リチャード・ヘルの『GO NOW』を読んだ。
あのニューヨーク・パンクのリチャード・ヘルだ。
ブランク・ジェネレーションのリチャード・ヘルだ。
CBGBで人気を博した、ヴォイドイズのリチャード・ヘルだ。
CBGBって、「カントリー、ブルーグラス、ブルース」の頭文字をとって店名にしたところなのに、あんなパンクで大人気を得るって、すごい。
この本は自伝的な小説で、ヘロイン中毒の伝説的パンクロッカーが『アメリカぶらり旅』(かってに今考えた)を執筆するために出かけた旅日記の体裁をとっている。
主人公の男は、作中の言葉を使うと「ヘロインを止めようともがくジャンキー、飲んだくれの能なし、子どもっぽい自己食い人種、プロの神経破壊者、糞ったれ、錆びついた自転車」いかに表現を変えようと、要するに人間の屑だ。貧乏で、金を借りてはドラッグに費やしてしまうし、女と見るとすぐに手を出す。あげくのはてには親戚のおばさんにまで手を出し、彼女に見つかり愛想をつかされる。彼の無茶苦茶な生き方と自己嫌悪と禁断症状が描かれる。彼の行く道には光は見えない。
でも、このての自分を制御できない物語を好む読者もいるのだろう。
いったいどうなっているのか。
自己について思うことができるのを動物と峻別する人間の特徴とした場合、この主人公のような自己憎悪と自己憐憫と後悔に満ちた毎日は地獄だろう。この本の主人公のような人間なら動物の方が存在として良さそうに思うが、どうだろう。ハイデガーによると動物に固有の存在様式は「放心」なのだそうだ。さんざん悩んだり修行したりして得られた悟りの境地が、たとえば動物のように何も考えずに生きることだったとして、じゃあ、動物は悟りの境地にあるすぐれた存在なのかと言うと、それは違う。動物には悟りもへったくれもないのだ。とか、今読んでいる本に影響された感想を書いてしまった。
この『GO NOW』はとことん情けない話だが、面白い文章が多数含まれている。いくつか抜粋しておこう。
(観客評)
「観客ほど俺を狼狽させる存在はない。固定ファン以外の層にウケ出してからずっと俺は困惑していた。なぜ奴らがそこにいるのか、全然分からなかった。その疑念を音楽に生かすことも考えたが、俺には、連中を嘲笑し、貶めてやることぐらいしか想いつかなかった。要するに奴らは馬鹿だし、くだらない。・・・じゃあ、俺はどうすればいいわけ?心を入れ替えて連中の比較的まともな層に訴える努力を続けていくのか。あるいは迎合してポン引きロッカーに身をやつし、一緒に馬鹿になるのか」
(ボードレール評)
「醜く、ひねくれている。しかもかなり絶望的に。おまけにバイタリティに欠けていたから、いつも打ちひしがれ、世に送り出した作品は未完成か、ボードレールのアイドルだったポーとかの不器用な模倣でしかなかった。だが、彼は自分自身には決して嘘をつかなかった。頭も良かったし意志力もあったから、その哀れな脆弱さを美徳として詩人としての評価を得た。その弱点を目標とアイデンティティーにできた」
(抱きたくない女)
「彼女は体臭がきつくて、しかもそれを隠そうと香水をつけるからよけいに臭かった。で、あっちの方はというと、がっしりとした恥骨の下のマンコはゆるゆるで、小便とカビの臭いがした。大きなおっぱいはトウモロコシ粥のようにどろどろで、平べったい茶色の乳首から2、3本長い堅い毛が突き出ている。正直なところ、静電気の固まりとセックスしているようだった」
(ドラッグの真実)
「私が我慢ならないのは、ヘロイン常用が、あなたが自分自身を嫌いになるように仕向けることなの」
「ドラッグのオーバードーズが怖いのは、この世界に意味深さ、読み解くべきメッセージを与えてしまうことなんだ」
あのニューヨーク・パンクのリチャード・ヘルだ。
