あなたまにあ

2005年3月29日 読書
小川勝己の短編集『あなたまにあ』を読んだ。
残酷で猟奇的な話が収められている。
例によって、ネタバレをしているので、読んでない人は怒らないように。
「蝦蟇蛙」は蛙が大嫌いな女の子の物語。いたずらで蛙を飲み込んでしまった女の子は、体内を無数の蛙に占拠されてしまう。って、これクリープショーと似たような発想じゃないか。クリープショーは清潔好きの人間がゴキブリに体内を占拠されてしまう。無数のゴキブリが人間の皮をかぶったような感じ。小川作品は童話のような語り口で、描いている。でも、蛙では可愛くて、メルヘンみたい。
「聖夜」は芸能界で徒花を咲かせる女性の話。デビューに際して、つきあっていた男とは別れる。クリスマスイブに思い出の場所で再会した2人。安い女性と、そんな馬鹿女に惹かれる馬鹿男の話だ。どうとでもなれ。
「春巻」食べ物アイディアというと、結局はスカトロかカニバリズムになってしまうという好例。
「壁紙」借金をかえすためにヤクザの幹部を殺した男。残した妻子は愛想をつかせて離れる。自分が父親だと名乗ることもはばかられる状況で、男は再びやばい仕事に手をそめる。仕事は失敗。携帯電話の壁紙に使っていた息子の写真を撃ち抜いて、息子と自分のつながりを隠す。まるで韓国ドラマなベタベタさ。
「諧謔の死」ドッキリネタ。教え子に誘われて飲みにいった後、教え子はその教師に恨みを抱いていたことを告白。生徒を教育的指導する教師にも、それに負けてしまう生徒も、駄目人間だ。もろともに滅びよ。
「蘆薈」(ろかい)と読むが、アロエのこと。アロエは人肉を養分として生長。日野日出志の漫画みたいな話。
「あなたまにあ」幼女とごっこ遊びしながら自分の欲望を果たす「お兄ちゃん」。お兄ちゃんは「まにあ星人」として、女の子を囚われの身とするのだ。
短編集に描かれた人物たちの薄い人間性は、「こいつらまとめて死んでしまえ」と思わせるに足りる。僕は小川作品を短編集ばかり読んでいて、長篇は未読だ。きっと長篇は面白いのだろう。

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