地球人のお荷物―ホーカ・シリーズ
2007年5月31日 読書
ISBN:4150115761 文庫 伊藤 典夫 早川書房 2006/08 ¥756
ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスンの『地球人のお荷物』を読んだ。
惑星トーカに不時着したアレックス。
トーカに住んでいるホーカ族がどんな宇宙生物なのかと言うと、
(外見編)
身の丈1メートルそこそこ、ずんぐりむっくりした全身に黄金色の柔毛が生え、ぶったぎったような丸い顔に、小さい黒い眼。ずんぐりと指の太い手をのぞけば、その風貌は巨大なテディベア以外のなにものでもなかった。
(性格編)
ホーカは、従属的な立場に肚をたてるどころか、人なつっこく、手助けをおしまず、そう、唯一の欠点はそれ、物事にむやみに熱しやすいことなのだ。想像力がたくましすぎ、新しい概念に出会うとすぐ夢中になり、虚構と事実を区別する能力にとぼしい。
テディベアそっくりの宇宙人種たちが、地球の文化にかぶれて、物真似を真剣にやっているのだ。
最初の物語では、西部劇を見たホーカ族が、西部劇にかぶれてしまう。
「熱狂し、完全に酔ってしまい、神とあおぐ地球人をあらゆる点でまねることにした。映画の言葉つきをまねて英語をしゃべり、地球人の名前をつけ、地球人の服装をし、地球人の習俗を模し、ふるい種族形態をやめて、それを牧場や町で置き換える」
ホーカにもブームの流行りすたりみたいなものがあって、そのときどきでいろんな地球文化に染まっては、ドタバタを演じる。
作品と、何のブームにはまっているかを並べてみると。
ガルチ渓谷の対決/西部劇
ドン・ジョーンズ/ドンジュアン
進め、宇宙パトロール!/スペースオペラ
バスカヴィル家の宇宙犬/シャーロックホームズ
ヨー・ホー・ホーカ!/海賊
諸君、突撃だ!/ 外人部隊
たぶん、ぬいぐるみが人格を持ったりするユーモアSFは山ほどあるのだろうが、このホーカシリーズを越えるものがあるんだろうか。
設定もうまく生かしてあるし、どれもこれも面白い。
4話めの「バスカヴィル家の宇宙犬」にはミステリーファンが大喜びするようなギャグが詰まっている。
たとえば、シャーロック・ホームズになりきっているホーカ(見た目はテディベアだよ!)が、ジェフリイという麻薬Gメンとする会話は、こんな風。
「この事件には興味深い点がいくつかありますね。正直いって「犬」のことをどう解釈していいかわからない」
「だが、犬の話なんか、わたしはしませんよ」ジェフリイがポカンとしていった。
「だから、どう解釈していいかわからないのです」
ホームズを読んだことのある人なら、大喜びのギャグなのだ。
シュロック・ホームズに匹敵、あるいは、それを越えたパロディになっていると思う。
麻薬を取り締まるためにやってきたジェフリイの前で、ホームズを気取るホーカはコカインを注射する真似をしたりする。(からだにあわないので、蒸留水で代用)
また、ホームズ物でお馴染みの「未発表の事件」が、ここでもパロディであらわれる。
「僧正バラバラ事件」「はねる芋虫事件」「スコッチ箱の奇妙な事件」「大猟奇事件」「二枚のたまご焼き事件」
うむうむ!読みたいような、どうでもいいような!
