ISBN:408873601X コミック 荒木 飛呂彦 集英社 ¥410
荒木飛呂彦の『スティール・ボール・ラン』を8巻まで読んだ。
現在10巻まで刊行中。
これはジョジョの奇妙な冒険のパート7にあたるが、まあ、面白いこと面白いこと。
時代は19世紀末。アメリカ大陸横断レースでの闘い。
とにかくツキにツキまくるポコロロや、時間を6秒だけ戻すことができるマンダムとか、回転する鉄球を操るジャイロ・ツェペリとか、肉体をスプレーで吹き付けることができるホットパンツとか、磁力を利用するブンブーン一家とか、身体をバラバラにしてロープで飛ばせるマウンテン・ティムとか、いろいろ出てくる。
作中、ジャイロ・ツェペリが言うように、この漫画での闘いは、「詰め将棋」なのだ。
たとえば、6秒時間を戻すことができる敵をどうやって倒せるのか?
すべての奇襲は無効になる。
こっちの攻撃は全部予知されている。
こりゃすごい。
それでも倒してしまうんだから。
山田風太郎の『甲賀忍法帖』では、薬師寺天膳という不死の忍者が出てくる。彼はいかにして敗れるのか。みたいな興奮を再現してくれるのは、このジョジョ以外にないだろう。

一方、『バキ』の続き『範馬刃牙』を3巻まで読んだ。
バキは昆虫を相手にシャドウをこなしている。
むちゃくちゃである。
漫画の荒唐無稽ではすまされない無茶苦茶さがある。
バキはカマキリを2メートルの体長があるものと想定して、空想の巨大カマキリと闘う。
すべての格闘技が通用しない。
あげく、バキはカマキリ拳法で対抗する。
そのときの著者のナレーションがすごい。
最強をめざして異種格闘技を闘ってきた人間がたどりついたのは、なんと同種格闘技だ!
頭が悪すぎてあいた口がふさがらない。
たどりついたのは「同種格闘技」ではなく、「昆虫こそ最強」だろう。
たとえば柔道家相手に闘って、すべての格闘技が通用せず、バキも柔道で対抗するとしたら「たどりついたのは同種格闘技」ではなく「柔道こそ最強」ではないか。
ここでもやはり、バキの強さに根拠がなくて、イライラする。
著者は、ライオンでも小さければ弱い、カマキリでも大きければ最強だ、なんてちゃんと書いているのだから、小柄なバキが勝つにはバキが強い理由をつけてくれないと納得できない。多くの格闘家は強くなりたいがために、体を大きくするための努力を怠らない。バキにはそんな努力のあとは見られないのだ。
小柄なバキが、大柄な勇次郎に勝つには、勇次郎の老いを待つしかないのではないか。バキが優れている点は、年齢の若さ以外に見つからない。
ジャイロ・ツェペリのように、求めるものはただ「納得」なのだ。
板垣漫画は、面白いのだが、頭が悪くて品がないのが残念だ。
きっと著者は山本キッドや亀田が好きなのであって、間違ってもノゲイラやヴォルク・ハンみたいな詰め将棋格闘を認めていないふしがある。
バキ外伝の『疵面』を2巻まで読んだ。
ヤクザの花山の物語。『範馬刃牙』も『バキ』もなんだか全体に「外伝」のような印象があるが、この『疵面』は面白い。
巨大なホオジロザメと水中で闘って、勝ってしまうんだから。
少々鼻につくのは、侠気を賛美する描き方だ。
『グラップラー刃牙』のときに暴走族が腕を骨折しながらプロの格闘家に勝つシーンがあった。彼の武器は根性だけだったのだ。
少年漫画のお約束として、暴走族やヤクザ、不良に対して肯定的な描き方をしている事情はわかるが、これもまた、頭が悪い。
本来なら、その人物がヤクザなり不良なり暴走族の道を選んだ時点で、そいつは負けなのだ。根性、精神の弱さが露呈している。
と、まあ、漫画にメクジラ立ててもしかたないのだが、格闘技ファンがみんな板垣漫画を手放しで絶賛しているわけではない、ということだけは主張しておきたい。
板垣漫画は面白いけど、空想ギャグで、実際の格闘技とは面白がるポイントが違うのだ。

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