ISBN:4846007529 単行本 深町 眞理子 論創社 2007/10 ¥2,100
クリスチアナ・ブランドの『ぶち猫』を読んだ。
2007年はブランド生誕100年だったのだ。

「コックリル警部」
コックリル警部を紹介するエッセイ。

「最後の短編」
電話の手がかり。
ある番号に電話して、そのあと受話器をはずしたままにしておくと、相手先の電話はずっと話中のままになる、という仕組み。
これはかつて読んだトリックの本などでもよく使われていたが、中学時代に実際に試してみると、既にそんな仕組みにはなっていなかった。
ましてや、携帯電話の時代では、ピンと来ない内容なんじゃないか。

「遠い親戚」
男女トリック

「ロッキングチェア」
人違いの愛

「屋根の上の男」
雪の上には発見者たる警官の行き来した痕だけ。
そして、現場は密室。
解決はわりと常識的な線に落ち着いたけど、さて、それは真相なのか?

「アレバイ」
アリバイ崩しショートショート。
見事に決まりました!

「ぶち猫」
戯曲。夫と妻に捧げる犯罪を描いている。

見たビデオは、アービング・ラパー監督の「黒い牡牛」1956年。
なにげなくチョイスした映画だったが、これ、いろいろと面白い。
ストーリーは単純。ところはメキシコ。
貧しい家にうまれた少年。
冒頭、飼っていた牛を奪われそうになって父親はこう嘆く。
「これ以上、何を失っても驚かんよ。それが人生だ」
クー、ツライね〜!
落雷で木の下敷きになって牛は死んでしまうが、その子牛だけはなんとか奪われずにすむ。
この映画は、この牛と少年の物語である。
少年は牛を可愛がっているのだが、いつのまにやら牛は連れ出されて、闘牛場に引きずり出されてしまう。
これはつまり、牛が公開処刑されてしまうようなものだ。
少年はなんとか牛を助けようとする。
少年の頭に閃いたのは、学校で教わった、大統領の話。
メキシコ先住民初の大統領、ベニート・フアレスは「常に人々の声に耳を傾けました。どんな貧しい者の話でも彼は聞いたのです」
大統領に会って、牛(ジターノ、という名前)を助けてもらおう!
でも、ベニート・フアレスは歴史上の人物で、現在の大統領は別人。大統領に会おうと思って少年が駆け付けた城は、既に大統領の住む家ではなく、博物館になっていた。
それならば、と現在の大統領の住む場所まで移動するが、門前払い。
少年は車のトランクに隠れて中に忍び込み、大統領に直接会い、「わかった。命令はできないが、頼んでみよう」と、大統領から書き付けをもらう。
闘牛場に駆け付ける少年!
ほんのひとあし違いで、間に合わなかった!
そこからの闘牛シーンは圧巻だ。
さて、闘牛を残酷だ、と言うアメリカ人女性に対して、ある登場人物は、こう答える。
「米国人はリングで殴り合うし、
英国人は集団で犬を使い、1匹のキツネを狩る。
闘牛だけが残酷なのかな?」
「君らには分かるまい。
我々メキシコ人は古い人種だ。
人生の痛みも、死の身近さも知ってるが、君ら(米国人)は痛みに大騒ぎするし、死に対しても法律で禁じかねん」
さて、勇敢な牛ジターノは、15分にわたって疲れ知らずに闘い続け、観客からは「恩赦」コールが起こる。
20年ほど前にも「恩赦」で牛の命が助けられたケースがあったのだ。(実話)
ジターノは恩赦が認められ、少年と牛はずっと一緒に暮らしていける、となったところでエンドマーク。
この映画の興味深いところは、さらに深いところにあった。
映画を見ていて、特に興味をひいた部分が2ケ所ある。
1つは革命の英雄、ベニート・フアレス大統領をとりあげる手つき。
もう1つは、教会で動物たちが祝福を受けるシーン。
この2つのシーンが妙に頭に残るなあ、と思っていたが、それには理由があったのだ。
それはまた後日。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

日記内を検索