「ハッとしてトリック!」これが僕の回答である
2004年9月7日 読書
鯨統一郎の『ハッとしてトリック』を読んだ。鯨統一郎の本はどれも読みやすくて面白いので、内容も確認せず、とにかく全部読むことにしている。
今回はサッカーを題材にとった長篇推理小説。Jリーグのスター選手が、楠木正成像の馬にまたがって、爆死する。自殺かと思われたが、同じくサッカー選手が密室の中でボウガンに射たれて死ぬ。部屋の中から隙間という隙間に全部粘土をくっつけてある、完全密室だ。さらに、ビルの7階から飛び下りたはずの選手が、消えてしまう事件まで起こる。
この3人の事件は新興宗教の教祖による預言の見立てだということが判明したり、密室殺人の被害者が「70才」という謎のダイイングメッセージを残していたり。
ミステリー的要素はたっぷりあって、二階堂黎人が同じ題材で書けば、古風なおどろおどろしい通俗的推理小説を書きそうである。しかし、鯨統一郎はそんな童貞くさい書き方はしない。
ふだんなら、その力を抜いた書き方が長所として出るのだが、この本に関してはどうだろう。すべてのミステリー的お膳立てが、いかにも適当にこなした感じでしか読者には伝わってこない。この本はサッカーに関する描写が多く、サッカーに興味のない僕にとってはどうでもいいページが多かったことも関係しているのだろうが、このネタなら長篇じゃなくて、ぜいぜいが中編か短編にまとめるべきじゃないか、と思った。
以下、覚え書きのためのネタバレ。読んだら読むな、読むなら読むな。
粘土密室はユダの窓トリック。ノブでなく換気扇。
「70才」は「クロキ」。クロキノリエという名前は逆から読んで「エリの記録」を意味していた。
押井守の『これが僕の回答である』を読んだ。攻殻機動隊からアヴァロン、イノセンスに至る時期の押井守のコラムで、映画に関する文章が並んでいる。
ここでは押井守のオタク感がうかがえて興味深い。すなわちそれは、消費者として重要な存在だが、クリエイターにはなれない、というものだ。オタクはアニメ内アニメを再生産するだけなのだ。まあ、突飛じゃない、普通の意見だ。ジャンルにあぐらをかいた再生産作品はアニメに限らず、どれもたいした物ではない。
全体に普通のことしか書いていないのだが、面白く読めるのは、押井守が好きだからなのだろう。でも、コミケなどで得た感触から言えば、押井守は興味深いが、押井守ファンはなんだか、鬱陶しい。クリエイターじゃないからか。
今回はサッカーを題材にとった長篇推理小説。Jリーグのスター選手が、楠木正成像の馬にまたがって、爆死する。自殺かと思われたが、同じくサッカー選手が密室の中でボウガンに射たれて死ぬ。部屋の中から隙間という隙間に全部粘土をくっつけてある、完全密室だ。さらに、ビルの7階から飛び下りたはずの選手が、消えてしまう事件まで起こる。
この3人の事件は新興宗教の教祖による預言の見立てだということが判明したり、密室殺人の被害者が「70才」という謎のダイイングメッセージを残していたり。
ミステリー的要素はたっぷりあって、二階堂黎人が同じ題材で書けば、古風なおどろおどろしい通俗的推理小説を書きそうである。しかし、鯨統一郎はそんな童貞くさい書き方はしない。
ふだんなら、その力を抜いた書き方が長所として出るのだが、この本に関してはどうだろう。すべてのミステリー的お膳立てが、いかにも適当にこなした感じでしか読者には伝わってこない。この本はサッカーに関する描写が多く、サッカーに興味のない僕にとってはどうでもいいページが多かったことも関係しているのだろうが、このネタなら長篇じゃなくて、ぜいぜいが中編か短編にまとめるべきじゃないか、と思った。
以下、覚え書きのためのネタバレ。読んだら読むな、読むなら読むな。
粘土密室はユダの窓トリック。ノブでなく換気扇。
「70才」は「クロキ」。クロキノリエという名前は逆から読んで「エリの記録」を意味していた。
押井守の『これが僕の回答である』を読んだ。攻殻機動隊からアヴァロン、イノセンスに至る時期の押井守のコラムで、映画に関する文章が並んでいる。
ここでは押井守のオタク感がうかがえて興味深い。すなわちそれは、消費者として重要な存在だが、クリエイターにはなれない、というものだ。オタクはアニメ内アニメを再生産するだけなのだ。まあ、突飛じゃない、普通の意見だ。ジャンルにあぐらをかいた再生産作品はアニメに限らず、どれもたいした物ではない。
全体に普通のことしか書いていないのだが、面白く読めるのは、押井守が好きだからなのだろう。でも、コミケなどで得た感触から言えば、押井守は興味深いが、押井守ファンはなんだか、鬱陶しい。クリエイターじゃないからか。
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