『検死審問〜インクエスト〜』(ネタバレ)
パーシヴァル・ワイルドの『検死審問〜インクエスト〜』を読んだ。1940年。
以下、目次。

ふたりの検死官との夕べ
第一回公判
 検死官の義弟の疑念
 非情な刈り手の供述
 実業家の遺書
第二回公判
 模範的な夫の反応
 名士の日記
第三回公判
 秘書の観察
 よき使用人の貢献
 高名な作家の見解
第四回公判
 生きている死者の告白
 リー・スローカム閣下の結論

全編、検死審問の記録で綴られている。
人気女流作家の家で起こった死亡事件。
証人たちが語る内容から、事件の全貌が明らかになっていく。と、言いたいが、最初はいったい誰が死んだ事件なのかもわからないし、とにかくみんな言いたい放題。記録のページ数が多ければそのぶん日当が増える、ということで、日記からの引用もあるし、女流作家にいたっては、事件とどういう関係があるのかわからない、生い立ちからの自伝を聞かされるしまつ。
タイトルのいかめしさとは大違いの爆笑本格。
さらに爆笑部分に伏線が張られている、という理想的な配分でうならされた。
ユーモアの部分を一部引用。

けさ病院へ行って、しっかりと診察を受けた。肝臓は心配無用だと医者は言った。おそらく七十歳まで生きますよ、とも。
わたしは言った。「半年前に七十になったのはご承知ですか」
医者は答えた。「だったら七十まで生きると確約できますな」
ろくでもない薮医者だ。

なお、陪審たちが下す結論は、まるで『マネキン人形殺人事件』級。
批評家の実物は死んでいても、名前を使って複数の人間が書いていた、というのはよくあることだが、盲点だった。

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