どんがらがん

2007年6月5日 読書
ISBN:4309621872 単行本 殊能 将之 河出書房新社 2005/10/26 ¥1,995
アヴラム・デイヴィッドスンの『どんがらがん』を読んだ。
序文/グラニア・デイヴィス
「ゴーレム」
おまえたちを滅ぼしにきた、と宣告するゴーレムを庭の芝刈などこきつかう。

「物は証言できない」
奴隷を物扱いしていた人物が、容疑をかけられる羽目に。目撃者は奴隷ばかりで証言の権利がない。

「さあ、みんなで眠ろう」
お遊びの狩り以外に役に立たなかった遅れた星の下等生物ヤフー。人体実験のかわりにできると知って、ヤフーたちは苛酷な実験生物に格上げ。すべてを見てきた男は、ヤフーたちを安楽死させる。

「さもなくば海は牡蠣でいっぱいに」
あったはずの安全ピンがなかなか見つからないのは何故?いつのまにか針金製のハンガーが増えているのは何故?それは、安全ピンは実は卵で、ハンガ−になるからなのだ。

「ラホール駐屯地での出来事」
お別れの手紙の届き先が違って、刃傷沙汰。

「クィーン・エステル、おうちはどこさ?」
カリブ海出身の下働きの女性。彼女の作るスパイシーな料理や迷信が、奥様は気に入らない。奥様は迷信の魔物ダッピーに襲われる。

「尾をつながれた王族」
尾をつながれて身動きとれない一族のために水を運ぶ「一つ目」
尾を切った母親と外の世界に出かける。

「サシュヴラル」
猿扱いされていたサシュヴラルは、自分が猿だと思わされていた、と言う。でも、サシュヴラルは本当に猿じゃないのか?

「眺めのいい静かな部屋」
老人ホームで若き日の武勇伝を語る老人。その嘘を見抜いた者を殺害。
この話で面白かったのは、ボケた老人が、1つの話題でしゃべっていても、何かきっかけを与えると、すぐにそっちの話題に変わってしまうところ。
たとえば、トルコの風習について語っているとき、誰かが「今日の夕食はチキンか」と言ったら、トルコの話はすっかり忘れられて、夕食のチキンの話になってしまう。

「グーバーども」
子供を脅すための、子取りグーバーが、実際にやってくる。

「パシャルーニー大尉」
突然あらわれた父親が、預けてあった学校にやってきて、過ごす楽しい1日。
実は父親ではなく、その子の母親を愛していた男だった。子供は母親に生き写しだったのだ。

「そして赤い薔薇一輪を忘れずに」
素晴らしい本を売っている店。『仏教の連祷』の値段は「生まれたての赤ん坊と同じ重さの銀の延べ棒」。一番安かったのは、『世にも稀なる秘密の書。ごみと糞と麸からいかに金銀を製するか、またいかに愛情を勝ち得るか、加えて、和合の態位138種と、直立を保つばかりか美味しいこと請けあいの滋養物レシピ60種。ある賢者の書』その値段は、「バビロンのサンダル商人の割れた頭と、その口にはさんだ赤い薔薇一輪」
買えないな、と思ってたら、いつも嫌がらせをする客が、バビロンで靴屋をやってることを知る。

「ナポリ」
旅行者が味わう、自分のもつ常識が何も通用しない文化の違い。
その土地から逃げ出したい若者。

「すべての根っこに宿る力」
発見した死体を見張っていなくてはならないのに、うっかり眠ってしまった。目覚めると、死体がない。言い訳が成立しないので、新しい死体を用意する。

「ナイルの水源」
流行を予言的に先取りする能力をもつ人物。
彼が残した「ナイルの水源」の言葉は!

「どんがらがん」
どけどけ〜!だんじりだ〜!やりまわしだ〜!みんな逃げろ〜!
ボンバボン!
あ〜あ、こわれちゃった。

解説/殊能将之

こいつ、何考えてるんだろう、と思わせる短編集。アイディアだけをとりあげて、「な〜るほど」と膝をたたくような作品ではなく、作者のこの情熱はいったい何に起因しているのか、と不思議に思う作品が多い。
澁澤種村風だという衒学エッセイも読んでみたいし、全然受けなかった絶対の自信作も読んでみたい。この作家、僕の趣味にかなりあいそうなのだ。
それと、彼が代作したというエラリイ・クイーンの『第八の日』も、アヴラム・デイヴィッドスンの手によるものとして、読んでみるか。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

日記内を検索