ブランク・ジェネレーションのリチャード・ヘルだ。
CBGBで人気を博した、ヴォイドイズのリチャード・ヘルだ。
CBGBって、「カントリー、ブルーグラス、ブルース」の頭文字をとって店名にしたところなのに、あんなパンクで大人気を得るって、すごい。
この本は自伝的な小説で、ヘロイン中毒の伝説的パンクロッカーが『アメリカぶらり旅』(かってに今考えた)を執筆するために出かけた旅日記の体裁をとっている。
主人公の男は、作中の言葉を使うと「ヘロインを止めようともがくジャンキー、飲んだくれの能なし、子どもっぽい自己食い人種、プロの神経破壊者、糞ったれ、錆びついた自転車」いかに表現を変えようと、要するに人間の屑だ。貧乏で、金を借りてはドラッグに費やしてしまうし、女と見るとすぐに手を出す。あげくのはてには親戚のおばさんにまで手を出し、彼女に見つかり愛想をつかされる。彼の無茶苦茶な生き方と自己嫌悪と禁断症状が描かれる。彼の行く道には光は見えない。
でも、このての自分を制御できない物語を好む読者もいるのだろう。
いったいどうなっているのか。
自己について思うことができるのを動物と峻別する人間の特徴とした場合、この主人公のような自己憎悪と自己憐憫と後悔に満ちた毎日は地獄だろう。この本の主人公のような人間なら動物の方が存在として良さそうに思うが、どうだろう。ハイデガーによると動物に固有の存在様式は「放心」なのだそうだ。さんざん悩んだり修行したりして得られた悟りの境地が、たとえば動物のように何も考えずに生きることだったとして、じゃあ、動物は悟りの境地にあるすぐれた存在なのかと言うと、それは違う。動物には悟りもへったくれもないのだ。とか、今読んでいる本に影響された感想を書いてしまった。
この『GO NOW』はとことん情けない話だが、面白い文章が多数含まれている。いくつか抜粋しておこう。
(観客評)
「観客ほど俺を狼狽させる存在はない。固定ファン以外の層にウケ出してからずっと俺は困惑していた。なぜ奴らがそこにいるのか、全然分からなかった。その疑念を音楽に生かすことも考えたが、俺には、連中を嘲笑し、貶めてやることぐらいしか想いつかなかった。要するに奴らは馬鹿だし、くだらない。・・・じゃあ、俺はどうすればいいわけ?心を入れ替えて連中の比較的まともな層に訴える努力を続けていくのか。あるいは迎合してポン引きロッカーに身をやつし、一緒に馬鹿になるのか」
(ボードレール評)
「醜く、ひねくれている。しかもかなり絶望的に。おまけにバイタリティに欠けていたから、いつも打ちひしがれ、世に送り出した作品は未完成か、ボードレールのアイドルだったポーとかの不器用な模倣でしかなかった。だが、彼は自分自身には決して嘘をつかなかった。頭も良かったし意志力もあったから、その哀れな脆弱さを美徳として詩人としての評価を得た。その弱点を目標とアイデンティティーにできた」
(抱きたくない女)
「彼女は体臭がきつくて、しかもそれを隠そうと香水をつけるからよけいに臭かった。で、あっちの方はというと、がっしりとした恥骨の下のマンコはゆるゆるで、小便とカビの臭いがした。大きなおっぱいはトウモロコシ粥のようにどろどろで、平べったい茶色の乳首から2、3本長い堅い毛が突き出ている。正直なところ、静電気の固まりとセックスしているようだった」
(ドラッグの真実)
「私が我慢ならないのは、ヘロイン常用が、あなたが自分自身を嫌いになるように仕向けることなの」
「ドラッグのオーバードーズが怖いのは、この世界に意味深さ、読み解くべきメッセージを与えてしまうことなんだ」
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