スプートニク

2007年5月23日 読書
ISBN:4480860525 単行本 管 啓次郎 筑摩書房 1999/05 ¥2,730
スプートニク協会+ジョアン・フォンクベルタの『スプートニク』を読んだ。
目次。
ごあいさつ/ジョアン・フォンクベルタ(スプートニク協会特派員)
日本のみなさんへ/オリガ・コンダコワ(スプートニク協会特派員)
イワン・イストチニコフの足跡を追って/マイクル・アレーナ
宇宙にささげられた一生涯のいくつかの挿話/ピョートル・ムラヴェイニク
帝国の逆襲/マイクル・アレーナ
帰還なき旅にむかって/マイクル・アレーナ
星間チェス/ピョートル・ムラヴェイニク
無意識の徴候/ピョートル・ムラヴェイニク
宇宙犬誕生/ピョートル・ムラヴェイニク
隕石の謎/サルマン・ザグデーエフ
小惑星の分析/サルマン・ザグデーエフ
交信記録
ベレゴヴォイの報告書/マイクル・アレーナ+ピョートル・ムラヴェイニク
解説/荒俣宏

1968年10月25日、ソユーズ2号は宇宙飛行士イワン・イストチニコフ大佐をパイロットとして打ち上げられた。おともは犬のクローカ。
ついでゲオルギー・ベレゴヴォイ中佐が乗るソユーズ3号が追いかけ、軌道上で2つのカプセルのドッキングを試みる計画だ。
当時はアメリカとロシアが月面一番乗りをかけてしのぎを削っている時代だった。
人間と犬(動物)の共同宇宙飛行と動物のEVA(宇宙遊泳)はともに初の試みであり、これが成功すればロシアはアメリカに一歩先んじることができるのだ。
だが、ドッキングは失敗し、再度両者が接近した際、ソユーズ2号のイストチニコフ大佐と犬の姿はなく、モジュールには小惑星が激突した痕が見られた。彼らはどこに消えたのか。
当局はソユーズ2号は無人で打ち上げられたものと発表し、イストチニコフ大佐は最初から存在しない人物とされた。
これらの事実が明らかになったのは、ペレストロイカ以降、サザビーズでロシアの宇宙計画に使われた品物の競売で売られた写真がきっかけである。
本書は、膨大な図版とともに宇宙計画史をたどりながら、歴史から抹殺されたイストチニコフ大佐の謎をたどるドキュメントだ。
その全貌はいまだに謎に包まれたままだが、真相に迫って行く過程はスリリングで、その行き着く先は感動的でさえある。
宇宙開発の裏側のエピソードもふんだんに盛り込まれてある。
たとえば、1957年に宇宙に飛ばされたライカ犬は、地球に帰ってきたとき、すっかり黒焦げになっており、よく似た犬が記者のカメラの前に姿を見せた、とか。
ガガーリンは事故死したとされているが、精神病院に幽閉されたのだとする噂など。(ガガーリンは絶大な人気があり、彼が党内で権力をもつのをおそれた結果だという)
入念な調査により、イストチニコフ大佐とインド洋赤道上の駆逐艦との交信記録や、周回中に地上と交わされたチェスの棋譜だとか、イストチニコフ大佐のノート、写真などが発掘されて、本書に載せられている。
なによりも面白くて興奮したのは、次の部分。
ソユーズ3号に乗り込んでいたベレゴヴォイの報告書で、イストチニコフ大佐との通信がとれなくなり、ソユーズ2号に再接近した際、輝く飛行物体を発見する。

その飛行物体の正体を知ると、私は呆然とした。それはミーシン主任技師が愛飲していたウォッカの瓶だったのだ。ズヴェズドニー・ゴロドークでは、新米宇宙飛行士相手に、伝統的におこなわれる悪ふざけがある。教官が大まじめな顔で、問題が生じたら瓶にSOSのメッセージを入れて真空に向かって投げ、それから宇宙遭難救助隊がやってくるのをじっと待つべし、と教えるのだ。新人たちの困惑した顔が、ベテランたちに大笑いさせるのだった。打ち上げ前イワンは、EVA実行の際に瓶を投げられるよう準備がしてある、と私にいっていた。根っからの悪童である彼は、ついにあの罪のないいたずらを決行してみせたのだ。だが、どんなメッセージが書かれているのか?おそらく決定的な鍵が、そこにあるのではないか。しかし、どうあがいても、それを回収する術はなかった。

結局、ベレゴヴォイは本件を調査するジョアン・フォンクベルタとのインタビューを受ける前に死んでしまい、新しい証言は得られないのである。
ん?
ジョアン・フォンクベルタ?
これは、いったい!

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