ジェニー・ブライス事件
2005年12月14日 読書
メアリ・ロバーツ・ラインハートの『ジェニー・ブライス事件』を読んだ。(1913年)
ジェニー・ブライス!2つのドールを足したような名前だ!
洪水で床上浸水した日に、女優ジェニ−・ブライスは失踪する。
夫は喧嘩して妻が出ていったのだ、と主張するが、主人公のミセス・ピットマンは考える。
ジェニー・ブライスは夫に殺されたんじゃないか、と。
死体が発見されず、また、死体発見後も、それがジェニー・ブライスの死体なのかどうか決めてがない。さて。
最近、ラインハートの作品がぽつぽつと翻訳されはじめた。
彼女はHIBK派の創始者と呼ばれている。
HIBKは「ヒビキ」じゃなくて、Had I but Knownの略で「もしも、もっと早く知っていたら」という言い回しでサスペンスを盛り上げる手法のことだ。
たとえば、この作品では、ジェニー・ブライスと主人公のピットマンとの会話時に使われていた。
「あら、この親指の爪を見て。すっかり割れちゃったわ」
その親指をひと目見ておきさえすれば!
しかし私は洗面台からラドリー氏の原稿をよけ、お茶のお盆を置こうとしているところだった。
という具合。このときに指を見ておれば、死体発見時に、それが彼女の死体なのかどうかが判明したのに、という意味だ。
「ジェニーを見たのはそれが最後だった」
というような描写もある。
僕はこの手の表現を横溝正史でよく読んだ覚えがあるが、サスペンス物にはつきものの描写なのかもしれない。
ラインハートのことだから、メロドラマばりばりで、ロマンチックサスペンスの女王らしく、2時間ドラマ路線を行くのか、と気軽に読んでいたのだが、これがなかなかの本格推理だった。
事件が一件落着した後に、登場人物たちのその後が描かれるところは、昔読んだクリスティーの読後感に近いものがある。
そういえば、クリスティーも読み残しがいっぱいあるなあ。
以下、忘れてしまうので真相の一端を書いてしまうので、今後読む人はパスしてください。
死体の胸にあった謎の傷痕や、消えた時計の謎など、いろいろあるが、書き留めておくのは、おおまかな真相。
これは、まず、失踪狂言だった。劇場関係者、マスコミが組んで失踪劇を演じ、話題を盛り上げようとしたのだ。
夫は状況証拠だけで逮捕されてしまう。
どこかで隠れているジェニー・ブライスが出てくれば、夫も無罪放免で、丸くおさまるはずだったのだが、誤算があった。ジェニーは夫を憎んでいたのだ。夫がピンチになってもジェニーは姿をくらませたまま、出てこない!
ここまでが前段。
真相は、夫は実際に妻を殺していた。
そして、この失踪劇を利用する形になった。
愛人に妻の変装をさせ、失踪劇を演じさせる。失踪劇のグルの人々は、ジェニーだと思い込んで、ある場所に愛人を連れていったわけだ。
グルの人々は、夫が拘留されているあいだにジェニーに化けた愛人の存在を確認しているだけに、夫は無罪だと信じて疑わなかったのだ。
ジェニー・ブライス!2つのドールを足したような名前だ!
洪水で床上浸水した日に、女優ジェニ−・ブライスは失踪する。
夫は喧嘩して妻が出ていったのだ、と主張するが、主人公のミセス・ピットマンは考える。
ジェニー・ブライスは夫に殺されたんじゃないか、と。
死体が発見されず、また、死体発見後も、それがジェニー・ブライスの死体なのかどうか決めてがない。さて。
最近、ラインハートの作品がぽつぽつと翻訳されはじめた。
彼女はHIBK派の創始者と呼ばれている。
HIBKは「ヒビキ」じゃなくて、Had I but Knownの略で「もしも、もっと早く知っていたら」という言い回しでサスペンスを盛り上げる手法のことだ。
たとえば、この作品では、ジェニー・ブライスと主人公のピットマンとの会話時に使われていた。
「あら、この親指の爪を見て。すっかり割れちゃったわ」
その親指をひと目見ておきさえすれば!
しかし私は洗面台からラドリー氏の原稿をよけ、お茶のお盆を置こうとしているところだった。
という具合。このときに指を見ておれば、死体発見時に、それが彼女の死体なのかどうかが判明したのに、という意味だ。
「ジェニーを見たのはそれが最後だった」
というような描写もある。
僕はこの手の表現を横溝正史でよく読んだ覚えがあるが、サスペンス物にはつきものの描写なのかもしれない。
ラインハートのことだから、メロドラマばりばりで、ロマンチックサスペンスの女王らしく、2時間ドラマ路線を行くのか、と気軽に読んでいたのだが、これがなかなかの本格推理だった。
事件が一件落着した後に、登場人物たちのその後が描かれるところは、昔読んだクリスティーの読後感に近いものがある。
そういえば、クリスティーも読み残しがいっぱいあるなあ。
以下、忘れてしまうので真相の一端を書いてしまうので、今後読む人はパスしてください。
死体の胸にあった謎の傷痕や、消えた時計の謎など、いろいろあるが、書き留めておくのは、おおまかな真相。
これは、まず、失踪狂言だった。劇場関係者、マスコミが組んで失踪劇を演じ、話題を盛り上げようとしたのだ。
夫は状況証拠だけで逮捕されてしまう。
どこかで隠れているジェニー・ブライスが出てくれば、夫も無罪放免で、丸くおさまるはずだったのだが、誤算があった。ジェニーは夫を憎んでいたのだ。夫がピンチになってもジェニーは姿をくらませたまま、出てこない!
ここまでが前段。
真相は、夫は実際に妻を殺していた。
そして、この失踪劇を利用する形になった。
愛人に妻の変装をさせ、失踪劇を演じさせる。失踪劇のグルの人々は、ジェニーだと思い込んで、ある場所に愛人を連れていったわけだ。
グルの人々は、夫が拘留されているあいだにジェニーに化けた愛人の存在を確認しているだけに、夫は無罪だと信じて疑わなかったのだ。
コメント