ISBN:4253053114 新書 板垣 恵介 秋田書店 ¥410
全42巻&外伝。
グラップラー刃牙は今までなぜか読まずにいた。
理由は簡単。
刃牙のモデルとなったとおぼしき格闘家、平直行がそんなに好きではないからだ。
平〜山本kid〜亀田の「やんちゃ軽量」の系譜があまり好きではない。
軽い体重の人間がいくら最強を誇っても、結局ヒョードルには勝てないんじゃないか、というような感じ。
3歳児最強の人間がいたとして、僕はそいつに負ける気がしない。なのに身の程知らずに大口叩いていたら、そいつは馬鹿だ。
この『グラップラー刃牙』には大きくわけて3つの話が収録されている。
バキが地下闘技場の王者であるところからはじまる話。
親子関係を中心にした幼年編。
世界の格闘家が集まる「最大トーナメント」編。
バキの物語を理解するために必要なのは、おそらく父と母とバキを描く幼年編なのだが、面白いのは断然「最大トーナメント」だ。
何故面白いのかといえば、多くの格闘家が出場するため、そのぶんバキの出番が少なくなるからだ。
先日読んだ森達也の本を待つまでもなく、格闘技はある意味、説得力の勝負だ。
バキが強い理由を、僕は最後まで理解できなかった。
体重が軽い、というだけで不利なのだから、それを補ってあまりある強みがどこかにないと、バキが勝てる道はないはずだ。
特別の必殺技があるとか、誰にも真似できない体質的な特徴があるとか。
でも、ない。
あるとしたら、地上最強の父親の血をひいている、というくらいだ。
もしそれだけなら、バキは父を超えることは一生できない。
バキは、「なぜか勝つ」のだ。
その強さはSF的で、バキはまさに人間ではない。
こういうバキみたいな「とにかく強い」奴が、敵として出てくるのはかまわないが、主人公としてはどうなのか。
読者はバキに感情移入したくても不可能だ。
どんなにボロボロにやられていても、バキは一瞬後にはまったくダメージなしに立ち上がり、闘うことができるのだ。これでは応援しようがない。
だから、バキの闘うシーンは、1つ1つの経過を追っても意味がない。オカルト的にとにかく勝ってしまうからだ。そこに理由も必然性もない。なぜバキは勝てたのかと言えば「バキだから」しか答えはなく、そんなことは最初から聞かなくてもわかっており、ならば闘う場面を見る意味もないのだ。
最大トーナメントでは多くの格闘家が、それぞれの看板を背負って闘う。一方、バキは「父を超えたい」というどうでもいい理由で闘っており、その動機のどうでもよさを見ても、闘いに賭ける必然性も薄い。
結局、トーナメントは、バキとその兄、というSFどうしの決勝になる。格闘技も漫画にはかなわない、ということか。

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