山田風太郎ミステリ−傑作選第9巻少年篇『笑う肉仮面』を読んだ。
以下、作品毎の覚え書き

「水葬館の魔術」
謎のとびこみ自殺。死体リレーで不可能状況。
『ずっとまえ、この家に、ひとり気のふれた男がすんでいたんです。笛ばかり吹いていました』ジャガー?

「姿なき蝋人」
グニャグニャ人間。
『姿なき』とは定まった姿がない、という意味か。

「秘宝の墓場」
かくれキリシタンの財宝話にだまされる海賊

「魔船の冒険」
死人島にてタコとたわむる。

「なぞの占い師」
未来を予知する占い師。
それらはすべてヤラセで仕組まれたものだった。
未来予知を信じた挙げ句、占い師の命令を定まった未来として実行しようとする被害者。

「摩天楼の少年探偵」
タイトルは都会派なのに、犯人の名前は、雲がくれの幻蔵。
大量の蜘蛛や、蜘蛛の投影で人があまり通らないようにして、犯行に及ぶ。
道いっぱいのくもとたわむる。

「魔の短剣」
自らを傷つけようとした毒の水が、悪いやつの目に入る。
毒はアトロピンで、しばらくたつと目が見えなくなってしまうのだ。
曲芸で短剣を受け取れず刺してしまう悪いやつ。

「魔人平家ガニ」
吸血鬼なのだ。
カニとたわむる。

「青雲寮の秘密」
寮生活うんこ豚ドタバタ

「黄金明王のひみつ」
竹を使って死体をスールスル滑走。
竹は切って花立てを作る。

「冬眠人間(中学時代二年生版)」
コールドスリープ。
ペスト蔓延の虚報で人を追い払ってから、コ−ルドスリ−プ後の世界を演出。
冬眠が一般的になると、みんな努力せず、嫌なことがあったらすぐ寝てしまう世の中になっちゃうから駄目なのだ。

「暗黒迷宮党」
暗黒迷宮党の首領に化ける警官X

「なぞの黒かげ」
蜘蛛いっぱいで人払い(摩天楼の少年探偵)、未来予知から命令(なぞの占い師)など、集大成的作品。
犬がなついていることで、身近なものと知れる。

「冬眠人間(少年クラブ版)」
悪人の名はオッサ・クラニ博士(ラテン語で頭蓋骨の意味)
冬眠球はイガイガで、刺さると凍って眠ってしまう。
Xの悲劇トリック。

「笑う肉仮面」
ねずみを使って針金と硝酸を仕入れ、牢から抜け出す(暗黒迷宮党)も再使用。
主人公弓太郎は手術で常に笑っている顔にされている。
財産を狙う悪いやつが医者と結託して謀ったのだ。
元ネタのユゴーの作品は読んでいないけど、それを映画化したのは見ていて、「あっ、山田風太郎のアレだ!」と思ったことがある。
さて、この「笑う肉仮面」は「なぞの黒かげ」とともにかれこれ25年ぶりの再読になる。
当時は、その古臭さであまり高い評価を与えていなかったのだが、今回読み返してみて、面白さに腰が抜けそうになった。
宇宙斎と名乗る手品つかい率いる曲芸団。
そんな設定はたしかにモノクロの日本映画を思わせ、悪人が退治され、ものごとがおさまるべきところにおさまる物語は、勧善懲悪を絵に描いたようで、古い、とでも思っていたのだろう。
25年を経た読書体験で、こんなに評価がアップした作品もないんじゃないか。
この作品集のなかでも、ピカイチの出来で、読んだあと、幸せな気分になった。
見世物興業の人間や笑った顔の人間が何を訴え出ても、警察や世間はりっぱな家の人や医者の言うことの方を信じる、といった弱いものへの差別をも描いている。
なんて前向きな!
僕みたいに、人生の晩年に突入すると、後ろを向いている時間はないのだと痛感する。
前向きであることをうっとうしい、と思っているあいだは、まだまだ幼いのだな、と感じた。

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