シャーロック・ホームズ異聞(ネタバレ)
山本周五郎探偵小説全集第3巻『シャーロック・ホームズ異聞』を読んだ。
「シャーロック・ホームズ」
名探偵シャーロックホームズが日本を舞台に、変装を駆使して事件を解決する。
正典から移したシーンなどがふんだんにあり、ホームズファンを喜ばせる。「まだらの紐」はまるまる使われていた。
冒頭が浮浪児の凡太郎が「空は晴れても夜風は寒い、腹はへるへる銭なしもぐら」と歌いながら歩いているシーン。このシーンからホームズの物語がはじまるとは予想すら出来ない。
この作品が発表された1935年では、外国とはこうだったのか、と思わせる記述がちらほら。
侏儒の蒙古ラマ食人種の毒吹矢!このラマ食人種はステージであやしげな踊りを披露しているのだ。
横浜の南京街の描写がものすごい。
「横浜の南京街、どことなく陰惨な、罪悪の匂のする街」
「両側にひどくごみごみした陰気な建物が並んでいて、眼つきの鋭い労働者や、阿片中毒でよぼよぼになった老人や、支那人の下級船員や、酔いどれや、貧民たちがうようよ歩き廻っている。おまけに鼻をつくような豚の脂の匂い、大韮の臭み、吐気を催すような溝の匂いでいっぱいだった」

「猫眼石殺人事件」
名探偵の新聞記者、春田三吉と、謎の侠盗の戦い。
かと思いきや、悪いのは国際スパイの売国奴。
謎の侠盗は日本版ルパン。

「怪人呉博士」
怪人とか雷とか悪魔などとあだなを付けられる呉博士。
博士が発明したXF超火薬の合成法を盗まんとする売国奴。
博士になりすまして、合成式をさがす。

「出来ていた青」
殺人事件。花札のやく「青」の並べ方と、証拠だと思って回収した伝票がもとで犯行発覚。

「失恋第五番」
特攻くずれの犯罪を摘発、検挙する国務省特命公安員集団「酒神倶楽部」の活躍。
主人公の千田二郎は、追い掛ける恋にしか興味がない。秘書の宮田俊子はひそかに彼を慕い、彼の恋路をこっそり邪魔する。
事件はアクション。
1948年に発表された作品。
「祖国再建を阻んでいる悪条件は少なくない」と特攻くずれ(特攻隊員でもない者が自称する場合も)の犯罪に立ち向かうだけの時代性はあったのだろう。

「失恋第六番」
酒神倶楽部のエピソード。
逃げ込んだ銀行ギャングの一員を、罠にかけて供述させる。
心理的なやりとり中心。
秘書は主人公の恋路を邪魔する。

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