松本孝の『黒い報告書』を読んだ。1961年。
以下、目次。
高利貸謀殺事件
松竹荘殺人事件
だまし合い
僧一家射殺事件
犯人が柩をかついだ
「週刊新潮」の「黒い報告書」シリーズから、松本孝が執筆した殺人事件ものをチョイスし、書き改めたもの。あとがきによると、「高利貸謀殺事件」などは、週刊誌に載せたときの5倍の長さになった、とある。ちなみに、「高利貸謀殺事件」は今も連載される「黒い報告書」の第一号だ。
「黒い報告書」のシリーズは、「現実の事件に取材し、事実で押しながら、犯罪にいたるまでの人間関係を追う」ことに主眼がおかれた事件小説である。
本格推理一辺倒の中学生頃の僕なら、ちっとも良さがわからなかっただろうが、今読んでみると、面白い!
約50年ほど前の事件なので、今やまったく知らない事件ばっかりだが、まるで再現ビデオを楽しむような感覚で、楽しめた。
それぞれに面白さがあったが、いくつか引用してみよう。
「高利貸謀殺事件」より。冷静に計画をたてて実行されたはずの事件が、共犯の愚かさによってボロボロになってしまうくだり。
「松竹荘殺人事件」で、すっかり所帯じみた妻に愛想をつかし、妻の妹に執着する男の感情。(この男、妻が眠る横で、平気で妹のふとんにもぐりこんだりするのだ!)
「だまし合い」より。男女の口げんか。
「犯人が柩をかついだ」より。女たらしの男と、女房を満足させられないつまらない夫の対比。
この「黒い報告書」は「週刊新潮」でいろんな作家によって長期連載中の企画だ。週刊新潮はほとんど買わないけど、この「黒い報告書」があるなら、読んでもいいかな、と思った。
以下、目次。
高利貸謀殺事件
松竹荘殺人事件
だまし合い
僧一家射殺事件
犯人が柩をかついだ
「週刊新潮」の「黒い報告書」シリーズから、松本孝が執筆した殺人事件ものをチョイスし、書き改めたもの。あとがきによると、「高利貸謀殺事件」などは、週刊誌に載せたときの5倍の長さになった、とある。ちなみに、「高利貸謀殺事件」は今も連載される「黒い報告書」の第一号だ。
「黒い報告書」のシリーズは、「現実の事件に取材し、事実で押しながら、犯罪にいたるまでの人間関係を追う」ことに主眼がおかれた事件小説である。
本格推理一辺倒の中学生頃の僕なら、ちっとも良さがわからなかっただろうが、今読んでみると、面白い!
約50年ほど前の事件なので、今やまったく知らない事件ばっかりだが、まるで再現ビデオを楽しむような感覚で、楽しめた。
それぞれに面白さがあったが、いくつか引用してみよう。
「高利貸謀殺事件」より。冷静に計画をたてて実行されたはずの事件が、共犯の愚かさによってボロボロになってしまうくだり。
とにかく、あやしまれるようなことばかり、やりだしたのであった。
「今日も、ひるま朝総連の連中がきたわ。それから、新聞記者だっていう男も・・・あたし、こわい!自分が何を言い出すか、見当もつかないの・・・」
そういう眼つきは、尋常ではなかった。鈴木は、呆然とした。
(どうして、こんなにとつぜんとりみだしちまったんだろう?信じられない・・・)鈴木はわが眼をうたがった。(もしや、吉山の怨霊が・・・?)ふとそうおもうと、彼は背すじがぞっとつめたくなるのをおぼえた。
・・・八月にはいった。
千恵子の言動は、ますます異常さをくわえた。なだめすかしても、ききめがない。
「ねむれない。ねむれない」を連発し、近所のだれかれかまわず、「ねえ、睡眠薬買ってきてくれない?毎晩、うなされてこまるのよ」などと、たのみこむのだった。
(これじゃ、ダイナマイトをかかえているようなもんだ!)
鈴木洋の、第二の重大な誤算は、犯行後の阿部と安田の行動であった。
二人とも、鈴木に
「すぐから、やたらと金づかいをあらくするなよ。あやしまれるもとだからな」
こんこんといわれたにもかかわらず、もう翌日から、湯水のように浪費をはじめた。
「松竹荘殺人事件」で、すっかり所帯じみた妻に愛想をつかし、妻の妹に執着する男の感情。(この男、妻が眠る横で、平気で妹のふとんにもぐりこんだりするのだ!)
(ユキ子へのオレの執着は尋常じゃない。あの子を手ばなすくらいなら・・・オレは、あの子を、ころしてやる。ひとおもいに、ころしてやるんだ。・・・そうして、オレもいっしょに、死んでやる!)
ユキ子を殺して自分も死ぬ、というかんがえは、ひどく弘の気にいった。
(ころしちまえば、だれだって、天皇陛下だって、あの子をとることはできないんだから・・・)
ひるごろのアパートは、しずかだった。
弘は、ひとり頬をゆがめ、声を立てずに、いつまでも笑いつづけていた・・・。
「だまし合い」より。男女の口げんか。
「女房とは、仕おくりだけの完全別居。いまは独身同様、とりあえず親戚の家にひと部屋かりているなんて、大ウソだったんじゃないのよ!」
「うるさい、だまれ!それじゃ、自分は何だってんだ。最初は『あたし、ひとりぼっち、ボーイ・フレンドぐらいはいるけど』それが、『婚約者がいるの』になったとおもったら、つぎは『亭主がいるのよ』だ。まるでサギかカタリじゃないか」
「犯人が柩をかついだ」より。女たらしの男と、女房を満足させられないつまらない夫の対比。
結局、丹波方の就職するまでに、吉川があげた戦果は6人だった。いずれも、人妻である。彼は、女から金をせびることさえおぼえていた。
娼婦を買ったり、独身の女にわたりをつけたりするより、ひとの妻を秘密にかっぱらう方が、いっそう快楽の度あいは大きい。彼は、人妻を犯すスリルをわすれがたくなり、もっぱらそのチャンスばかりをねらう男になっていた。
主人の保は、こころよく二人をおくりだした。保は映画など見る趣味をもっていなかった。テレビでも、劇映画は見ない。パッと場面がかわると、もう10年のちだったりするのは、よくわからないというのだ。
この「黒い報告書」は「週刊新潮」でいろんな作家によって長期連載中の企画だ。週刊新潮はほとんど買わないけど、この「黒い報告書」があるなら、読んでもいいかな、と思った。
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