ミシェル・トゥルニエの『イデーの鏡』を読んだ。
イデーのらっきょではない。
トゥルニエは1924年パリ生まれの小説家。
この本は、対になる概念を並べてその相違などを自由に語るエッセイになっている。
「男と女」「愛情と友情」「ドン・ジュアンとカサノヴァ」「笑いと涙」「子供と青年」「内婚と外婚」「健康と病気」「雄牛と馬」「ネコとイヌ」「狩猟と漁業」「風呂とシャワー」「スクリューとひれ」「ヤナギとハンノキ」「動物と植物」「線路と道路」「ピエロとアルルカン」「放浪の民と定住の民」「主人と召使い」「赤い道化と白い道化」「樹木と道」「塩と砂糖」「フォークとスプーン」「地下室と屋根裏部屋」「水と火」「歴史と地理」「脊椎動物と甲殻類」「環境と遺伝」「快楽と喜び」「アポロンとディオニソス」「恐怖と不安」「愚老と称揚」「記憶と習慣」「話されたことばと書かれたことば」「才能と天才」「美と崇高」「文化と文明」「記号と映像」「純粋と無垢」「時間性と気象性」「一次的傾向の人間、二次的傾向の人間」「詩と散文」「行動と情念」「太陽と月」「灰色とカラー」「たましいと肉体」「量と質」「右と左」「時間と空間」「表面と深さ」「現実態と可能態」「種類と差異」「与えられたもの、構築したもの」「理想主義と現実主義」「先験的と後験的」「絶対的と相対的」「泉と柴」「悪魔と神」「存在と無」
25才のときに哲学教授資格試験(アグレガシオン)を受けたこともあるトゥルニエの文章はときに哲学的だが、作家としての本領もじゅうぶんに発揮している。
たとえば、「放浪の民と定住の民」では、カインとアベルの話からはじまる。カインは土地を耕す定住の民。アベルは家畜を飼う放浪の民。トゥルニエによると、この両者の衝突は避けがたく、人類の歴史上、さまざまな形を変えて出没する。いくつかの例をあげたトゥルニエはナチスにもふれる。ナチズムは「血と土」の政策と呼ばれる「人間と大地との交感を称揚する」立場にたち、放浪の民であるジプシーやユダヤ人を絶滅する計画をたてる。
ここまではホホーン、と言う感じだが、しめくくりがしゃれている。
「また、新しい高速道路や飛行場の建設計画が浮上すると、そこに定住している人々は、自分たちの生活が破壊されるとして、反対運動に立ち上がるのである」
空港建設反対が、カインとアベルと結びつくなんて、誰が予測した?
各エッセイは刺激に富んでいて面白く、それぞれの最後には、いろんな文献からの引用がひいてある。
たとえば、「ネコとイヌ」の末尾には、『旧約聖書』からこんな言葉がひいてある。
「生きたイヌであるより、死んだライオンでありたい」(伝道の書)
これでわかるように、トゥルニエはネコ好きなのだ。内容は僕みたいなネコ好きには喝采ものだったが、イヌ好きの人が読むと気を悪くしかねない内容だったので、ここでは引用しないでおこう。
イデーのらっきょではない。
トゥルニエは1924年パリ生まれの小説家。
この本は、対になる概念を並べてその相違などを自由に語るエッセイになっている。
「男と女」「愛情と友情」「ドン・ジュアンとカサノヴァ」「笑いと涙」「子供と青年」「内婚と外婚」「健康と病気」「雄牛と馬」「ネコとイヌ」「狩猟と漁業」「風呂とシャワー」「スクリューとひれ」「ヤナギとハンノキ」「動物と植物」「線路と道路」「ピエロとアルルカン」「放浪の民と定住の民」「主人と召使い」「赤い道化と白い道化」「樹木と道」「塩と砂糖」「フォークとスプーン」「地下室と屋根裏部屋」「水と火」「歴史と地理」「脊椎動物と甲殻類」「環境と遺伝」「快楽と喜び」「アポロンとディオニソス」「恐怖と不安」「愚老と称揚」「記憶と習慣」「話されたことばと書かれたことば」「才能と天才」「美と崇高」「文化と文明」「記号と映像」「純粋と無垢」「時間性と気象性」「一次的傾向の人間、二次的傾向の人間」「詩と散文」「行動と情念」「太陽と月」「灰色とカラー」「たましいと肉体」「量と質」「右と左」「時間と空間」「表面と深さ」「現実態と可能態」「種類と差異」「与えられたもの、構築したもの」「理想主義と現実主義」「先験的と後験的」「絶対的と相対的」「泉と柴」「悪魔と神」「存在と無」
25才のときに哲学教授資格試験(アグレガシオン)を受けたこともあるトゥルニエの文章はときに哲学的だが、作家としての本領もじゅうぶんに発揮している。
たとえば、「放浪の民と定住の民」では、カインとアベルの話からはじまる。カインは土地を耕す定住の民。アベルは家畜を飼う放浪の民。トゥルニエによると、この両者の衝突は避けがたく、人類の歴史上、さまざまな形を変えて出没する。いくつかの例をあげたトゥルニエはナチスにもふれる。ナチズムは「血と土」の政策と呼ばれる「人間と大地との交感を称揚する」立場にたち、放浪の民であるジプシーやユダヤ人を絶滅する計画をたてる。
ここまではホホーン、と言う感じだが、しめくくりがしゃれている。
「また、新しい高速道路や飛行場の建設計画が浮上すると、そこに定住している人々は、自分たちの生活が破壊されるとして、反対運動に立ち上がるのである」
空港建設反対が、カインとアベルと結びつくなんて、誰が予測した?
各エッセイは刺激に富んでいて面白く、それぞれの最後には、いろんな文献からの引用がひいてある。
たとえば、「ネコとイヌ」の末尾には、『旧約聖書』からこんな言葉がひいてある。
「生きたイヌであるより、死んだライオンでありたい」(伝道の書)
これでわかるように、トゥルニエはネコ好きなのだ。内容は僕みたいなネコ好きには喝采ものだったが、イヌ好きの人が読むと気を悪くしかねない内容だったので、ここでは引用しないでおこう。
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