闇に踊れ!

2005年11月24日 読書
スタンリイ・エリンの『闇に踊れ!』を読んだ。
引退した白人の歴史学教授。彼は肺がんで余命いくばくもない。
彼は自分の管理するアパートに住む多くの黒人を道連れにして、爆死しようと計画をたてている。
作品は、この教授がテープに録音する日記と、私立探偵の視点からの2つの物語が並行する形で描かれる。
平等主義で人種差別などまったくしない清廉潔白な教授が、実は大の黒人嫌いで、悪態をテープにふきこんでいるさまは面白い。
この作品の楽しさのほとんどは、この教授の狂いっぷりにある。
体調がすぐれないため、爆弾を仕掛けるだけで息もたえだえ、死にそうになったり、テープに録音する内容がボケているせいか同じことを繰り返してしゃべっていたり、途中で気絶して無音のところがあったり。
また、教授が蔵書整理のために雇った黒人少女を素っ裸で仕事させていたり、挙げ句の果てには、性的奉仕をさせたり、と、教授はやりたい放題だ。
私立探偵は、その黒人少女が最近金回りがいいことを、薬の売人でもやってるのかとか疑うことで、教授の話と関わってくるのだが。

この小説こそ、僕を1ヶ月の長きに渡って縛り付けていた作品である。
めちゃくちゃ面白い話なのに、こんなに時間がかかってしまったのは、漫画とか読んでいたせいもあるが、活字を受け付けない身体をしていたせいだと考えている。
人種偏見の発言が多かったせいか、セリーヌの読後感に近いものを覚えた。
たとえば、黒人が壁に描くウォールアートについて、こう教授は語る。
「わたしは一度、壁の芸術を仔細に眺めたことがある。ブランガ(黒人)の魂について教示を得た。落書は威勢のいい文字にみえた。単語と語句に。そうではなかった。たまたま文字として表れているところもあるが、総体としていえば、筆記を真似せんとする愚者の試みであった。文盲の手が、志の低い人間が文字と呼ぶ奇妙な線と輪を真似しようと試みた、その所産。魂の人間から理性の人間に宛てられた、嫉みと憎悪のメッセージ」
あるいは、こんな語り。
「アフリカの草の小屋で暮らす彼らはあまりにも愚かすぎて文字を考案する頭脳をもたず、従って部族の不毛の歴史を記録する能力がない。それゆえ彼らはせっせと、想像上の栄光をほめそやす神話をでっち上げている。白人のアルファベットをつかい、もちろん白人の印刷技術をつかって」
教授は黒人を「分泌物と堆肥」と言い表わしたりしている。
スタンリイ・エリンは66才のときにこの作品を出版した。
悪口ひとつ言うにも年季が感じられて、愉快だ。

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