ISBN:4588495054 単行本 青木 隆嘉 法政大学出版局 1999/10 ¥3,465
ギュンター・アンダースの『寓話 塔からの眺め』を読んだ。
1932年から1968年にかけておりにふれて執筆された短い文章を集めてある。
「寓話」と題されているが、明らかにメッセージが読み取れるものはむしろ少なく、読んだあとにいろいろ考えさせられるものが多い。
わかりやすい話を1つ引用してみよう。

『あれかこれか』
「言葉を磨きあげるのは君に任せるよ」と中途半端な哲学者が言った。「私にとって重要なのは真理だけなのだ」
「哀れな男だ!」と哲学者が叫んだ。
「なぜ哀れなのだ?」
「なぜなら、君は2つとも断念しなければならないからだ」
「2つとも?」
「そうだとも。真理もだよ」
「どういう真理だ?」
「真理についての真理だ」
「その内容は?」
「真理は磨かれた窓を通してしか輝かないということだよ」

これ以外にわかりやすいものをあげると、こんな文章がある。

「私は独りでいなければなりません。というのは、2種類の仲間しかいないからです。私のものを剽窃する連中と剽窃しない者たちです。剽窃する連中は退屈です。剽窃しない者たちは今日の問題が分かっていない」(困難な選択)

「モールシアにはひとつの宗派があって、それに所属する者たちは、バンバ神の存在を否定するわけではないにしても、−きわめて冒涜的なことだが−世界がひとりでに湧き出たとき、その発生過程と完全に同調した創造のパントマイムをバンバがやったという説を唱えていた」(バンドマスター)

「M嬢が彼がものを知らないのに驚いて、最近の情報を全然知らないのかと尋ねたとき、ニュートンはこう答えた。『昔、3人の競走者がいました。優れた走者と中くらいの走者と劣った走者です』(中略)『最新情報に一番通じているのは、もちろんあなたです。なぜならあなたは一緒に走らずに、観覧席に坐っているだけだからですよ』彼はそう言って彼女を相手にしなかった」(最新情報に通じているのは)

アイヒマンの息子にあてた書簡の本の感想をまだ書いてなかったな。近々、書きおこそう。

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