北町一郎の『探偵大いに笑う』を読んだ。1958年。
ユーモアミステリー集。
陰惨な事件はないけど、人間の醜い部分から事件が発生しているものもある。
でも、多くは真相が狂言だったり、売名行為だったりして、とりかえしのつかない事態にはなっていないものが多い。犯罪を扱っているが、人情話も多くて、そういう意味では第8話みたいな、時代小説が作者の資質にはあっているんじゃないか、と思えた。
名探偵の名前は樽見樽平。第9話では「いくら語呂があうからって、樽見樽平なんて、あんな名前をつけた親の気が知れないわ」と秘書の矢木洋子が言っている。
まず、目次の順で、簡単なメモ。
第1話 マネキン刺殺事件
ミス・ミス子/探偵樽見樽平/銀座の殺人/マダム・サユリ/アパートの声/ミス・チグサ
第2話 令嬢失踪事件
銀座のカメラ/黒い冷たい目/令嬢失踪/華族の家/憲法と自由
第3話 樽平探偵ノート
1、三人の秘密
2、恋は色盲
3、犯人はおれだ
4、白い粉
第4話 死刑囚脱走
垣を越える男/学生寮/婦人警察官/疑惑の女/探偵の内職/フクちゃん出張/母と子と愛
第5話 樽平探偵コント集
1、新婚幽霊屋敷
2、新聞広告
3、集団見合
4、火の舌
5、胃痛患者
第6話 疑問の乳房
第7話 殺人株式会社
闇に消えた女/東京探偵局/危機一髪/銀座のお俊/私はねらわれている/殺人株式会社/桃色社長/殺人/犯人はあなただ/次の縁談
第8話 恋の名月
国のとっぱずれ/銚子で見る月/一足おそかった/竹二郎の行状/黒潮娘の恋/疑問の手紙の筆跡/今月今夜のこの月を
第9話 探偵売り出す
ドライブコース/箱根の惨劇/ホテルの客/樽見樽平/ちょっとした手続/危機一髪/ABCの謎/冷蔵人間/裸体問答
第10話 泥棒劇場
危機/旗あげ興行/暗雲/強盗の嫌疑/曇後晴
第11話 銀貨と宝石
旧友/訪ねる家/キス・ミー・ショウ/銀貨うらない/ドラムの秘密
1、デザイナーとしての評判をねたんで、マネキン刺して罪をなすりつけようとする。
2、死んだはずの令嬢が歩いていた、というショッキングな話は、映画女優として売り出すための売名行為だった。
3、血なまぐさい戦闘シーンかと思いきや、実は野球の話だったり、殺人の話かと思いきや手術の話だったり。赤色が異常に好きな女性をおかしいとおもってたら、窓硝子の色でみんな赤く見えていただけだったり、逃げる犯人の包囲網かと思いきや伝染病の感染経路の話だったり、酒を作る粉と称するものを買ってしまう詐欺の話とか。
4、これはちょっと興味深い話だった。
囚人が脱走したが、まあ凶悪な囚人ならいざ知らず、模範囚もひとり脱獄していた。
なぜ、彼は脱獄したのか、というのがこの物語の謎。
真相は、その囚人は家族にひとめ会っておきたくて、脱獄したのだ。
他の脱走囚に、「今度刑法が改正になって、ギャングをやった奴は、服役中でもみんな死刑になる」と嘘の情報をふきこまれたのだ。模範囚だった彼も「どうせ殺されるんなら、逃げよう」という唆しに乗ってしまったのだ。
どうせ死刑になるんだ、と思ってしまったら、たしかに、ひとり殺すのも二人殺すのも一緒だ、という気になっちゃうのと似ているかな。
5、樽見探偵が書いた短いミステリー集。
幽霊屋敷だと思ったら、天井を這う青大将と、土管にいた食用蛙だった。
お金を受け渡しする新聞広告につられて喫茶店に集まる人々。宣伝効果。
集団見合いなるものをのぞいてみようという申し合わせが、実は見合いは自分たち。
放火は牛の小便が生石灰にあって自然発火。
胃痛が食塩水の注射でなおったと知らされた探偵。胃痛になったら「食塩水を注射してください」と乞うようになる。
6、風呂で見た娘の乳房は、男を知った女のようになっていた。職場で扱う薬品に女性ホルモンが多量に含まれていたのだ。
7、「助けて!」の悲鳴とともに行方不明になったミッちゃんを捜す綿貫堅造。
綿貫は終戦後のドサクサに倉庫を襲撃した罪で刑務所に入っていた過去がある。
殺伐とした世相(線路で轢死した上山事件など。「上山」だよ!)の中、必殺仕置人みたいな「殺人株式会社」の噂もたっていた。
犯人は倉庫を襲った綿貫のかつての仲間。
鉄道でのアリバイを主張するが、列車宛てにうった電報を受取っていないことがバレてアリバイやぶれる。
8、樽見執筆による立花右近を主人公とした「印籠右近捕物帳」からの時代推理。
横恋慕した男の偽手紙による陰謀と、バクチ仲間が身代金目当てに誘拐、軟禁した事件。
9、一本道で消えた自動車。
道をそれて断崖から落ちていた。
国際密輸団の陰謀を明かそうとしたが、罠にはまったのだ。
10、刑務所を出てよるべのない者や、家に帰れない事情のある者を預かって自力更生のきっかけを作る団体が劇団を作って、旗揚げ興行することになった。
地元のヤクザが興行権がどうの、とねじこんできたり、近くで起きた事件に劇団が関係してるんじゃないか、と思われたり。
人情話じゃありませんか!
