やさしい嘘

2007年2月5日 映画
DVD ジェネオン エンタテインメント 2005/03/11 ¥3,990
ジュリー・ベルトゥチェリ監督の「やさしい嘘」を見た。2003年。
ネタバレしてるので、興味のあるひとは、まず映画を見よう。
カンヌ映画祭で国際批評家週間の大賞を受賞している。
祖母、娘、孫の女3世代を中心とした物語。
舞台はグルジア。おばあちゃんはパリで働く息子からの連絡が一番の楽しみ。ところが、その息子が事故死してしまった。それを隠して、嘘の手紙を書く娘と孫。
息子の名前はオタール・ゴゲバシェヴィクで、映画の原題Depuis Qu’ Otar est Partiはオタール死して後、とでもいうような意味。
息子の遺品を届けてくれた友人と、息子の死を知らされていないおばあさんとの奇妙なやりとり。
ある日おばあさんが蔵書を売り払って、パリの息子に会いに行く、と言い出して、さあたいへん。
こんなあらすじでは、吉本新喜劇によくあるパターンと変わらないように思えるが、まさにその通りだ。吉本新喜劇の筋立ては、モリエールなど古典的な劇を継承したもので、この「やさしい嘘」もストーリーの興味だけでもぐいぐい見せる魅力がある。
邦題の「やさしい嘘」は、おばあちゃんがショックを受けないようにと娘たちがつく嘘のことなんだな、と思いながら見ていると、最後の方で、びっくりさせられる。
パリに息子を訪ねたおばあさんは、息子の死を知ってしまう。
だが、帰ってきたおばあさんは、娘たちに言うのだ。
「あの子は、パリにいないんでしょう。
夢だったアメリカに行ったのね」
娘たちを気遣った、おばあさんの嘘だ。
その後、孫娘は1人パリに残る。
おばあさんの嘘を受けて、それにこたえた旅立ちだ。
おばあさんを気遣った嘘で、バラバラになっていた3世代はまとまった。
おばあさんは、やさしい嘘で、しばられずにそれぞれの道に歩んでいく未来を選択するように促すのだ。
おばあさんを演じたエステール・ゴランタンがいい。
この映画でデビューした85才の新人女優さんだ。
なんだか最近は「オカン」だの「ばあちゃん」がもてはやされているが、このおばあさんもいい。頑迷と融通無礙をともにあらわしている。
この映画での3世代では、おばあさんと、孫がよくて、まんなかの母親世代が、一番いろんなものにとらわれて、身動きとれないように見える。
未来という概念は、年寄りと若者に与えられたものなのかもしれない。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

日記内を検索