高橋真琴個展「ベストフレンド」@小さい芽〜細江英公の世界「球体写真二元論」@尼崎総合センター、「黒い太陽」「斑女」『絶望期の終り』
夙川のギャラリー「小さい芽」で1年1度のお楽しみ、高橋真琴個展「ベストフレンド」。
高橋真琴自身も来廊していた。
ベストフレンドとは、キラキラした目の女の子と一緒に描かれている動物たちのこと。
高橋真琴の描く女の子は、とくに最近は「はい、ポーズ」できりとった、一番いい瞬間の顔の向き、表情のものが多く、可愛いけれど、どれも基本的には同じに見えてくる(それが持ち味で素晴らしいのだが)。ところが、動物となると、その表情の豊かなこと!
主人公より傍役が好きな僕の性向にもぴったりな可憐な展示だった。

尼崎市総合文化センター美術ホールで細江英公の世界「球体写真二元論」
1、初期作品
2、おとこと女
3、薔薇刑
4、写真絵本
5、鎌鼬
6、抱擁
7、ガウディの世界
8、土方巽舞踏大艦 かさぶたとキャラメル
9、[妖精物語]ルナ・ロッサ
10、作品をめぐる人たち
11、春本・浮世絵うつし
12、胡蝶の夢:舞踏家・大野一雄
13、死の灰
「球体写真二元論」とは何か、というと。
従来の写真二元論は「記録性=客観」VS「自己表現性=主観」の対立概念で、二つは反目する関係にあった。しかし実際には写真表現において両者は融合なり独立なり複雑にからみあっている。それで、細江英公は、「客観」を北極とし「主観」を南極とする球体モデルを考えるのである。
本展では、写真絵本『おかあさんのばか』を自由に読むスペースも設けてあり、また、細江英公が作った前衛映画「へそと原爆」も上映されていた。
初期作品の「ポーディちゃん」から、三島由紀夫、土方巽、大野一雄、さらに古田幸まで、被写体の域を越えて関心を抱かせるモデルが多いのに驚く。細江英公の写真撮影風景の写真も展示してあったが、写真家と被写体、どっちが写真に撮られる方なのか疑うようなアクションで写真を撮っていた。カメラの向こうだけでなく、こっち側の世界も面白いから写真が生命をもつんだな、と思った。これこそ、球体写真二元論!

蔵原惟繕監督の「黒い太陽」を見た。(1964)
川地民夫主演、原作は河野典生の『腐ったオリーブ』
タイトルの「黒い太陽」はマックス・ローチの「ブラック・サン」からとられている。全編にジャズが使われた作品だった。作中歌われるアビー・リンカーンの「75セントのブルース」はラングストン・ヒューズの歌詞である。
川地民夫は取り壊される予定の教会に住んでいるその日暮らしの男。ジャズが好きで、愛犬にも「モンク」と名前をつけている。彼のもとに、GIを殺してMPに追われている手負いのアメリカ兵士が逃げてくる。彼は黒人。川地は「黒人がきた!」と大喜びで、ジャズのレコード聞かせたり、トランペット吹かせようとしたりするが、言葉も通じず黒人は心を開かない。しまいには愛犬モンクを殺した黒人に対して、川地は「キチガイ!ドブネズミ!乞食野郎!」と罵る始末。黒人がうとうとした隙に機関銃を奪い取った川地は立場を逆転させて、黒人をジャズ喫茶に連れていき、むりやりダンスさせたりする。ところが、この二人には友情が生まれてくるのだ。銃弾から鉛毒がまわり蛆がわいた黒人の足を川地がナイフで手術したり、MPの目をごまかすため、黒人に白塗りして、チンドン屋のふりをして検問を突破したり(川地は黒塗り)。しかし、その偽装もバレ、教会も取り壊され、二人は追い詰められて行く。海を見たい、という黒人を連れて海の見える場所まで来るが、追っ手はすぐそこまで迫っていた。
最後は、黒人は自らの身体をアドバルーンにくくりつけ、川地にロープを切らせ、母のもとへ、太陽に向かって飛んで行くのだ。
黒人を演じたのはチコ・ローランド。ジャズ嫌いで足の傷に苦しみ、常にテンパって冷や汗をかいている不器用な黒人兵を見事に演じた。ジャズ喫茶でむりやり踊らされるダンスも、チンドン屋に変装して吹くトランペットも、下手を通り越して人間として大丈夫かと疑うレベルである。
河野典生の本は学生時代に1冊か2冊読んだっきりで、ほとんど忘れた存在だった。ジャズのことに疎い僕には縁の薄い作家ではあるが、これを機に、久々に読んでみるのもいいかもしれない。

