彦八まつり〜私は貝になりたい、戦艦大和、アレキサンドリア物語、我等の生涯の最良の年
生國魂神社で上方落語のおまつり「彦八まつり」
文枝茶屋で焼きうどん食べたり、森乃福郎の「本屋の善さん」で古本買ったり、桂春之輔の「もう半分」でどて焼き食べたり。道具屋に仁鶴が来ており、店先は黒山の人だかり。
奉納落語会もあったのだが、すぐに売り切れ。

帰宅して見た映画は、録画しておいた4本。
橋本忍監督の「私は貝になりたい」を見た。1959年。
主演はフランキー堺。
つい最近、DVDでテレビシリーズの「まぼろし探偵」を見たのだが、この「私は貝になりたい」のスチールがたしか会社の部屋に飾ってあった。それだけ人気もあり、影響力もあったのだろうか。
上官の命令で捕虜を殺してしまい(実際には腕を傷つけただけ)、その罪でMPにとらわれ、死刑になる男の話。彼の遺言で、「生れかわれるのなら貝になりたい」とあったのがタイトルの由来で、貝であれば戦争もないし、兵隊にとられることもないからだという。こんなことになる前は、生まれかわったら金持ちになりたい、と言っていたのが、死を前にして、人間には生れかわりたくない、と意見を変えるのである。
この作品が、またどういうわけか最近テレビドラマ化され、また映画にもなったらしい。現代であれば、貝にならなくても、戦争を回避し、徴兵されずに済むだけの手立てはあるはずである。それとも、今でも人は戦争から逃げるためには貝になるしか手はないのか。

阿部豊監督の「戦艦大和」を見た。1953年。
吉田満の『戦艦大和の最期』を原作としており、元大和の副長、能村次郎が教導として映画に加わっている。
絵画的特撮。
片道分の燃料しか積まずに沖縄に向かう大和。
不沈艦のはずの大和が沈んでしまうわけだが、この映画を見るかぎり、大和にまったく勝ち目がないのは、行く前からわかりきっていたのである。
悲愴を表に出さない勇猛が、涙を誘うところだ。
迫力満点。

ジョージ・キューカー監督の「アレキサンドリア物語」を見た。1969年。
ロレンス・ダレルの『アレキサンドリア・カルテット』が原作。
マイケル・ヨーク演じる主人公は、映画中の言葉で表現すれば、「繊細な若き詩人。人間の欲望うずまく街でもがいている」
一筋縄ではいかない人間心理と人間模様。若い主人公は翻弄されっぱなしだ。
イギリスからパレスチナへの武器輸出など、国際情勢も絡んでくる。
何を企んでいるのがわからない年増女にアヌク・エーメ、若き踊子にアンナ・カリーナ。どちらも思いもかけずヌードを披露している。

ウィリアム・ワイラー監督の「我等の生涯の最良の年」を見た。1946年。
フレドリック・マーチ、ダナ・アンドリュース、ハロルド・ラッセル、マーナ・ロイ、テレサ・ライト、ヴァージニア・」メイヨ
第二次世界大戦を終えて帰還してきた3人の兵を中心にした物語。
故郷に帰って家族に会うことに「敵前上陸よりも緊張する」と漏らすが、やはりどうにもぎこちないやりとりが続く。
1人は戦時の悪夢にうなされ、1人は仕事がうまくいかない。もう1人は戦争で両手が鉤の義手になっており、周囲となじめない。この両手義手の男は、実際に傷痍軍人で、ひじから先の両腕をなくし、義手をつけていた。好奇の目で見られていると思った彼は、窓ガラスを両手(鉤)で割るシーンまで演じている。すごいな。ハロルド・ラッセルは俳優ではなく、この映画のためにスカウトされた人物だ。自伝を出しているらしいが、未読。また、鉤の手で煙草に火をつけるシーンは、まるで「フリークス」の芋虫男が煙草に火をつけるシーンの再現であり、タイトルまでが「我等の障害の再利用の年」なんじゃないか、と思わせたりする。
ラストはこんな言葉で終わる。
「いいのか?道は険しい。金もないし家もない。必死に働くだけだ」
深刻な大真面目な話なのか、と言うところだが、ワイラー監督は、娯楽の要素、笑わせる要素を存分にぶちこんでいる。
たとえば、こんな会話。
「アルの娘?」
「ええ、生れてこのかた」
「そうは思えない」
「本当は違うの。彼の方が私の子供」
しゃれてるね〜。
あるいは、こんな言葉。
「また戦争になっても心配することはない。今度は1日めで人類が滅ぶからね」
言ってくれますね〜。
あと、2つのコップを使って胃薬を作り、からっぽの方を口にするシーンとか。
我々おなじみの、遅れそうになってトーストをくわえて出かける学生のシーンもある。(男だけど)
しかし、何より驚きなのは、アメリカの戦後たった1年の、あまりにも何事も起こらなかったかのような市民たちの日常生活なのだ。主人公の帰還兵たちだけが、戦争の痕を残している。社会復帰はたいへんだ。

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