ISBN:4344010159 単行本 重信 房子 幻冬舎 ¥1,470
日本赤軍の重信房子の短歌をおさめた本。
獄中から寄せられた短歌3500あまりの作品から選ばれている。

冬の夜を会いたい人の靴音はきっと今でも聞きわけられる

逆光に光るうぶ毛が踊るよう笑いころげた君のまぶしさ

な〜んて「赤軍」「獄中」とは無縁の抒情をうたったものもあれば、

もう二度と会えぬと思いし無期刑の友に証言台で会えた喜び

独房の唯一の居場所座布団のへこみに日々の重なりを知る

など、獄中のことがらを綴ったこと、

友の死を「見捨てたわけではないのだから」号泣する君の肩をゆさぶる

一行も書かない自伝を胸に秘め壮大な絵を君は描いた

Gジャンに口笛吹いてあらわれた軽やかな君今日が命日

などなど同志たちを描いた歌。

世界中敵になってもお前には我々が居ると父の文あり

わがために辛苦を受けし母なれど母ゆえにこそそれを語らず

など家族について。

泣かせるのは、巻末に載せられた姉からの手紙で、そこには重信房子の家族に対するマスコミや小市民たちの嫌がらせについて書いてある。
「死んで詫びろ」と言ってきた電話に、父親はこう答えたという。
「二十歳を過ぎた娘が自分の考えで行動していることを親がいちいち謝らんといかんのでしょうか。それは娘に対しても失礼です」
うむ。毅然としている。
先日読んだ香山リカの本でも、自己責任の問題で、本人のしでかしたことに対して、家族にバッシングがいくため、マスコミや小市民対策なのか、ひたすら謝りつづけている光景に違和感をとなえていた。
まったく。
重信房子はパレスチナにおいては、英雄である。
そして、彼女が問われている罪は、PFLPの作戦の「共謀」である。共謀したとされる関係者はアラブの地にいるか、あるいは既に死亡している。現実に何が起こったのか立証できないことで筋書きを書かれている。
パレスチナから呼ばれて来た証人は、裁判長に「彼女には罰ではなく、褒賞を与えてください!」と訴えたという。
この本にはあえておさめられなかったという、イデオロギーをよんだ膨大な数の短歌もぜひとも読んでみたいものだ。

誰だったか忘れてしまったが、英雄的な一面をもつ重信房子を、たった1つのエピソードで転落させてしまったコメンテーターがいて、そのイメージの喚起力に驚いたことがある。
それは、「彼女は歯槽のう漏なんですよ」というものだった。
栄光も一気に瓦解しちゃうんじゃないかな。
思想は歯槽のう漏に勝てないのか?

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