『遅すぎた殺人事件』
若山三郎の『遅すぎた殺人事件』を読んだ。1984年。
誘拐
女子大生
尾行
過去あり
アイラブユー
第一の殺人事件
推理は進む
死体は進む
死体だらけ
秋雨

本の見返しに書いてあるあらすじは次のとおり。

軽井沢にきた裕一は、友人の高藤政久の別荘で何者かに殴られて気絶してしまった。その直後、高藤家へ身代金の要求が。犯人が政久と間違えたため、なんとか助かった裕一は、自分のアパートに住む推理小説好きの女子大生由香に相談した。疑わしい人物は、もと高藤家のお手伝いでセクシーな舞子、会社の金を使い込んでクビになった舞子の従兄の和也。一方、高藤家の家族構成も複雑だった。

主人公の裕一と政久は予備校生。
高藤家の複雑な家族構成、っていうのは、父親がホステスにうつつ抜かして、母子を捨てて出て行ったということ。この父親がすぐ近くに舞い戻ってきていた。
「セクシー」と表現された舞子は、色仕掛けで男を何人も手玉にとり、秘密を握っては金をせびるような悪女で、この女が殺されるのが「第一の殺人事件」である。舞子という女がいかに殺されてもしかたないような女かをえんえんと描いて、作品の後半になってやっと殺人事件が起こるので、タイトルの「遅すぎた殺人事件」になったのかな、と思った。
さて、この作品の最大の特徴は、主人公裕一のチェリーボーイ的醜態が事件の謎以上に印象深いところである。
プレイボーイの政久に比べて、裕一はまだ未経験。ことあるごとに、そのことをやっかむ描写が出てくる。

「ちきしょう、高藤のやつ、おれの知らないことを何回も経験しやがって」

「女っておっかないよなあ」
「楽あれば苦あり。ちったあ苦しまなくちゃ、不公平ってもんだ」
「童貞のひがみか」
「よく言ってくれるよ」

また、裕一は女子大生の町野由香が好きで、何度もアプローチするが、かわされ続ける。このシーンがめちゃくちゃ多い!

(町野さんになら、おれ、喜んで童貞を捧げるんだけどな)
それだけに由香の男性関係が気がかりだった。

(これで町野さんがキスさせてくれれば、願ったり叶ったりなんだけどな)
それをせがむ勇気のないことを嘆きながら、裕一は、そっと由香の赤い唇を盗みみて吐息した。

(町野さんはベロベロに酔えば、アパートに帰る途中、ひょっとして、おれにキスさせてくれるかも)
裕一の期待に反して、由香は少しも酔態を見せない。
「もっと、わたしを酔わせたいのね。目は心の窓、きみの目には、いやらしい魂胆がぎらついているわよ」

こんなもんじゃない。これの百倍ほど、冗談にまぎらせてアタックしたり、些細なことでドキマギするシーンが連発する。
あと、愉快だったのは、梶田裕一が歯に衣きせぬ女にズバリと言われるシーン。

「そう、きみが軽井沢の別荘に誘ったのは、この梶田さんだったのね」
「ウン」
「遠山さんを誘わなくて、よかったわ。彼女は面食いだから、梶田さんにがっかりして、わたしに文句つけるもの」
村井順子は、あざけりの表情で裕一を見やるのだ。遠山とは、彼女の短大のクラスメートのことらしい。

キャー、こんなこと言われたら、一生のトラウマだ!
あれ?誘拐未遂と殺人事件はどうなったのか?
やたら人が死にまくって事件は落着するが、裕一は女子大生の手を握ることができて、有頂天なのである。

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