超人計画

2005年5月15日 読書
滝本竜彦の『超人計画』を読んだ。ひきこもり作者が渋谷でナンパするに至る道を、ニーチェの駱駝〜獅子〜赤子の超人への道になぞらえる、教養(ビルドゥングス)エッセイ。
とはいうものの、ちょっとやそっとでひきこもりがナンパなど出来ない。毎回、手を替え品を替えての言い訳の数々、脳内妄想で笑わせる。ニーチェが作中よく出てくるのも面白い。最初の方はもうルサンチマン全開で、よくぞここまで書き切った、と拍手した。渋谷でナンパするよりも、部屋の中でネット三昧の方が、はるかに有意義だと思うし、作者もそう考えているに違いないのだが、あえて、超人計画と銘打ってそれを達成するでもなく遊んでいるのも楽しそうだ。作家として四苦八苦して出てきた作品だとしても。結局、教養エッセイをめざして、いつまでも足踏みしているのが痛快なのだ。
巻末の「面白くってタメになる!レイちゃんの知恵袋」も面白くってタメになった。レイちゃん、というのは作者の脳内彼女で、綾波レイ似なのだ。そういえば、最近、盲目の黒人ミュージシャン、レイ・チャールズを描いた映画「レイ」が話題になっていたが、予備知識なかったら、青い髪で眼帯した女の子が主人公かと思うよね!
途中、ヤラセのナンパ写真で登場した女の子、どこかで見たことあると思ったら、月蝕歌劇団の三坂知絵子だった!
この「超人計画」にはネット上で「超人計画2」という続編も連載されているのだが、途中で頓挫しているように見える。作者自身は雑誌に作品を出したり、ロフトプラスワンに出たりしているので、健康上の理由ではないようだ。
滝本竜彦は面白い。近々図書館にでも行って、もう書店には並んでいない『群像』5月号を探して読もう。『群像』に載った彼の作品は「虚無への供物(おはぎ)」というタイトルなのだ。読まずにはおれまい。

あと、今日は日曜、やたら現代音楽ばかり聞いてすごした休日だった。
現代音楽聞いていると、そのテーマや演奏方法に関わらず、心が落ち着くのはなぜだ。スリルとサスペンスに満ちた実験的な音楽でも、ショパンより落ち着く。幼い頃から耳に入ってきた音が、そんな脳を作りあげたのだろうか。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

日記内を検索