『飛ぶ女』

2010年7月16日 読書
今日はいろいろと行くところがあって、地下鉄のノーマイカーフリーチケットを買って動いていたのだが、なんと、8回も地下鉄に乗った。病院にお見舞いに行ったり、シモーヌから提供の映像資料を取りにdistaに行ったり、フォーエヴァーレコードにCD買いに行ったり、ベアーズにチラシを持って行ったり、銭ゲバで映像イベント下見をしたり、図書館行ったり、シネヌーヴォにレイトショー見に行ったり。でも徒歩での移動時間がやっぱり一番長かったかな。
と、いうことで、読んだ本は1冊。

樹下太郎の『飛ぶ女』を読んだ。
以下、目次。
飛ぶ女
岬にて
ちょっぴりしあわせ
壇上
素晴らしい夜
死んでください

「飛ぶ女」は人妻が2階の窓から隣の建物の愛人のもとに飛び移る。
樹下節で夫婦のあいだの葛藤があって、今度は男の方が女の部屋に飛び移るようになるが、体重が重いため、飛び移るたびに音や振動があって、バレてしまうのだ。

「岬にて」は、おいおい、自殺せんといてくれよ〜、な話。

「ちょっぴりしあわせ」では、印象的な文章が2つあった。
まずひとつ。これは、ああ、こういう時代にさしかかったんだな、とわかる文章で、そう言えば、本書にはBGという呼び名は見あたらなかった。

(職工さん、女工さん、女中さん−それらがどうしていけないのだろう。『職工』のかわりに『工員』、さらには『社員』と呼ぶならわしに変えている昨今の経営者の神経がわからない。そんなことでかれらが喜ぶとでも思っているのか。猛省を促したい。『職工さん』−立派じゃないか)

もうひとつは、樹下太郎の作品共通のテーマか。

サラリーマンの破滅は、ただひとつ、女色にある。

物語は、適当な女をひっかけて欲望を解消している男を描いている。
それはもう名前も与えられない代々のA子であって、へたにA子につきまとわれるより、別の男とあっさり結婚してしまう方がホッとするわけだ。

「壇上」はせっかく目立たぬように地味に働いていたのに、皆勤を表彰されてハレの舞台に立ってしまい、指名手配の容疑者だとバレてしまう話。

「素晴らしい夜」は、担当が変わって、前任の悪行が発覚する、という最近のギリシア経済とか日本での政権交代みたいな話。まあ、会社側のスパイということになるか。

「死んでください」は本書でもっとも長い作品で中編か、軽い長編くらいの読みごたえ。
俺を殺すのか!と男は叫び、女は、殺しはしません、死んでもらうのです。とか言う。こわ〜。
この作品では、その時代をあらわすヒントが出てくる。

『まあね』
『なにがまあねよ』
あたしは思わずふき出してしまった。『まあね』というせりふは、最近、テレビの人気番組の影響でひどくはやっていて、まともな受取られ方をしなくなっている。つまり、この便利な返事は、いまでは、奇妙なニュアンスをもつようになっていて、真面目に発せられれば発せられる程おかしみが倍加するという具合だった。九ちゃんの『申しわけない』と同じだ。

『まあねどころじゃないはずだぜ』
『かもね』
あたしは、さらに言葉をはぐらかす。それも同じテレビ番組のはやり言葉だった。

九ちゃんの「申しわけない」は知っていたが、「まあね」「かもね」がどのテレビ番組発なのか、よくわからない。九ちゃんには流行ギャグがいくつもあって、僕が一番好きなのは、この「申しわけない」よりもかなり後年になるが「オーボヨーリョー」(応募要領)だ。
ああ、懐かしい!

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