中村登監督の「斑女」を見た。
北海道から駆け落ち同然で東京に出て来た岡田茉莉子と佐々木功の二人を中心にした物語。
武満徹作曲、谷川俊太郎作詞の主題歌「だれかと誰か」をペギー葉山が軽快に歌う。
内容はというと、東京での幾組かの男女の金と愛のストーリーがつづられる。
岡田茉莉子VS杉浦直樹
銀座の商人、杉浦に好意を持った岡田だが、杉浦は岡田に愛の告白でなくスパイの依頼をする。がっかりして杉浦に愛想をつかす岡田。杉浦は後悔して、再度岡田にアプローチするが、岡田は拒否。
山村聰VS芳村真理
水商売の芳村を囲う画家山村。しかし、芳村には以前より将来を約束した恋人がおり、結婚資金をためるために、山村とのつきあいをしていたのだ。
感心したのは、この二人のわかれるシーン。すべてをさばさばと告白する芳村。彼女は山村を嫌っていたわけでもなく、最後まで悪意のない女だった。山村もそんな芳村にあきれこそすれ、声ひとつ荒げることもない。修羅場を演じず、涙もなく、ラストダンスを踊って別れる男女。別れるときはこうありたい。後で山村はバーでやけ酒飲むわけだが。
峯京子VS佐藤慶
金のために峯は佐藤に接近するが、佐藤は正式に結婚を申し込み、峯は有頂天になる。
ところが、この佐藤は詐欺師だった。峯がためた金を持ち逃げする。あとで調べても、会社名から何からなにまで実在しなかった。
これは金に目がくらんで失敗した女のエピソードになるが、この作品の中では大きな役割を果たす。男と金に逃げられた峯は狂ってしまい、シャイニングよろしく失った金額を紙に何度も何度も書き綴る。また、「男は西に」との占い師の言葉を信じて京都、大阪に向かう。道行く人がみんな佐藤に見える峯を放っておけず、岡田と山村は付き添う。峯の後悔の言葉が岡田をして佐々木への愛情を思い出させるのだ。岡田とよろしくやりたかった山村は、とんだところで水をさされた態。
倍賞千恵子VS佐々木功
大阪出身の倍賞は佐々木功に猛烈アタック。佐々木は岡田へのあてつけで倍賞とデートしたりするし、倍賞は大阪では不良少女で大阪から昔のツレが来て佐々木をボコボコにしたり。それでも倍賞は本当に佐々木を愛しており、大阪に行って佐々木と暮らすのである。ダッコチャンを作る内職しながら佐々木を養う健気な倍賞。しかし、佐々木の心から岡田が消えないことを知り、煩悶。倍賞は結果としてふられるのである。
岡田茉莉子VS佐々木功
佐々木は岡田の義弟にあたる。東京に出て来て水商売で稼ぐ岡田。なんだかんだあって岡田と佐々木はうまくいくのだが、ラストにはサプライズが用意されている。何もかもうまくいきそうな二人。そんなとき、ふと佐々木は「俺はねえさんのヒモにでもなろうかな」なんて言ってしまう。自立したかに見えて、自分がいるとやっぱりたよってしまうのか、と岡田はあきれ顔。駅でちょっと二人が離れた隙に、いつのまにか岡田の姿は消えていた。あっちこっち悲愴な面持ちで探しまくる佐々木。
なお、この映画の原作は村松梢風の『塔』最初に岡田、佐々木と山村が会ったのは東京タワーの見える場所。佐藤を追って峯が向かうのは西の五重塔。さらに西に行って倍賞と佐々木が暮らす場所からは通天閣が見えていた。倍賞は「あなたにはあの通天閣が東京タワーに見えるのね!」と恨み言を漏らすのだ。
村松梢風は村松友視の祖父にあたる。

上方演芸ホール録画しておいたの。
軽業/林家染雀
夢八/桂雀々
「軽業」は米朝の呪縛から逃れることができないネタなのか。
「夢八」はにぎやかな雀々にぴったりなネタ。
ラクゴクラ録画しておいたの。
お見立て/林家たい平
丁寧だなあ。

読んだ漫画は、あびゅうきょの『絶望期の終り』
絶望の陽のもとに
絶望の長い午後
絶望線上のアリア
絶望の中心で哀を叫んだけもの
未来世紀絶望
月は無慈悲な絶望の女王
絶望期の終り
ヒトラー・ユーゲントからの手紙
枯れ行く島の青草よ〜全将兵に告ぐ〜
TNX FR QSL
以上、目次。
童顔少女の絵物語的漫画で、出てくる少女はグラビアのピンナップのように、静的なポーズをとっている。吹き出しがあってしゃべっていても、大半は口もあいていないし、その少女から声が聞こえてこない。絵物語の印象のゆえんだ。
絶望とタイトルに出ているせいか、絵物語のせいか、読んでいて孤独感に苛まれることが多かった。美少女恋愛シミュレーションゲームしてるときとか、グラビアアイドルのイメージビデオ見てるとき、こんな気分によくなる。コミュニケーションに飢えてくる。
しかし、そういった印象も含めて、あびゅうきょってすごく気に入った。以前からずっと読みたいと中身も知らずに切望していたのも、つまるところ、あびゅうきょの描く少女が魅力的だからなのだろう。内容も予想以上によくて、すっかりお気に入りだ。

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