宮崎勤の『夢のなか、いまも』を読んだ。
創出版社とかわした手紙と、公判の模様などで構成されている。
口絵に宮崎勤の描いた多面体が使われている。
その多面体の名は「カトシン・ベース・ルビー」だの「ハマアユ・ベース・サッカーボール多面体」「タッキー・ベース・ハンドボール多面体」「シイリン・ベース・ルビー」などなど。どこかで聞いたようなネーミングで、たとえば「シイリン」は「椎名林檎」からとったそうだ。さらに「ビント・アブドゥル・サファイア」には「宝石とくれば王族である。この絵をサウジアラビア王国の国王の妻全員にささげます」と注釈がつけてある。
精神鑑定するまでもなく、狂ってる。
不思議なやりとりが本書では数々展開されている。
「日ごろ、子供の肉体が落っこちてないかな、落っこってたらひんやりした肉物体に解剖行為ができるんだがなと思っていました」
なぜ子供に限定するかと言うと、
「子供以外の肉物体は、胸が膨らんでいてうざったいなとか、膨らみがじゃまでちっとも解剖的じゃなくて嫌だな」
女児にかぎるのは
「女性の性器はまっすぐな線でできていて、既に解剖のメスが入っているようで解剖的でいいと思いました」
宮崎勤のセックス観はどうなのかというと、セックスもマスターベーションも射精も勃起も
「一度もしたことがありません」
「どうしてそんなことをやるのかなと、分からないなと思っています」
佐世保小の女児がクラスメートをカッターで刺した事件について
「かわいらしい事件ですね」
と感想を述べている。これは宅間守の事件に関しても同じ感想で、なぜ可愛いのかというと
「事件に子供がかかわるのがかわいらしいことです」
名言!
こういう物の見方はしたことがなくて、目がさめるような思いだ。
また、宮崎勤は今田勇子の犯行声明について、こんな感想を述べている。
「うわっ、字がいっぺえ書いてある。気持ちわりい」
「私にはそんな字ばっかいっぱいのものなど胃が痛くて死んでも書けませんよ」
「今田さん早く自首して下さい!
そうしないとあなたのせいで困る人間がいるのです!
早くして下さい!」
本気っぽい。今田勇子は別人なのだ。きっとそうだ。そうに違いない。
宮崎勤を「狂ってる」で済ませるわけにはいかない、と言いたくなる気持はわかる。
でも、彼は単なる狂人であって、時代を代表させるほどじゃない、とも思えてきた。
犯行に際して、自分以外の「もうひとりの自分」が手を下し、その前には「えたいの知れないもの」としてネズミ人間があらわれる。
古典的な精神異常と、どこが違うのだろう。
宮崎勤は常に幻聴に悩まされているそうだ。
「目を針で刺すのは私にやらせろ」
「耳をそぎおとすのは私にやらせろ」
「鼻の穴を針で刺すのは私にやらせろ」
「歯をますいなしで抜くのは私にやらせろ」
「爪をはがすのは私にやらせろ」
「指の骨をおるのは私にやらせろ」
こればっかりは、幻聴でもなんでもなく、精神異常の症状でもない。
世間一般のリンチ願望を敏感に察知しただけだ。
多面体ばっかり描いてタレントの名前を冠すことに関しては、はっきり「狂ってる」と断言できるが、それ以外の部分では、臆病な普通の「バカ」だ。
女児を殺したことについても、「バカ」なだけで、狂ってはいない。
ここを間違えてはいけないと思う。

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