『雑誌「少年赤十字」と絵本画家岡本帰一』を読んだ。桝居孝著2002年竹林館刊。
岡本帰一は1888年洲本生まれの絵本画家で、『コドモノクニ』等で活躍。42才で死亡。
少年赤十字は赤十字運動の少年団で、カナダが発祥の地。日本ではじめて「少年赤十字」ができたのは1922年滋賀県。雑誌「少年赤十字」は世界各国の赤十字運動の紹介、交流と、少年赤十字運動の活動を広く世に知らせるため、1926年5月に創刊された。
岡本帰一がこの雑誌に参加するのは1926年10月からである。
この雑誌『少年赤十字』は現在ほとんど残されていないという。本誌は太平洋戦争勃発によって廃刊されるが、考えてみると戦時でこそ赤十字の精神がもっとも発揮されねばならないはずだ。アンリ・デュナンが赤十字を設立したのは、戦場で傷ついた兵士を敵味方の区別なく治療するのが目的だったのだから、戦争によって赤十字運動が衰退するのはおかしいのだ。国際協調の動きが封殺されてしまうのは五・一五事件を見てわかるように、日本のお家芸である。今でも中国や北朝鮮に対して、ワイドショーレベルの知識しかないくせに、「あんな奴らは日本から出て行け」だの「日本製品買うな」だの「経済制裁しろ」だの大声で言う人間がいるのが現状なのである。雑誌「少年赤十字」は理想を謳ったがゆえに、軍国日本につぶされてしまったのだ。
まあ、そんなことはさておき、この本を読んで一番興味深かったのは、岡本帰一の「童画論」だ。彼は「子供は好かれようとする者を嫌う」と喝破する。子供が危ない遊びをするのを止めようとする親や教師のやり方にも批判的だ。子供がいきいきとしているのは、何かいたずらをしようとしているときだ、と書いている。PTA推薦のものが子供にとってつまらないのは、大正時代から今も変わっていない。老婆心や親心ほど人間を駄目にするものはない。それに準ずる教育もまたしかり。子供がおかしくなる原因を親に求めたり学校に求めたりする議論がたまにあるが、ちゃんちゃらおかしい。親も学校も両方駄目だ。2つともに滅びてしまえばいい。そして、そんな親や学校に「おかしい」だの「あぶない」だのと評された子供たちは、本当はちっともおかしくないし、あぶなくもない。親と学校の色眼鏡でそう見えているだけなのだ。
子供が親や学校につぶされていくさまを見るのは、つらい。岡本帰一はそれをよくわかっていた人なのだと思う。

最近、中村佑介くんというイラストレーターと友達になった。アジアンカンフージェネレーションのジャケットを描いている売れっ子さんだ。彼の絵を見ていると、この岡本帰一あたりの大正童画が現代に甦ったように思えて、とても気持ち良い。この本を読もうと思ったのも、まずは中村佑介くんのイラストから触発されたからだ。

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