日本橋ヨヲコの『G戦場ヘヴンズドア』全3巻を読んだ。
これもまた前向きな話。
漫画家の話なのだが、作中、決めぜりふというか、名言が大文字でバシッと決まる。
「自分から読み手を選ぶとは、思い上がりも甚だしい。そのプライドがある限り、お前は先へと進めんよ。オナニーは布団の中だけにしとくんだな」
第1巻で主人公の1人、堺田町蔵が父親(漫画家)から言われるプライドについての言葉。
これが最終巻になると、絵をほとんど描けなくなった鉄男のかわりに、みんなで漫画を代筆しようとする際、ある1人が漏らす「プライドないのか、君達は」の言葉に堺田町蔵がこう答えることになる。
「プライド?ありますよ。そんなもん。あるからこそどんな汚い手段使っても完成させますよ」
2つのプライドのいかに距離が隔たっていることか。
日本橋ヨヲコの作品は今回はじめて読んだ。
他の作品がどうなのかは知らないが、この作品には、名言癖とも言えるような作風が感じ取られる。かつて三島由紀夫を読んだときに、同じような印象を受けた。
この作品読んで、かなり感激したので、それらの言葉を覚え書きとして残しておくことにする。作品を読んでないと、特に名言とは思えないだろうが、作品の中では、ピシッと決まっているのだ。
「お前は天才かもしれねえ。けどそれだけだ。(中略)いいか、オレと組むなら手加減すんな。もしお前がもう一度、オレを震えさせてくれるのなら、この世界で、一緒に汚れてやる」

「わかりあおうと努力しなければならない友達ごっこなどもう終わりにしろ。お前に必要なのは、…なんだっけ」

(手品を見て、タネさえわかりゃ、誰でもできっじゃん。と言う堺田に、久美子が言う)「黙って見てな。深く考えないでさ、夢見せてもらいなよ」

(映画の終わりのエンディングクレジットロール中に私語する若者に対して、阿久田編集長が言う)「上映中の私語はすべての作品への冒涜行為だ。死ね」

(鉄男と堺田が漫画を合作することになり、鉄男を愛する久美子がその関係に嫉妬したとき、堺田が言う)「お前、要るよ。捨てられもしねーうちから勝手に拗ねんな。ふざけんな」

(愛人から父親の離婚を伝えられ「ふーん」と反応する堺田。愛人が「それだけ?」と聞いたときに、堺田が爆発する)「女なんて何言っても納得しねえじゃねえか。いちいち人の言葉に期待してんじゃねーよ」

(堺田が漫画にめざめて、愛人に言う)「セックスより面白いことを知ってしまいました。オレはもうそっちには戻れません。今まで相手してくれてありがとう」

(愛人が堺田に言う)「男が化ける瞬間て、たまんないのよ。やっと見れた」

「読者はあんたのファンじゃないのよ。がんばって読んでくれるなんて思わないことね。誰にでもわかるように作るのが、一番難しいのよ」

「本当に面白いマンガはね、心が健康じゃないと描けないんだよ」

「いい?これは仕事。本気でうそをつく仕事なのよ。あなたの描くうそは、誰かがお金を払ってでも騙されたいものかしら」

「君は、作品の一般的なイメージで、読んだつもりになってるんじゃないの?」

「漫画家に必要なものって、何スか?才能じゃなかったら、何なんスか?本物との差を決定的に分ける一線って、いったい何なんですか」「人格だよ」

「人はどんなに交わっても、本当はみんなひとりぼっちなんだよ」
この言葉を幼いときに聞いて理解できなかった堺田は、長じて意味を理解し、久美子に上記台詞に続けてこう言う。
「だから、お前は、長谷川鉄男の彼女でもなく、誰かのものじゃない、お前になれ。オレもちゃんと、堺田町蔵になる」
そして上記台詞を言ったときに父親が穏やかに笑っていたわけを知る。
「それは、寂しいことじゃないからだ」

「お前に鉄男のことはわからない。絶対にわからない。横であいつの彼女ヅラしてても、本当のことは何ひとつわからない。あいつの傷はお前では癒されない。でも、それでいいんだ」

まだまだいろいろあったけど、羅列はここまで。
なにか創作活動に携わる人にとっては、勇気づけられることの多い作品だと思う。少なくとも、僕はそうだった。逡巡などしている余裕はない。

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