第16回大阪ヨーロッパ映画祭。なかでも毎回注目しているのが、最新映画初上映のスケジュール。今年は福島のABCホールで開催された。
今日はヤン・デクレール特集。
1本めは「神父ダーンス」1992年。ステイン・コーニンクス監督。
19世紀末ベルギーフランドル地方での女工哀史(?)、プロレタリア映画。
ヤン・デクレールは劣悪な条件で働く労働者とともに戦った実在の人物、神父ダーンスを演じる。
ダーンスは兄が経営する新聞社から労働問題をとりあげた記事を書いて出したりするが、ブルジョアたちはそれを右翼の暴力やカトリックの権力を使ってつぶそうとする。
製糸工場で子供が死んだのをきっかけに労働者はついに立ち上がる。
貧富の差をあらわす映像が、あまりにも凄すぎて、その極端さに笑いたくもなったが、実情はほぼこんなものだったんじゃないか、と思う。
この映画が描く世界から100年以上が経過しているが、まだ貧富の差、貧困の問題は解決されたとは言い難い。自分自身をふりかえって見れば一目瞭然だ。労働者が立ち上がって戦うこともほとんどなくなった。唯一大阪の西成だけが例外だ。そのすぐ近くに住んで暮らす僕も一種の臨戦体勢にある、ということだ。昔、「山宣」見たときに感じたような「よ〜し!」感にとらわれた。
上映後のヤン・デクレールの話によると、この映画はまだ新人だった監督と、脚本の段階から意見を交わしあって、ともに作り上げたらしい。原作はめちゃくちゃぶあつい小説なのだそうだ。コーニンクス監督は今ではベルギーを代表する観客動員数を誇る映画監督であるが、日本で上映されたのは、この「神父ダーンス」くらいじゃないか、と思う。違うかな?

2本目の「ザ・ヒットマン」は、以前この映画祭で「アルツハイマー・ケース」のタイトルで上映された作品だ。当時の自分の日記を読み返すと、そうとう面白かったらしい。エラリイ・クイーンばりのオチが何だったかもう忘れてしまったが。
と、いうわけで、この映画は見ずに、図書館行ったりして過ごす。

3本めはその「アルツハイマー・ケース」のエリク・ヴァン・ローイ監督の「ロフト」2008年。この「ロフト」はベルギーで大ヒットし、今まで19年間にわたって観客動員数1位を続けていた「Koko Flanel」を破ってトップに立った。「Koko Flanel」は「神父ダーンス」のコーニンクス監督の作品。ちなみに、この「Koko Flanel」が1990年に観客動員数ナンバー1をとるまでは、同じコーニンクス監督の「Hector」が歴代トップを突っ走っていた。
5人の男が共同で借りたセックス部屋(ロフト)で起きた殺人事件。時間があっち行ったりこっち行ったりしながら、少しずつ真相が明らかになっていく。血で書いたダイイングメッセージがあったり、血まみれのベッド、手錠でつながれた死体など、興味深い謎のほとんどは残念ながら、事件後の工作だった、というのはミステリーマニアとしてはちょっと肩すかしか。事件の謎を解くミステリーというよりも、もてない奴は妻子持ちでもやっぱりもてない行動をとってしまうんだな、との感慨にひたってしまう人間サスペンスだった。そういえば、「アルツハイマーケース」もクイーンばりの下りがあったな。基本的にミステリーが大好きな監督とみた。思いっきりやりたいように映画作ったら、きっとマニアもうなるような映画を作ってくれるのかもしれない。
さて、この映画に登場する金持ちで妻子持ちで性欲の虜になった5人のなかにはもちろんヤン・デクレールはいない。めちゃくちゃチョイ役だった。
http://www.loft-m.jp/

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