

換気孔もあるのだが、換気扇がねじでとめてあって、外から入ることもできなければ、外に出てから元に戻すこともできない。
作中では、ドアには鍵がっかっていなかった、という推理も出るが、却下される。
一見、不可能そうだが、看護師は即座に答えを出してしまう。あっさりと。主眼はそこにはない、という感じにも取れるが、最後の最後に謎解きされるので、実は主眼でもあったのである。
作品全体は、戯言と銘打つだけあって、言葉の力で局面を打開したり、ストーリーが進んでいったりするのが目立ち、演劇を思わせた。
僕はこの戯言シリーズを1作目の『クビキリサイクル』しか読んでなかったし、その内容もほぼ全部忘れているので、説明もなしに前作までの登場人物やら設定やらが書かれているのには閉口した。これだから、シリーズものは!と最初のうちはイライラしたが、読みすすむうちに、それほどの瑕疵には思えなくなってきた。それは、本書がむちゃくちゃ面白かったせいである。
また、本書では、主人公のいーちゃんの本名が明かされず、クイズ形式でほのめかされている。
ヒントは4つ。
1、今までについたニックネームは、「いーたん」「師匠」「いっくん」「いの字」「いー兄」「いーの」「いのすけ」「戯言遣い」「詐欺師」
2、名前をローマ字表記したとき、母音の数は8、子音の数は7。
3、五十音で「あ」を「1」、「い」を「2」、「う」を「3」…そして「ん」を「46」として、名前を数字に置き換えたときの総和は134。
4、本名で呼んだ人はみんな死んでいる。
さて、作中の人名を見るかぎり、いかなる突拍子もない名前でもありうるような環境作りはされているので、自由に名前を考えることができるが、正解はいかに?
次作であっさり本名が明かされているかもしれないが、僕なりに考えてみた。
ニックネームで使われている「い」と、死に結びつく名前であることをヒントにしてみて、2と3の数字に合致するこんな名前を思いついた。
「いのち・みじかしみ」命短かし身→井野地・短紙魚
「いったら・しししぬ」言ったら、し、し、死ぬ→逸太良・獅子子奴

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