ボルヘスの『闇を讃えて』を読んだ。
1969年刊行の5冊目の詩集。
「序」でボルヘスがこんなこと書いていて面白い。
この本はわたしの5番目の詩集だ。他の詩集より良くも悪くもないとみるのが妥当だろう。もう諦め顔の読者が予想しているに違いない、鏡や迷宮や剣の他に新しいテーマが加わった−老年と倫理だ。
巻末に訳されたギジェルモ・スクレによる評論「闇を讃えるボルヘス」を引用すると、本書で反復されるボルヘスの「いつものテーマ」は、次のとおり。
迷宮、鍵、孤独、愛、時間、歴史、記憶、先祖たち、先立った友人たち、ガウチョ、ならず者、ブエノスアイレス、英国、聖書、ホイットマン、ド・クウィンシー、図書館、旅、盲目。
つまりは、ボルヘスの集大成がこの1冊にあるといってもいいだろう。
ボルヘス自身が新たに加わったテーマとしてあげた「倫理」があらわされた詩に「福音書外典断簡」がある。これが面白くて、膝をうつフレーズがいくつもあった。
そのなかから、部分的に引用すると。
十八、なべて人間の行為は地獄の炎にも天国の栄光にも値いせず。
二十七、われ復讐にも許しにも触れざるは、忘却こそは唯一の復讐にして許しなればなり。
四十一、石の上に建つものはなく、なべては砂上に建てり、されどわれらが務めは砂もて石のごとくに建つるにあり。
おっと、倫理とはあまり関係ないところを引用してしまった。
あと、「ブエノスアイレス」という詩にすっかり感心してしまった。
ブエノスアイレスとは何か−ではじまる詩句はもうどれもこれも素敵で、心を揺さぶられた。
ブエノスアイレスにまつわるボルヘスの記憶の挿話が1つ1つ短い詩であるかのように並べられる。これらすべてがイメージの喚起力を持っている。そして、これらは個人的なものなので、もうやめよう、といったん休止符を入れたあとに、「ブエノスアイレスとは」と、ボルヘス自身が体験しなかった記憶が怒涛のごとく並べられるのだ。まいった!
これ、朗読したら、感動を呼び起こすこと間違いなし。
1969年刊行の5冊目の詩集。
「序」でボルヘスがこんなこと書いていて面白い。
この本はわたしの5番目の詩集だ。他の詩集より良くも悪くもないとみるのが妥当だろう。もう諦め顔の読者が予想しているに違いない、鏡や迷宮や剣の他に新しいテーマが加わった−老年と倫理だ。
巻末に訳されたギジェルモ・スクレによる評論「闇を讃えるボルヘス」を引用すると、本書で反復されるボルヘスの「いつものテーマ」は、次のとおり。
迷宮、鍵、孤独、愛、時間、歴史、記憶、先祖たち、先立った友人たち、ガウチョ、ならず者、ブエノスアイレス、英国、聖書、ホイットマン、ド・クウィンシー、図書館、旅、盲目。
つまりは、ボルヘスの集大成がこの1冊にあるといってもいいだろう。
ボルヘス自身が新たに加わったテーマとしてあげた「倫理」があらわされた詩に「福音書外典断簡」がある。これが面白くて、膝をうつフレーズがいくつもあった。
そのなかから、部分的に引用すると。
十八、なべて人間の行為は地獄の炎にも天国の栄光にも値いせず。
二十七、われ復讐にも許しにも触れざるは、忘却こそは唯一の復讐にして許しなればなり。
四十一、石の上に建つものはなく、なべては砂上に建てり、されどわれらが務めは砂もて石のごとくに建つるにあり。
おっと、倫理とはあまり関係ないところを引用してしまった。
あと、「ブエノスアイレス」という詩にすっかり感心してしまった。
ブエノスアイレスとは何か−ではじまる詩句はもうどれもこれも素敵で、心を揺さぶられた。
ブエノスアイレスにまつわるボルヘスの記憶の挿話が1つ1つ短い詩であるかのように並べられる。これらすべてがイメージの喚起力を持っている。そして、これらは個人的なものなので、もうやめよう、といったん休止符を入れたあとに、「ブエノスアイレスとは」と、ボルヘス自身が体験しなかった記憶が怒涛のごとく並べられるのだ。まいった!
これ、朗読したら、感動を呼び起こすこと間違いなし。
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