源内先生舟出祝

2004年7月13日 読書
山本昌代の『源内先生舟出祝』をやっとのことで読み終えた。難解な文章でもなく、短い作品なのだが、1週間もかけて読んだ。なかなか読み進まなかったのは、作者の強烈な悪意にあてられてしまい、吐き気のような嫌悪感にとらわれてしまったからだ。
この小説の主人公は晩年の平賀源内。山本昌代描く源内は、ひとことで言えば人間の屑である。過去の栄光にすがり、妬みや恨みにとりつかれており、あげくのはてに狂ってしまう、偉くもなんともない、虫けらのような人物である。作中からいくつか抜き出してみよう。
「どうせおれは負け犬だよ」
「ひとつところに留まって事を実らせる、何を為すにも欠くべからざるその力を、彼の畏友(源内)が持たぬのに気づいたのは、しばらく経ってのことだ」
「源内先生のひらひらと落ち着きのない尻の軽さを、良沢師は毛嫌いしていた」
「『何もかもすることはしちまった。時代が変わったんだ。昔はよかったよ』
皆に聞こえろと、大袈裟に溜め息をつく。
『することがないのはおまえだけだ。ほかはみんな忙しいぜ、いつだってな』
職人たちの無言の声は、源内先生には聞こえない」
「義躬公はさぞ讃岐の芋侍(源内)を恨んだろうが、芋の方は何も知らないから泰平である」
「意気がって通人ぶってはいるが、一皮剥けば大野暮の見本たる平賀源内とは何という違いか」
「おまえだって肚の中じゃおれを馬鹿にしてるだろっ。負け犬だと笑ってるだろ」
などなど。歴史上の人物を、取るに足らない小さな人物にひきずりおろす描写で覆い尽くされている。これでは、ワイドショーか女性週刊誌だ。源内はただ単にめめしい奴なのだ。
僕が興味を抱いたのは、なぜ山本昌代は源内を誹謗し、おとしめることに血道をあげているのか、という疑問だった。おそらく、山本昌代は源内のような男が嫌いなのだろう。嫌いな人物を小説に書こうとしたのは何故なのか、疑問だ。自分の嫌いな人物が、たまたま源内のファンだったので、源内をこきおろすことにしたのか?男特有の独身者的天才などというものを認めたくないのか?どちらにしても、人の悪口は読んでいて嫌な気分になる。それとも山本昌代は他人の悪口を聞いたり読んだりするのが好きな、品性下劣な人間なのか?
僕にとっては山本昌代自身が謎だ。著者の写真が掲載されていたので、見ると、山本昌代はいかつい顔でせせら笑っていた。「源内好きな男性のみなさん、ざまあみろ、あんたも同類の屑なのね、お気の毒さま」と言われているような気がした。
一応、源内が晩年に殺人を犯した理由を新説として描いている部分がある。源内はその生涯を世の中のために捧げてきたのに、世の中はそれに報いてくれなかった。じゃあ、逆に世の中に逆らうことをすれば、いいということなのか、と思って、殺人を犯すというのだ。この説に説得力を付与するために、報われない源内を描いたのかもしれない。しかし、この説、浅くて、くだらない。こんなつまらない思い付きのために、本1冊使って醜く描かれた源内としては、たまったもんじゃないだろう。

「爆笑問題のススメ」を録画で見る。ゲストは楳図かずお。作品もパフォーマンスも面白いのに、ふだんは真面目すぎて、面白みに欠ける。楳図かずおも独身者の天才だ。山本昌代が描けばきっとボロクソ。
深夜に放送している「音エモン」は樋井明日香がナビゲーターだが、同じキャレス出身のPARADISE GO!! GO!!の「恋の運動会」がオンエアされる。キャレスはあまりなじみがないだけに、要チェック。
雑誌「PURE2」は表紙&特集が中村有沙。山本昌代の意地の悪い顔を見たあとだと、なおさら可愛く見える。
山本昌代の油っこい悪意にうんざりしたので、口なおしで軽い小説を2冊ほど読む。これらは特に紹介しない。いずれまとめて書くことがあるかも。

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