『花散里』

2009年12月10日 読書
『花散里』
針谷卓史の『花散里』を読んだ。講談社BOX書き下ろし長編小説。
三田文学新人賞を受賞した人らしい。
「付き合う前に思っていたより、面白くない人だった」と言われてフラれた大学生男子。
数合わせで参加したパーティーで新たな恋に向かうが。
登場する人物が、みんなつまらない人間だということがボロボロと暴露されていくのがおそろしい。
前の彼女も、新しい彼女も、結局主人公のことをまったく理解していなかった、ということが明らかになるラストシーンだが、逆もあるかな、と思いはじめた。
人を試してみたり、マニュアルどおりに動いてみたり、つきあう相手を採点してみたり、というような犬畜生にも劣る彼女たちだが、彼女たちの方が、実は主人公のことを理解していて、自分がいちばん自分を理解していなかったんじゃないか、と。彼女たちのつまらなさがきわだっているだけに、それにも劣る自分自身、という構図が恐ろしい。
あるいは、主人公は、似たような女性を好きになってしまう、というそれだけのことなのかもしれないけど。
「花散里」は、新しい彼女と遊んだ「投扇興」の決まり手で、投げた扇と、蝶と枕がばらばらに落ちている、最低の手で得点は1点。みんなバラバラでつまらないのだが、少なくとも、決まり手にはなったのだ。
大学生の恋愛なら、この程度なのかな、とがっかりするほど、あっさりした、情熱の乏しい恋愛。でも、これがリアルなのかも。そうか。バイロン読んだりした後では、あらゆる言動がせこく感じられてしまう。
主人公がすべての登場人物に対して思い入れがない、というのもすごい。
主人公の行動にはいちいち、「あ〜あ」と嘆息させられてしまうあたりも、青春か?!
こういう人物は恋愛に向いていないとしか言い様がないな。少なくとも、恋愛は面白くないといけないんだから、僕もこの主人公に対して言ってやりたい。
「読む前に思っていたより、面白くない人だった」

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