一刻も早く地球に帰りたいアレックスなのだが、植民地の惑星トーカを管理、指導する役職につかされてしまい、なかなか帰れない。発展途上の惑星を導く、という設定が、「地球人のお荷物」というタイトルの意味だ。
各短編の終わりには、早く地球に転勤したいアレックスの嘆願と、それが結局通らずにトーカから離れられないオチがついている。
最後の方では(本書収録作品以降にもホーカのシリーズはあるそうなのだが)、アレックスも「まあ、ここもいいところだな」というように思いはじめる。
ほのぼのしたなあ。
ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスンの『地球人のお荷物』を読んだ。
惑星トーカに不時着したアレックス。
トーカに住んでいるホーカ族がどんな宇宙生物なのかと言うと、
(外見編)
身の丈1メートルそこそこ、ずんぐりむっくりした全身に黄金色の柔毛が生え、ぶったぎったような丸い顔に、小さい黒い眼。ずんぐりと指の太い手をのぞけば、その風貌は巨大なテディベア以外のなにものでもなかった。
(性格編)
ホーカは、従属的な立場に肚をたてるどころか、人なつっこく、手助けをおしまず、そう、唯一の欠点はそれ、物事にむやみに熱しやすいことなのだ。想像力がたくましすぎ、新しい概念に出会うとすぐ夢中になり、虚構と事実を区別する能力にとぼしい。
テディベアそっくりの宇宙人種たちが、地球の文化にかぶれて、物真似を真剣にやっているのだ。
最初の物語では、西部劇を見たホーカ族が、西部劇にかぶれてしまう。
「熱狂し、完全に酔ってしまい、神とあおぐ地球人をあらゆる点でまねることにした。映画の言葉つきをまねて英語をしゃべり、地球人の名前をつけ、地球人の服装をし、地球人の習俗を模し、ふるい種族形態をやめて、それを牧場や町で置き換える」
ホーカにもブームの流行りすたりみたいなものがあって、そのときどきでいろんな地球文化に染まっては、ドタバタを演じる。
作品と、何のブームにはまっているかを並べてみると。
ガルチ渓谷の対決/西部劇
ドン・ジョーンズ/ドンジュアン
進め、宇宙パトロール!/スペースオペラ
バスカヴィル家の宇宙犬/シャーロックホームズ
ヨー・ホー・ホーカ!/海賊
諸君、突撃だ!/ 外人部隊
たぶん、ぬいぐるみが人格を持ったりするユーモアSFは山ほどあるのだろうが、このホーカシリーズを越えるものがあるんだろうか。
設定もうまく生かしてあるし、どれもこれも面白い。
4話めの「バスカヴィル家の宇宙犬」にはミステリーファンが大喜びするようなギャグが詰まっている。
たとえば、シャーロック・ホームズになりきっているホーカ(見た目はテディベアだよ!)が、ジェフリイという麻薬Gメンとする会話は、こんな風。
「この事件には興味深い点がいくつかありますね。正直いって「犬」のことをどう解釈していいかわからない」
「だが、犬の話なんか、わたしはしませんよ」ジェフリイがポカンとしていった。
「だから、どう解釈していいかわからないのです」
ホームズを読んだことのある人なら、大喜びのギャグなのだ。
シュロック・ホームズに匹敵、あるいは、それを越えたパロディになっていると思う。
麻薬を取り締まるためにやってきたジェフリイの前で、ホームズを気取るホーカはコカインを注射する真似をしたりする。(からだにあわないので、蒸留水で代用)
また、ホームズ物でお馴染みの「未発表の事件」が、ここでもパロディであらわれる。
「僧正バラバラ事件」「はねる芋虫事件」「スコッチ箱の奇妙な事件」「大猟奇事件」「二枚のたまご焼き事件」
うむうむ!読みたいような、どうでもいいような!
一刻も早く地球に帰りたいアレックスなのだが、植民地の惑星トーカを管理、指導する役職につかされてしまい、なかなか帰れない。発展途上の惑星を導く、という設定が、「地球人のお荷物」というタイトルの意味だ。
各短編の終わりには、早く地球に転勤したいアレックスの嘆願と、それが結局通らずにトーカから離れられないオチがついている。
最後の方では(本書収録作品以降にもホーカのシリーズはあるそうなのだが)、アレックスも「まあ、ここもいいところだな」というように思いはじめる。
ほのぼのしたなあ。
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