今日も「ストローブ=ユイレの映画2007」。
見たのは「労働者たち、農民たち」2000年。
これもエリオ・ヴィットリーニの『メッシーナの女たち』を原作とした作品。と、いうか、朗読映画。 昨日は10年ぶりに見たストローブ=ユイレに衝撃受け過ぎて、何が何だかわからなかったが、今日はじっくり味わってみることができた。ストーリーらしきものがわかったし、2時間強の映画があっというまに終わった印象だ。
昨日見た「放蕩息子の帰還」と同じような感じ、あるいは、この「労働者たち、農民たち」に収らなかった部分を「放蕩息子の帰還」として独立させたのではないか。朗読される場所が同じだし、朗読する人も同じだった。
森の中で、ど素人たちがヴィットリーニの本をそのまま読む。台本を手に持って、それを読む人も多い。
戦後イタリアで、労働者と農民が作った共同体での出来事を描いている。
共同体から抜けていく者が続出する。戻ってきた者は、リーダーの制止にもかかわらず、みんなにボコボコにされる。「放蕩息子の帰還を信じていたのに、ボコられた〜!」と嘆いているので、「放蕩息子の帰還」と同じシーンが繰り返されたのかもしれない。昨日見た映画なのに、そこんとこ覚えていないとは、ひどいものだ。
それと、何も足しも引きもしないのは、音楽、音、メイク、衣装、演技、台詞だけでなく、光もそうなのだ、ということがよくわかった。役者が語っている最中に、太陽の動きがそのまま影や明るさになって見てとれる。これは、すごい。
登場人物には「口笛」と呼ばれる者や、「不細工」と呼ばれる者がいる。
これは吉本新喜劇なのだ!
そう思ってみていると、役者たちの棒読みのセリフについて、どこかで聞いたことのあるような既視感にとらわれた。
創叡が作ったオリオンなどのCMだろうか。それも非常にストローブ=ユイレに近い。
でも、もう一つある。「新婚さん、いらっしゃい」だ!
「新婚さん、いらっしゃい」は桂三枝と山瀬まみがで素人の新婚さんからエピソードをひきだす番組だが、どの新婚さんにも共通する、ある特徴がある。
言わされている感たっぷりの棒読み口調だ。
おそらく、本番前に、いろいろ話をして、どのエピソードを語ってもらうかが、あらかじめ決まっているんだと思う。素人さんは、司会者の導きに沿って、まるで台詞のように、決められたことをしゃべっているのだ。これ、司会の2人が達者な誘導とリアクションをしているからバラエティとして成立しているが、司会の部分を引き算すると、まるまるストローブ=ユイレじゃないか!新婚さん本人のエピソードだから、リアリティは約束されているが、本体は別のところに存在してるんじゃないか、という不思議な感覚。ストローブ=ユイレ。

映画終了後、PLANET+1代表の富岡邦彦氏のトークも聞いた。
日本でのストローブ=ユイレ受容の歴史、みたいなことを語られていた。
フランスのシネマテークでも、ストローブ=ユイレの上映会には10人くらいしか集まらないらしい。
また、ストローブ=ユイレの作品を初期から全作所蔵していた神戸ファッション美術館は、もうストローブ=ユイレの作品を買っていないのだそうだ。僕が特集上映を見に行った10年前から、ほとんど買っていないらしい。当時、学芸員のモモさんと、「うちはストローブ=ユイレを全部所蔵しているんですよ!」「なに?それは快挙!」と大喜びで語りあっていたのを思い出す。ひょっとして、担当者が変わってしまったんだろうか。何か事情があるのか。神戸にあるフィルムなのに、肝心のファッション美術館で上映されず、東京まで見に行くようなことは避けたい。
また、ストローブ=ユイレのドキュメンタリーを撮ったペドロ・コスタの新作は、ストローブ=ユイレの影響モロ受けらしい。これも見たい。日本上映されるか?
先週の廣瀬純氏のトークは時間の都合で行けなかったが、どこかで内容をレポートしてくれてないかなあ。

トーク終了が午後6時。まさにドンピシャ、NHK-FMの「現代の音楽」の時間だ。
武満徹作曲賞本選演奏会からの2日め。審査員西村朗氏が選んだ1位と2位の作品が放送された。東京オペラシティ・コンサートホールで収録。岩村力指揮、東京フィルハーモニー交響楽団 。
「キューブ」アンドレア・ポルテラ作曲 (17分53秒)
これが第2位。人の一生を誕生から死までの6つの期間に分けて、それを描いている。6つの面で、キューブ(立方体)が出来上がるのだ。
とにかく、18分間、音が途切れることなく動き続け、新しいことが起こり続ける、物凄い作品。スコアには「ヴァイオリンに息を吹き込む」なんてことも書いてあり、 東京フィルハーモニー交響楽団 はちゃんとヴァイオリンを吹奏してみせたらしい。これは実際に見てみたい!
西村氏は、この「キューブ」を第一位として、先週放送したヨーナス・ヴァルフリードソン作曲 「戦場に美しき蝶が舞いのぼる」 を2位とするかな、とほぼ決めていたらしい。
「ネバー・スタンド・ビハインド・ミー」植田彰・作曲 (17分31秒)
ところが、これが第1位。とにかく、凄い。ゲストの白石美雪は「過剰な作品」と評し、西村氏は「モンスタ−的作品」と評した。
これは一種のパンクなのだ。西村氏の表現によると、他の作品が、まだきっちりと服を着てホールで見るような音楽なのに対して、この1位の作品は、いきなり全裸の男が暴れ出てきたようなインパクトがあるのだ。同じフィ−ルドでは、語れない、と。
西村氏は、こういう規格外の作品に対して、「相手にすべきじゃない」とか「好きじゃない」という評価があるだろう、ということは承知のうえで、あまりにも作品がこわすぎて1位にした、と言っていた。
なるほどねえ。これも実際に見てみたい。
タイトルはゴルゴ13か?「俺の背後に立つんじゃねえ!」
武満徹作曲賞の来年の審査員はスティーヴ・ライヒ。ライヒがどんな作品を推すのか、楽しみだ。           

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