11、宝石泥棒がレビュー楽団内にいると知って、楽団に入る。
宝石は、音の響きの悪いドラムの中にあった。
銀貨占い(インチキ)もストーリーにからんでくる。
ユーモアミステリー集。
陰惨な事件はないけど、人間の醜い部分から事件が発生しているものもある。
でも、多くは真相が狂言だったり、売名行為だったりして、とりかえしのつかない事態にはなっていないものが多い。犯罪を扱っているが、人情話も多くて、そういう意味では第8話みたいな、時代小説が作者の資質にはあっているんじゃないか、と思えた。
名探偵の名前は樽見樽平。第9話では「いくら語呂があうからって、樽見樽平なんて、あんな名前をつけた親の気が知れないわ」と秘書の矢木洋子が言っている。
まず、目次の順で、簡単なメモ。
第1話 マネキン刺殺事件
ミス・ミス子/探偵樽見樽平/銀座の殺人/マダム・サユリ/アパートの声/ミス・チグサ
第2話 令嬢失踪事件
銀座のカメラ/黒い冷たい目/令嬢失踪/華族の家/憲法と自由
第3話 樽平探偵ノート
1、三人の秘密
2、恋は色盲
3、犯人はおれだ
4、白い粉
第4話 死刑囚脱走
垣を越える男/学生寮/婦人警察官/疑惑の女/探偵の内職/フクちゃん出張/母と子と愛
第5話 樽平探偵コント集
1、新婚幽霊屋敷
2、新聞広告
3、集団見合
4、火の舌
5、胃痛患者
第6話 疑問の乳房
第7話 殺人株式会社
闇に消えた女/東京探偵局/危機一髪/銀座のお俊/私はねらわれている/殺人株式会社/桃色社長/殺人/犯人はあなただ/次の縁談
第8話 恋の名月
国のとっぱずれ/銚子で見る月/一足おそかった/竹二郎の行状/黒潮娘の恋/疑問の手紙の筆跡/今月今夜のこの月を
第9話 探偵売り出す
ドライブコース/箱根の惨劇/ホテルの客/樽見樽平/ちょっとした手続/危機一髪/ABCの謎/冷蔵人間/裸体問答
第10話 泥棒劇場
危機/旗あげ興行/暗雲/強盗の嫌疑/曇後晴
第11話 銀貨と宝石
旧友/訪ねる家/キス・ミー・ショウ/銀貨うらない/ドラムの秘密
1、デザイナーとしての評判をねたんで、マネキン刺して罪をなすりつけようとする。
2、死んだはずの令嬢が歩いていた、というショッキングな話は、映画女優として売り出すための売名行為だった。
3、血なまぐさい戦闘シーンかと思いきや、実は野球の話だったり、殺人の話かと思いきや手術の話だったり。赤色が異常に好きな女性をおかしいとおもってたら、窓硝子の色でみんな赤く見えていただけだったり、逃げる犯人の包囲網かと思いきや伝染病の感染経路の話だったり、酒を作る粉と称するものを買ってしまう詐欺の話とか。
4、これはちょっと興味深い話だった。
囚人が脱走したが、まあ凶悪な囚人ならいざ知らず、模範囚もひとり脱獄していた。
なぜ、彼は脱獄したのか、というのがこの物語の謎。
真相は、その囚人は家族にひとめ会っておきたくて、脱獄したのだ。
他の脱走囚に、「今度刑法が改正になって、ギャングをやった奴は、服役中でもみんな死刑になる」と嘘の情報をふきこまれたのだ。模範囚だった彼も「どうせ殺されるんなら、逃げよう」という唆しに乗ってしまったのだ。
どうせ死刑になるんだ、と思ってしまったら、たしかに、ひとり殺すのも二人殺すのも一緒だ、という気になっちゃうのと似ているかな。
5、樽見探偵が書いた短いミステリー集。
幽霊屋敷だと思ったら、天井を這う青大将と、土管にいた食用蛙だった。
お金を受け渡しする新聞広告につられて喫茶店に集まる人々。宣伝効果。
集団見合いなるものをのぞいてみようという申し合わせが、実は見合いは自分たち。
放火は牛の小便が生石灰にあって自然発火。
胃痛が食塩水の注射でなおったと知らされた探偵。胃痛になったら「食塩水を注射してください」と乞うようになる。
6、風呂で見た娘の乳房は、男を知った女のようになっていた。職場で扱う薬品に女性ホルモンが多量に含まれていたのだ。
7、「助けて!」の悲鳴とともに行方不明になったミッちゃんを捜す綿貫堅造。
綿貫は終戦後のドサクサに倉庫を襲撃した罪で刑務所に入っていた過去がある。
殺伐とした世相(線路で轢死した上山事件など。「上山」だよ!)の中、必殺仕置人みたいな「殺人株式会社」の噂もたっていた。
犯人は倉庫を襲った綿貫のかつての仲間。
鉄道でのアリバイを主張するが、列車宛てにうった電報を受取っていないことがバレてアリバイやぶれる。
8、樽見執筆による立花右近を主人公とした「印籠右近捕物帳」からの時代推理。
横恋慕した男の偽手紙による陰謀と、バクチ仲間が身代金目当てに誘拐、軟禁した事件。
9、一本道で消えた自動車。
道をそれて断崖から落ちていた。
国際密輸団の陰謀を明かそうとしたが、罠にはまったのだ。
10、刑務所を出てよるべのない者や、家に帰れない事情のある者を預かって自力更生のきっかけを作る団体が劇団を作って、旗揚げ興行することになった。
地元のヤクザが興行権がどうの、とねじこんできたり、近くで起きた事件に劇団が関係してるんじゃないか、と思われたり。
人情話じゃありませんか!
11、宝石泥棒がレビュー楽団内にいると知って、楽団に入る。
宝石は、音の響きの悪いドラムの中にあった。
銀貨占い(インチキ)もストーリーにからんでくる。
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