タイムカプセル

2007年11月7日 読書
ISBN:4652086016 単行本 折原 一 理論社 2007/03 ¥1,470
折原一の『タイムカプセル』を読んだ。
中学卒業の10年後に、タイムカプセルをあけようという手紙が届く。
主人公は、タイムカプセルの企画に参加はしていたが、不慮の事故で、埋める当日も、卒業式も行くことができなかった。
で、どうも楽しいはずのタイムカプセルを開く行事に、何かいわくがありそうなのに気づく。
タイムカプセル、卒業式でいったい何があったのか?
これは面白かった。
著者の代表作の1つ『沈黙の教室』をほうふつとさせる楽しさ。
ページが扉になっていて、肝心なシーンで扉を開くとき、読者も一緒にページをめくる=扉をあける仕組みになっている面白さもあった。
また、タイムカプセルをあけるクライマックスでは、本が袋とじになっていて、読者もそれを開けて、真相を知るのである。
ただ、ヤングアダルト向けなせいもあって、折原一お得意の叙述トリックはソフトな感じ。つまり、わりと読者にも見抜きやすいものだった。
ネタバレするので、要注意。
それは、名前。
不破勇。
あとは言えねえ、言えねえ、もう言えねえ。
全体としてそれほど悲惨な事件ではなかった、という真相も、素晴らしい。
担任教師のなにげない一言を信じて、10年間もひきこもっていた少年の話は悲惨だけど。でも、その担任のひとことも、ちゃんと読者には「あれ、あの約束はどうなったんだろう」と思わせるような書きっぷりだった。
本書の面白さは、こういう勘違いや行き違いのトリックにもあるが、それ以外に、『沈黙の教室』と同様、暗闇の恐さを実感できるところにあった。
おそろしい曰く因縁や、スプラッターな場面なしで、ただ暗いだけの恐さを描いている。われわれは、ふだん、呪いだの怪物だのに会う機会はあまりない。でも、子どもの頃には確実にあった暗闇を怖がる心理だけは刷り込まれているはずだ。
本書では、かつて防空壕だった穴を中学生たちが夜に探検するシーンがあって、それがこわいのなんの。
探検隊のメンバーが、ほとんど何も見えない暗闇の中で、点呼をとる。

孝介が「1」と呼ぶと、2、3、4とつづき、最後に鶴巻が「5」と締めた。
ところが、その直後だった。「6」と誰かが叫んだのだ。しかも彼らのかなり後方だった。
闇の奥から肉の腐ったようなにおいが漂ってきた。
「6。ねえ、待ってよ」

恐いシーンだ!
僕は、中学生の話だから、常に一緒にいても数のうちに数えられていない、いじめられっこでも存在しているんじゃないか、とか推理していたが、さすがに、そんな安易な発想はしていなかった。
おや、この話、昨日までやってたゲームの「闇の探検隊」というネーミングがバッチリ決まっているじゃないか。
偶然の一致というものはおそろしい。

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