大下宇陀児の随筆集『釣・花・味』を読んだ。
1、故旧不忘
誇るべきルール
奇妙な還暦
故旧不忘
胃袋に訣別するの記
老大佐の倖せ
恥・恐・望
私の光陰
オンチには非ざれど
随筆三話
若いときゃ二度ない
短慮断行
心臓病を可愛がる
もう沢山
孔子さま
手を焼く
子どもの悪性
2、タンポポの嘆き
花への言葉
タンポポの嘆き
草木傷心賦
蒔かぬ花
感心野郎
3、春魚白焼
味噌の郷愁
女の味覚
キャビアの実体
春魚白焼
信州の味
めしの味
4、鮎こく
鮎こく
紅葉と釣り
釣りと温泉
解禁
片袖の捜査
秘密の釣場
ぼくは原始人
釣りウソ
落ちてアユ三話
釣りと車
鮎への嘆き
5、わが小説
夢野久作の人と作品
乱歩分析
乱歩の脱皮
探偵小説の中の人間
子どもと空想物語
わが小説「虚像」
怠惰の弁
小説屋の弁
6、年譜・作品著書目録
「随筆三話」は第1話「金」、第2話「男女」、第3話「年」と題されており、卵生のメリットとか丸い時計の話とか、遺作の『ニッポン遺跡』でとりあげられるエピソードの原型が述べられている。
夢野久作では「鉄槌」を絶賛している。
乱歩について述べた文章からは、宇陀児が「鏡地獄」「十字路」を評価していたことがわかる。
また、「乱歩の脱皮」で、乱歩が選んだ短編探偵小説ベストテンを読んで寂しくなった記述は面白い。
いわく「これだけか。ほんとうに、これ以上のものはなかったのか」
いわく「探偵小説はこれが限度の面白さであるとしたならば、それを言いたくはないけれど、まことに底の浅いものだということになりはしないか。言葉を換えていうと、残念ながら探偵小説は、ドイルの『赤髪組合』以来、てんで成長がなかったということになる」
キビシーッ!
探偵小説に関する随筆を読むかぎり、大下宇陀児こそは、本格探偵小説についてさんざん言われてきた「人間が描かれていない」という主張の元凶なんじゃないか、と思えた。当時は事情は逆転していて、宇陀児が「人間が描けていないじゃないか」と言っても、探偵小説の鬼たちは聞く耳もたなかったわけで、そんなこんなで宇陀児は探偵小説から離れていったかのようだ。
「小説屋の弁」では、宇陀児の初期作品、宇陀児の言葉だと「ただただ読者をおもしろがらせるものさえ出来上がれば、それが最上等の小説だと思い込んでしまった」作品を、「全部焼却したい」とまで書いている。この言葉を守って、戦前の宇陀児作品が復刻されないのだとしたら、悲しい話だ。
1、故旧不忘
誇るべきルール
奇妙な還暦
故旧不忘
胃袋に訣別するの記
老大佐の倖せ
恥・恐・望
私の光陰
オンチには非ざれど
随筆三話
若いときゃ二度ない
短慮断行
心臓病を可愛がる
もう沢山
孔子さま
手を焼く
子どもの悪性
2、タンポポの嘆き
花への言葉
タンポポの嘆き
草木傷心賦
蒔かぬ花
感心野郎
3、春魚白焼
味噌の郷愁
女の味覚
キャビアの実体
春魚白焼
信州の味
めしの味
4、鮎こく
鮎こく
紅葉と釣り
釣りと温泉
解禁
片袖の捜査
秘密の釣場
ぼくは原始人
釣りウソ
落ちてアユ三話
釣りと車
鮎への嘆き
5、わが小説
夢野久作の人と作品
乱歩分析
乱歩の脱皮
探偵小説の中の人間
子どもと空想物語
わが小説「虚像」
怠惰の弁
小説屋の弁
6、年譜・作品著書目録
「随筆三話」は第1話「金」、第2話「男女」、第3話「年」と題されており、卵生のメリットとか丸い時計の話とか、遺作の『ニッポン遺跡』でとりあげられるエピソードの原型が述べられている。
夢野久作では「鉄槌」を絶賛している。
乱歩について述べた文章からは、宇陀児が「鏡地獄」「十字路」を評価していたことがわかる。
また、「乱歩の脱皮」で、乱歩が選んだ短編探偵小説ベストテンを読んで寂しくなった記述は面白い。
いわく「これだけか。ほんとうに、これ以上のものはなかったのか」
いわく「探偵小説はこれが限度の面白さであるとしたならば、それを言いたくはないけれど、まことに底の浅いものだということになりはしないか。言葉を換えていうと、残念ながら探偵小説は、ドイルの『赤髪組合』以来、てんで成長がなかったということになる」
キビシーッ!
探偵小説に関する随筆を読むかぎり、大下宇陀児こそは、本格探偵小説についてさんざん言われてきた「人間が描かれていない」という主張の元凶なんじゃないか、と思えた。当時は事情は逆転していて、宇陀児が「人間が描けていないじゃないか」と言っても、探偵小説の鬼たちは聞く耳もたなかったわけで、そんなこんなで宇陀児は探偵小説から離れていったかのようだ。
「小説屋の弁」では、宇陀児の初期作品、宇陀児の言葉だと「ただただ読者をおもしろがらせるものさえ出来上がれば、それが最上等の小説だと思い込んでしまった」作品を、「全部焼却したい」とまで書いている。この言葉を守って、戦前の宇陀児作品が復刻されないのだとしたら、悲しい話だ。
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