レ・ファニュの『吸血鬼カーミラ』を読んだ。清水みち、鈴木万里の翻訳に、徳吉久の写真がふんだんに使われている。写真はストーリーに沿った挿絵ではなく、雰囲気を作るためのもの。本文は横書き。
以下、目次
プロローグ
1.記憶
2.訪問者
3.驚愕
4.奇癖
5.肖像画
6.闇
7.悪夢
8.失踪
9.疫病
10.復讐
11.回顧
12.令嬢
13.礼拝堂
14.変貌
15.棺
16.伝説
平井呈一の古めかしい翻訳でなく、どの言葉もわかりやすい、読みやすいカーミラ。その分、雰囲気が損なわれてもいるが、そこはまあ、一長一短といったところか。
翻訳が違えば、なんとなく印象に残るシーンも違ってくるのが不思議だ。
平井版では、カーミラの同性愛的描写に息詰まる迫力を感じたものだが、この現代版では、わりとあっさりしているように思えた。
翻訳によって、なるほど、と思わされる部分もあった。
たとえば、第6章のある文章を、平井版と並べてみよう。
平井呈一訳
清水みち、鈴木万里訳
このあたりなどは、平井版の註釈として、清水、鈴木版を読むことだって出来そうだ。
さて、平井版と雰囲気が違う、というところを、ひとつ例に挙げておこう。
第4章に出てくる、せむしの旅芸人の口上。
まず、現代的な清水、鈴木訳から。
つづいて、平井訳。
同じ原文から訳したとは思えない違いだ!
以下、目次
プロローグ
1.記憶
2.訪問者
3.驚愕
4.奇癖
5.肖像画
6.闇
7.悪夢
8.失踪
9.疫病
10.復讐
11.回顧
12.令嬢
13.礼拝堂
14.変貌
15.棺
16.伝説
平井呈一の古めかしい翻訳でなく、どの言葉もわかりやすい、読みやすいカーミラ。その分、雰囲気が損なわれてもいるが、そこはまあ、一長一短といったところか。
翻訳が違えば、なんとなく印象に残るシーンも違ってくるのが不思議だ。
平井版では、カーミラの同性愛的描写に息詰まる迫力を感じたものだが、この現代版では、わりとあっさりしているように思えた。
翻訳によって、なるほど、と思わされる部分もあった。
たとえば、第6章のある文章を、平井版と並べてみよう。
平井呈一訳
ちょうどそれは、そこから地獄(アヴェルナス)へ下りてまいる曲がり目に近いような感じでございました。
清水みち、鈴木万里訳
今にして思えば、冥府の入り口、アヴェルノ湖へ向かって下る最初の曲がり角のようなものだったのでしょうか。
このあたりなどは、平井版の註釈として、清水、鈴木版を読むことだって出来そうだ。
さて、平井版と雰囲気が違う、というところを、ひとつ例に挙げておこう。
第4章に出てくる、せむしの旅芸人の口上。
まず、現代的な清水、鈴木訳から。
「聞けば、この森には狼のような化物がいるとか、お嬢様方、魔除けのお守りはいかがかな」旅芸人は敷石の上に帽子を投げるとこう言いました。「あっちもこっちも死人だらけだ。だが、この霊験あらたかなお守りさえ枕につけておけば、化物が出ようと何のその」
つづいて、平井訳。
「さあてご婦人がたよ、魔除けのお守りはお求めないかな。世の噂に聞くならば、ご当所の森のうちには、人の生き血を吸う魔物めが、狼のようにウロチョロ、ウロチョロしておるそうじゃ。あちらでもこちらでも、魔性のものにかかってコロリコロリと死ぬものが多いによって、それここに、この魔除けのお札がある。これをもっておれば大丈夫、金の脇差じゃ。これなる守り札を、ちょいとこうして枕に針でとめておく。ただのこれだけで、魔性のやつが来ても大の安心、カンラカンラと笑ってやれるのじゃ」
同じ原文から訳したとは思えない違いだ!
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