ジョン・ハスケルの『僕はジャクソン・ポロックじゃない』を読んだ。
役者でもある作者による短編集。
その作品は、エッセイや評伝と小説を一体にしたような手ざわりで、新鮮だった。
映画スターなどの有名人を主人公にしたエピソードを事実と虚構をおりまぜて作りあげている。突然、無関係なエピソードが語られるかと思えば、それが1つのテーマに収斂されていったり、いかなかったりする。
主に映画のストーリーと、それを演じた俳優のストーリー、そのどちらがより虚構、という階級もなく語られる不思議な世界。
以下、各作品で語られるエピソードのインデックスをメモしておこう。

「僕はジャクソン・ポロックじゃない」
有名になり過ぎたジャクソン・ポロック。
反逆もまたスタイルとして容認されてしまうのだ。

「象の気持ち」
人を死なせてしまい、公衆の面前で感電死させられる象のトプシィ。
見世物として展示されるホッテントットの女性、サァキィ。

「サイコの判断」
映画「サイコ」のジャネット・リー。
トロイア戦争のパリス。

「ジャンヌ・ダルクの顔」
エクソシストの悪魔役、マーセデス・マッケンブリッジ
カール・ドライアー「裁かれるジャンヌ」のルネ・ファルコネッティ(ジャンヌ役)
「サムソンとデリラ」のデリラ役、ヘディ・ラマー
自分なりの人生を送ることにともなう犠牲。

「キャプシーヌ」
57才のときにとびおり自殺を試みるキャプシーヌ。
同い年のノーマン・モリソンは抗議の焼身自殺。

「六つのパートからなるグレン・グールド」
グールドらしいエピソード。実際にあったことかどうかは不明。

「素晴らしい世界」
宇宙に飛んだライカ犬。
井戸の中に落ちた少女。
モーテルの発明について。

「真夜中の犯罪」
オーソン・ウェルズ。「黒い罠」の。「第三の男」の。「フォルスタッフ」の。
この作品に関しては、ほとんど映画の中だけでストーリーが進む。
まるで、役作りのような掘り下げ。

「奥の細道」
芭蕉と曾良。俳句作りと人生には精神集中が大前提と考える芭蕉の前にひろがる、妨害物。
俳句の道は「細道」とならざるをえない。
アーヴィング・ペンと、そのモデル、リサ。

1冊読み終えるのが惜しいくらい楽しく読んだが、ときどき、僕の頭によぎったのは「プロレススーパースター列伝」だった。
なぜ?
せめて「ハリウッドバビロン」であってほしかった。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

日記内を検索