『吉本隆明 自著を語る』
『吉本隆明 自著を語る』を読んだ。
第1章 『固有時との対話』『転位のための十篇』
 詩作の始まり/詩的衝動との対峙/転換点としての終戦/独自のスタイルへの到達/詩人と批評家の葛藤/現在の立場
第2章 『マチウ書試論』
 新約聖書との出会い/マルクス主義への失望/宗教との向き合い方/絶対的なものへの憧れ
第3章 『高村光太郎』
 戦犯者探しへの違和感/シンパシーの理由/敗戦の受け止め方/軍国少年であった自己との対峙/未発表の手紙/評論家としての出発点/批評とエモーションの間で
第4章 『芸術的抵抗と挫折』
 アリバイ論への不満/新たな批評機軸/「吉本思想」の萌芽/「愛国」をどう捉えるか
第5章 『擬制の終焉』
 闘争の最前線で/「マルクス主義」と「マルクス者」/連帯と決別/安保闘争後の”戦後処理”/避けられない”破局感”
第6章 『言語にとって美とは何か』
 小林秀雄と江藤淳/『資本論』から得た着想/言語論から言語表現論へ/批評家個人としての水準/”還相”からの文芸批評
第7章 『共同幻想論』
 ”国家”という共同幻想/”死”という共同幻想/天皇制との決着/呪縛からの解放/対幻想の独創性/新たな問題意識
第8章 『花田清輝との論争』
 不意打ち的な論争の始まり/花田清輝の評価/吉本隆明の「花田清輝論」/論争の落とし穴/よりエモーショナルな糾弾へ/”遠慮”の文化
第9章 『心的現象論』
 吉本思想の根幹を成す三部作の位置づけ/揺るがない文芸批評としての立ち位置/精神医学との距離感/『心的現象論』が目指した広大な地平/「詩作」としての三部作

控えめにも吉本隆明の名前しか見えないが、インタビュアーは渋谷陽一がつとめている。吉本の各著作について、渋谷がわかりやすくまとめながらインタビューが進めているのが丁寧で面白い。それは吉本に言わせれば「ほめ過ぎ」であろうとも、吉本の各著作の勘所がこんなに明瞭に出された本は稀ではないか。実にみごとなまとめ方だ、て、渋谷陽一を何回もほめたくなる本だった。

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