挑発する知

2004年9月29日 読書
姜尚中と宮台真司によるトークセッションを収めた『挑発する知』を読んだ。
1年前の本で、出版当初から読みたくてしかたがなかったのだが、やっと読むことができた。テーマは「ナショナリズムをどう評価するか」で、目次を見ると「戦争と暴力」「非暴力の社会はありえるのか」「右翼と左翼」「国家を考える」「丸山眞男からアジア主義へ」「メディアと正義」「知識人を考える」と、興味深い項目が並んでいる。興味深すぎて、読み終えたはずなのに、「へーえ、何が書いてあるんだろう?」と今思ったくらいだ。
1年前の話題のはずなのだが、イラク戦争の正当性の無さ、アメリカべったりの日本政府、北朝鮮に対する外交の失敗など、今にいたるも何の進展もない事柄が多くて、今現在の話としてじゅうぶんに読める。いまだにイラク戦争は正当だったなんて考える人は皆無だろう(たとえ大量破壊兵器が発見されたとしても、だ)。北朝鮮の脅威などという妄言を信じる頭カラッポの人も今は皆無だろう。(マスコミでは今なお北朝鮮がミサイルの準備をしているなどとヨタ話を流しているが、さすがにそれを鵜呑みにする人はいないだろう。一般大衆を馬鹿にするのもいいかげんにしろ、と言いたい)
この本の内容をひとことで言えば「ちょっと待て」だろう。マスコミが流している情報をそのまま信じて、周囲の風潮に感情的に同調していないか。物事はそんなに単純なのか。われわれはいっときの感情に流されて目を曇らされてはならないのだ。専門家の分析や見解を大衆にわかりやすく解説する「ミドルマン」としての知識人の役割が語られる。
丸山眞男については、僕はまったく読んでいないので、これを機会に挑戦してみよう。2年くらい前から、「今年こそ丸山眞男全集を読もう」と決意しては、1行も読まずに過ごしている。丸山眞男なんて今さら古い、という声もあるだろうが、それをこの本を読んだ後に言うのは、相当に勇気がいる。本書の中で、そんなことは承知の上で、現代日本ではまだ丸山的な課題をクリアされていないことが説かれているからだ。全然丸山を読んでいない僕にとって「丸山的課題」とは、とにかく丸山を読むことだ。たしかにまだクリアされていない課題に違いない。
宮台真司と言えば、「朝まで生テレビ」で最近見たときに、他のパネラーにやりこめられている姿を見て、「ああ、討論では誰にも負けないと豪語していたのに」と意外な思いをしたものだ。丸くなった?

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